山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2020年・第204通常国会

コロナ対応の特別措置法改正案について、参考人質疑を行いました。

要約
  • 感染拡大防止には、罰則による威嚇でなく、『十分な補償』が最も効果的ではないかと質問。 米村参考人は「非常に共感する。こうした措置が感染症対策として有効かを精査することなしに法案が出てきたのではないか」と述べました。

○参考人(脇田隆字君) 国立感染症研究所の脇田と申します。
 今日は、このような機会をいただきまして、大変感謝申し上げます。
 では、私の方からは、お手元に資料があると思いますけれども、新型コロナウイルス感染症の現状と今後の課題ということで、感染症の専門家の立場から御説明をさせていただきたいと考えております。
 現在、国内では過去最大の流行が起きているということでございますけれども、緊急事態宣言発出以降、やや新規感染者については減少してきているところであります。
 昨日も厚生労働省のアドバイザリーボード開催されまして、今日この資料の提出には間に合いませんでしたけれども、もし時間があれば、その現在の評価についても後ほど少し述べたいと思っております。
 次のページの三ページ、四ページのところですけれども、新規感染者数はやや減少傾向となっておりますけれども、いまだ入院治療を要する方は非常に多くございまして、さらに重症者についてはまだ減少の傾向が、やや頭打ちとも見えますけれども、まだ減少の傾向ははっきりと見えてこないというところでございます。
 その下のところに示していますのは、この新型コロナウイルス感染症の重症度を示すピラミッドということで、非常に特徴的なのは、その下の方の、黄色から下の発症前無症状と無症候の方が半分ぐらいいらっしゃるということであります。これは、従来のSARS、MERS等でありますと発症した方はほとんど有症状であるということと違いまして、無症状の方が半分程度いるということであります。さらに、重症化をする方も一定程度いらっしゃるということになります。
 次のページであります。
 少し分かりにくいものなんですが、この感染性がいつ生じるかということですけれども、一番上の左側の薄い青とピンクのバーを御覧ください。
 これは、ブルーのところが無症状のところで潜伏期ですね。一番左のところに感染があり、そして真ん中のところで発症して、ピンク色のところは有症状というところです。その下の山みたいなのがありますが、いつ感染性があるかということを示していて、このシナリオの一、二、三とありますが、この新型コロナの場合は一番下のシナリオ三であり、感染してから発症するまでに既にその感染性があるという、つまり発症する前の方が感染性が強いということですから、感染性は発症の二日前からになるということで、その次の感染が既に起きてしまうということになります。
 ですから、SARSであれば、右の上のところがSARSなんですけど、発症してから感染性が出ると。しかも、必ずほぼ発症しますから、その発症者を抑え込めばよいということになりますが、この新型コロナの場合は発症前から感染性があるので、その抑え込みが非常に難しいということになります。
 その下のところですけれども、ただ、発症してからは六日以降の感染は非常に低下します。ですから、発症してから十日間で感染性がなくなり退院が可能となるということのこれが理由であります。
 その次を御覧ください。
 ただ、一方で、濃厚接触者はその発症する前の期間も含まれております、いわゆる潜伏期ですね。その十日間プラス平均四、五日というところで二週間の健康観察が必要ということがこの理論的な背景になります。
 この新型コロナウイルスの伝播の特徴ですけれども、もうこれは流行の初期から専門家会議等で議論してきましたが、左側の同じ実効再生産数、いわゆる一人の患者さんから何人に伝播するかという数字がインフルエンザでも新型コロナでもほぼ二だということであれば、インフルエンザの場合であれば一人から二人、二人から四人という形になってきますけれども、一方で、新型コロナの場合はそういう形ではなくて、一人から感染する場合は多くの人に感染する。ただ、右側の図に描いてありますけれども、五人に感染したとしてもそのうちの一人しか次の感染を起こさないという特徴がありますので、これをクラスター感染、つまりこのクラスターの対策が必要になると、そういうことになります。
 そういったクラスターの場がどういうところで起こるかと、これが次のページでございます、九ページ。いわゆる三密と言っていました。初期の頃に、密閉、密集、密接の場所がこういったクラスター感染が起きやすい場所。つまり、SARSの場合でありますと、スーパースプレッダーといって、その感染者がたくさんウイルスを出す人から感染が起きやすいというふうに言っていましたけれども、この新型コロナの場合はいわゆる環境が非常に問題になるということを、これを明らかにしてきたということです。
