山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2019年・第198通常国会

奄美・小笠原振興特措法案について質問

要約
  • 国交委員会で奄美・小笠原振興特措法案について質問。これまで提案と撤回が繰り返されてきた小笠原の空港建設について質し、交通アクセスの充実はライフラインとして重要であることを指摘した上で、世界自然遺産登録されている小笠原の自然の価値を守るためには、慎重な対応をと求めました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本法案は、奄美群島及び小笠原諸島の特殊事情を踏まえた振興策を継続するためのものであり、我が党も賛成です。
小笠原特措法について質問をいたします。
二〇一四年の法改正で目的規定に定住の促進が追加されました。資料の一ページに小笠原村の人口を示しておりますが、一四年度末二千四百七十四人から一七年度末には二千五百八十五人へと、確かに増えております。ただし、中長期的に見れば、日本復帰の一九六八年以降九五年度まで大幅に増加をし、その後は微増傾向にとどまっているのが現状です。
二〇一五年の国勢調査では、総人口に占める転入数の割合が一一・七%、これは離島の平均三・二%より高いのですが、その一方で転出数の割合も一三・二%、これは離島の平均三・九%ですから、それより高くなっております。
大臣に伺いますが、定住の促進という目的、それとの関係ではまだまだ遠いというのが現状ではないかと思いますが、御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 小笠原諸島におきましては、昭和四十三年の本土復帰以来、特別措置法の下、インフラの整備等諸施策が実施をされ、一定の成果を上げてきたところであります。
人口に関しては、全体として僅かながら増加をしておりますが、一方、御指摘の転出入の割合が高い点に関しましては、公務員の比率が三割程度と大変高く、その異動等があることも一因と考えられ、このことは小笠原諸島における人口ピラミッドにおいて若い世代の比率が高くなっていることにも関連していると考えられるところであります。
今後、更にIターンを増やし、その方々の定住を促進するためには、これまでの基盤整備の効果を生かしつつ、自然環境や戦跡等の地域資源を生かした観光振興により雇用の場を確保するとともに、島に住み続けられるよう医療や教育等の環境整備にも力を入れる必要があると考えているところでございます。
○山添拓君 確かに公務員の数が、全体の就業者の二三%が公務員だということで、それが一番多いという現状はあるのだと思います。高齢化率が全国の半分以下、若い世代の流入がありますが、その背景には高齢者にとって住み続けるのが困難な実態もあるのだと思います。この点は、また後ほど触れたいと思います。
一九四四年の強制疎開から、戦後、アメリカによる占領が終わるまで二十四年間、ほとんどの旧島民が帰島できず、当時六千四百人余りだった旧島民のうち、返還後に帰島し、今も住み続けているのは四百人弱にとどまるのだとされます。
資料の二ページに付けました。政府は、昨年の四月、旧島民の帰島に関する意向調査を行っています。帰島の意向があると答えた人は合計で一四・六%、今のところ決めていないが三二・三%、帰りたいとは思わないが四八・二%でした。定住の促進を図るのであれば、旧島民やその家族で帰島できていない方への支援が重要な柱になると思います。
しかし、その実態はどうかと。来年度の地方税制改正には、小笠原諸島への帰島に伴う課税の特例措置の延長が含まれております。旧島民が帰島をする際に本土で手放す不動産の譲渡所得税や小笠原での不動産取得税の負担を軽減するものです。
まず、その特例ですね、実績どうなっているか、その点だけ伺えますか。
○政府参考人(麦島健志君) お答えを申し上げます。
帰島促進税制の実績でございますが、譲渡所得の特別控除に関しましては昭和五十年以降、また不動産取得税の課税の特例につきましては昭和五十四年以降、実績がないという状況でございます。
○山添拓君 四十年以上実績なしなんですね。
それはなぜだと認識をされているでしょうか。そしてまた、それで実績がないということであれば、国として支援の在り方を別途検討する必要もあるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(麦島健志君) お答えを申し上げます。
適用実績がない理由といたしましては、島での医療に対する不安が大きく帰島をしていないことや、帰島したとしても、今後の生活を考慮し、不動産をそのまま本土に残しているということ等であるというふうに認識をしてございます。
