山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2021年・第204通常国会

深夜の本会議で、土地利用規制法案への反対討論を行いました。

要約
  • 深夜の本会議で、土地利用規制法案への反対討論。 審議すればするほど問題点が浮き彫りになる中、与党は突如として、採決ありきで議事を押し進めました。説明不能に陥ることを恐れるかのように強制終了しようとする姿勢は、断じて許されません。説明できない法案は、国会の責任で廃案にすべきです。

○山添拓君 日本共産党を代表し、土地利用規制法案に反対の討論を行います。
本法案は、憲法が保障するプライバシー権や財産権など基本的人権を脅かし、罪刑法定主義にも反するなど、重大な懸念を幾つも抱えています。
審議すればするほど問題点が浮き彫りになる中、与党は昨日夕刻以降、突如、採決ありきで議事を押し進めるに至りました。これ以上審議すれば政府が説明不能に陥るのを恐れるかのように強制終了しようとする姿勢は断じて許されません。説明できない法案は国会の責任で廃案にするべきです。
本法案は、土地や建物の利用状況調査を名目に幅広い市民監視を可能とするものであり、その歯止めがありません。調査や情報収集の対象は誰なのか、条文上の制限がないことを政府も認めました。あらゆる人が対象となり得ます。
職業や収入、交友関係やSNSでの発信など個人に関わる情報について、土地利用と関係なければ調査対象とならないといいます。しかし、関係があるかどうか判断するのは調査する側であり、条文上も限定はありません。
総理が必要と認める場合には、公安調査庁や自衛隊情報保全隊、内閣情報調査室などから情報提供を受けることも条文上排除されていません。小此木大臣や内閣府が想定していないと幾ら繰り返しても、条文に歯止めがない以上、何の担保もないのです。
二〇〇三年、自衛隊のイラク派兵に反対する市民の活動が情報保全隊により監視され、公にしていない個人情報まで収集されていました。日本共産党が二〇〇七年に公表した文書には、市民や市民団体の集会、署名活動、デモなどの情報が事細かに記録され、イラク派兵と関係しない労働組合や市民団体の活動も広く監視対象とされていました。
こうしたプライバシー情報の収集や保有は、仙台高裁で違法と断罪されたものまであります。ところが、防衛政務官は、個別具体的な内容は答えられないと言うだけで、同様の情報収集活動を続けている可能性も否定しませんでした。いかなる理由で監視対象と定めるのか、防衛省は手のうちを明かすことになるとして答弁を拒みました。まるで市民を敵視するかのようです。
岐阜県大垣市では、巨大な風力発電計画への住民運動を恐れ、警察が脱原発運動や平和運動をしていた市民の個人情報を収集し、電力会社と共有し、運動を潰す話合いまで行っていました。警察庁はこれを通常行っている警察業務だと開き直っています。
権力による市民監視と情報収集は、プライバシー権に余りに無頓着なまま行われ、デジタル化で一層の深刻化が懸念されます。この下で本法案は、総理の一存により更なる情報収集と一元的な管理を可能とするものであり、第三者によるチェックや歯止めの仕組みはありません。
与党推薦の吉原参考人が、この法案ができることで新たな不安が国民の間に呼び起こされては決していけない、どういう歯止めができるのか考えなければいけないと述べました。なぜこの指摘を一顧だにしないのですか。
政府は、役所や事業者、地域住民から情報提供を受ける窓口をつくるといい、密告まで推奨するつもりです。あらゆる手段が総動員されようとしています。
利用規制の対象となる注視区域、売買等の届出義務が罰則付きで課される特別注視区域、いずれも無限に広がり得ます。自衛隊や米軍の基地のほか、生活関連施設として原発や軍民共用空港を政令で指定するといいます。しかし、条文上の限定はなく、大臣はその理由を、内外情勢の変化に応じて重要性が変化し得るからと説明します。