 その後、様々なクラスター対策を行ってきましたが、そこで分かってきたのが感染リスクが高まる五つの場面ということで、十ページのところですけれども、やはり飲酒を伴う懇親会であったり長時間に及ぶ飲酒、これが最もやっぱり感染の場としてはリスクが高い。それから、マスクをしないで会話をすること。それから、狭い空間での共同生活、例えば寮生活であったり部活の合宿であったり、それから外国人の共同生活をされているような場所、そういったところで感染が起きやすいこと。それから、いわゆる居場所の切り替わりというところで、職場での休憩場所で喫煙をされて、マスクを外して会話をする、あるいは職場では気を付けている、現場では気を付けているんだけれども、そこへ移動する間の移動手段の中、車の中でマスクを外して会話をしてしまう、そういった場面で感染のリスクがあるということになります。
 それで、その次のページ、めくっていただきまして十一ページは、昨年の緊急事態宣言の場合には、ただそういったリスクの高い場所が余り明らかになっていませんでしたので、接触の八割削減ということで広く行動制限をお願いしたというところで、八割削減をすると一定程度の期間で感染が低下するという、これ西浦先生の推計ですけれども、一定程度このような形で感染が低下をしていったということになります。
 ただ、今回の場合は、社会経済活動を幅広く止めるのではなくて、感染リスクの高い活動に絞って制限を掛けるということで、急所を押さえたという形を申し上げておりますけれども、飲食に対する営業時間の短縮要請がまず最初にあり、そして昼夜を問わず外出自粛要請、そしてテレワークの推進、そしてイベントの制限と、大きく四つの柱でお願いをしているところです。
 その理論的な背景なんですけど、次のページ御覧ください。十三ページ。
 これはなかなか大都市では見えてこないんですけれども、地方の都市ではこういったクラスターの分析をしていきますと、こういったパターンが見えてきます。これは縦軸にクラスターの発生事例数があり、横軸に時系列があります。
 まず最初に、流行が始まりますと、多くは飲食店あるいは接触を伴う飲食店で、緑色のところのクラスターが発生してきます。そこから会社であったり職場であったり、それから家庭内に持ち込まれ、黄色の部分ですね、その後、学校であったりオレンジ色の高齢者介護施設、最後には病院というところに感染が伝播していって流行が収束するというパターンがございます。
 何が言いたいかというと、その流行の起点になるのがこの飲食店を中心としたクラスターの発生ということで、大都市ではなかなかこのパターンが見えてこないということがございます。ただ、大都市では、何といいますか、飲食店の、そこに集まっている人の匿名性が高いということであったり、それから、若者が多く集まっているために、感染をしても症状がないということで、家庭に持ち込んだり職場に持ち込んだりしてその次の感染が発生するということで、そういったところはやっぱりリンクがない感染になってしまうということですので、ただ、その最初の飲食のところでやはり感染が始まっているということに基づいて今回の飲食での対策、それと八月、七月、八月の流行のときにもその飲食店対策ということでかなり効果があったということが理論的な背景になっています。
 その下のところですけれども、感染研におきましては、これまでの流行のこの新型コロナウイルスのゲノム情報を分析しています。これは、ちょっと分かりにくいんですけれども、一つの点々が一個一個のウイルスのゲノムを表していまして、一番左の紫色のところが最初期の武漢系統というのがございます。これはほぼほぼ封じ込められたんですけれども、三月中旬から欧州からの流入がありました。その後、右側の七月から九月の第二波と言われる系統になりまして、さらに、それが十月から十二月の第三波の主流系統、現在の流行しているのがこの系統になります。これはどんどん入れ替わっていくという特徴があるということが分かってまいりました。
 次のページ御覧ください。十五ページになります。
 武漢系統というのは、この一番、三月、二月、三月の非常に少ないところなんですけれども、それが、水色の欧州系統が三月から始まり、それが一旦緊急事態宣言により抑え込まれて、その後、新宿、東京新宿からのその赤い株に入れ替わり、そして現在は紫色になっていると。
 これ、十一月から十二月までの解析で、これ先週報告しましたが、まだ現在この流行続いていますので、更に解析は続けているという形で、要するにこの新型コロナウイルスというのは、流行が起こるときに次々と株が入れ替わっていくという特徴があります。
 その下のところですけど、一方で分かったことは、こういった国内で流行している株だけではなくて、ごく少数なんですけれども、その国内での流行株と違う系統のものがあるということが分かってきました。これが、複数の地域から同時に検出された株でありまして、十二検体で検出されましたが、場所、どこから流入してきたかということははっきり分からないんですけれども、同じ系統のものがアメリカで流行しているということで、これは今現在言われている変異株とは違う系統が少数検出されているということであります。
 その次の十七ページ御覧ください。
