山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

軍事優先財政が深刻化 防衛調達法改定案可決

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
予算は、会計年度ごとに国会で審議する単年度主義が原則です。これは、戦前、侵略戦争に突き進む中、軍事費を特例扱いし、多大な犠牲をもたらした痛苦の経験を踏まえたものであり、財政民主主義の大原則に基づきます。
とりわけ軍事費については、厳格な民主的コントロールが必要だということを意味しますが、まず、防衛大臣の認識を確認したいと思います。

○防衛大臣(木原稔君) 基本的な認識ということでございますので、まず、財政民主主義とは、その国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいてこれを行使しなければならないとの原則、予算単年度主義とは、国会における予算の議決は毎会計年度ごとに行わなければならないという原則をいい、いずれも国の財政作用に適切な民主的コントロールを及ぼすために発達してきたものと承知しております。
防衛装備品等は、単価が高く、また取得に複数年度を要するものも数多くあり、将来の財政支出に与える影響が大きいところ、防衛予算の編成に当たっては、これらの原則に配慮しつつ、特に慎重に検討することが必要であると、そういう認識を持っております。

○山添拓君 歴史的経過についても是非触れていただきたい、たかったのですが、防衛調達特措法、いわゆる長期契約法は、防衛調達について、国庫債務負担行為、言わばローンによる分割払を最長十年まで可能とする特例を認めるものです。本来は単年度、財政法が例外として定める国庫債務負担行為は最長五年ですが、さらに、例外として十年に延長し、本法案でその有効期限もなくし、例外の例外を恒久化しようとしています。十年にわたって軍事費を言わば先取りするものであり、将来の国会の予算審議権を奪うことになるのは明らかです。
ところが、大臣は、この間の説明を伺っていますと、まずローンを組むときと、それから分割払のときと、それぞれ国会で議決を経るので財政民主主義には反しないと、こういう説明をされています。
そこで、防衛省に伺いますが、一旦ローンを組んで、分割払を約束しておきながら、その後にその支払いを拒否するという議決を国会が無条件に行うということはできるんでしょうか、ペナルティーはないんでしょうか。

○防衛装備庁 調達管理部長(森卓生君) では、一般論でございますけれども、締結済みの契約を一方の当事者の意向により解除又は変更する場合には、損害賠償を請求することができるのが通常でございます。
これは、防衛装備品の調達に係る契約においても同様でございまして、例えば契約の締結後に予算の不足を理由に国側からその解除又は変更を申し入れ、それによって契約相手方に損害が生じる場合には、契約相手方からの求めに応じてその損害を賠償する必要が生じるところでございます。

○山添拓君 今一般論として言われましたが、仮に今全ての軍事費の後年度負担を破棄した場合に損害賠償額は幾らになりますか。

○委員長(小野田紀美君) どなたがお答えになりますか。
速記を止めてください。
〔速記中止〕

○委員長(小野田紀美君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(森卓生君) ちょっと今手元に先生おっしゃった、に対する答えがないので、確認させていただきたいと思います。

○山添拓君 いや、確認すれば分かりますか。全ての契約について現時点で損害賠償額、確認して分かるんですか。

○政府参考人(森卓生君) 損害賠償、先生おっしゃるように損害賠償額の話ですから、個々のケースにおいてその額が幾らかということを決める必要がございますので、ちょっと、直ちにちょっと先生のお答え、御質問に御回答するのは難しいかと思います。

○山添拓君 もうこれ分からないわけですよ。分からないということは国会で説明できないと。つまり、契約を破棄した場合の財政的なリスクを踏まえた審議が国会ではできないということです。これはまさに予算審議権を奪っているわけです。
長期契約法が制定された二〇一五年、当時の防衛大臣は、財政の硬直化を招くことがないように実施すると答弁されました。二〇一九年、五年延長の際にも同様の答弁がありました。財政の硬直化というのは、限られた予算の枠内で固定経費が増えていくと別の政策に振り向ける余裕が乏しくなるということです。
大臣に伺いますが、軍事費で国庫債務負担行為を使えば使うほど財政は硬直化し、ほかの分野を圧迫することになる、そういう認識をお持ちでしょうか。

○国務大臣(木原稔君) 当然、後年度負担というのが発生するわけですから、後年度負担については、防衛力の抜本的強化に伴って令和五年度以降大幅に増加をしておりますが、これは完成までに複数年度を要する装備品や自衛隊施設等の整備に早期に着手できるように、したがって、計画の一年目、そして来年度は二年目である、つまり令和五年度、六年度に多くの契約を行うこととしているためであります。
長期契約の対象となる装備品等は、中長期的な防衛所要を勘案した上で整備するものでありますから、長期契約かあるいは通常の契約かによるかにかかわらず、これは調達の必要性に変わりはないものであります。大きな費用縮減効果が期待される長期契約というものは、現下の厳しい財政状況の下ではむしろ積極的に活用していくものであると考えております。
引き続き、この長期契約が、長期契約が可能な調達を、防衛力の計画的な整備に必要であり、かつ長期契約により効率的、安定的な調達が実現されるものと見込まれるものとして、防衛大臣と財務大臣との協議した上で定めたもの、そういったものに限定をした上で、長期契約により調達を行う場合には長期契約の内容、縮減額を公表するということ、で、それ計上した上で予算について国会の議決を得るという、そういうことによって、財政硬直化を招かないように慎重な検討を行っていきたいと思っています。