では、現在の安全保障情勢をどう捉え、なぜ原発を対象とするのか、世界一安全とうたう新規制基準で対処できない機能阻害とは何なのか、説明はありません。
生活関連施設は、国民保護法施行令に定めるように発電所や水道施設、一日十万人以上が利用する駅、放送局や港湾、空港、河川管理施設など幅広く指定され得ます。政令で幾らでも拡大できるとしていることは、国会の関与をあえて排除しようとするものと言わざるを得ません。
沖縄では、戦後、米軍が銃剣とブルドーザーと呼ばれる強制的な土地収用を繰り返し、住民が追い出され、基地あるがゆえの被害が今日なお続いています。本法案は、その被害者である沖縄県民を監視の対象にしようとするものです。
連合審査会で沖縄県の伊波議員が指摘したように、普天間基地を擁する宜野湾市は、市民の九割、九万人が一キロ圏内に居住します。加えて、沖縄は、国境離島としてその全島が注視区域とされかねません。安全保障の名の下に、どこまで権利侵害を重ねるつもりなのですか。
勧告、命令、罰則の対象となる機能阻害とは何なのか、法律に定めはありません。予見可能性を確保するために閣議決定で具体的に例示すると言いますが、では、例示した以外は対象とならないのかといえば、必ずしも断言できないとの答弁です。罪となるべき行為は法律に明示されなければならない、罪刑法定主義の原則に反しています。
本院で法案審議が始まった今月四日、沖縄県の北部訓練場で抗議活動を行うチョウ類研究者の宮城秋乃さんが家宅捜索を受け、パソコンやビデオカメラなどを押収されました。米軍から返還された訓練場跡地には、薬きょうや空き缶など廃棄物が散乱し、県警に通報しても回収されない、一帯が世界自然遺産に登録されようとする中、これでよいのかと抗議するために廃棄物の一部をメーンゲート前に置いたことが威力業務妨害などに当たるとされたものです。
米軍が原状回復を怠ったことは不問に付し、またいで通れる程度の空き缶などを並べた宮城さんは強制捜査と連日の取調べ、余りにも恣意的です。半田参考人は、この事例を本法案の先取りだと指摘し、何が機能阻害行為に当たるかは認定する側のさじ加減一つだと批判しました。そのとおりではありませんか。
馬奈木参考人が戦前の要塞地帯法の条文を紹介しました。何人といえども、要塞地帯内水陸の形状を測量、撮影、模写、録収することを得ず、戦前の法律でさえ規制対象は明確でした。しかし、濫用され、国民の自由は奪われ、破局に至るまで戦争に駆り立てられたのです。
今、日本国憲法の下で国民の権利を制限するのになぜ政府にフリーハンドを与えるのかと問われ、大臣が答弁に立とうともしなかったのは、本法案がいかに危ういものであるかを示しています。歴史の教訓を想起するべきであります。
大臣は、五年後の見直しで、機能阻害行為を理由にした強制接収、収用手続を含めた検討も否定しませんでした。戦後制定された土地収用法は、軍事や国防のための収用を認めていません。戦争の反省に立つものです。軍事的な安全保障のために再び国民の私権を制限しようとすることは憲法の平和主義に反すると言うべきです。
大臣は、本法案の立法事実を外国資本による不動産購入を契機とする不安、リスク、懸念と表現しました。しかし、これまで安全保障上の懸念が生じたケースは確認されていません。漠然とした不安を根拠もなく重視すれば、疑心暗鬼が広がります。馬奈木参考人が述べたように、特定の国を潜在的な脅威であるかのように扱うとすればヘイトにも近いと言うべきです。
安全保障上の懸念を持ち出せば何でも通ると言わんばかりに、基本的人権を脅かし、市民監視を強める法案を、時間がない中、提出しておきながら、ごまかしの答弁を意図的に繰り返し、参考人質疑や野党の指摘も無視して採決を強行するなど、断じて許されません。
「#土地規制法案を廃案に」というツイートが今この時間も十三万七千を超えて増え続け、この審議もインターネットで注視されています。
本法案は廃案しかないことを重ねて指摘し、討論といたします。(拍手)