 現在、感染性や伝播性が増加しているということが懸念されている変異株というものが取り沙汰されております。一番上のVOC202012/01というのがいわゆる英国株、その下の501Y.V2、これがいわゆる南アフリカ株、その下が501Y.V3というのがいわゆるブラジル株、というものが、感染性あるいはその抗原性の変化ですね、これが懸念をされている株になります。
 こういった変異株の輸入と国内での蔓延リスクの考え方というものがありまして、これは変異株の脅威、それからその輸入のリスク、そして、さらにそれが国内で蔓延するリスクというものを今感染研の方では評価をしているということになります。ですから、そういった変異株が本当に感染性とか病原性が変化しているのか、そしてその変異株が流行している国でどの程度の流行状況にあるのか、そしてそういった流行国からの入国のボリュームが日本へどの程度あるのか、そういったことを評価をしてございます。
 その次のページを御覧ください。
 感染研ではそういったリスク評価をしておりまして、それを随時公開しております。こういった表にまとめているところで、後で御覧になっていただければと思います。
 以上述べたようなただいまの状況ですけれども、我々専門家として、これまでこの新型コロナウイルス感染症の対策に関わってまいりました。今般の法改正に当たりまして、これまでも様々な課題とかそれから提言というのをしてまいりました。
 一番最初にありますのが、これが、専門家会議が七月の頭に解散で組織が変わったわけですけれども、そのときに取りまとめたものであります。二十一ページ、二十二ページのところに、「はじめに」ということで、課題ですね、下のページには課題を掲げています。
 組織の在り方等は今回省かさせていただいていますけれども、これまで見えてきた課題としては、新しい感染症に関する研究の実施体制というものが、なかなか十分に研究開発ができなかったということがありまして、専門家として、前は専門家助言組織として活動していましたけれども、どこで、日本のどこでどのような研究が行われているのか、それがよく分からなかったと。それから、様々なリサーチクエスチョン、疑問の解決に最適なパートナーと迅速に協働することが難しかったということがございます。
 それから、次の二十三ページには、疫学情報のデータの公表という問題がございました。感染症対策には、疫学情報へのアクセス、それからその評価というのが非常に重要なんですけれども、そういった情報へのアクセスにもなかなか困難がございました。これは、もう個人情報の取扱いが地方公共団体ではかなり違うというところもあり、データの提供であったり利用であったり公表の合意を得ることは非常に困難であったということになります。そういったこともあり、迅速に流行状況のデータ公表あるいは研究、論文の発表ができなかったということになりました。
 そして、その際にも提案として、その研究が迅速に進むようにしていただきたいと、そういった支援をしていただきたいということ、それからデータを迅速に共有をしていただきたいという御提案をさせていただいています。
 その次のページでありますけど、そこでも、中長期的な課題として対応をお願いしたいこととしては、研究体制を計画的に整備をしていただきたいということ、それから感染症疫学の専門家の人材育成というものが必要であろうということを御提案させていただいています。
 最後に、分科会の方でもこの今回の法改正に当たりまして基本的な考え方をまとめさせていただいていますけれども、私の方からは、三十ページの、今述べたようなその課題のところですね、感染症法の改正、課題の部分で、クラスターや地方の流行状況に関する情報を得るということがなかなか迅速に行われなかったので、そういった情報共有体制ですね、それを迅速にできるような体制を取っていただきたいということであります。
 私の、あっ、時間になりました。私の方からは以上です。ありがとうございました。

○参考人(米村滋人君) 東京大学の米村と申します。本日、このような場にお招きいただきましたこと、大変光栄に存じております。
 私は、序言のところに書かせていただきましたが、民法、医事法を専門とする法学者でございますが、元々は内科医でございまして、現在に至るまで医師としての診療業務を並行して行ってまいりました。そのような立場から、今回提出されている新型インフルエンザ等対策特措法、その他数個の法律に対する改正法案に関しまして意見を申し述べたいと考えております。
 2のところで、改正案に関する意見というところに進ませていただきます。
 まず、(1)改正時期に関する点でございますが、本法案の改正点のうち幾つかの点ですね、具体的には宿泊療養の根拠規定の不存在や医療体制の不備などに関しては、既に昨年夏頃から複数の法学者が問題が存在するということを指摘しておりました。しかし、今日に至るまでその点に関する対応がなされず、本国会で初めて改正案が提出されたという状況であったということは大変遺憾に思っております。
