山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2020年・第204通常国会

法務委員会で所有者不明土地の解消のための法案について、名古屋入国管理局でスリランカ人女性が死亡した事件について質問

要約
  • 法務委員会で名古屋入国管理局でスリランカ人女性が死亡した事件を質問。この女性は同居男性にDVを受け、警察に助けを求め、不法滞在を理由に収容されました。 山添氏は「なぜ収容したのか?入管はDV被害者だと知っていた。保護されるべき存在だった」と指摘しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 まず、不動産登記法改正案について伺います。
 新設される簡易な相続申告登記について、司法書士会会長の今川参考人は、申告登記だけをしてそのまま放置しておくことが増えるのが懸念だと述べていました。本来の目的は、遺産分割協議を経た確定的な権利者の登記であり、未分割の段階での相続登記は暫定的なものだと、それもままならないときは救済措置としての申告登記と考えるべきだと、こういうお話でありました。
 法務大臣に伺いますが、法務省はこの間、相続申告登記の活用を期待すると答弁しておりますが、既に現場の実務家との間で認識の相違が生じているように見受けられます。このことをどうお考えでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 遺産分割がなされないまま相続が繰り返されて、多数の相続人による共有関係が生ずるという事態につきましては、相続人申告登記によって防止することができず、その後の財産の処分が困難になるという問題も引き続き生じ得るものでございます。
 このような多数の相続人による共有関係を生じさせないようにするためには、むしろ、相続人間でできる限り遺産分割がされ、その上で、その内容を踏まえた登記がなされる必要がございます。
 今般の改正におきましても、このような認識の下で、遺産分割やその後の相続登記を促進するために、遺産分割に関して期間制限を設け、遺産分割がされた場合の相続登記の申請義務を定めているところでございます。
 法務省といたしましては、遺産分割が行われ、その結果が登記に適切に反映されるようになること、これが今般の改正の趣旨に沿うものであることなどにつきまして、相続登記や遺産分割を取り扱う司法書士等の専門職者と十分に連携をし、そして、積極的に周知広報に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 既に若干その位置付けについての認識の相違はあるようですので、この運用に当たってはやはり注意が必要なのではないかと思います。
 全国青年司法書士協議会の阿部参考人からは、申告登記の後の氏名や住所の変更についての懸念も指摘されておりました。
 申告登記については、氏名や住所の変更は義務付けられていないということでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) 申告登記につきましては、氏名、住所の変更の登記は義務付けられていないということでございます。
○山添拓君 しかし、これは二次相続も含めて実務では頻繁に起きることだと思うんですね。これを無理なく運用していくことが必要だと思いますけど、何か追加でありますか。
○政府参考人(小出邦夫君) 相続人申告登記につきましては、先ほど、氏名、住所の変更が生じた場合の変更登記を義務付けてはいないというふうに申し上げましたけれども、この相続人申告登記の情報につきましては、職権で登記官が住基ネット等から情報を取得してそれをその申出人等に促すような形で、職権によってその内容を更新していくということは今検討しているところでございますので、情報の更新はされる、もしそういう方向になりますれば、情報の更新は可能ということになります。
○山添拓君 申告登記についても職権で住所変更などを反映させることを検討しているという答弁でありました。
