山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2019年・第198通常国会

周防大島大橋への貨物船衝突事故の被害と対応について

要約
  • 国交委員会で、山口県周防大島と本州を結ぶ大橋への貨物船衝突事故の被害救済について質疑。町全体が40日間断水、民間事業者を含め甚大な被害。橋と送水管の復旧費だけで28億円に対し船主責任制限法による賠償額は24.5億円。限度額を超える分も含め国として被害救済の仕組みを検討するよう求めました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 本法案は、海難等で発生した燃料油による汚染や難破物除去の費用による損害について、被害者が保険会社に直接請求できるようにすることを中心とするものであります。国際条約の国内法化により、賠償が確実にされることを目的とするものであり、我が党も賛成をいたします。
 保険会社への直接請求が可能になることによって、被害者は因果関係のある損害全てについて賠償を受けることができるようになるんでしょうか。
○政府参考人(水嶋智君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、本法案におきましては、船舶から流出等した燃料油による汚染損害及び難破物の除去等の費用による損害について、船舶所有者にその賠償責任が発生した際、被害者が直接保険会社に対して損害賠償額の支払を請求することができることとしております。
 条約におきましては、被害者から直接請求を受けた保険会社が船舶所有者による保険契約違反を理由として被害者に対する支払を拒むことができないよう、保険会社の抗弁内容を制限しております。
 一方、直接請求によって、被害者があらゆる原因によって生じた損害に係る賠償を受けることができるわけではございません。
 具体的には、条約に基づきます今回の油賠法第三十九条などにおきまして保険会社が免責される場合が規定をされておりまして、例えば戦争や異常な天変地異等により損害が生じた場合には、保険会社は被害者に対し賠償を免責することができるとなっている次第でございます。
○山添拓君 必ずしも全額が賠償されるとは限らないということで、これはいろんなケースがあり得るかと思います。
 そこで、海難等による損害が全額賠償されない事態が生じ得るということが現に問題になっているケースについて御紹介をしたいと思います。
 昨年十月二十二日未明、山口県周防大島と本州を結ぶ大島大橋にドイツの海運会社が所有する大型貨物船が衝突をし、送水管が切断され、町内全域が四十日にわたって断水となり、交通規制も行われ、一万五千人余りの町民の日常生活が大混乱に陥りました。
 断水で食器を洗うために河原の洗い場まで何度も往復をしたとか、ミカン狩りのシーズンでしたが宿泊客のキャンセルが相次いだとか、道の駅や土産物屋で収入が八割も減ったと。あるいは、水運びが大変で、それが続いて、腰痛によってコルセットを付けたと、こういう健康への被害まで生じたと伺っております。
 海事局においてどのような被害を承知しておりますでしょうか。被害内容や被害額について御説明ください。
○政府参考人(水嶋智君) お答えを申し上げます。
 この事案でございますけれども、委員御指摘のとおり、二〇一八年十月にマルタ籍の貨物船、エルナ・オルデンドルフ号が山口県の周防大橋と本州を結ぶ大島大橋に接触をいたしまして、橋を通る水道管、光ファイバーケーブルを損傷させ、自治体や住民の皆様に損害が発生した事案であると承知をしております。
 今回の事故によって、大島大橋の通行規制が行われ、車、人、物の移動が大幅に制限されますとともに、町全域に及ぶ断水が四十日間にも及び、町民の皆様の日常生活に大きな影響が生じたと。これは、周防大島町議会からの意見書に記載されておりましたので、そういった内容を私どもとして承知している次第でございます。
 また、被害額について、当該意見書によりますと橋や送水管の復旧費が約二十八億円とされておりまして、さらに、町内の民間事業者が被られた被害、町民が受けられた被害を合わせますと、その総額は相当な規模に上るとこの意見書には記載されておると承知をしております。
○山添拓君 この橋の復旧工事、今ボルトの不足で遅れておりまして、現在も夜間の片側交互通行が続いているそうであります。
