山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2018年・第196通常国会

所有者不明土地利用円滑化法案について質問

要約
  • 国交委員会で所有者不明土地利用法案が日本共産党を除く賛成多数で可決、成立。同法は公共事業における土地収容について収用委員会の審理を省き、都道府県知事の裁定に代える特例を設けます。多くの地権者が反対する外環道工事でも、知事の裁定により所有者不明土地の収容が可能となり、地権者を追い込む手段となる可能性を指摘しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

法案について伺います。

いわゆる所有者不明土地が発生し、増加をしていくことは、土地の管理や利用において様々な課題を生じさせ得るものです。対策が必要だと考えます。

しかし、本法案には、そもそも所有者不明土地の発生を抑制したり解消したりという仕組みは入っておりません。公共事業における収用や利用権設定など、専ら利用を促進する手段を導入するもので、今日既に他の委員の皆さんや政府からもありましたが、抜本的なこの所有者不明土地問題の解決については、今まさに検討が進められ、これからその方向が示されるという段階です。私は、本来は、この抜本的な解決の方向性示された上で利用促進についても検討されるべきではないかと考えます。

その上で、この法案では、収用手続で使用権を設定したり、また、地域福利増進事業のために利用権設定を行ったりすることが計画されていますが、この場合にも、所有者不明土地自体はそのまま残り続けるわけです。先日の参考人質疑では、吉原参考人から、利用権設定というものは問題の根本解決にはなりません、こういう指摘もありました。

使用権や利用権を設定した所有者不明土地が半永久的に所有者不明土地となり続けることについて、本法案では何らかの手続があるでしょうか。御答弁お願いします。

○政府参考人(田村計君) 本法案におきます地域福利増進事業による使用権の設定につきましては、所有者不明土地について所有権を取得まではせずに使用することができることとするものであります。

本法案において、地域福利増進事業の使用権が設定された場合に所有権を取得する仕組みは設けてございません。

○山添拓君 ですから、そのまま、所有者不明土地のまま残り続けるということです。

今度の法案による利用権設定において、これ、長期間使用し続ける場合、補償金を供託する仕組みとなっておりますので、所有の意思が認められません。民法上の自主占有とはならず、したがって時効取得は認められないかと思います。

そうなりますと、事業者としては、実質的に占有を続けて時効取得を狙う方がむしろ得策だと、こう考えて、あえて利用権設定という手続を取らないということも想定されるかと思います。この点は吉原参考人も指摘をされていた点ですが、大臣、この点はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 御通告ではもう少し踏み込んだ御質問をいただいておりましたので、ちょっと答弁が。

地域福利増進事業の使用権につきましては、不明者が現れた際の権利行使に配慮をいたしまして、利用方法も暫定的なものとなることを想定をしているところでございます。

○山添拓君 踏み込んだ通告をという話がありましたけど、これ、そのまま将来的にも残り続けるということでよいのでしょうか。将来的には所有権そのものについて何らかの手当てが必要になってくるんではないでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 使用期間の延長により長期間の平穏な利用がなされることが考えられ、そのような不明者が現れる可能性が極めて低い場合におけます使用権の在り方につきましては、不明者の持分である所有権を取得できる方策を含めて、引き続き検討が必要と認識をしております。

民法による時効取得と類似する制度となる可能性もあるため、実際の制度運用の状況や法務省における土地所有権の在り方の議論と整合を取りながら検討することが必要と考えております。

○山添拓君 御答弁ありましたように、やはりその所有権の仕組みそのものをどう考えるかということが本来は根本的な問題として残されているということかと思います。

本法案で特に問題だと考えますのが、公共事業における収用手続の特例を認めて、所有者不明土地について事業認定後の収用委員会による裁決手続を省略するという点です。憲法二十九条が保障する財産権は、正当な補償の下で初めて公共のために用いることができるものです。公共事業のために土地を収用するというような最も直接的な財産権の剥奪の場合には、事業認定における公共目的の設定も、また収用裁決における補償の妥当性の担保も、いずれも重要な手続です。

