2025年・第219臨時国会
- 2025年12月16日
- 外交防衛委員会
自衛官中途退職 「ハラスメント被害続発の解決なしに確保困難」/米軍無断侵入通報なし パラシュート降下訓練事故 「合意に違反」/ミャンマー軍政による民主派排除の選挙認められない
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法案は人事院勧告に沿って一般職国家公務員と同様に防衛省職員の給与を引き上げるものであり、賛成です。自衛官のなり手を確保し、中堅、ベテランの離職を防ぐためとされます。
二〇二三年度の自衛官の中途退職者が六千二百五十八人と、過去十五年で最多であったことが報じられております。大臣も先ほど中途退職者の問題が今後の懸念だというお話もありました。
二〇二三年四月十一日の当委員会で、当時の浜田大臣が、ハラスメントを原因とする退職もあるかもしれないと、しっかり調査していきたいと述べております。大臣、結果はどうだったでしょうか。
○防衛大臣(小泉進次郎君) まず、山添先生の法案に対する賛成の表明、大変うれしく思います。ありがとうございます。(発言する者あり)ありがとうございます。今回もありがとうございます。
今お尋ねのありました件についてお答えしたいと思います。
先ほどの中途退職者へのこの多さに危機感を持っているというのは私が申し上げましたが、なぜ中途退職がこれだけ多いか、本質的な理由を把握するために、令和五年度及び六年度にかけて、民間会社を活用して、退職した自衛官への聞き取りや現役自衛官等へのアンケートによる調査を実施いたしました。
この調査によりますと、前例主義の組織文化を根源として発生する様々な課題が特定されています。具体的には、異世代へのマネジメント能力の不足、上意下達の慣例、慣習、職場の人間関係などが挙げられ、ハラスメントを含む職場の人間関係を理由として挙げた離職者が一定数いることを把握をしております。
人の組織である防衛省・自衛隊において、特にハラスメントが原因である離職はあってはならないものです。中途退職の理由の把握のための調査を今後も継続をするとともに、引き続き自衛隊の組織文化改革に取り組んでまいります。
○山添拓君 これはやはり人の尊厳に関わる問題でもありますので対応を求めていきたいと思いますし、同時に、例えば十月には宮城県内の陸自駐屯地で約九年にわたって先輩隊員からハラスメントを受けPTSDを発症したとして三十代の男性隊員が提訴するなど、ハラスメント被害はなくなるどころか続いております。この解決なしになり手の確保は困難だということ、これは指摘をしておきたいと思います。
前回の委員会で、米軍横田基地のパラシュート降下訓練で十一月十八日に起きた落下事故について質問しました。驚いたことに、訓練を再開した十一月二十日当日、二度目の事故を起こしていたことが判明しました。資料もお配りしております。
大臣に伺います。米軍は、日本側の要請を無視して訓練を再開し、その日にまた事故を起こし、かつ児童館に何と無断で侵入してパラシュートを回収し、これを日本側に連絡すらしておりませんでした。これ、余りにひどいんじゃないでしょうか。
○防衛省 地方協力局長(森田治男君) お答え申し上げます。
まず、本件の事実関係でございますけれども、お尋ねの事案につきましては、十一月二十日に横田飛行場で行われました空挺降下訓練の際に、福生市の熊川児童館の敷地内にアメリカ軍のパラシュート、主降下傘が、及びパラシュートの一部である誘導傘が落下していたことが確認されたものでございます。なお、本落下による被害は確認されておりません。
アメリカ側からは、十一月二十日の空挺降下訓練中にパラシュートの主降下傘が作動しなかったために、予備降下傘を使用しまして要員は横田基地に安全に着陸しましたが、切り離された主降下傘と誘導傘が風に流されてコースを外れ、基地の外に落下したとの説明がございました。
また、こうした点につきましては、十二月十五日に横田基地司令から福生市長に対して直接説明をしたと承知をしております。
防衛省としましては、十二月一日に、児童館においてパラシュートの一部らしきものが発見されたという連絡を受けまして、アメリカ側に事実関係の確認をした上で速やかに関係自治体へ情報提供を行うとともに、アメリカ側に対して、十一月十八日の事案により中止した訓練の再開日に本件が発生したことに関しまして、安全管理及び再発防止の徹底などについて申入れをしたところでございます。
引き続き、アメリカ側に対して安全管理の徹底と再発防止について強く求めてまいりたいと考えております。
○山添拓君 再発防止を求めていたにもかかわらず再発したわけです。そして、今御答弁の中には紹介がなかったように思いますが、十一月二十日の二件目の、二度目の事故の際、米軍は夜間、児童館の敷地に管理者の許可なく立ち入っております。
これは大臣に伺いますが、日米地位協定上、これを正当化する根拠はあるでしょうか。
○政府参考人(森田治男君) 十一月二十日に落下した主降下傘を回収するために米側が単独で児童館の敷地内に立ち入って回収をしたというふうに承知をしております。
防衛省としましては、米側に対して、施設管理者に連絡なく敷地へ立入りをしたことについて遺憾の意を伝えたところでございます。それに対してアメリカ側からは、今後このような場合は防衛省に連絡するという説明を受けているところでございます。
○山添拓君 遺憾の意は当然ですけれども、法的に正当化される根拠があるかということを伺っています。
○政府参考人(森田治男君) 今回の事案をめぐりまして、施設管理者への連絡の要否といった地位協定の詳細な解釈について立ち入った議論は関係省庁とも米側とも行っているわけではございません。
したがって、地位協定上の解釈について詳細にお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにしても、今回の事案におきまして、防衛省としては、米側に対して施設管理者に連絡なく立入りをしたことについて遺憾の意を伝え、それに対してアメリカ側からは、今後このような場合は防衛省に連絡するという説明を受けております。
○山添拓君 ちょっとそれは困ると思うんですよ。
地位協定上、解釈を行っていないということでしたが、無断で立ち入るということが正当化されるのかどうか、これは整理して委員会に報告いただきたいと思います。
○委員長(里見隆治君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○山添拓君 日米地位協定に基づく合同委員会は、公共の安全や環境に影響を及ぼす可能性がある事件、事故が発生した場合、できる限り速やかに、迅速に関係の防衛施設局に通報するとしております。
今回通報がなかったのは、この合意に反するのではないでしょうか。
○政府参考人(森田治男君) 今回のパラシュート等の落下について、先ほど述べた事実関係でございますけれども、米側から防衛省に対する第一報の連絡はございませんでした。このため、防衛省から米側に対しまして、本件に関する第一報の通報がなかったことに遺憾の意を伝えるとともに、今後は速やかに情報を提供するよう求めたところでございます。
○山添拓君 これも同じなんですけどね、合意に反するんじゃないかということを伺っているんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(小泉進次郎君) 一九九七年の日米合同委員会合意、在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続では、当該事件、事故が公共の安全や環境に影響を及ぼすような場合等の通報について述べたものだと承知をしております。
実際どのような事案が通報されるかについては、事案の態様を踏まえ、個別の事案に即して判断されるものと承知をしておりますが、今般のパラシュート等の落下についてアメリカ側から防衛省に第一報の連絡がなかったことを受け、防衛省としてはアメリカ側に対し、遺憾の意を伝えるとともに、安全管理及び再発防止等の徹底について申入れをしたところであります。
○山添拓君 何だか場合によるかのような話なんですけどね、お配りしている申入れ書にもありますように、今回の落下というのは、多くの市民が利用する場所、子供等にけがを負わせる可能性、運行車両全面に覆いかぶさり交通事故が発生する可能性もあると。重大な事故が発生する可能性があるような、そういうケースだったわけですよね。それを合意に反して日本側への通報も行ってこなかったと、こういう問題だと思うんです。
十八日に米兵が落下した事故、二十日にパラシュートを落下させた事故、それぞれ原因は判明しているんでしょうか。
○政府参考人(森田治男君) これらの事案の発生に関しまして、防衛省からは安全管理の徹底とそれから再発防止の徹底ということを申し入れております。
これに対してアメリカ側については、アメリカ側からは、十一月十八日の事案を踏まえて実施しております使用機材及び手順についての点検を改めて徹底した上で、再発防止のために降下訓練の際に教育を徹底し、安全管理を含めた兵士の練度を高めていくということを取り組んでいると承知しております。
○山添拓君 要するに、原因は分かっていないんですよ、原因の究明をこの文書でも求めていますから。
自治体による抗議と中止の要請、また政府の申入れを無視して訓練を再開し、二度も事故を起こして、正当化されない無断の立入り、通報義務にも違反と、これはまさにやりたい放題です。
大臣、パラシュート降下訓練は中止を申し入れるべきじゃないでしょうか。
○政府参考人(森田治男君) お答え申し上げます。
米軍におきましては、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、日米安保条約の目的達成のために、パラシュート降下訓練を含めて様々な訓練を必要なタイミングで実施し、即応態勢を維持する必要があるというふうに認識をしております。
そのため、防衛省として、アメリカ側に対して訓練の中止を求めるという考えはございませんけれども、引き続き安全管理の徹底と再発防止について強く求めてまいります。
○山添拓君 私は、こういう場面で大臣が答弁にお立ちにもならずに、中止を求めるともおっしゃらない、これ極めて残念ですね。残念といいますか、これではどこの国の防衛大臣かと言わざるを得ないと思います。
残りの時間でミャンマー情勢について伺います。
クーデターから間もなく五年です。国軍は今月二十八日から総選挙を行うと表明し、民主派を排除した総選挙で民政移管を演出しかねないと懸念されています。
先日、民主化に取り組む国民統一政府のジン・マー・アウン外務大臣が来日し、超党派のミャンマーの民主化を支援する議員連盟でもお話を伺いました。
昨日は、アウン・サン・スー・チー氏の次男、キム・エリアスさんが会見し、インチキ選挙を各国が拒絶するよう訴えておられます。
外務大臣に伺います。
今後、総選挙が実施されたとしても、事実上、軍政を継続することになるような政権の発足をミャンマーの正統政府とは認められないと考えますが、大臣の認識をお示しください。
○外務大臣(茂木敏充君) 日本政府としましては、二〇二一年二月にクーデターが発生して以来、国内の混乱が続くミャンマーの総選挙と、これは民主的な政治体制の回復に向けたプロセスとして位置付けられるべきものであると考えております。この点、被拘束者の解放であったり、当事者間の真摯な対話を始めとする政治的進展に向けた動きが見られないままの総選挙が実施をされますと、ミャンマー国民によります更なる反発を招き、平和的解決がより困難になると、このことを深刻に懸念をいたしております。
委員御指摘の、いわゆる新政権と、これができたときの対応についてということでありますけれど、選挙前の段階で予断を持ってこのことについてコメントすることは控えたいと思いますが、いずれにしても、今後の動向を注視して、我が国としてASEAN諸国等々とも連携をしながら適切に対応してまいりたいと考えております。
○山添拓君 今大臣からASEAN諸国との連携もというお話がありました。
ASEANは、クーデター後、ミャンマーにおける暴力行為の即時停止、平和的解決のための関係者間での建設的な対話、人道的支援など五つの合意を確認して、これ、今年十月の首脳会議でもその実施を確認しております。こうした立場は日本政府としても引き続き支持し、共同して取り組む必要があると考えます。
大臣、この点はいかがでしょう。
○国務大臣(茂木敏充君) 基本的にはそういう考えでありまして、二月にクーデターが発生をして、その事態の打開に向けて、二〇二一年の四月にはASEANリーダーズ・ミーティング、当時はブルネイが議長だったと思いますけれど、で合意されました五つのコンセンサスを含みますASEANの取組、最大限日本政府として後押しをしているところであります。
そして、本年十月には、ASEANが関連文書、これを発表したわけでありますが、ミャンマー当局によりますこの五つのコンセンサスの実施について、実質的な進展の欠如、これを深く懸念する旨言及をされておりまして、日本政府としても同様の懸念を有しているところであります。
日本としては、ミャンマー軍に、ミャンマー、ミャンマー国軍に対して、一つは暴力の即時停止、そして二つ目にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含みます被拘束者の解放、そして三つ目に民主的な政治体制の早期回復について具体的な行動を取るように引き続き求めていくとともに、ASEANを始めとする国際社会とも連携して事態打開に向けて取り組んでいきたいと、こんなふうに考えております。
○山添拓君 自由と公正が担保されない選挙への大変な危惧が世界各国から表明をされております。
先日、議連としても、選挙の正統性を認めないように求める書簡を政府に提出しています。国際社会百六十三名の、九か国百六十三名の国会議員が署名したものです。これは国際的な声であり、政府としても重く受け止めるよう求めまして、質問を終わりたいと思います。
以上です。