山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2026年・第221特別国会

ISDS条項 多国籍企業の利益のために投資受け入れ国の主権脅かす/トランプ関税連邦最高裁違憲無効判決 前提崩れた日米合意の撤回を要求/セルビア、パラグアイ、ザンビア、タジキスタンとの投資協定に対する反対討論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
近年、投資協定には、投資家と投資受入れ国との間の紛争解決手続、ISDSが定められることが多く、議題となっている四つの協定にも盛り込まれています。
国連人権理事会の独立専門家は、二〇一五年、こうした協定は人権や環境保護のための国家の規制権限を制約しており、人権や環境に悪影響を与えると懸念を表明しています。
外務大臣に伺います。
投資受入れ国が国内で人権や環境のためにとった措置が外国投資家に不利益をもたらすとしてISDSで仲裁にかけられ、受入れ国が多額の賠償金の支払を命じられることがあり得ます。現にそうしたケースも多々報じられております。そして、それを見越して規制に及び腰になるという萎縮効果も考えられます。
大臣、どういう認識でしょうか。

○外務大臣(茂木敏充君) まず、萎縮効果になるという話でありますけれど、これまで日本としてISDS含めた投資協定たくさん結んできておりまして、全体の日本の輸出入、投資等でいいますと九五%を超えると、こういう形でありますので、それが必ずしも萎縮効果につながっていると考えているわけではありませんが、ISDS手続、これは公正中立的な投資仲裁に付託できるという選択肢を投資家に与えるものであります。これは相手国に投資を行う日本企業を保護するためにも有効でありまして、日本の経済界が重視している規定でもあります。また、相手国から日本への投資の拡大にも寄与するものと考えられます。
日本がこれまで締結した投資協定は、締約国が正当な目的のために適正な手続にのっとって、また差別的でない形で、必要かつ合理的な規制を行うことを妨げるものではありません。
また、日本は、投資協定の締結に当たっては、必要な例外規定であったりとか留保を置くこと等によりまして、国内法との整合性を図り、必要な政策判断の裁量の余地、こういったものを確保をしているところであります。
このように、投資協定の交渉に当たりましては、日系企業によります投資を保護するための選択肢を与える等の目的に加えまして、投資家の利益と国家の規制権限のバランスの確保の観点も重要と認識をいたしております。
政府としては、こうした観点も踏まえながら、ISDS手続の規定を含め、我が国の国益に資するような内容の協定となるよう、今後とも鋭意取り組んでまいりたいと考えております。

○山添拓君 我が国が必要かつ合理的だと考えて行った規制が後に紛争で争われる可能性があるという、そういう制度です。
今回の四つの協定ですが、投資家の義務として、受入れ国の人権や環境保護のための措置を遵守するよう求める、そういう規定というのはあるでしょうか。

○外務省 中東アフリカ局アフリカ部長(高橋美佐子君) お答え申し上げます。
今回の四本の投資協定におきましては、健康、安全及び環境に関する措置並びに労働基準に関する条を設けており、投資を目的に、健康、安全又は環境に影響を与えるような措置の緩和及び労働基準の引下げを行うことは適当ではないと定めております。
投資協定を含め、日本から海外への投資においては、人権や環境といった点への配慮も必要と考えております。
また、投資協定の有無にかかわらず、海外に進出した日系企業は、地域社会への貢献を積極的に行う例が多いと承知しております。
引き続き、日本からの投資を受け入れる国や地域の状況に配慮しつつ、投資環境を整備し、日系企業による投資を後押ししていきたいと考えております。
いずれにしましても、投資協定の交渉に当たりましては、投資家の利益と国家の規制権限のバランスの確保の観点も重要と認識しております。政府としましては、こうした観点も踏まえながら、我が国の国益に資するような内容の協定となるよう、今後とも鋭意取り組んでまいります。