 その氏名、住所の変更登記なんですけど、こちらも今度の法案で二年以内に義務化をします。しかし、そもそも所有権の取得や譲渡などのその権利変動があった場合ですら、登記は義務ではありません。権利変動もないのに氏名や住所の変更を罰則付きで義務化する、この趣旨は何でしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 平成二十九年度に地方公共団体が実施した地籍調査事業における土地の所有者等の状況に関する調査結果によりますと、所有者不明土地の発生原因としては、所有権の登記名義人が死亡し相続が発生しているが登記記録上は登記名義人がそのままになっていることが全体の三分の二を、所有権の登記名義人の住所が変更されているが登記記録に反映されていないことが全体の三分の一をそれぞれ占めており、この二つが所有者不明土地の発生原因のほぼ全てを占めている状況にございます。また、都市部では所有者不明土地の発生原因として相続未登記よりも住所等変更登記の方が多いとの調査結果もありまして、住所等変更登記、これが未登記のものが所有者不明土地の主な原因となっていると考えられます。
 そのため、住所等の変更が委員御指摘のとおり権利変動を伴わないものであったとしても、所有者不明土地問題を解消するためには住所等の変更登記の未了についても解消する必要があり、住所等の変更登記の申請義務化につきましても過料を伴う具体的な義務を設ける必要があると考えたところでございます。
 参考までに、権利変動を伴わない事実関係を公示するものとして、不動産の所在、地番、地積などの不動産の物理的な状況を明らかにする表示に関する登記がございますが、これらについても登記の申請義務が課され、過料を科す旨の規定が設けられているところでございます。
○山添拓君 その変更登記について職権で行うことも定めておりますが、自然人についてはその申出があるときに限るとされています。これ、申出があれば職権で変更登記が行われて、この場合は登録免許税は恐らく一筆当たり千円かと思いますが、これを免除するということも予定しているのでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) 今回、職権による住所変更の登記ということで、これはあくまでも登記官が必要な情報を取得することができることが前提でございまして、登記官が住基ネットや商業・法人登記のシステムから情報を取得して職権的に不動産登記に反映させるという新たな仕組みを設けているものでございまして、その前提として、このような職権的な情報更新の正当性の根拠として登記名義人自らが住所等の変更登記を申請して情報の更新を図る具体的な義務を負っている必要があると考えております。また、外国に居住する者など、登記官において住基ネットから住所情報を得ることができない場合には本人の申請が必要となるということでございます。
 それで、これについての登録免許税の件でございますが、これは、令和三年度与党税制大綱の記載におきましても、新たな職権的登記の創設等を含めた不動産登記法の見直しについて成案を踏まえて令和四年度税制改正において必要な措置を検討するという記載がございますので、これにつきましても税制改正に向けた検討を行っていくということになろうかと思います。
○山添拓君 次に、民法改正案について伺います。
 改正案の九百四条の三は、相続開始から十年を経過したときは特別受益や寄与分、相続人が受けた贈与や被相続人に生前療養や看護をしたなどの貢献について遺産分割で主張できないこととしています。
 この趣旨についての確認なのですが、これは十年を経過すると遺産分割ができないということではないかと思います。しかし、一般的な共有物分割も主張できるようになる、請求できるようになるのだと。これ、遺産分割と共有物分割との関係について説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 遺産共有状態にある土地の分割は、共有物分割の方法ではなく、相続人が被相続人から受けた生前贈与等の額や被相続人に対して行った介護等の貢献を考慮して認められる相続人の寄与分を加味して、法定相続分又は指定相続分の割合を修正して算出される具体的相続分の割合により分割する遺産分割の方法によって実施することとされております。この点は今回の改正法でも原則として保持しているところでございます。
 遺産共有状態にある土地の円滑な利用等をするには、できる限り早期かつ円滑に分割を実施し、遺産共有関係を解消することが重要となるため、改正法案ではそのための各種見直しをしているところでございます。
 まず、改正法案では、相続開始から十年を経過するまでに家庭裁判所に遺産分割の請求をしなかった場合には、原則として具体的相続分による遺産分割を求めることができないものとし、遺産分割は法定相続分又は指定相続分により行うこととしております。これにより遺産の分割を促すとともに、相続の開始から長期間が経過している場合には、法定相続分等の割合により簡明にその分割を行うことを可能としております。