その上で、国土交通省が実施しております、先ほど御紹介がございました小笠原諸島旧島民意向調査によりますと、本土の旧島民等のうち一四・六%の方々に帰島の意向がある一方で、帰島の阻害要因としては、病気や出産など緊急時の対応や交通アクセスに関することなどが挙げられているというところでございます。
このようなことから、今回、法の延長を御議論を賜っておりますが、法を延長し、帰島を希望する旧島民等の受入れに対応していくための環境整備等を講じていきますとともに、帰島促進税制を延長することで実際の帰島を後押しをしていきたいというふうに考えているところでございます。
○山添拓君 帰島の意向がある方の中でも、条件が整えば帰りたい、あるいはいずれは帰りたいという方が多数を占めておりますので、旧島民の意向も改めてよくつかんでいただきたいと思います。
住宅事情が深刻だと伺います。国立公園が全体の面積の八割を占めるという特殊さもありまして、住むことができる土地が限られています。地価や賃貸物件が高く、ワンルームアパートの家賃が月六万円程度だと。新しいアパートが計画されると予約が殺到するといいます。旧島民の帰島の阻害要因として最も多かったのも、土地や家がなく居住環境の確保が困難、こういう声でありました。
都営の小笠原住宅は、父島に二百九十七戸、母島に九十六戸、全世帯の約三割が居住しておりますが、老朽化に伴う建て替えを機に村営に移行する準備が進められております。これ帰島政策の一環として現在は家賃が低廉に抑えられておりますが、使用料の値上げなども懸念をされています。
賃貸住宅の家賃など、住宅確保が困難な現状を国交省として把握をされているでしょうか。また、定住の促進を図る上で、この点でも国としての適切な支援が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(麦島健志君) お答えをいたします。
御指摘のように、小笠原諸島におきます住宅の確保は、今後の帰島やIターン等による定住の促進を図る上で大きな課題であるというふうに認識をしてございます。
先ほども御紹介申し上げましたが、旧島民等を対象といたしました帰島意向等に関するアンケート調査におきましても、居住環境の確保が困難であるということが帰島を阻害する要因として挙げられているという状況でございます。
小笠原諸島では、社会資本整備総合交付金を活用した公営住宅の整備が検討をされているところでございますが、昨年八月の小笠原諸島振興開発審議会の意見具申におきましても、小笠原村において村全体の住宅政策を検討するほか、小笠原村と東京都は関係機関の連携の下、定住者の住宅確保に向けた取組を推進すべきと指摘をされているところでございます。
これらを踏まえまして、国土交通省としても、定住促進に向けた住宅確保の在り方について東京都と小笠原村と連携しながら検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○山添拓君 高齢者向け住宅の建設などを含めて、是非、国としても積極的な対応を検討いただきたいと思います。
定住する上で最も大きな課題が医療です。先ほど来出ておりますが、交通アクセスの困難さに加えて麻酔医がおりません。そのために手術ができず、急患の場合には海上自衛隊の救難飛行艇を使い、夜間はヘリで一旦硫黄島に搬送した上で都心に向かうと。このために、病院にたどり着くまで平均でも九時間半以上掛かるということでありました。資料の三ページにございますが、年間三十人前後が搬送されておりますが、二〇一七年度には搬送途中に亡くなる方もいたと伺います。
私、質問を準備するに当たりまして、小笠原に赴任経験のある東京都の職員の方に話を伺いました。本土ならすぐに治療できるような骨折だったのですが、いわゆる開放骨折ではなかった、骨が皮膚の外に露出するような骨折ではなかったと。そういうけがでなければ緊急搬送の対象にはならないということのようで、この方は痛みに耐えて二十四時間、船で東京まで我慢して来たということでした。そういうこともあり得るということで、赴任するに当たっては、もし何かあったら無事には帰れないかもしれないと、こういう覚悟を決めて行かれたともおっしゃっておりました。こういう地域はほかにないと思います。
今、先ほどの答弁の中では、必要な医療提供体制を確保しているというお話も厚労省からありましたが、十分とは言い難いと考えます。厚労省に伺いますが、村内の医療体制を充実させるために更なる支援が必要ではないでしょうか。
○政府参考人(迫井正深君) 御答弁申し上げます。
委員御指摘のとおり、小笠原諸島における医療提供体制につきましても、地域の実情を踏まえまして、東京都保健医療計画及び小笠原諸島振興開発計画に基づきまして、父島及び母島における診療所の設置でございますとか当該診療所に対する医師派遣などによりまして、医療提供体制を確保しているものというふうに承知をいたしております。
国におきましては、引き続き、診療所運営費の支援でございますとか医療機器購入費の支援等を行っているところでございますけれども、さらに、都道府県における実効的な医師確保対策をより一層進めるために、昨年の通常国会で成立をいたしました医療法及び医師法の一部を改正する法律に基づきまして各都道府県が医師確保計画の策定を行うこととしておりまして、当該計画に基づく医師確保対策の実施体制の強化を図ったところでございます。
国といたしましては、このような取組を通じまして、医師の地域偏在の更なる是正を図れるように各都道府県に対して必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 小笠原は産めなくて安心して死ねない島と、こう表現する方もおられるほどです。これまでの延長ではない支援が求められているということを指摘をさせていただきたいと思います。
次に、この間、航空路の開設が改めて具体的に検討されております。資料四ページ、御覧ください。
空港建設については、九五年の兄島案、九八年の時雨山案、二〇〇一年の洲崎地区活用案、硫黄島活用案、水上航空機案、聟島案など、提案と撤回が繰り返されてきました。その最大の原因は何でしょうか。
○政府参考人(麦島健志君) お答えを申し上げます。
先生御指摘のように、小笠原の航空路につきましては、これまで東京都が兄島や父島の時雨山に空港を置くことを前提に環境への影響を議論してきた中で、都と村によります平成二十一年の第四回小笠原航空路協議会以降、洲崎地区活用案、硫黄島活用案及び水上航空機案の三案が検討されたというのが過去の経緯であると承知をしてございますが、いずれにいたしましても、最初に申し上げました兄島とか時雨山に空港を置くことを前提にしたときの議論は、環境への影響という議論が大きかったというふうに認識をしてございます。
○山添拓君 自然環境への配慮とともに、十分な情報開示と開かれた議論を重ねて住民の意思を尊重するということが不可欠だと考えます。本土と小笠原との交通アクセスの充実が安心して暮らせるためのライフラインとして重要ですけれども、こうした点がやはり不可欠であろうと思います。
その点で、小笠原諸島は二〇一一年に世界自然遺産に登録をされました。世界遺産というのは、十ある登録基準の一つ以上を満たし、かつ完全性の要件を満たし、締約国の国内法で適切な保護管理体制が取られていることが必要です。保存が危うい状況だと判断されれば危機遺産リストに登録をされ、場合によっては登録を抹消されます。小笠原は、大陸と一度も陸続きになったことがなく、独特の進化を遂げた豊かな固有種の存在、その生物進化の過程、生態系が評価をされ、自然遺産への登録を果たしています。
環境省に伺います。世界遺産への登録時に侵略的外来種対策の継続を要請され、現在でも外来種による脅威への対策がイタチごっこになり、大変な苦労だと伺っています。その実態と、環境省が具体的に取り組んでいる内容を御紹介ください。
同時に、そうした下で空港建設などの開発行為を行うに当たっては、自然遺産区域の内外を問わず、遺産としての価値を損なうことのないようにすることが求められていると思いますが、御認識を伺います。
○政府参考人(鳥居敏男君) お答えをいたします。
小笠原諸島においては、世界自然遺産としての価値を将来にわたって維持していくために、外来種の対策等を重点的に進めているところでございます。例えば、外来種であるグリーンアノール、トカゲの仲間でございますが、これについては、平成三十年に策定いたしましたロードマップに沿って、粘着トラップによる捕獲や長距離遮断柵の設置等による対策を実施しているところでございます。
環境省といたしましては、今後とも、各種開発や観光客の増加等に伴い世界自然遺産への外来種による更なる影響が生じないよう、関係自治体や関係機関と緊密に連携して対応してまいりたいというふうに考えております。
また、小笠原航空路につきましての御質問がございましたが、これにつきましては、まず東京都が検討されるものと考えておりますけれども、環境省といたしましては、世界自然遺産、国立公園という日本の宝というべき小笠原の自然環境を守るという観点で技術的な助言をしっかり行ってまいりたいというふうに思っております。
○山添拓君 一度外来種が入り込んだ地域は元に戻らないということで、もう本当に小笠原のありのままの姿が残されている地域はほとんどないと言われています。南硫黄島ぐらいだというふうに言っておられる研究者の方もおられます。今でもぎりぎりのところで自然遺産の価値が保たれている状況です。
日本では、開発行為が事業として決まった後に事業主体が自ら環境アセスを行っています。世界自然遺産を審査する国際自然保護連合、IUCNは、実施決定の前にアセスを実施をし、結果次第では開発行為をやめるという選択も検討すべきだと指摘をしています。
小笠原のような唯一無二の自然に向き合う際にはより一層の慎重さが求められるということを指摘をさせていただき、私の質問を終わります。
ありがとうございました。