そこで伺いますが、そもそも土地収用法上の権利取得裁決や明渡し裁決の手続において、収用委員会による公開審理が必要とされている趣旨は何でしょうか。

○政府参考人(由木文彦君) お答えいたします。

土地収用法第六十二条におきまして、収用委員会の審理は原則として公開しなければならないものと定められております。

原則公開としております趣旨は、公開の場で起業者や土地所有者等の双方の主張を尽くさせることにより、補償の対象の確定及びそれに対する補償金の確定等に当たりまして公正な審理を期することにあると考えております。

○山添拓君 権利者の保護を行うという観点から、補償の内容について意見があるような権利者が現れた場合には、その意見を聞く機会をきちんと与えて、そして補償額の算定などについて専門性を持っている収用委員会が慎重に判断を行うためかと思います。

現行の土地収用法にも、先ほど来お話ありますように、不明裁決という制度があります。登記の調査、登記名義人への照会、戸籍や住民票の調査などによって起業者が努力をしても所有者を知ることができない場合には、所有者等を空欄にして裁決申請を行うことができます。

資料をお配りしておりますが、二〇一六年度の実績によれば、所有者不明土地について不明裁決の対象とした件数は三十六件、不明裁決全体の約六二%で収用裁決全体の二三%と、一定の利用があるようです。

不明裁決の申請を受けた収用委員会は、その土地が本当に所有者不明かどうかについて、どのような調査を行うんでしょうか。

○政府参考人(由木文彦君) お答えいたします。

不明裁決の裁決申請に当たりまして、起業者が土地所有者等の氏名や住所を過失なくして知り得なかった場合、その場合には、起業者がどのような調査を行ったのか、委員から御紹介ございましたように、戸籍簿や住民票の確認や関係者への照会等、どのような調査を行ったのかということを疎明をする書類を添付する必要がございます。収用委員会は、この提出をされた書類等に基づきまして、その起業者の調査が十分であるか否かの確認を行います。この調査が十分であるというふうに判断をいたしました場合には、収用委員会が不明裁決を行うということになります。

また、裁決申請書は、この添付書類も含めまして二週間公衆の縦覧に供されて、その間に土地所有者等は意見書を提出することができることとされております。そうした意見書が提出された場合や、あるいは土地所有者等が審理における主張等があった場合には、更なる調査によりまして真の権利者を確知できる可能性があるというふうに収用委員会が判断した場合などについては、収用委員会は自ら調査を行うということとなっているところでございます。

なお、こうした取扱いにつきましては、平成二十六年五月にガイドラインを発出をいたしまして周知を図っているところでございます。

○山添拓君 最終的には、第三者的な立場で収用委員会が自らの責任で確認を行うということでした。

所有者不明土地について本法案による土地収用法の特例を用いる場合、起業者が都道府県知事に提出する裁定申請書に、特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情を記載することとされております。

都道府県知事はその土地が所有者不明土地に該当しないと認めるときは申請を却下しなければならないわけですが、では、都道府県知事は所有者不明土地に当たるかどうかについてどのような探索、調査を行うのでしょうか。

○政府参考人(田村計君) お答えします。

土地収用法の特例による裁定の申請があった場合、都道府県知事は申請の対象となる所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情、すなわち所有者不明土地と認められるために行うべき探索が適切に行われたかどうかにつきまして確認をすることとしております。

具体的な事業者が行うべき所有者の探索方法につきましては、登記事項証明書の交付を請求すること、住民票、戸籍、固定資産課税台帳等の書類に記載された情報の提供を求めること、一定範囲の親族等に照会をすること等を定めることを想定をしております。

これらの探索が行われたかどうかにつきまして、都道府県知事が裁定申請書により確認をすることになります。

○山添拓君 つまり、先ほどの収用委員会による手続と違いまして、所有者不明土地に当たるかどうかは基本的には起業者が判断をして、都道府県知事は自らの責任で確認をするわけではありません。そもそも、都道府県知事は、収用委員会と違って第三者的な立場でもありません。自ら起業者として申請することもある立場です。このことは嶋津参考人からも指摘があったとおりです。ですから、探索すれば判明するのに、所有者不明だとして収用裁決を省略してしまうということもこれはあり得るということです。

不動産登記法の特例について伺います。

本法案によれば、登記官は、三十年以上相続登記等がされていない土地について職権でその旨を所有権の登記に付記することができるとされ、これは、その土地を使いたいと考える起業者の側からの求めによって行うこととされております。

