2025年・第219臨時国会
- 2025年11月26日
- 憲法審査会
憲法破壊で言語道断 「台湾発言」巡り批判
○山添拓君 日本共産党を代表し、憲法に対する考え方について意見を述べます。
高市総理は所信表明演説で、憲法改正に向けた議論の加速を求めました。行政府の長として憲法尊重擁護義務を負う総理が、国会に対し、改憲論議を急げとあおるなどもってのほかです。
憲法審査会は、単に憲法のあれこれを論じる場ではなく、改憲原案を審査、提出する権限を持つ機関として設置されました。狙いは改憲です。しかし、改憲はこれまでも今日も政治の優先課題として求められていません。とりわけ今国会で政治に求められているのは、物価高にあえぐ暮らしと営業を支える対策です。憲法審査会は動かすべきでないことをまず表明します。
高市政権は、憲法が求める政治に逆行する暴走を加速しています。米国トランプ政権が求めてきた軍事費増額の前倒しを表明し、敵基地攻撃能力となる長射程ミサイルを全国に配備し、戦闘機と艦船、潜水艦など、攻撃態勢を築き、まさにミサイル列島化を進めています。周辺国が軍備を拡張している、新しい戦い方が広がっていると危機をあおり、厳しい安全保障環境と抑止力強化を呪文のように繰り返し、批判や懸念の声を意に介さず、安保三文書の改定前倒しで一層の軍備拡張を狙っています。
二つの大問題を指摘しなければなりません。
第一に、憲法を全く無視していることです。
戦力を持たないとする九条と自衛隊との矛盾について、歴代政府は、専守防衛を始め、様々な制約により説明を試みてきました。外務省の平和国家としての六十年の歩み、ファクトシートというウェブサイトには、自衛のための必要最小限度の防衛力しか保持せず、攻撃的兵器を保有しない、防衛費の対GNP比は一%程度、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず、非核三原則、武器の供給源とならず武器の売買で利益を得ない、武器輸出三原則などが今も公開されています。
敵基地攻撃能力の保有解禁、軍事費GDP比二%、国是である非核三原則の見直しや武器輸出の全面解禁を狙うなど、憲法九条が変わらず存在する下で、平和国家としての歩みを投げ捨て、九条を無視して軍事大国化を急ぐことは断じて許されません。
第二は、日本を守るためと言いながら、実際には、米軍と自衛隊の一体化を進め、米国の戦争に日本が巻き込まれる危険を高めるという点です。
米国は、ミサイル防衛と敵基地攻撃を一体で行うIAMD、統合防空ミサイル防衛構想により、同盟国を巻き込んだ体制整備を進めています。これは先制攻撃も含む戦略です。日米が統合司令部の創設を進めていますが、情報収集と分析を米軍に依存する自衛隊は、事実上米軍の指揮統制の下に参戦することとなります。日本が攻撃されていなくても、米軍とともに武力行使に及ぶ違憲の集団的自衛権行使を容認した安保法制の下で、この危険は一層深刻です。
その危険が図らずも露呈したのが、高市総理の台湾有事をめぐる発言です。台湾有事で武力攻撃が発生すればどう考えても存立危機事態になり得るとする総理の答弁が日中関係を極度に悪化させています。米国とともに中国に対し武力行使を行う、台湾有事への参戦を公言するものだからにほかなりません。歴代政権は、いわゆる台湾有事が存立危機事態に当たるかどうかを明言せず、特定の地域を明らかにすることを避けてきました。総理の答弁は従来の政府見解からも逸脱しており、外交上の失態です。
中国政府が、既に死文化した国連憲章の旧敵国条項を持ち出したり、歴史的経過を無視して尖閣諸島の領有権を主張したりしていることは看過できません。同時に、問題の発端が総理答弁にあることは明らかであり、事態をこれ以上悪化させないために、速やかに撤回すべきです。
台湾問題は、台湾住民の自由に表明された民意を尊重し、平和的に解決されるべきです。中国の台湾に対する武力行使や武力による威嚇は許されません。同時に、米国や日本が軍事介入することがあってはなりません。ましてや、危機を過大にあおり、大軍拡の口実にすることは許されません。
二〇〇八年の日中首脳会談共同声明は、互いに脅威とならないとしています。両国は、確認した合意に基づき冷静に対話することが何より求められます。それが憲法九条を持つ国が行うべき外交です。
自民党は、九条への自衛隊明記を主張しています。しかし、それは専守防衛や災害救助の自衛隊ではなく、集団的自衛権と敵基地攻撃能力で米国とともに戦争をする、自衛隊の合憲化にほかなりません。新たに連立与党となった維新の会は、九条二項を削除し、国防軍の保持を明記すべきと、九条破壊を露骨に掲げています。
さきに紹介した外務省のファクトシートは、冒頭、次のように記しています。我が国は、過去の一時期国策を誤り、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切なる反省と心からのお詫びの気持ちを常に心に刻みつつ、我が国は戦後六十年一貫して、強固な民主主義に支えられた平和国家として、専守防衛に徹し、国際紛争を助長せず、国際の平和と安定のために持てる国力を最大限に投入してきた。戦後八十年の今年、日本国憲法に刻まれた不戦の誓いを一顧だにせず、戦争国家づくりで憲法破壊を進めるなど言語道断です。
戦後最大の生活保護基準引下げを最高裁が違法としました。全ての被害者に全額の補償を行うべきです。
各地の高裁で違憲判決が続く結婚の自由を全ての人に訴訟は、今週末、東京高裁で最後の六件目が判決を迎えます。速やかに同性婚を可能とする民法改正が必要です。
憲法を壊すのではなく、暮らしに、平和に憲法を徹底的に生かす政治こそ求められていることを強調し、意見とします。