山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2026年・第221特別国会

合区解消の改憲議論批判 1票の格差 意見表明

○山添拓君 日本共産党を代表し、憲法に対する考え方、特に参議院議員選挙における一票の較差について意見を述べます。
憲法前文は、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定するとしています。
民意を正確に反映した国会で徹底した議論を通じて国の進路を決めることこそが国民主権の議会制民主主義です。それは、天皇制政府が軍部と一体に推し進めた戦争がおびただしい犠牲をもたらした歴史を持つ我が国における日本国憲法の強い要請です。
言うまでもなく、選挙権は参政権の中心を成す基本的人権であり、選挙制度は議会制民主主義の根幹です。参議院議員の選挙制度について、投票価値の平等を定める憲法十四条一項、選挙権を国民固有の権利とする十五条一項、国会議員が全国民の代表であるとする四十三条一項など、憲法の諸規定を満たすことが求められるのは当然です。
昨年七月の参院選の一票の較差は、最大三・一三倍でした。較差が最大三・〇三倍だった二〇二二年の参院選について、最高裁が、是正は喫緊の課題として国会に対応を促したにもかかわらず、何ら改善なく行われ、較差が拡大したものです。投票価値の平等に反し、違憲として提起された十六件の裁判は、既に高裁判決が出そろい、違憲状態が十一件で七割を占め、合憲は五件にすぎません。違憲状態と断じた福岡高裁は、国会の較差拡大の是正に対する熱意の低下が明らかにうかがわれると批判し、合憲とした東京高裁も、二八年の次回参院選までに較差を是正せず結論を更に先延ばしにするようなことがあれば違憲の判断も免れないと言及しています。
国会に求められているのは、最高裁判決を待つまでもなく、一票の較差を是正する抜本的な見直しを速やかに進めることです。このことは既に累次の最高裁判決でもはっきりしています。参議院議員の選挙制度を違憲状態と断じた二〇一二年最高裁大法廷判決は、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難いとしていました。参議院議員を都道府県単位で選出しなければならないという憲法の規定はなく、投票価値の平等、一票の較差是正のための仕組み自体の見直しこそ求められてきました。
ところが、自民党などは、二〇一二年には四増四減で先送りし、一五年には二合区十増十減でごまかしました。同改定は附則七条に、抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得ると記しましたが、一八年の改定では、抜本的な見直しに背を向けたばかりか、合区により立候補できない自民党の議員候補者を事実上救済するために、比例代表の特定枠を導入し、一層党利党略を強めました。加えて、憲法改正こそが抜本的な改正だなどと開き直る主張まで始めましたが、それはおよそ、司法判断に真摯に向き合い、基本的人権である選挙権の保障を全うしようという姿勢ではありませんでした。合区制度の導入から十年、一部の県だけが対象となる合区制度が不公平であることは当初から明らかであり、合区対象県における有権者の意向や投票動向のいかんにかかわらず、速やかに解消すべきです。
この間の当審査会では、自民党議員から、合区制度の弊害が顕著、議会制民主主義の根幹をゆるがせにするなどという発言がありました。一五年の法改定は、当時の政治倫理選挙特別委員会での審査が省略されるなど不十分な審議で採決され、本会議では、合区対象の四県選出の自民党参院議員六人全員が採決前に退席するという異常な経過で強行されました。会派としての猛省を促すものです。ましてや、自ら導入を強行した合区制度の欠陥を理由に改憲の論拠とするなど、道理がありません。
当審査会で上田参考人は、選挙制度とそれにより選ばれる代表者の権限との間には密接な関係があることを強調しました。大石眞教授の権限と組織は相関関係にあるという言葉を引用し、両院の権限が対等であれば第二院の民主的正統性、すなわち投票価値の平等は強く求められ、非対等であるならこの要請はかなり弱まる、この論理は普遍的なものであり、日本でも妥当すると述べています。
日本国憲法は、首相指名と予算、条約の承認や法案審議に関して衆議院の優越を規定しています。しかし、衆参両院は、共に唯一の立法機関を構成し、両院の国会議員はいずれも全国民の代表であり、衆参両院は憲法上対等な存在です。参議院が再考の府、熟議の府としての役割を発揮し得るのもこうした前提があってこそのことです。
平井参考人は、我が国で二院制が採用された意義は熟議を尽くすことに尽きると意見を述べました。その熟議の内容として、地方政治を担う立場から、委員会で地方の実態を踏まえるような審議を行ってはどうかという提案もありました。志摩参考人は、多様な民意を反映させるために衆参両院があり、参議院における熟議、再考を果たす役割を強調しました。同僚議員の皆さんの中に、こうした参議院の独自の意義を否定される方はまずいらっしゃらないでしょう。そうである以上、参議院議員選挙について、衆議院と異なり、投票価値の平等を後退させてよい理由はありません。
日本共産党は、投票価値の平等の実現を目指す抜本改革とすること、多様な民意が正確に議席に反映する制度とすること、参院の立法と行政チェック機能を弱め民意を削る定数削減は行わないこと、以上三点を基本的な考え方とすることを表明してきました。こうした方向での抜本的な見直しこそが国会に求められています。
合区解消のために憲法改定を掲げ、都道府県代表という選挙制度に固執するために、参議院の権限や役割まで変えてしまいかねない議論は本末転倒と言うほかありません。
なお、こうした選挙制度をめぐる一連の議論は参議院改革協議会や選挙制度を所掌する政治改革に関する特別委員会の議題であり、現に改革協には合区解消の具体策などを検討する専門委員会も設置されました。改憲発議のための機関である憲法審査会を動かす理屈にはならないことを厳しく指摘するものです。
朝日新聞と東大谷口将紀研究室が共同で行った調査では、最も優先的に取り組んでほしい政治課題十二項目のうち、憲法すなわち改憲を選択した有権者は僅か一%にすぎませんでした。最も多かったのは年金、医療、介護三八%、次いで財政、税制、金融一七%、さらに子供、子育て、教育一三%と続きます。
高市首相は、自民党大会で時は来たと改憲をあおり、憲法記念日の改憲派の集会に寄せたメッセージでは、改憲について、議論のための議論であってはならない、決断のための議論を進めるなどと改憲ありきの姿勢を強調しました。しかし、国民は政治に対して決して改憲論議の加速を望んでいません。世論の履き違えも甚だしい暴走と言うほかありません。
五月三日、東京有明防災公園には五万人が集まり、憲法改悪反対、九条を守れと声を上げました。昨夜も国会前に一万人、全国各地でも連帯するペンライトデモが行われました。
AFP通信は、昨年、紛争や暴力で国内避難を強いられた人々の数が統計上初めて自然災害や人的原因による、災害による避難者の数を上回ったと報じました。昨年一年間に新たに六千五百八十万件の国内避難が報告され、そのうち、紛争と暴力に起因する国内避難は前年から六〇%も増え三千二百三十万件、一方、嵐や洪水その他の災害による避難は二千九百九十万件だったといいます。その後も新たな戦争が進行し、暴力による避難は一層増えることが予想されます。
私たちの国の政治が行うべきは、続く戦争を終わらせるための外交交渉であり、更なる戦争を絶対に起こさせないための外交努力です。国際紛争を武力の行使、武力による威嚇で解決することを放棄した九条、全ての国の国民に平和的生存権、恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生きる権利を掲げた前文、この日本国憲法こそ世界に平和をもたらす最も確かな力であることを指摘し、意見とします。

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