 昨年末から今年にかけてマスメディア等で盛んに医療体制の不備があるということが報道されるに至ってそういう対応がなされるということだったのだろうというふうに想像しておりますけれども、その結果として、昨年末から今年、現在に至るまでかなりの感染者数が出現し、入院の必要な患者が入院できないというような事態も発生し、多くの命が失われるということが起こっているというわけであります。
 私としては、昨年の早い段階でこういった医療体制等の改善の対応が取られていれば、救えた命がかなりあったのではないかということを思っている次第であります。くれぐれも政府には迅速な対応をお願いしたいというふうに考えるところであります。
 次、(2)特措法改正に関する意見のところに進ませていただきます。
 まず、そもそも、現在の特措法において問題点として、私の方では、そこに書いてございますけれども、根本的な問題があるというふうに考えております。それは、都道府県知事の措置の内容が事前に何ら限定されていない、その結果として感染症対策として有効な措置が実施される保証もないという点であります。もちろん、私権制限がなされ得るというところも問題であるわけですが、それは必要性、許容性、相当性があれば認められるというのが一般理論の帰結でありまして、その感染症対策としての必要性、許容性、相当性があるかどうかというところが最も重要なポイントであるわけであります。ところが、そこの点を保証する仕組みが特措法の中にないというところが最も大きな問題であるということであります。都道府県知事に措置の内容を白紙委任すると言うに等しいような状況があるとしますと、それは法治主義や罪刑法定主義との関係でも大きな問題があるわけですけれども、この点を克服するための制度的装置がかなり法律の中に乏しいということであります。
 大きく手続的な問題と国と地方の関係性の問題の二つに分かれるということになります。
 まず一つ目、手続的な問題として、やはり事前に国会が関与すること、それから専門家が諮問に対して一定の応答をすること、それから事後的な救済の手続を設けられること、こういったことが先ほど申し上げた感染症対策としての必要性、許容性、相当性を担保するための仕組みだと言えるわけでありまして、もちろん、事前に具体的な内容を法律に書き込むということができないというのは感染症対策の性質上やむを得ないところではありますが、こういった手続を整備することによって実質的な内容の適正性を担保するということがなされていなければ、感染症対策としても人権制限の観点からも問題があるという措置が出てきてしまう可能性が高いのではないかというふうに考えております。そういった手続的な整備がきちんとされているかどうかというところが問題であるのが一点目。
 それからもう一つは、国と地方の関係性の問題であります。現在の特措法の枠組みで申しますと、緊急事態宣言が出されると同時に基本的対処方針という国の対策本部が作成する対処方針がその緊急事態宣言に従って改められるということが法定されておりまして、恐らくはその中で都道府県知事の権限に外枠をはめるということが制度上は考えられていたのだろうというふうに思われます。
 ところが、それが実際にどれぐらい機能しているのかということであります。その後に、実際に緊急事態宣言が出された後に各都道府県知事と政府の間で認識の相違や方針の違いが表面化して、マスメディアで報道されるというようなことも続いております。実際に行われる都道府県知事の措置というのが政府側から見て不十分だというふうに言われることもあれば、過剰だと言われることもある。そういう状況が立て続けに起こっているわけでありまして、国と地方の権限関係の整理が十分ではないということを感じさせるところであります。
 これは先ほど申し上げた感染症対策としての適正性の観点からも大いに問題があるわけでありまして、やはり国がきちんと緊急事態宣言であれば緊急事態宣言の際に、そうではなく、この後お話しするまん延防止等重点措置であればそれを定める際に、基本的対処方針等の中で、都府県知事の権限としてどういった方向性での感染症対策を行うということが与えられるのかと、権限が付与されるのかということをきちんと定める必要があるのではないか。そういった運用が少なくとも現状の法律でも可能であるというところがありますので、徹底していただきたいというふうに考える次第であります。
 次、②まん延防止等重点措置に関してですけれども、これは今回の改正で新たに提案されている点でございまして、緊急事態宣言発出前の段階で事業者、一般国民等への協力要請や命令ができるようにすることを意図するという改正であると考えられます。
 国会報告の欠如について問題視する意見がありまして、それは一定程度当てはまる批判ではあると思われますが、絶対的なものかどうかはやや問題かと思います。先ほどお話ししたとおり、幾つかの手続がその対策の適正性を担保するためにはあり得ますので、国会の関与が仮に事後報告のような形になったとしても、ほかの手続が整備されていればそれでもよいのかもしれません。
 したがって、その他の手続を含めて包括的に内容の適正性が確保される仕組みが取られているかどうかということが問題でありまして、その点での運用の改善をお願いしたいというふうに考えております。