 また、改正法案では、相続開始のときから十年間を経過したことなどを要件とした上で、裁判所の関与の下で、所在等が不明な相続人の不動産の持分を適正な代価を支払った上で他の相続人が取得したり第三者に譲渡したりすることができることとしております。これにより、所在等が不明な者がおり、相続人全員の関与が必要となる遺産分割を実施することが容易ではないケースについて解消を円滑に行うことを可能としております。
 そのほか、改正法案では、具体的相続分による分割を確保するため、地方裁判所と家庭裁判所のそれぞれで手続を取らなければいけない遺産共有の状態にある共有持分とそれ以外の一般の共有持分とが併存しているケースに関しまして、相続開始のときから十年間を経過したことなどを要件とした上で、地方裁判所の共有物分割の手続において一元的に共有関係を解消することができる仕組みを創設しているところでございます。
○山添拓君 極めて難解で、ちょっと聞いただけではすぐに分かりませんが、遺産分割を求める相続人がいる場合にはそちらが優先をされると、共有物分割という仕組みも使えるようになっていく、十年経過後はそういう扱いになっていくかと思うんです。
 ただ、共有物分割の場合には、民法二百五十条で、各共有者の持分が相等しいものと推定されております。法定相続分ではないことから、不公平が生じ得ます。元々、遺産分割の規定というのは相続人の生活保障や被相続人の意思を尊重したものでもありますので、これは特別の考慮が必要だと指摘をしておきたいと思います。
 そもそも、この十年過ぎると特別受益や寄与分について主張を制限するのはなぜなのかと。これは、早期の遺産分割を促して、広い意味で所有者不明土地の解消につながると考えられるからだと思います。しかし、所有者不明土地の解消というのは、これは相続人のためというよりは公益的な目的です。相続登記の義務化も、取引の安全、円滑化が目的です。登記簿を見る人の利便性のためだと言えます。公益目的のために相続人の権利を制約することになります。しかも、その制約は、土地だけではなく、建物や預貯金など、遺産全体に及ぶことになります。
 これは、目的に対して権利の制約の範囲というのが大き過ぎるのではないかと考えられますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 遺産の分割がされないままであると、遺産に属する財産については暫定的な遺産共有状態が継続することになりますが、相続人としてはその財産を適切に利用したり処分したりすることが容易ではないため、客観的に見て、このような状態が継続することは相続人にとっても好ましくないことだろうと考えております。
 また、遺産分割がされないままの状態が継続して、その間に相続人が死亡して数次相続が発生すると、例えば孫が父母に代わって祖父母の遺産分割をしなければならないといった事態が生じますが、そのような遺産の分割をすることはその孫にとっても負担が重いと思われ、遺産の分割を促し、数次相続の発生を防止することは、相続人にとっても重要であります。
 また、遺産の分割がされないまま長期間経過した後に具体的相続分による遺産分割を求められると、例えば、自己に対する贈与が特別受益であると主張された相続人が、それに対する反証となる証拠を紛失し、適切に反証することができないといった事態などが生ずることとなります。
 したがいまして、具体的相続分による遺産分割に時期的な制限を設けることは、分割の主体である相続人の利益にも資するものでございまして、合理性を有するものと考えているところでございます。
○山添拓君 長期間たてば資料や証拠が散逸するという傾向は確かにあると思うんです。しかし、証拠がなければ審判で認定できないというのは今でも同じです。遺産分割調停で主張自体できなくなるとまでする必要はないのではないかと私は思うんです。
 吉原祥子参考人は、十年が経過した後でも、相続人間で合意できれば具体的相続分に基づく分割は可能だと述べていました。調停も、広い意味では相続人間の合意です。
 ですから、審判で認定することはできないとしても、資料や証拠がある場合に調停であえて排除することもないのではないかと思いますが、この点いかがですか。
○政府参考人(小出邦夫君) 相続人、関係者全員が合意すれば、具体的相続分を前提とした遺産分割を行うことができることは可能だという整理になっております。
○山添拓君 調停でも可能だという趣旨でありました。