この付記がされた土地というのは、本法案の二条一項に言う所有者不明土地に該当するのでしょうか。

○政府参考人(筒井健夫君) お答えいたします。

ただいま御指摘がありました本法案の二条一項に規定する所有者不明土地とは、相当な努力が払われたと認められる方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができないものでございます。そして、相当な努力が払われたと認められる方法とは、登記事項証明書の交付の請求をすること、そして住民票、戸籍、固定資産課税台帳等の書類に記載された情報の提供を求めること、さらに、一定範囲の親族等に照会すること等が想定されております。

そして、本法案の第四十条第一項の規定に基づき登記官が職権で所有権の登記に付記することができますのは、第二条第四項に規定されている特定登記未了土地に該当し、かつ、その土地の所有権の登記名義人の死亡後十年以上三十年以内において政令で定める期間を超えて相続登記等がされていないと認められる場合でございます。

また、登記官が行う所有権の登記名義人となり得る者の探索につきましては、相当な努力が払われたと認められる方法によるという要件は付されておりません。

このように、本法案四十条第一項に基づき特定登記未了土地について登記官が付記をする要件と第二条第一項の所有者不明土地の要件が異なっておりますため、登記官が付記をしたことをもってその土地が第二条第一項の所有者不明土地に該当するか否かを直ちに決することはできないと考えております。

○山添拓君 すなわち、所有者不明土地に当たるだろうということで起業者が申請をしても、そして登記官が職権によって四十条に基づく付記をしても、直ちに所有者不明土地だと扱うわけにはいかないと。やはり所有者不明土地に当たるかどうかの第一義的な判断、調査をし判断する責任は起業者の側に引き続きあるということでありました。

嶋津参考人からもお話がありましたように、事業認定の制度が形骸化をする下で、反対意見を無視して不要不急の開発を進め、自然や住民生活に多大な影響を与える公共事業が強行されているという現実があります。

例えば、東京外環道を御紹介したいと思いますが、地下を工事するために区分地上権を取得する必要のある部分について、最新の用地進捗率と残件数を示されたいと思います。また、買収や区分地上権の取得がまだの土地の中にいわゆる所有者不明土地はあるんでしょうか。

○政府参考人(石川雄一君) お答えいたします。

委員お尋ねの外環、関越から東名間の事業におけます区分地上権取得部につきまして、平成三十年二月末時点における用地取得率は面積ベースで七五%、用地残件は三百六十六件でございます。

また、当事業の用地買収及び区分地上権における所有者不明土地につきましては、現在、事業用地に関する用地測量、用地交渉を行っている段階でありますため、現時点において全体の件数は明らかではございません。

なお、用地買収及び区分地上権につきまして、これまでの土地収用法による裁決申請の際に、その時点で所有者の住所や所有者が不明として裁決申請を行った事案が二件ございます。

○山添拓君 資料の二ページ目、三ページ目にございますが、関東地方整備局、東京都、NEXCO東日本、中日本、四者の連絡調整会議では、これ厳しい状況だと表現をしまして、談合疑惑が払拭されなかった地中拡幅部の工事の発注が遅れていることもあり、少なくとも二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通は困難だとしています。進んでいないのは反対する住民がいるからなんですね。

青梅街道インターでは、面積ベースで買収できたのが二四%、区分地上権では三%にすぎません。ここは元々地下トンネルでインターなしとする計画だったにもかかわらず、途中で手のひらを返されまして、しかも、杉並側は造らずに練馬側だけは造ると、ハーフインターにするという、住民の反対も押し切って造ろうとされている場所です。

この中で、仮に所有者不明土地がある場合、先ほども既に二件これまでにあったということですが、本法案に基づいてその土地だけを先行して都道府県知事の裁定によって収用していくということは可能でしょうか。

○政府参考人(田村計君) お答えします。

既に土地収用法による裁決の申請がなされている土地につきましては、本法案による土地収用法の特例による裁定申請を行うことはできないこととされています。このため、外環事業の未取得の土地のうち、既に土地収用法上の不明裁決の申請がなされたものについては、本法案における土地収用法の特例の対象とはなりません。

なお、外環事業の未取得の土地のうち、特定所有者不明土地に該当し、当該土地の取得について反対する権利者がいない等の要件を満たす土地がある場合には、当該土地は本法案の土地収用法の特例の対象になり得ます。

○山添拓君 嶋津参考人も指摘をされたように、外堀を埋めると。所有者不明土地があれば、その部分だけまず先行して収用していくということが可能だということであります。

公共事業に反対する人たちにとっては周辺の用地買収がどのように進むかというのが重大な関心事でありますが、所有者不明土地が一筆でもあれば、収用をスピードアップさせて、そこを突破口にして、反対する地権者を追い込むという手段にもなりかねないものだと思います。

関連をして、残りの時間で、公共事業のための財産権制限について、住民の意思を無視し、むしろ、初めから住民の意思を考慮しないという手法が増えている問題を質問したいと思います。

外環道でも用いられているのが大深度地下であります。地下四十メートル以下の大深度であっても土地の所有権は及びますが、大深度地下法、大深度地下使用法によって認可されますと、地権者等の同意なしに使用権を設定できます。財産権を制約するにもかかわらず同意も補償も不要とする仕組みが憲法二十九条に違反するとして、裁判も提起をされています。

大深度地下というのは通常使用されない空間であるために通常は補償すべき損失がないと言われるのですが、大深度地下法では、一方で、例外的に補償の必要性がある場合には認可の告示から一年以内に限り補償を請求できるとしています。こういう仕組みである以上は、少なくとも大深度地下の使用権を設定されることになる地上の地権者には認可申請がされているという事実を伝えるべきだと考えます。この点をまず伺いたいと思います。

そして、あわせて、今リニア中央新幹線の工事を進めるJR東海が、三月二十日に大深度地下の使用の認可申請を行っております。五月九日に申請書を公告し、十日から二十三日まで縦覧をして、ホームページに大量の申請書類をアップして、首都圏では沿線で一回ずつ説明会が行われています。

私も五月十一日に大田区で開かれた説明会に行ってきたんですが、あの大きい会場で、参加者はせいぜいその会場の収容人数の三割ぐらいで、百数十人の参加でありました。参加者の中からも地権者に周知をすべきだという意見がありました。自宅の下をリニアが通るかもしれないのに知らされていないという方が余りにも多かったわけです。そもそも、JR東海は、大深度地下の認可申請を行った現時点でルート上に何人の地権者がいるかも把握していないとされていました。

全ての地権者に個別に知らせて説明を行うよう指導するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(栗田卓也君) 大深度地下は、土地所有者等による通常の利用が行われない空間であり、公共的事業のために使用しても通常補償すべき損失が発生するとは想定されないという特性があります。大深度地下使用制度は、このような大深度地下の特性を踏まえまして、土地収用法のように土地所有権等の取得に当たって事前補償の原則を取らず、簡素な手続で使用権の設定を認めるものです。

しかしながら、大深度法では、国民の権利の観点から、認可権者は、必要があると認めるときは、事業者に対して事業区域に係る土地及び付近地の住民に説明会の開催など認可申請書の内容を周知させるために必要な措置を講ずることを求めることができるというふうにされております。

国土交通省といたしましては、大深度地下を使用する事業につきまして、大深度法の趣旨にのっとって、地権者などの関係者に対し事業者による申請内容の周知が図られることが重要と考えております。

リニア新幹線についてのお尋ねもございました。

このような法律上の考え方を踏まえまして、リニア中央新幹線の使用認可申請の受理に際しまして、認可申請書の内容を地権者などに周知させるため、事業者であるJR東海に対しまして説明会開催など必要な措置を講ずるよう本年四月二十四日付けで文書で要請したところでございます。事業者においては、説明会の開催に当たって、開催日時や場所について事業区域を含む地域の市区の広報誌への掲載、自治会回覧による周知などを行ったとの報告を受けております。

他方、委員今御指摘がございましたが、事業者が開催した説明会において、リニア中央新幹線の事業区域を知らない地権者等がおられるといった意見もあったと聞いております。このことを踏まえまして、事業者に対し、事業区域の地権者等へ改めて事業区域を周知するよう要請をいたしました。事業者からは、事業区域に係る地権者等に対しまして、事業区域を示す図面を添付した上で、説明会資料等を事業者のホームページや事務所で公開、閲覧していること等について個別配付、郵送などにより周知を図ったと報告を受けているところでございます。

○山添拓君 少なくとも財産権の影響が及ぶ地権者などには個別に説明、家屋調査などを徹底されたいということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

関連記事