 橋桁までの高さが三十メートルの海域ですが、四十二メートルの船が通過しようとしてぶつかって事故が起きたと、こうしたケース自体かなり珍しいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(水嶋智君) 珍しいと思います。
○山添拓君 事故について、船会社は船主責任制限法に基づく賠償額の制限を裁判所に申し立てまして、今年二月、広島地裁は、上限額を二十四億五千万円と決定をいたしました。住民や事業者は六月十四日までに裁判所に手続への参加を届け出る必要がありまして、届け出た後は上限である二十四億五千万円余りの範囲の中で損害額に応じて案分をされていくということになるんだと、こう伺っております。今御紹介ありましたように、橋と送水管の復旧費用だけで二十八億円と言われており、断水で休業したホテルやお店あるいは個人が賠償を求めますと、更に足りなくなることが懸念をされております。
 法務省に伺います。船主責任制限法三条において船主の責任を一定限度に制限している趣旨は何でしょうか。また、この責任制限には例外や制限が及ばない損害というものがあるんでしょうか。
○政府参考人(筒井健夫君) お答えいたします。
 船主責任制限法は、船舶の運航等に直接関連して生ずる人的損害や物的損害に基づく債権などにつきまして、船舶所有者などの責任を制限することができることを定めております。この法律の趣旨は、海運業が多額の資本の投下を必要とし、かつ船舶の運航という危険性の高い産業であることに鑑み、海難事故が起きた際に船舶所有者等の責任を制限することにより海運業の適正な運営と発展を図るという点にございます。また、このような船主責任制限制度は古くから各国において採用されてきたものでありまして、海運業は国際的な性格が強いことから、我が国のみがこの制度を採用しないことは実際上困難であるという面もございます。
 もっとも、船主責任制限法は責任制限の例外を設けておりまして、例えば故意によって生じた損害に関する債権でありますとか、損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為によって生じた損害に関する債権につきましてはその船舶所有者等の責任を制限することができないこととしております。
 また、船主責任制限法は、人的損害及び物的損害に関する債権のいずれについても責任を制限することができることとしておりますが、物的損害に関する債権のみについて責任を制限することもでき、この場合にはその責任の制限は人的損害に関する債権には及ばないことになります。
○山添拓君 県は、地裁の決定を不服として即時抗告をしております。無謀な行為ではないのかと、こういう問題も問われているんだと思います。
 人の損害、身体的な損害も甚大で、町によりますと、昨年の十二月までに三つの町立病院を七十四人が受診し、十五人が入院をされていると。骨折二十四件、関節痛五十件だったといいます。
 広島地裁からの通知文書によりますと、本件では物の損害に関する債権のみを対象として、人の生命、身体の損害に基づく債権は別だとされているといいます。これは、医療費や慰謝料というのは限度額の範囲とは別に認められる可能性もあるということになるんでしょうか。
○政府参考人(筒井健夫君) そのように理解しております。
○山添拓君 そういうことで、本件について責任制限が確定したというわけではありませんけれども、船主責任制限法によって船主の損害賠償責任が制限される、これは国際的な問題もあり背景としては理解をいたしますが、その一方で、これを超える損害が生じ得る、この場合に上限額を超える損害についての救済を国交省としてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(水嶋智君) お答え申し上げます。
 先ほど来法務省の方で御答弁をいただいておりますとおり、船舶が原因となって生じた損害に対する船舶所有者の責任につきましては、船舶の総トン数に応じて一定の責任限度額まで制限することができる船主責任制度というものがございます。この法律に基づきまして、船舶所有者等が責任制限を裁判所に申し立て、裁判所が責任制限を相当と認める場合には被害者が受けた損害全額の賠償を得られないこともあるとも承知をしておるところでございます。
 しかしながら、本件のような船舶事故が発生した際の損害賠償請求につきましては、民事上の問題として被害者と加害者の間の当事者間で行われるということでございますので、即座に国による直接的な支援などは難しいと考えておるところでございます。