 今回の改正法案におきましては、まん延防止等重点措置の際には専門家に対する諮問の手続が明確に法律に書き込まれるということがされております。これに関しては一歩前進であるというふうに評価したいと思いますけれども、その専門家に対する諮問の手続がやはり実質化される必要がありまして、もう形式的にごく一部の専門家に意見を聞くだけで進んでしまうというようなことがないように、運用として適正を図っていただきたいというふうに考える次第でございます。
 次、③事業者に対する行政罰、過料についてですけれども、危険性の高い活動を行っている事業者に対して制裁を科すということは許容されるわけですが、一律の営業禁止等の命令違反に対して制裁を科すことは、行政罰であっても比例原則違反等の問題が出る可能性があります。
 この観点から、現在の、今回の緊急事態宣言においての飲食店対応というのは、私から見るとやや問題があるように思われます。と申しますのは、一律の時短要請というのが本当に危険な飲食の場のみを制限しているということになるのかどうかということであります。
 先ほど脇田参考人からのお話にもありましたが、分科会は飲食の場を急所であるというふうに表現して今回の緊急事態宣言下での措置の対象としているわけでありますが、全ての飲食店における全ての飲食機会が全てひとしく危険があるということになるのかどうかというのが問題であります。危険な飲食とそうでない飲食がやはりあるのではないか。人数もそうですし、その飲食店の構造設備によって換気の程度がどうなのかということもありますし、様々な要素によって感染のリスクというのは違ってくるわけでありまして、その点を全て無視して一律の規制を掛けるということが許容されるかどうかというのがここでの問題であります。
 罰則を科すという以上はその行為に実質的危険性があると、法益侵害の危険性があるということが言えなければならないということがこれは刑事法の原則としてあるわけでありまして、それは行政罰であっても異なるところはございません。
 したがって、そういった観点からも、きちんとその危険性の高い行為に限定した命令が出るという形を取っていただく必要があるのではないか。今般の改正案が可決、成立したとしても、その点に十分御注意いただいて運用していただきたいというように考える次第であります。
 次、④事業者に対する補償についてですけれども、やはりこれも先ほどの危険性の問題と関係がございます。
 危険性の高い活動に対してそれを制約する、規制するということを行ったとしても、補償の必要はございません。これは最高裁大法廷の昭和三十八年判決、有名な判決ですけれども、ため池条例判決と言われるものでありまして、ここで明らかにされていることであります。しかし、ここでもこの特措法上の措置というのが果たしてそういった危険性の高い行為に限定して規制するという構造になっているのかどうかというところの問題であります。
 仮に危険性の程度によらず一律の営業停止の命令が発出されているといたしますと、危険性の低い事業者にとっては、危険性が高くないにもかかわらず、単に規制の効率性や国民の納得感のために営業をやめなければならないという状況に置かれているということになりますので、これは、憲法二十九条三項の特別の犠牲を払ったものとして損失補償が必要であると考えるのが合理的であろうというふうに思われるところであります。
 したがって、この補償の点についても、従来の政府見解が果たして妥当するかどうかということはよくよくお考えいただきたいというところでございます。
 次、ページ変わりまして、(3)感染症法改正に関する点でございます。時間の関係もございますので、簡単に進んでいくようにしたいと思います。
 まず、改正全般に関する評価でありますけれども、本改正案にはかなり必要な法改正が多く含まれておりまして、その点に対応していただいたということ自体は率直に評価を申し上げたいというふうに思います。
 ただし、内容的に子細に検討してまいりますと、不十分な点や、むしろ改正趣旨に逆行すると見られる改正点もあるところであります。率直に申しまして、かなり短期間の検討で出てきた法案でありまして、十分に練られていないのではないかということを疑わせる法案の内容になっているというところがございます。
 やはりこれは早期の再改正が必要ではないか、もう一度きちんと全体を検討し直して、本当にこれで感染症対策にとって良い制度になっているのかということを検討していただきたいということを希望する次第であります。
 個別的な点に進んでまいります。
 ②宿泊療養、自宅療養の取扱いであります。
 宿泊療養、自宅療養に法的根拠がないことで問題が生じているということは、昨年四月の緊急事態宣言の段階から指摘されてきたところであります。今回、四十四条の三という条文でこれに対する規定を追加するということがされているわけですが、このこと自体は適切であるというふうに評価いたしております。ただし、宿泊療養等を拒んだ者に対して入院勧告、入院措置を行う仕組みにしているということはやはり問題があると思われます。
