山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2020年・第201通常国会

参議院本会議で、新型インフルエンザ特措法改正案について反対討論

要約
  • 参議院本会議で、新型インフルエンザ特措法改正案について反対討論。 本法案の緊急事態宣言の発動で、憲法が保障する移動の自由、経済活動の自由、集会の自由や表現の自由などの基本的人権が制約され、市民生活と経済活動に広範な萎縮効果が及ぶことは明らか、容認できない。

○山添拓君 日本共産党を代表し、新型インフルエンザ特措法改定案に反対の討論を行います。
 討論に先立ち、森法務大臣の検察官を侮辱する暴言に断固抗議するものであります。
 森大臣は、本院予算委員会で、検察官の勤務延長を可能とする法解釈の変更について問われ、東日本大震災のとき、検察官はいわき市から最初に逃げた、身柄拘束をしている十数人を理由なく釈放したなどと述べました。事実に反するばかりか、解釈変更の説明にもなっていません。
 謝罪と撤回では済まされません。大臣の資格が問われています。
 従来の検察庁法の解釈を百八十度変え、検察官の勤務延長を可能とし、安倍首相に近いとされる黒川氏の勤務延長を認めた人事が、大臣の誤った認識や個人的な見解を前提になされたとすれば大問題です。黒川氏の勤務延長を直ちに撤回するよう、強く求めるものです。
 新型コロナウイルス感染症が国内外で拡大し、多くの人が不安を感じています。今、急いで求められるのは、明日の暮らしに希望が持てる展望を示すことです。
 日本共産党は昨日、三つの柱で緊急経済提言を発表しました。新型コロナの影響から緊急に国民生活を防衛する。外需頼みがいよいよ行き詰まる下で、内需、家計、中小企業支援に力を集中する。今年度予備費の枠内ではなく、来年度予算の抜本修正によって財源を確保する。感染拡大を防ぎ、検査体制と医療体制を一層充実させるとともに、暮らしと経済を守る政治責任を果たすことこそが緊急の課題であることを重ねて強調します。
 ところが、政府は、本法案を通すことを最優先にし、新型コロナウイルス感染症を二年間、特措法の対象にしようとしています。以下、反対理由を述べます。
 特措法の最大の問題は、緊急事態宣言の下で行政に権力を集中させ、広範な権利制限が可能となることです。
 外出自粛の要請が可能とされます。学校や保育所、介護老人保健施設、映画館や劇場、集会場や公会堂、展示場、百貨店、体育館やプール、博物館、図書館、ダンスホール、さらには理髪店や学習塾など、多くの人が利用する施設の使用の制限、停止を要請し、指示できるとされます。医薬品や食料品の所有者に売渡しを要請し、あるいは収用し、運送事業者には緊急物資の輸送を要請、指示し、医療施設建設のために土地や建物を同意なく使用できるとされます。
 こうした多岐にわたる措置は、憲法が保障する移動の自由、経済活動の自由、集会の自由や表現の自由などの基本的人権を制約し、暮らしと経済に重大な影響を及ぼします。
 緊急事態を理由に国家の都合が優先され、個人の権利が軽んじられてしまうことは、我が国を含めた歴史が示しています。危機を理由に権利の制約が過度に、安易に許されることのないよう、慎重の上にも慎重を期すことは、立法府に課せられた重大な役割です。
 確かに、特措法には、自由と権利の制限は必要最小限度のものでなければならないとの規定があります。しかし、その保証はありません。
 二〇一二年、特措法制定時の本院の附帯決議で、法施行後三年をめどに権利救済の制度を検討するという文言が盛り込まれました。ところが、今日に至るまで、その検討は一切行われていません。様々な措置により市民に生じる経済的な損失について、補償する仕組みもありません。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現在既に、営業活動やイベントなどの自主的な中止や縮小が相次いでいます。この上、幅広い人権制限が発動されれば、たとえ強制力のない措置であっても、市民生活と経済活動に広範な萎縮効果が及ぶことは明らかです。
 特措法は、自由と権利の重大な制約を可能とするにもかかわらず、法律上の歯止めが極めて曖昧だと言わなければなりません。
 都道府県知事にこうした強力な権限を持たせるのが、内閣総理大臣による緊急事態宣言です。ところが、その発動要件は、法律上不明確です。具体的な要件は政令に大幅に委任されていますが、施行令の規定も曖昧です。
 重篤な症例の発生頻度が季節性インフルエンザと比べて相当程度高いと認められること、全国的かつ急速な蔓延の二つの要件が挙げられます。しかし、重篤とは何か、相当程度高いとはどの程度か、蔓延とは何か、これらを誰がいかなる根拠に基づき判断するのか、何ら定めがありません。
 科学的な根拠について専門家の意見を踏まえる仕組みすらない下で、西村大臣は、定量的に何か基準を示すのは難しいなどと開き直っています。幅広い私権制限が、専ら政治的判断の下に行われることとなりかねません。
 しかも、緊急事態宣言の発動や解除に際し、国会の承認は求められていません。緊急事態宣言の期限は二年で、更に一年の延長も可能ですが、延長の際にも国会承認は不要です。内閣総理大臣は国会への報告を行いさえすればよく、法律上は事後的な報告でも足ります。私権の制限を、一時的かつ一部とはいえ行政権に集中させるにもかかわらず、国会の事前承認すら求めないことは極めて重大です。
 さらに、緊急事態宣言の下では、指定公共機関であるNHKに対し、内閣総理大臣が必要な指示をすることができるとされ、その内容や範囲に限定はありません。西村大臣は民放テレビ局の指定は考えていないと答弁しましたが、法文上の担保はなく、衆議院で宮下一郎副大臣は、放送内容について変更、差し替えをしてもらうことはあり得るとまで述べています。
 これでは、政府にとって都合の悪い事実は報道させないことも可能となり、国民の知る権利を脅かしかねません。本来求められているのは、一人一人の市民が要請や指示に従うべきか冷静に判断できるだけの、必要かつ十分な情報開示ではないでしょうか。
 以上のとおり、特措法は、自由と権利を幅広く制約し、民主主義の機能を停止させかねないものであるにもかかわらず、曖昧、不明確な要件で権力の集中を可能とするものです。
 ところが、本法案は、衆議院で三時間、本院でも参考人質疑を含め四時間二十分の質疑時間で委員会採決に至っており、十分な審議すら行われていません。政府は本日の質疑でも、現状は緊急事態宣言を発する状況ではないとしています。急いで審議、採決する必要はありません。同志社大学の川本哲郎参考人が述べたように、曖昧な要件についてもっと詰めた議論を丁寧に行うことは、法案への賛否を超えて、最低限必要なのではありませんか。
 新型コロナウイルスの対策をめぐっては、小中高校などの一律の休校要請、中国、韓国からの入国制限の強化など、安倍首相の独断専行が国内に大混乱をもたらしています。
 しかし、本院予算委員会で、政府の専門家会議副座長である尾身茂公述人は、コロナの場合は学校閉鎖が効果があるというエビデンスはないと述べており、一律休校要請に科学的な根拠はなく、総理は政治的判断であることを公言しています。
 加えて、憲法改定に前のめりの安倍首相の下で、自民党議員から、新型コロナは改憲の実験台、緊急事態条項を改憲項目にとの発言が公然となされていることも見過ごすわけにはいきません。
 こうした安倍政権に本法案で緊急事態宣言の発動を可能とすることは容認できないことを強調し、討論を終わります。(拍手)