山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2023年4月26日

「国民生活・経済及び地方に関する調査会」まとめの意見交換

「国民生活・経済及び地方に関する調査会」は2月から4回、計12人の参考人から意見を聞き、今日そのまとめの意見交換となりました。

調査会は参議院独自の制度で幅広い参考人を招くほか委員間の意見交換もあり、ユニークです。多忙な時期に入ってくることもあり大変な場合もあるのですが…

私の発言原稿をご紹介します。

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 本調査会のテーマである「誰もが取り残されず希望がもてる社会の構築」、社会経済、地方の現状と国民生活における課題にかかわって、意見を述べます。

 長期にわたるコロナ危機と物価高騰の下で、国民生活は深刻な困難に直面しています。自立生活サポートセンター・もやい理事長の大西連参考人は、増え続ける食糧支援の利用者に若年層、女性、子育て世帯が多く、この層に「しわ寄せがかなり来ている」と指摘しました。

 しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子参考人は、コロナ禍、非正規で働く一人親世帯への支援が乏しいことを指摘した上で、母子世帯の就業率が86.3%と世界一高いにもかかわらず、その年間収入は236万円と低く、一人親家庭の相対的貧困率は先進国で最悪だと述べました。

 コロナを機に露呈したこうした困難は、いまに始まったことではありません。

 東京都立大学教授の阿部彩参考人は、子どもの貧困率の悪化の原因を30年間にわたる親の稼得能力、貧困からの防御力の低下にあると分析しました。

 ニッセイ基礎研究所上席研究員の久我尚子参考人は、女性の非正規雇用率が高く男女の賃金格差につながり、経済基盤としても不安定になると述べました。

 非正規雇用の拡大は自然現象ではありません。1985年の派遣法制定とその後の拡大に象徴される、政治による誘導があります。95年の旧日経連「新時代の『日本的経営』」に露骨に示されていたように、労働力の弾力化と流動化による総人件費の節約と低コスト化をめざす、大企業の利潤追求に呼応したものです。

 日本では、生産性が上がっているにもかかわらず賃金が上がっていません。大企業が空前のもうけをあげても、もっぱら配当や内部留保に回されてきたという分配のゆがみに大きな問題があります。

 打開のためには、非正規から正規への流れをつくることが不可欠です。介護や保育、ケア労働での賃上げ、公契約法の制定など公的分野からの底上げが求められます。

 最も実効的な賃上げは最低賃金の引き上げです。

 昨年の最低賃金改定は6月時点の物価上昇率3%を前提としていますが、実際に改定された10月は4.4%、今年1月には5.1%に達し、物価上昇に追いついていません。再改定が直ちに必要です。

 くらせる最低賃金にするために、中小企業支援とセットで全国一律時給1500円をめざし速やかに引上げるべきです。日本共産党は、大企業の内部留保に対する時限的な課税により中小企業支援の財源を生み出すことも提案してきました。正規も非正規も賃金の底上げにつながる、合理性と実効性のある案だと考えます。

 働く世代の所得減少は、子育てにお金がかかりすぎるもとで少子化に拍車をかけることともなっています。子どもの医療費無料化や学校給食費の無償化を政府として進めていくべきです。高等教育無償化の必要性を複数の参考人が言及しました。しかし、岸田政権の少子化対策は、この点にまったく答えていません。授業料の負担そのものを軽減し、給付型奨学金を中心にすることこそ求められます。

 持続可能な地域社会総合研究所所長の藤山浩参考人は、人口減少など地方が抱える問題についての政治の課題として、予算の中途半端さ、選択と集中による切り捨て、循環型社会を考慮するなど未来型の必要性、平成の大合併が地方の自己決定権を奪ったのではないか、そして市町村の公務員が少なすぎる、という5点を挙げました。いずれも傾聴に値する指摘であり、国会としても検証し対応すべきです。

 今国会では地域公共交通法が改定され、赤字ローカル線のあり方を話し合う「再構築協議会」の設置が進められようとしています。関西大学教授の宇都宮浄人参考人は、この協議会の議論の方向性について、「国交省が地域に求めているのは、本音ベースでは、運輸事業での収支を上げろ、生産性を高めろというものだ」と批判しました。道路建設ばかりにお金を出す硬直化した予算配分を見直し、上下分離方式など公共インフラとしての鉄道を維持するための方策を検討すべきです。

 障がい者の脱施設化をめぐる課題、子どもの自殺者の増加など、「誰も取り残されず希望がもてる社会」とほど遠い現状を直視し、一人ひとりの困難に文字通り寄り添う政治へ転換すべきであることを強調し、意見とします。

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