○山添拓君 今御説明があったのは、受入れ国側が規制してよいと、そういう規定だけで、投資家の義務を定めたものではありません。外国の投資家が日本の裁判制度、憲法秩序の枠外で日本国内の人権や環境保護の規定を争い得るとすること自体が私は大問題だと考えます。多国籍企業の利益のために、これ、日本であれ他国であれ、投資受入れ国の主権を脅かすISDS条項を含む投資協定には賛成できません。
対外投資と関わって、この際、トランプ関税について伺います。
米国連邦最高裁は、二月二十日、トランプ大統領が世界各国に一方的に課した相互関税などを違憲無効とする判決を下しました。トランプ氏が根拠とした国際緊急経済権限法、IEEPAは、緊急事態宣言の下で輸入を規制する権限を認めていますが、関税を賦課する権限までは大統領に与えていないとするものです。
米国は、憲法で課税権を議会に与えています。代表なくして課税なしです。そこで、議会への説明も同意もないまま大統領が課税するのは違法としたものです。これは、トランプ氏が指名した二人の裁判官も判決に賛成しています。
大臣に伺いますが、この間の首脳会談や外相会談の公表された文書では、トランプ関税が最高裁で違法となったことへの言及は確認できません。米側にいかなる対応を求めたのでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 御指摘いただきました判決、これを受けまして、まず、速やかに日本政府から米国政府に対しまして、通関等の現場の混乱によりまして、日本企業を含みます現地の輸入業者に悪影響が生じないよう申入れを行いました。その後、米側は、米国税関・国境警備局におきまして関税還付のシステムを導入し、運用してきていると承知をいたしております。
また、我が国としては、米側に対して、米国政府が新たな関税措置をとる中で、日本の扱いが昨年の日米間の合意より不利になることがないよう、あらゆるレベルで確認をしてきております。
私自身、昨日、訪日中のベッセント財務長官と会談をしまして、関税に関する日米の合意の着実な実施、確認をしたところであります。

○山添拓君 そもそもの出発点のトランプ関税、相互関税が違法とされたわけです。着実な合意ということでよいのかが問われます。
私は、昨年、国際貿易裁判所の違法判決について質問した際に、当時の岩屋大臣、内容や影響を十分精査すると答弁がありました。最高裁判決の第一報を受けた赤澤大臣のコメントも同様でした。
ところが、トランプ氏が判決直後に、ばかげた判決を盾に駆け引きをしようとする国はより高い関税を課す、そういう表明をしたせいか、その後、この判決について公式の場では述べられておりません。
トランプ氏は最高裁判決を受け、代替措置として、今度は一九七四年通商法百二十二条を根拠に、全ての国からの輸入品に百五十日間限定で一〇%の関税を課す大統領令を発動しました。
資料二枚目にありますが、米国の国際貿易裁判所は、五月七日、この百二十二条関税について違法と判断しました。御説明ください。

○外務省 経済局長(股野元貞君) お答え申し上げます。
お尋ねの判決につきましては、通商法第百二十二条に基づく暫定輸入関税は違法、無効であるとしつつ、一部の原告のみに対して同関税の適用の差止めを命じたものと理解しております。この判決を受けまして被告側の米国政府が控訴するなど、引き続き係争中の状況であるというふうに承知しております。
いずれにしましても、引き続き関連の動向を注視しながら、その影響を十分に精査しつつ、適切に対応していきたいと考えております。

○山添拓君 判決の結論だけで中身の御説明がなかったので、余り精査されているように感じなかったんですが。
この百二十二条というのは、国際収支が大規模かつ深刻な赤字である場合に関税を課すことができるというものです。トランプ政権は国際収支の赤字を貿易赤字と読み替えて関税を発動しましたが、巨額の貿易赤字があっても、物だけでなくサービスや投資の配当、利子なども含めた国際収支全体を赤字とする根拠は薄弱、こう判断したのが判決です。
違法とされたその新関税は、百五十日間の暫定措置で、元々七月下旬には期限を迎える予定でした。トランプ政権はこの間に別の関税措置を検討中だとされます。その一つが通商法三百一条に基づく恒久的な関税です。これは相手国の不公正な貿易を理由に制裁関税を課せるとするもので、米国政府は既に、日本や中国が自動車などを過剰に生産して不当に安い価格で輸出しているなど主張しています。
この三百一条関税の発動には、百二十二条とは異なって、綿密な事前調査、証拠を示す必要があるとされています。日本政府に対して何らかの事前調査は既にあったのでしょうか。