 つまり、本来入院が必要がないという判断されて、しかし宿泊療養でということが言われたにもかかわらず、拒まれると入院させなければならないと、そういうような形になっているわけですね。必要であれば宿泊療養、自宅療養の義務化を検討するということが筋でありまして、入院病床数の不足や医療体制の逼迫が指摘される中、いたずらに軽症者で病床を埋める結果になりかねないこの改正は問題があるというふうに思われるところであります。
 宿泊療養、自宅療養に対する直接の義務規定の創設を是非御検討いただきたいというふうに思います。
 次、③入院拒否者に対する罰則。これはマスメディア等でもかなり関心を集めた点でありますけれども、これについては二つの大きな問題がございます。
 まず一点目は、感染症法の理念に関する問題でありまして、旧伝染病予防法とは異なって、隔離政策を取っていない感染症法の下で、強制入院というのは最小限度の措置でなければならないということが法律にも書き込まれているところであります。
 入院拒否に対する罰則を科すというのはこの法律の理念に反するおそれがあるというのが一点目であります。
 それから二点目、罰則の存在を理由にかえって感染疑い者がPCR検査等を受けなくなる傾向を生むということになりますと、感染症対策としてむしろ有害であるというおそれが出てまいります。
 結局、今回の新型コロナウイルス感染症は、発症者が感染を広げているというよりも、無症状者、未発症者が大量に市中にいてその方々が大変よく動かれるので、また飲食の場にも行くので、それで感染が広がっている、そういうようなことが一般に言われているわけであります。
 そうであるとしますと、本来感染対策の中心となるべきはそういった無症状者対策であるべきでありまして、入院者に対してこういった措置をするというのは、かえってその無症状者を掘り起こしにくくするのではないかということを私は懸念するところであります。
 感染症対策全体を見据えて、目の前にいる入院の必要な発症者に対する対応が不十分になっているというところだけにとらわれて、実際に目に見えていない大量の感染者、未発症者が捕捉できなくなるというようなことは是非避けていただきたいというふうに思う次第であります。
 次、④積極的疫学調査拒否者に対する罰則。
 これもやはり調査自体を忌避する観点から受診を控える傾向を生む可能性があって、感染症対策に逆行する可能性があるということを指摘させていただきます。
 さらに、一般的にこのプライバシーに関わる情報はあくまで本人の権利を害しないように慎重に取得、利用するということが原則になっているはずでありまして、こういった罰則の裏付けを持って本人のプライバシー情報を無理やり聞き出すということが果たしてよいのか。もしこれが許されるのだとすれば、ほかの手段で情報を利活用するということも本来許されてよいはずでありまして、なぜその前段階の情報利活用は許されず、この積極的疫学調査の場面だけでプライバシー情報を強制的に出させるということが許されるのか、その辺りがやはりちぐはぐではないかというふうに思われるところであります。
 ⑤医療関係者等に対する協力要請、勧告でありますが、現在の医療逼迫状況の原因として医療体制、関連法制度の不備があるということについては以前から指摘されてきたところでありまして、一定の対応がなされたことは評価できるところであります。ただし、行政側で全ての医療機関の受入れ能力を把握しているとは限りませんので、各医療機関の任意の協力や人材派遣等を促進するということも大変重要であります。それが実現できるように、財政的支援を含めて運用による適切な対応を是非お願いしたいということを考えているところであります。
 以上が各論的な意見ということになりますが、最後に新型コロナウイルス感染症全般に関する意見として二点申し上げて、終わりにさせていただきたいと思います。
 まず第一に、これは途中でも何か所か出てまいりましたが、現在の規制の在り方というのは危険性の高い活動に焦点を絞った対策になっていない、そこをやっぱり再認識していただく必要があるのではないかということであります。危険性の高い活動に焦点を絞った有効な対策ということを取る必要があるということであります。
 対象が無限定であるということが法的制裁の障害、罰則の導入の障害にもなっておりますし、緊急事態宣言の法的許容性も具体的対策の有効性が前提であるというところがございます。
 その前提として、もちろん科学的なエビデンスが必要だということもございます。一体どういう活動が感染の危険性の高い活動であるのかということを是非しっかりと科学的エビデンスを持って調査分析していただき、その危険性の高い活動に対象を絞った形の規制を進めていただきたいというふうに考えております。
 次、第二の点でありますが、緊急事態宣言に依存した対策から脱却することが必要だということを申し上げたいと思います。