○山添拓君 国による救済は難しいということで先におっしゃっているんですけれども、先ほども御紹介のあった周防大島町議会の意見書、二〇一八年十二月十七日付けで、大島大橋損傷事故によって発生した被害・損失に係る損害賠償請求及び被害者の救済支援に関する意見書を決議して、衆参議長、内閣総理大臣、国交大臣などに提出をされております。ここでは、仮に船主責任制限法が適用され賠償額に制約が掛かった場合には、責任限度額を超える被害や損害に対して国による財政的な支援措置を検討するよう配慮することや、今後こうした事態が生じた場合の国内での救援法の整備など、被害者が不当な負担を強いられることのないような措置を求めております。
 これは大臣に伺いますが、国としてどのようにお応えになりますか。
○国務大臣(石井啓一君) 意見書の中では、本事故により町民の方々の日常生活に大きな被害を及ぼすとともに町の観光業、農業、漁業、商工業に対し経済的な悪影響を与えたとされております。
 本件に関する損害賠償につきましては、海事局長の答弁で述べましたように、民事上の問題といたしまして被害者と加害者の当事者間で議論が行われるべき問題であり、国による直接的な支援等は難しいと考えております。まずは、加害者側が被害者に対し誠意ある対応をすることが重要と考えております。
 また、損害賠償に関しましては、現在、裁判所において船主責任制限に関する手続が進捗していると承知をしておりまして、いずれにいたしましても、今後とも、必要な情報の提供など、可能な限り被害者へのサポートを行ってまいりたいと考えております。
○山添拓君 加害者が責任を負う、これは当然なんですね。しかし、それが法律によって制限される可能性がある、そういうケースでその救済をどうするのかが問われていると思います。
 高齢化が進む中で、水を運ぶというのは本当に重労働です。給水場所も限られていたということで、地域では助け合いが広がったと伺います。町の職員や消防団や、あるいは民生委員の皆さんやボランティア、近隣の自治体からの支援で何とか困難を乗り越えてきたのだと伺いました。何の責任も住民にとってはない、それなのに加害者から謝罪もない、割り切れない気持ちだと、このまま泣き寝入りはしたくない、こういう思いが多くの町民の皆さんに共通してあり、誠意ある謝罪と賠償を求めて諦めずに請求しようと立ち上がっている方々がおられます。それでも法律で賠償が制限されることがあり得るのだと、こういう問題であります。
 この事故は船による衝突に起因しておりますけれども、この法案に戻りまして、座礁などによって燃料油が排出された場合には補助金の制度があると伺っております。地方自治体が油の防除作業を行う費用についてその二分の一を国が補助するというものです。その補助要件は、油防除作業の費用を船舶所有者から徴収するのが困難であると大臣が認めるときとされております。
 この困難なとき、ここには作業費用が船主責任制限法による限度額を超えるような場合も含まれているんでしょうか。
○政府参考人(水嶋智君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、外国船舶油等防除対策費補助金という補助金がございます。この補助金は、外国船舶の座礁等により燃料油が排出された際、外国船舶の所有者が地方自治体に対し汚染損害等の賠償を行わなかった場合に、油防除費用の二分の一までを予算の範囲内で補助するものでございます。この場合、船主責任法による限度額を超えるか否かにかかわらず、防除作業に要した費用は全て補助の対象となるということでございます。
 なお、二〇〇八年の三月に明石海峡航路におきまして多重衝突事故が発生し、ゴールドリーダー号という船が沈没をいたしまして燃料油の流出による被害が発生した事案がございましたが、その際には約七億円がこの補助金から支払われたということでございます。
○山添拓君 御紹介いただきました油による汚染損害については、限度額を超えるか否かによらず使える補助金があるということです。これ総務省によりますと、残りの二分の一の自治体負担分については、地方交付税交付金が使えるということでもありました。
 周防大島のような衝突事故による被害の拡大というのはまれなケースであると思いますが、甚大な被害がある一方で、国際ルールのために被害の救済が徹底されない可能性もあるのだと、こういうケースについては、燃料油の場合も参考に被害救済の仕組みを検討いただきたいと、このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。