2024年5月9日
今国会で初 憲法審査会の実質審議
8日、今国会で初めて憲法審査会の実質審議があり意見表明を行いました。
緊急時の議員任期延長で条文案をと暴走する衆議院とは異なり、参議院ではいわゆる改憲勢力の会派も任期延長には慎重姿勢が目立ちます。そこで引き続き参議院の緊急集会を議論せよとの意見がいくらか出されました。
私は、裏金事件の真相解明もないままでは、そもそも改憲論議の前提を欠くという角度で発言しました。
日本共産党を代表し、「憲法に対する考え方」について意見を述べます。
憲法審査会は、改憲原案や改憲発議を審査するための国会の機関であり、議論を進めれば否応なく改憲案のすりあわせに向かいかねません。
日本共産党は、国民世論が改憲を求めないなか審査会を動かすべきではないと繰り返し主張してきました。5月3日の憲法記念日を前にした共同通信の世論調査では、「国会で憲法改正の議論を急ぐ必要があるか」という問いに、「急ぐ必要はない」と答えた人が65%でした。国民の声に逆行し、国会が改憲ありきで進むことは許されません。
にもかかわらず岸田総理は、自らの「総裁任期中に改憲を実現したい」と繰り返し、通常国会冒頭の施政方針演説では、「条文案の具体化を進め議論を加速する」とまで述べました。行政府の長が国会審議の進め方に介入し、憲法尊重擁護義務に反して改憲論議を国民と国会に押しつけるなど言語道断です。
総理の発言には、内閣支持率が低迷するなか改憲をアピールすることで自らの求心力を確保したい意図が見え隠れします。政権延命のための最悪の政治利用です。
毎日新聞の世論調査では、岸田総理在任中の改憲に「賛成」は27%と総理の就任以後最も低くなり、逆に「反対」は52%と最も高くなりました。総理の思惑が国民に見透かされています。もとより、こうした総理の姿勢に乗じてとにかく改憲を急げとあおるのも、極めて不当です。
4月28日、3つの衆院補選で自民党がいずれも議席を失う結果となったのは裏金事件をめぐる国民の厳しい審判にほかなりません。
政治資金規正法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」、政治資金の収支報告を求め、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的」とする法律です。この間明らかになった自民党の裏金事件は、主要派閥が長年にわたり政治資金パーティーの収入を裏金化してきたという、組織的で継続的、そして悪質な犯罪行為であり、国民を裏切るものです。
憲法前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する」としています。裏金議員の弁明は、「裏金を不正に使ったことはない」と根拠もなく語るばかりで、選挙犯罪に使われた疑いさえ拭えません。現在の議席は、公正な選挙の結果によるものとはいえない可能性が否定できず、「正当に選挙された国会における代表者」に値しないのではないかとの批判を免れません。民主政治の土台を揺るがす事態を招いた法律を守れない議員に、改憲を語る資格はありません。
自民党は、いつ、誰が、どのように裏金システムをつくり、何に使ってきたのか、洗いざらい明らかにすべきです。政倫審での「知らぬ、存ぜぬ」「秘書に任せていた」との弁明と、事実の解明もなく行われた形ばかりの処分による幕引きは断じて許されません。
国会はその役割を果たし、関係者の証人喚問をはじめ真相解明を行うべきです。改憲論議について審議の進め方にまで口を挟む総理が、裏金事件の真相解明となると「国会のことは国会で」と逃げ回るのは、あまりにも身勝手です。
憲法を変える議論ではなく、憲法とりわけ9条を壊してきた政治を改める議論こそ、焦点です。
歴代政権は、「専守防衛」を主張し、攻撃的兵器は持たない、海外で武力行使をしない、軍事費はGNP比1%程度、国際紛争を助長する武器輸出は行わないなど、曲がりなりにも「平和国家」としての縛りを設けてきました。
ところが岸田政権は、安保三文書を閣議決定し、敵基地攻撃能力の保有を解禁し、軍事費はGDP比2%以上へ増額を進め、最新鋭の戦闘機を含め殺傷兵器の輸出まで解禁しようとしています。日米首脳会談では、自衛隊と米軍をシームレスに「統合」し、事実上、米軍の指揮下に自衛隊を置く事態まで容認しました。米国のエマニュエル駐日大使は、「岸田政権は2年間で70年来の日本の安全保障政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」と評価しましたが、まさに根底から、ことごとく踏みにじっています。
「ウクライナは明日の東アジアかも知れない」といい、平和のためには軍事的抑止力の強化しかないかのように描き、危機に乗じて大軍拡を進めています。しかし、抑止力の向上を理由に軍事力を強めれば、相手も対抗し、結果として脅威を高める、「安全保障のジレンマ」に陥ることは明らかです。
戦争をさせないための外交戦略こそ必要です。
日本共産党は先日、「東アジアの平和構築への提言」を発表しました。ASEANと協力し、東アジア規模で平和の枠組みを発展させる提案です。アメリカか中国かという分断と対立、排除ではなく、地域のすべての国々を包摂する枠組みで対話と協力を進める、AOIP=ASEANインド太平洋構想は、日本も支持するASEANの方針です。そうである以上、対中包囲の軍事ブロックづくりではなく、たとえ紛争があっても戦争にさせない地域にする、徹底した外交努力を尽くすことが、9条をもつ日本の責任です。
裏金づくりの腐敗にまみれ、憲法をこわし、平和もくらしも脅かす自民党政治は、終わらせるしかありません。憲法をいかし、命とくらしを守り、人権と民主主義を実現する政治へ転換する決意を述べ、意見表明とします。