山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2020年・第204通常国会

参院本会議で、少年法改定案について代表質問。

要約
  • 参院本会議で、少年法改定案について質問。 虐待やネグレクトなど厳しい生育環境で育ち、少年院に入って初めて一日三食の規則正しい生活を経験し、落ち着いて本を読む時間を得て、「育ち直し」の機会を得る少年もいます。18歳・19歳の少年から立ち直りの機会を奪うべきでないと指摘しました。

○山添拓君 日本共産党を代表し、少年法等改正案について質問します。
 法案に先立ち、新型コロナ対策に関し、総理に質問します。
 総理は今月一日、まん延防止等重点措置を初めて適用することとした際、集中的に対策を講じることで緊急事態宣言に至ることを防ぐと述べました。ところが、蔓延を防止できず、三度目の緊急事態宣言が避けられない状況です。その原因をどう認識していますか。第四波は、やむを得ない事態ではなく、やるべきことをやらなかった結果だという認識はありますか。
 大阪府や東京都は、休業要請など強い対策を検討しているといいます。前回より厳しい措置をとるなら、前回を上回る事業者への十分な補償が不可欠です。雇用調整助成金の特例措置を五月以降縮減する方針は撤回し、五月以降引き下げる予定の休業支援金の上限額も維持すべきです。これらを含め、直ちに補正予算を編成すべきではありませんか。
 総理は、東京五輪への影響はないと思っていると述べました。その根拠は何ですか。都知事が東京に来ないでと言う中、五輪開催は無理です。政府として、中止を決断すべきではありませんか。
 検査と医療を抜本的に強化し、感染収束へあらゆる力を尽くすよう求め、以下、法案について質問します。
 本法案は、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられ、民法の成年年齢が十八歳とされたことを理由に、十八歳、十九歳にも成人と同様の刑事罰を科すべきだという議論が契機となったものです。しかし、法律の年齢区分はそれぞれの趣旨や目的により決められるべきです。十八歳選挙権は、若い世代の政治参加と国民主権を実現する重要なものですが、だからといって少年法の適用年齢を改める必然性はないのではありませんか。
 成年年齢引下げの一連の動きは、二〇〇七年、第一次安倍政権が憲法改悪のための国民投票法を強行したことがきっかけです。改憲を狙う政治的思惑の延長線上に、少年法をもゆがめることは許されません。
 内閣府の二〇一五年の世論調査では、少年非行は増加していると答えた人が八割近くに上り、増えたのは、自分の感情をコントロールできず行うもの、凶悪化したもの、集団によるものだと思うとの答えが上位を占めました。
 しかし、少年事件は、ピークだった一九八〇年代以降、事件数でも人口比でも減少し続け、戦後最少を更新しています。殺人、強盗、強制性交など凶悪事件は一%程度であり、凶悪化しているわけでもありません。少年事件が急減していることをどのように認識していますか。現行少年法とこれに基づく保護処分は有効に機能しているのではありませんか。
 にもかかわらず、世論の受け止めとの乖離があるのはなぜだと考えますか。政府は、本来、少年事件の現状と少年法が果たしている役割を正確に情報発信し、少年事件が増加し、凶悪化しているとの誤解を解くことこそ求められているのではありませんか。
 以上、総理に答弁を求めます。
 本法案は、検討段階から異例の経過をたどっています。法制審では、少年法の適用年齢を十八歳未満に引き下げるべきか否か、仮に引き下げた場合にどのような措置が考えられるかが論点でした。ところが、昨年十月の答申は、三年半にわたる議論を経たにもかかわらず、適用年齢引下げは今後の立法プロセスでの検討に委ねるとし、判断を先送りしたのです。同時に、答申は、十八歳、十九歳について特別の規定を設けることとしましたが、これは昨年七月の与党PT合意の内容を反映したものです。
 答申を受け、どのような検討を経て成案を得るに至ったのですか。法制審も、法務省内での検討も、成年年齢引下げの改正民法との同時施行にこだわる官邸、与党の強い意向の下に、法改正ありきで進められたのではありませんか。
 未成年者の事件は、成人の事件と異なり、全て家庭裁判所に送致され、家裁調査官が、少年の資質や背景にある家庭環境、学習環境をきめ細かく調査し、教育的な視点から少年に対する処遇を決定します。現行法がこのような全件送致主義を取っているのはなぜですか。少年の成長発達権を保障し、立ち直りや育ち直しを図るためではありませんか。
 本法案は、十八歳、十九歳について、家庭裁判所から検察官に事件を送り返す逆送の対象事件を大幅に拡大するものです。二〇〇〇年に改正された現行法は、殺人や傷害致死など故意に人を死亡させた場合に限って逆送の対象としていますが、これを法定刑が短期一年以上の懲役などの罪に広げようとしています。強盗や事後強盗など、罪名が凶悪であっても、実際には万引きをして店員に捕まりそうになったので突き飛ばした場合など、行為の態様や結果の大きさはまちまちです。
 短期一年以上の罪に拡大する理由は何ですか。逆送となる事件数はどの程度増える見込みですか。罪名のみで判断して原則逆送の事件を増やすことは、家裁調査官による丁寧な調査や教育的処遇を困難にします。少年の健全な育成という少年法の目的に反するのではありませんか。
 現行法は、少年事件について、実名や住所、顔写真など、本人であることが推知される報道を禁止しています。SNSを含め、インターネットで公開された情報は半永久的に残ります。本人が立ち直りを果たしたとしても、好奇や偏見の目にさらされ、退学や退職を余儀なくされることが容易に想像されます。少年の家族が誹謗中傷を受ける可能性もあります。
 被害者遺族で犯罪被害者を支援する団体の片山徒有氏は、非行少年でも、問題行動を克服して、社会に有用な人材となった例はたくさんある、実名報道にさらされ、疎外される人をつくり出してはいけないと述べています。この声にどう応えますか。
 成人の事件でも、起訴された時点では無罪推定が原則です。被害者報道を含め、刑事事件における推知報道の在り方そのものについて検討が求められているのではありませんか。
 学校に行かずにゲームセンターに入り浸る、家出して帰ってこない、夜間に繁華街をうろつき、出会った仲間と交際する、犯罪に至らなくても将来罪を犯すおそれのある少年は虞犯といい、保護処分の対象とされます。
 本法案は、十八歳、十九歳を虞犯の対象から外しています。十八歳、十九歳で虞犯が減少し、保護の必要性がなくなったという事実があるのですか。公選法や民法との整合性を図るという説明は、少年の立ち直りの機会を奪う理由にはならないのではありませんか。
 私は、先日、群馬県の女子少年院、榛名女子学園を訪れました。虐待やネグレクトなど厳しい生育環境で育った少年が多く、少年院に入り、初めて一日三食の規則正しい生活を経験した、落ち着いて本を読む時間を得た、人に話を聞いてもらえたなど、育ち直しの機会を得る少年もいます。「ケーキの切れない非行少年たち」で知られたように、認知力が弱く、知的障害や発達障害を抱えた少年も少なくありません。虞犯は男子に比べ女子で高い割合を占めています。その理由や背景をどう認識していますか。
 児童福祉法の対象でない十八歳、十九歳が虞犯による保護処分の対象からも外れることになれば、性風俗業への関わりや反社会的勢力に取り込まれるのを防ぐセーフティーネットが失われることになるのではありませんか。
 以上、法務大臣に答弁を求めます。
 コロナ禍で、十八歳、十九歳を含む若い世代は深刻な困難に直面しています。政治に求められているのは、少年法の厳罰化ではなく、若者に手を差し伸べ、少年事件に携わる人や現場への支援を強めることだと指摘し、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(菅義偉君) 山添拓議員にお答えをいたします。
 新型コロナの感染拡大の原因等についてお尋ねがありました。
 専門家によれば、変異株の感染者の増加傾向が続いており、陽性者に占める割合は、大阪、兵庫で約八割、東京でも約三割と上昇し、急速に従来からの置き換わりが進みつつあるということであります。こうした中、政府としては、まん延防止のための重点措置の徹底など、自治体とも連携をしながら必要な対策を講じてきたところであります。
 事業者への支援についてお尋ねがありました。
 今回の緊急事態宣言の休業要請などによって影響を受ける事業者に対しては、しっかり支援を行い、事業と雇用、暮らしを守っていく考えです。御指摘の五月以降の雇用調整助成金や休業支援金の取扱いも含め、その具体的な内容は早急に検討し、お示しをいたします。その対策の実施に当たっては、これまで措置した予算や、必要に応じて五兆円の新型コロナ予備費を活用することで適切に対応してまいります。
 東京五輪についてお尋ねがありました。
 まずは、新型コロナウイルスの克服に全力を尽くしているところです。東京大会については、感染症対策をしっかりと講じ、安全、安心な大会を実現する決意です。このため、選手や大会関係者について、出入国や滞在中に定期的に検査を行うとともに、滞在先や移動手段を限定し、一般の人と交わらないようにするなど、対策を徹底して行ってまいります。
 IOCバッハ会長とも、昨年から、東京五輪を必ず実現することで一致しており、引き続き、東京都、大会組織委員会、IOCと緊密に連携して、しっかりと準備を進めてまいります。
 少年法の適用年齢についてお尋ねがありました。
 今回の改正案では、法制審議会の答申を受け、十八歳及び十九歳の者については、民法の成年年齢の引下げなどの社会情勢の変化も踏まえ、少年法においても、その立場に応じた取扱いをすることとしたところであり、改憲のためなどといった御指摘は当たりません。
 少年犯罪の動向などについてお尋ねがありました。
 少年による刑法犯の検挙人員数は減少傾向にあり、少年法に基づく現行制度は、再非行の防止に一定の機能を果たしていると認識しています。
 御指摘の世論調査の結果については、様々な評価があり得るため、一概にお答えすることは困難ですが、少年犯罪の現状等について国民の皆様の御理解を得ることは重要であり、引き続き正確な情報提供に努めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣上川陽子君登壇、拍手〕
○国務大臣(上川陽子君) 山添拓議員にお答え申し上げます。
 まず、少年法の適用年齢に関する検討経緯などについてお尋ねがありました。
 法制審議会の答申では、十八歳及び十九歳の者の位置付けや呼称については、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当であるとされました。その後、法務省では、この答申に基づく本法律案の立案の過程において、十八歳及び十九歳の者については、十七歳以下の者とは異なる特例規定を設けつつ、全事件を家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することから、引き続き少年法の適用対象とすることが適当であると考えたものです。
 法制審議会の答申は、委員、各幹事がそれぞれの学識経験に基づき調査審議を重ねた結果として取りまとめられ、また、法務省はその答申に基づいて立案作業を行ったものであり、御指摘のような意向や方針の下で議論を進めたものではありません。
 次に、家庭裁判所へのいわゆる全件送致の仕組みの趣旨についてお尋ねがありました。
 現行少年法が、少年事件について全件を家庭裁判所に送致し、家庭裁判所が調査、審判を行った上で処分を決定する仕組みとしているのは、少年の処分は、専門的な調査機構を持ち、少年事件を専門的に取り扱う家庭裁判所の判断に委ねることが適切であると考えられたことによるものです。
 次に、十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件の拡大についてお尋ねがありました。
 十八歳及び十九歳の者については、その責任ある主体としての立場等に照らすと、重大な犯罪に及んだ場合には、十七歳以下の者よりも広く刑事事件、刑事者責任を負うべきものとすることが適当であり、そのような観点からすると、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件を原則逆送の対象に加えることが、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑や犯罪の性質等に照らして適当であると考えたものです。
 実際に逆送決定をするか否かは、家庭裁判所が個別の事件ごとに様々な事情を考慮して判断するものであるため、逆送される人員に、人員数の見込みについて確たるお答えをすることは困難ですが、本法律案では十八歳以上の少年に係る原則逆送対象事件についても現行法と同様に例外となるただし書を設けており、家庭裁判所においては、現行の原則逆送対象事件と同様に、十分な調査等を尽くした上で逆送するか否かについて慎重な判断がなされると考えており、少年法の目的に反するものでもないと考えております。
 次に、十八歳以上の少年に係る推知報道の禁止の一部解除に関してお尋ねがありました。
 推知報道の禁止を定める少年法第六十一条の趣旨は、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わるのを防ぎ、その更生に資することにあります。
 しかし、推知報道の禁止は、憲法上の表現の自由や報道の自由を直接制約する例外規定であることなどからすると、十八歳以上の少年について一律に推知報道を禁止することは、責任ある主体としての立場等に照らし、適当ではないと考えられます。
 もっとも、推知報道の禁止の解除によって健全育成、更生が不当に妨げられることのないよう、関係機関において、事件広報に当たって適切に対応することが必要であると考えています。
 次に、刑事事件における推知報道の在り方についてお尋ねがありました。
 刑事事件の被害者や関係者の名誉、プライバシーが適切に保護されることは、少年事件であるかどうかにかかわらず、重要なことであると考えています。もっとも、そのために報道に対する事前規制を設けることについては、一般に憲法で保障された表現の自由や報道の自由との関係で慎重な検討を要するものと考えています。
 次に、十八歳以上の少年に対し虞犯による保護処分をしないこととする理由についてお尋ねがありました。
 保護処分は、対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うことからすると、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳以上の少年に対して、保護の必要性があるというだけで後見的介入を行うことが、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、国家による過度の介入とならないかといった点で、その許容性、相当性に問題があると考えられます。そのため、本法律案では、十八歳以上の少年については虞犯による保護処分はしないこととしています。
 次に、女子の虞犯少年についてお尋ねがありました。
 虞犯を含め、少年が非行に及ぶ理由や背景については、少年の性別だけでなく、家庭環境や経済的な問題、少年の資質など様々な要因が考えられるところであり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難です。
 最後に、十八歳以上の少年に対し虞犯による保護処分をしないことによる影響についてお尋ねがありました。
 十八歳以上の少年について、虞犯による保護処分をしないとしても、その健全育成のためには対象者の任意に基づく支援、措置が重要であると認識しており、法務省としても、関係機関等と連携しつつ、法務少年支援センターや更生保護サポートセンターにおける各種取組など、少年の非行防止のための取組を強化するなどしてまいりたいと考えています。(拍手)