 遺産分割は基本的に私的自治の問題ですので、相続人の意思を尊重すべき問題です。相続人に争いがある場合はもちろんですが、争いが少なくても手続が進まないケースがあることが参考人質疑でも指摘されました。合意形成を容易にする支援の充実こそ求められております。
 相続財産の国庫帰属法案では、承認申請を受けた調査や承認の審査は法務大臣の権限とされており、これは地方法務局の長に委任できるとされています。実務上は登記官が行うことになると思うんですね。
 資料を御覧ください。
 この間の法務局の定員の推移を全法務省労働組合がまとめたものです。二〇一七年、法定相続情報証明制度の導入、一八年、長期相続登記未了土地の解消作業、一九年、表題部所有者不明土地の解消作業、二〇二〇年、自筆証書遺言の保管制度など、新たな取組が導入されるたびに一定の増員査定が行われています。しかし、同時に定員合理化によってこの増員分を超える大幅な減員が進んで、現場では仕事が増えるのに人が減っているという状況です。
 業務が更に増える以上は現場で実感できるような体制拡充を行うべきだと考えますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(上川陽子君) この法案につきましては、委員御指摘のとおり、法務局が実施する新たな施策が数多く含まれております。法案が成立した場合におきましては、法務局の担う業務が増加することが見込まれるところでございます。法が成立した場合には、これらの業務を適正に遂行することができるよう、法務局におきまして必要となる人的体制の整備及び予算の確保に努めてまいりたいと思っております。
○山添拓君 今年純増になっているんですけれども、八人ですよ。全国に地方法務局五十か所ありますから、一局当たり〇・一六人ですね。業務量の増加にとても見合わないです。これは必ず拡充をしていただきたいとお伝えしたいと思います。
 それでは、残った時間で名古屋入管で三十三歳のスリランカ人女性ウィシュマさんが亡くなった事件について伺います。
 資料の二枚目、三枚目、法務省の中間報告が公表されました。
 二〇一七年六月に来日され、日本語学校で学んでいましたが、学費が払えずに退学し、留学生の資格を失いました。交際していたスリランカ人男性からの暴力などもあり、千葉から静岡に移って過ごしていたと言われます。昨年八月、警察に出頭したところ、オーバーステイで逮捕されたといいます。
 法務省に伺いますけれども、なぜウィシュマさんは出頭したんですか。
○政府参考人(松本裕君) お答えいたします。
 出頭後の入国警備官による違反調査におきまして、二〇二〇年八月十九日、恋人に家を追い出されてほかに帰るところも仕事もなかったのでスリランカに帰国したいと警察に出頭したところ、不法残留しているので逮捕されました旨供述されたというふうに認識しております。
○山添拓君 DV被害から逃れようと警察に助けを求めたと、この事実は把握していますか。
○政府参考人(松本裕君) 先ほど違反調査の関係で申し上げましたように、恋人に家を追い出されたという点、あるいは仮放免の申請、御本人は本年一月四日、仮放免の許可申請を行っておるんですけれども、その際、収容前に同居していたスリランカ人の彼氏から暴力を受けた旨等々、そういう理由が記載されていたものと承知しております。
○山添拓君 把握していたということだと思うんですけれども、これ、DV被害者ですね。ですから、まず何よりも保護されるべき存在だったと思うんです。しかも、昨年春以降はコロナ対策で収容というのは大幅に減らしていたはずです。なぜ収容したんですか。
○政府参考人(松本裕君) 収容そのものの経緯といいますのは、警察に出頭された御本人について入管が身柄の引渡しを受けたということでございますが、収容の継続の当否、適否等につきましては、現在、中間報告を踏まえた上での更なる調査において検討し、その内容については最終報告で明らかにしたいと思っているところでございます。
○山添拓君 時間ですので終わりにしますが、これ、わざわざ警察に助けを求めに来ていたんですね。かつては音信不通になっていた時期があったんですが、そのときとは状況が違ったわけです。当時、スリランカ行きの定期便はありませんでした。帰国できる見通しもないのに在留資格がないから収容だと、そういう在り方自体がまず大問題だということを指摘させていただいて、今日は質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございます。