山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2022年5月19日

憲法審査会で「合区」問題について意見表明

18日は参議院憲法審査会で意見表明。参議院選挙の「合区」問題がテーマです。
なぜいま?という感じですが、自民党議員がこぞって主張したのは、「自民党改憲項目の最優先課題の一つだから」ということ。
2015年、選挙制度の抜本改革に背を向け、委員会審査も省略して本会議でいきなり押し通して「合区」をつくったのは自民党ですが、わずか3年後の2018年には「合区解消」を改憲項目に掲げ、この日の国会では「合区が地方の声を切り捨てている。これを放置するのは国会議員として許されない」と力説。
 
日本共産党や立憲民主党だけでなく、公明党や維新の会も含めて「合区解消」のための改憲には反対の意見を表明。
党利党略で選挙を歪めるやり方は、いい加減に改めるべきです。
 
私の意見表明原稿をご紹介します。
 
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 参議院選挙の選挙区の合区問題について、意見を述べます。
 選挙権は、参政権の中心をなす基本的人権であり、選挙制度は議会制民主主義の根幹です。参議院議員の選挙制度は、投票価値の平等を求める憲法14条1項、選挙権を国民固有の権利とする15条1項、国会議員が「全国民の代表」であるとする43条1項など、憲法の要求を充たすことが求められます。
 
 2009年の最高裁判決は、投票価値の平等の観点から、参議院選挙区選挙の仕組み自体の見直しを提起しました。ところが自民党は、2012年に4増4減で先送りし、15年には2つの合区を含む10増10減で取り繕い、18年には合区で立候補できない自民党の議員・候補者を事実上救済する比例代表「特定枠」を導入し、党利党略を優先したのです。
 わが党は、一部の県だけが対象となる合区制度は不公平であるとして反対し、多様な民意を議会に反映させる比例代表を中心とした選挙制度への抜本的な見直しを提案してきました。較差是正に向けた議論こそ必要です。
 15年改定公選法の付則7条は、「抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」としていました。自民党が18年の改定について、一方で抜本的な見直しの一つであると強弁しながら、憲法改正こそが抜本的な見直しだと述べ、抜本改革に背を向けるばかりか改憲の口実にしたのは言語道断です。
 
 19年参議院選挙について20年の最高裁判決は、結論こそ合憲としたものの、都道府県を選挙区制度の要素とすることは、「投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて」認められるとしています。また、「国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、参議院議員選挙については直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見出し難い」とし、国会に更なる較差是正を求めています。
 
 元最高裁判事で、いわゆる定数訴訟にもかかわってきた千葉勝美氏は、参議院改革協議会の参考人質疑で次のように述べています。「参議院議員も、いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず、全国を代表して国政に携わることが要請されている」「都道府県を単位とする地方代表制は、憲法が許容しているとは言い難い。定数配分が人口比例と関係なく行われるため、投票価値の較差は増大する。憲法14条等の許容範囲と言えるかどうかは難しい」「では憲法改正で都道府県を単位とする地域代表制の選挙区を憲法自体に規定することはどうか。それ自体は一般的には可能だが、アメリカやドイツの州と同様に、我が国の都道府県が独立性を付与されるだけの歴史的、社会的、政治的実態があるのか。それがなければ改憲自体の合理性に疑義が生じてくる」。
 同じ改革協で只野雅人参考人は、「憲法上、参議院に衆議院にも対等に近い強い権限があるということになると、衆参共にその権限にふさわしい民主的な基盤を備える必要がある。参議院にも権限の正統性が問われ、投票価値の平等が求められる理由も十分にある」と述べています。
 いずれも傾聴すべき意見です。
 
 憲法は、選挙制度を設計する前提として投票価値の平等を要求しています。一方、都道府県を選挙区の単位としなければならない憲法上の要請はありません。現在の仕組み自体を見直すべきです。
 なお、2018年の自民党改憲素案は、参議院について都道府県単位での選挙区を認めると同時に、両議院の選挙区を、「人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して」定めるとし、衆参双方で投票価値の平等を選挙制度構築に当たって考慮する一要素に格下げしようとするものであり、看過できません。
 
 較差解消のために人口比例原則を重視すると、地方の声が国政に反映されにくくなるといいます。しかし、自民党政治の実態はどうか。
 沖縄の本土復帰から50年。今年新たに決定された「建議書」は、「復帰時、沖縄県と政府が共有した『沖縄を平和の島とする』という目標は、50年経過した現在においてもいまだ達成されていない」とし、日米地位協定の抜本的見直しや辺野古新基地建設の断念、憲法に基づき民意や地方自治体の判断と責任の原則を尊重することを求めています。地方の声を反映するどころか、無視し、踏みにじってきた歴史と現実を直視すべきです。
 
 問われているのは、「合区」による一時しのぎでも、「合区解消」の改憲でもなく、ましてや改憲論議を推進するために憲法審査会を動かすことでもありません。
 民意を反映する選挙制度への抜本改革と、地方を含め民意を受け止め憲法を守りいかす政治への転換こそ求められていることを強調し、意見とします。

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