 緊急事態宣言、今回二回目になりますけれども、二回目はなかなか国民の皆さんの協力が得にくくなっていて効果が十分ではないということはマスメディア等でも報道されているところであります。そういった緊急事態宣言のみを中心とする感染症対策というのはやはり無理があるというのが私の見解でございます。むしろ、緊急事態宣言に過度に依存する感染症対策というのは緊急事態宣言が解除された途端に感染の再拡大を招くということにもなるわけでして、果たして感染症対策として成立しているのかどうかすら怪しいというのが私の見解であります。
 平時にも一貫した感染対策を行うことが重要であります。危険性の高い活動を割り出してそれに対する国民の理解を求めるというのは、やはりその観点からも大変重要だということでありまして、丁寧な説明と任意の協力のお願いということが重要なのではないかというふうに考えるところであります。
 また、その一環としてCOCOAという携帯アプリがあるわけですが、これがほとんど感染対策の効果を発揮していないというのが現状でありまして、これは極めて問題であります。情報利活用を通じて国民の行動をある程度誘導、制御することを含めて、強制措置によらない感染対策というのは多数ございますので、そういった様々な対策を併用する形で感染対策を全体として進めていくということを是非お願いしたいというふうに考える次第でございます。
 長くなりましたが、私からの意見は以上でございます。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 お二人の参考人の御出席、御意見ありがとうございます。
 米村参考人にまず伺います。
 まん延防止等重点措置についてですが、法案では、発動の要件についても、また措置の内容についても政令で定めるということになっています。政府はその理由について、感染の状況や治療薬やワクチンなどによって変わり得るので、機動的に対応できるようにしようと、したいと、そう説明をしております。
 しかし、営業の自由や移動の自由などの日常生活に密接に関わる基本的な権利について、どのような場合に、どのように制約されるかが明示されないということは、国民にとっては予測可能性が欠けるのではないかと。また、そうした制限が、恣意的な、あるいは科学や事実に基づかない、あるいは米村参考人の言葉では危険性の程度によらないで行われる、そういう懸念がこれまで以上に大きくなるのではないかと考えますけれども、御意見いかがでしょうか。
○参考人(米村滋人君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 委員の御指摘は大変よく分かるところでありまして、私も、先ほど直接には言及しなかったかもしれませんが、法治主義や罪刑法定主義との関係でも問題があるということを本日配付資料の中で書かせていただいているところでございます。
 要するに、本来は、きちんと法律でその実体要件を明記して、どの範囲で、どういう内容の命令、措置を行うことができるのかと。それを法律によって国の行政や地方行政に委任する、都道府県知事に委任するということでなければならないはずですが、それができないということで今の特措法はできているということになるかと思います。やっぱり本来の在り方としてはそこの点をきちんと法律上明示するということが望ましいということに間違いはないだろうと思います。
 ただ、どうしてもそれが事前に提示できない、実体要件としては提示できないというのであれば、せめて手続的な面でそこの点の適切性が担保されるような仕組みをつくってほしいと。それを私の方からは申し上げたところでありまして、その手続としても現状のところは余り十分ではないというところが問題としてあるのではないかということを申し上げたところでございます。
 以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。
 もう一点伺います。
 入院拒否や積極的疫学調査の拒否について、政府案の刑事罰が行政罰に修正をされ、特措法の休業命令違反と同じく過料とされました。しかし、これらの行為について取締りの対象とし、罰則という威嚇の下で抑止効果を狙うと。その点においては、刑事罰か行政罰かにおいて本質的な違いはないのではないかと思います。
 この点について御意見伺えますか。
○参考人(米村滋人君) 私も全く委員の御意見に賛成でございます。
 少なくともこの点に関しては、刑事罰か行政罰かということの違いはない、罰則である以上は同様に運用していくということが求められるということだろうというふうに思っております。
○山添拓君 やはり、患者に対して罰則を設けることが差別や偏見を助長し得る、あるいは事業者に対して罰則で威嚇をするということが分断を持ち込む、そういう懸念を私たち持っています。これはやはり罰則ではない在り方が必要だと思います。
 脇田参考人に伺います。
 一月十五日の厚生科学審議会感染症部会では、入院や積極的疫学調査の拒否に罰則を科すことについて、慎重ないし反対意見も多数出されておりました。特に、現場の保健所長や自治体の担当者から、保健所の負担が増えるのではないか、あるいは患者との信頼関係にひびが入るのではないかという具体的な懸念が表明されております。
 脇田参考人は、こうした意見についてはどのように受け止められたでしょうか。