○政府参考人(股野元貞君) お答え申し上げます。
今の御質問の件は、まさに通商代表部が三月十二日に、製造業における過剰生産能力、強制労働等に対して、日本を含む複数国の地域対象に通商法第三〇一条に基づく調査を開始したという旨発表しております。
その上で申し上げますと、我が国としては、今後明らかになる措置の具体的な内容、それから我が国への影響を十分に精査しつつ、適切に考え、対応していきたいと考えておりますが、その一方で、米国からは既に、この今般の調査の開始に伴いまして協議要請があった状況ではございます。
その一方で、今後の対応につきましては現時点で予断することは差し控えますが、緊密な意思疎通、継続していきたいと考えております。

○山添拓君 既に協議要請があったということでしたが、私、この出発点の相互関税をめぐって最高裁判決、連邦最高裁が示したのは、議会の承認なく大統領の権限で関税を課すこと自体が違憲というものだと思います。今後、どれだけ手を替え品を替え関税を持ち出したとしても、トランプ政権による関税の全てについて今後も違憲が問われ得るということです。
私は、新たな関税のための事前調査を受ける場合には、政府は何よりも、こんな法的安定性を害するようなやり方はやめよと求めるべきだと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(股野元貞君) いずれにしましても、現在、具体的な措置の内容及び我が国への影響を十分に精査する状況でございますが、一方で、この三〇一条の調査手続におけるパブリックコメント手続におきましては、今般の調査に対する日本政府としての立場を明らかにしておりまして、また、米側に対して日本の立場、これを明らかにすべく、我が国としての意見を提出しているところでございます。

○山添拓君 大臣、どうですか。こんな法的安定性を害するような、手を替え品を替え、やめるよう求めるべきじゃありませんか。

○国務大臣(茂木敏充君) いずれにしても、日米間では既に通商問題については合意をしておりまして、日米の相互利益の促進、経済安全保障の確保に向けた協力の拡大、経済成長の促進につながる、そういった合意であると考えておりまして、我が国として合意を引き続き着実に実施する考えでありまして、同時に、米国に対しても合意を着実に実施するよう引き続き求めていきたいと思います。

○山添拓君 いや、我が指摘しているのはその合意の前提が崩れているという話です。
連邦最高裁の違憲判決で日本が約束した対米投資も前提を失っています。トランプ氏が通告した二四%に上る高関税を免れるために、五千五百億ドルの対米投資で一五%まで引き下げてもらったと、これが協議でした。しかも、その後の通商法百二十二条に基づく実効税率は一一%から一三%だと。巨額の投資約束で勝ち取ったはずの一五%の合意よりも現実には低い関税に今なっているわけですね。どちらも根拠が崩れている。
トランプ氏は、今後、投資の進捗に不満があれば一五%まで引き上げると言って、関税を人質にして投資を実行させようとしていますが、現在続いている百二十二条関税それ自体違法となり得る、既に違法と判断されているものでもあります。五千五百億ドル、八十七兆円というのは、国債の償還や利払いを除く日本の実質的な国家予算に匹敵する額です。これを残り三年足らずのトランプ政権の期間中に提供するという約束、これ、大臣、こんなに法的に安定性を欠いて次々に違法と判断されているような、この先も違法判断が目されるような、その下で対米投資だけは合意したことだと言ってやってくるんですか。撤回を求めるべきじゃありませんか。

○国務大臣(茂木敏充君) 恐らく、山添委員と考え方が違いますのは、山添委員は一方的に日本の資金を米国に提供する、こういうお考えだと思うんですが、今進めております日米合意、これは先ほども申し上げたように、日米の相互利益を促進すると、経済安全保障の確保に向けた協力、これは極めて重要でありまして、日米間で進めていく、また経済成長の促進につながるものだと思っておりまして、何か一方的に、関税のために日本が資金を一方的に提供するという、こういう内容だとは理解いたしておりません。

○山添拓君 米国は出資も融資もしませんよ。元本回収まで日米五割ずつ、そして元本回収後は米国は九割を得るというスキームです。投資の決定はトランプ氏です。リスクの大半は日本です。こんな不平等な話がありますか。
今日、皆さん、国益、国益とおっしゃりますけれども、米国内では既に反対の世論も広がり、最高裁も含めて違法判断を下して、その下で日本だけは合意に基づいてと言って投資を続けていく、こんな不合理な話はありません。
私は関税だけじゃないと思うんですね。力の支配を振りかざしてホルムズ海峡封鎖の事態を招いて、日本と世界の経済に大混乱をもたらしています。そのトランプ政権の米国にひたすら従属を続けて国益を損なうのはもうやめるべきだと指摘をして、質問を終わります。

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