○参考人(脇田隆字君) ただいま委員の御質問の中にありましたような御意見がやはり感染症部会では多くあったと私も受け止めています。
 ただ一方で、実際に医療現場におられる方であったり、やはり自治体の方であったり、何らかのその有効性を高めるような措置も必要なのではないかというような意見があったことも事実であります。
 ですから、先ほども少し申し上げたんですけれども、この部会の委員というのは、やはり感染症の専門家であったり医療機関の先生であったり法律家の先生であったり、多くの感染症に関わる委員の先生方で成り立っておりますが、皆さん感染症法の理念というのは十分に理解をしていて、やはり、基本的人権を尊重しつつ、その感染症の蔓延とそれから治療をしっかりやっていくような法体系が必要であるということは十分に理解をされているんだと思います。その上での意見でありまして、さらに、やはり多くの先生方からはそういった罰則については慎重な姿勢というものもありましたし、実際の運用についても、もし、そこで、その点についてはやはり国会でしっかり議論していただくことが重要であるという御意見もいただきました。
 その上で法改正がなされたのであれば、また感染症部会で実際の運用についてはしっかりと議論して、その際には、何度も言っておりますけれども、慎重な運用がなされるような議論をしていきたいと思っております。
○山添拓君 保健所の逼迫が更に深刻になり、感染経路の追跡を困難にするということになれば、これはもうむしろ実効性を損なうような事態だと思いますので、それは改めてこの参議院での審議でも深めなければならないところだと思います。
 無症状や軽症で感染を拡大させるのがコロナの特徴で、今日も御指摘がありました。感染拡大防止の実効性、脇田参考人、今有効性という言葉を使われました。これを確保していくためにも、入院治療の必要のない感染者に宿泊療養などの徹底を求めていく必要があります。しかし、自営業者やフリーランス、非正規で、仕事を休めば収入がなくなるという人もおります。感染拡大防止に協力したがために生活の基盤を失うという事態になりかねないわけです。同様のことは、休業や時短の要請に応じたくても営業と雇用を守るために応じられない、そういう事業者についても言えると思います。
 結局、感染拡大防止を実効あるものとするためには、感染者や濃厚接触者の生活補償、あるいは事業者も安心して休むことができるような十分な補償を行うと、それが最も効果的なのではないかと思いますが、脇田参考人、米村参考人それぞれに御意見を伺いたいと思います。
○参考人(脇田隆字君) 委員の御指摘、全くそのとおりだというふうには理解しています。
 やはり、分科会それから専門家の間での議論でも、先ほども述べたとおり、実効性、有効性を担保するためにはそういった措置に対するインセンティブとディスインセンティブ両方が必要なんではないかと、そういった議論をしておりました。
 以上です。
○参考人(米村滋人君) 私も委員の御意見に非常に共感したところでございます。
 やっぱり、こういった措置が本当に感染症対策として有効なのかどうか、そこのところをきちんと精査することなしに今回法案として出てきたのではないかというふうに私は考えているところでありまして、今後実際に運用する中でどういうことが起こるのかというのは、しっかり見ていかないといけないだろうなというふうに思っているところであります。
 以上です。
○山添拓君 最後に米村参考人に伺います。
 医療機関がコロナ患者の受入れ勧告を拒否した場合に病院名を公表するという規定について、米村参考人は、その効果は未知数だと述べられている資料を拝見しました。
 コロナ患者を受け入れているか否かを問わず、病院や診療所というのは、役割分担をして、全体として地域医療を支えていると思います。受入れ病院を増やし、病院相互の協力を促して、かつ簡易、迅速にその支援が行き渡るようにしていくためには、やはり医療機関の全体を減収補填を行って支えていくことが大事ではないかと考えますけれども、この点についても御意見を伺います。
○参考人(米村滋人君) 御質問ありがとうございます。
 医療機関に協力を促すための仕組みというのは幾つかのものがありまして、それをやっぱり併用していく必要があるのだろうというふうに思っております。
 もちろん経済的なインセンティブで動く病院というのもあるかと思いますが、必ずしもその経済的なインセンティブということではなくて、専門家がいないからできないとか構造が非常に古いのでできないとか、そういうような病院もあるのだろうと思いますので、そういった点も踏まえて少しでも、様々な医療機関の現状をきちんと認識した上で、少しでも多くの医療機関に協力してもらえるような枠組みというのをつくっていくことが重要だろうというふうに思います。経済的な支援というのももちろんそのうちの一つでありまして、損失分もきちんと填補できるような、そういうような仕組みがある方が望ましいというふうには考えているところであります。
○山添拓君 ありがとうございます。今後の審議の参考にしたいと思います。