○山添拓君 そうおっしゃるんですけどね。
資料をお配りしています。
二〇一五年当時、後年度負担の総額は四・四兆円でした。来年度は十四・二兆円に上ります。来年度の軍事予算七・九兆円は、それ自体莫大ですが、その一・八倍に上る後年度負担を抱えるわけです。これは硬直化どころか、異常な借金体質が深刻化していると言わなければなりません。私は、後年度負担の乱発が著しいと思います。
資料の二を御覧ください。
来年度計画される武器輸入の九割が後年度負担でローン払いです。例に挙げているFMS、有償軍事援助で米国から購入する兵器は、F35Bステルス戦闘機、これ契約額千二百八十二億円に対してローンが千八十億円です。F35A、契約額一千百二十億円に対してローンが九百三十億円です。弾道ミサイル防衛用誘導弾、契約額六百九十九億円に対してローンが六百六十四億円。FMSの契約額全体で九千三百二十億円でローンが八千百五十六億円ですから、八八%に上ります。FMS以外の一般輸入、一番下の段です、契約額四千八百九十億円、うちローンが四千四百六十億円で九一%です。これは長期契約に限りませんが、後年度負担、実態はこうなっているわけですね。
大臣にもう一度伺うんですけれども、こうしてローン払い、後年度負担を際限なく積み増していけば、その年の予算額としては小さく見せても、借金が雪だるま式に増えていく、こういうことになってしまうんじゃないですか。

○国務大臣(木原稔君) この防衛力整備計画において、五か年の事業費の総額はもう四十三・五兆円と規定されておりまして、委員が御指摘のように、その後年度負担が無制限に増加するといいますか、そういった御指摘には当たらないというふうに思っております。

○山添拓君 無制限に増えていかないんだと、とりわけ多いのは今年度と来年度なんだと、そういう説明もされているわけですが、そうだとすれば、何もこの長期契約法を恒久化する必要はないんですよ。そのときそのとき判断していけば、少なくともそういう判断は可能だと思うんです。
この間、FMSでも初めて長期契約が利用されました。E2D早期警戒機で、防衛省は、まとめ買いによって数百億円の縮減が見込まれるとしています。しかし、FMSというのは、御承知のように、価格は米国政府の見積りです。納期は予定であって目標にすぎない。にもかかわらず、支払は前払が原則で未納入や未精算が相次いでいます。E2Dに限っては、縮減額を含めて見込みどおりだと断言できるんでしょうか。

○防衛省 大臣官房審議官(北尾昌也君) FMS調達につきましてですが、FMS調達による装備品等の調達も、長期契約の要件を満たすものであれば、御指摘のとおり長期契約の対象となります。
実際に長期契約を活用してFMSによる機体の調達を行った例としては、令和元年度に九機、令和五年度に五機のE2Dの調達を行った例がございます。契約額は、それぞれ千九百四十億円と千八百八十一億円でございまして、見込まれるコスト縮減効果は、それぞれ三百二十五億円と三百九十七億円でございます。

○山添拓君 いや、それは、今見込みにすぎないんじゃないですか。この先どうなるか分からないのではありませんか。

○政府参考人(北尾昌也君) 申し上げた金額は、現時点で見積もられている金額でございます。この後、契約が完了すれば実績値が確定するということになります。

○山添拓君 FMSは、とりわけそれは確約されないですよね。

○政府参考人(北尾昌也君) 契約内容としては、数字は今申し上げたとおりのものでございますので、これに基づいてなるべく最適な調達を行っていく、努力する、してまいる所存でございます。

○山添拓君 なるべくという話なんですよね。
長期契約法による契約が完了し、契約額と縮減額が確定したのは五件にすぎません。今日もお話がありました、二〇一五年以降、九年で七百二十六億円です。政府はその縮減効果を強調されるのですが、この間、軍事費そのものが膨れ上がっています。
資料一ページに戻っていただきますが、安倍政権当時五兆円前後で推移していたのが、二三年度六・八兆円、来年度七・九兆円、この二年分だけでも五兆円積み増した計算になります。
ですから、七百二十六億円縮減したという一方で五兆円も本体を積み増してしまえば、縮減効果はせいぜい一・五%にすぎないということになります。大臣、これでコスト削減と言えるんですか。

○国務大臣(木原稔君) 防衛力強化の検討に際しましては、国民の命を守り抜けるのかという極めて現実的なシミュレーションを始めとする様々な検討を行った上で、必要となる防衛力の内容を積み上げた結果として四十三兆円程度という防衛費の規模を導き出したわけであります。
この四十三兆円というのは、もう防衛費の規模というのは、この防衛力の抜本的強化が達成できて、防衛省・自衛隊としての役割をしっかりと果たすことができる水準として不可欠であるというふうに考えており、これが大軍拡といった御指摘には当たらないというふうに考えます。

○山添拓君 大軍拡は大軍拡ですよ。大軍拡によって国民負担を強めながらごく僅かな縮減額を殊更強調されるのは、私はミスリードだと思います。
国庫債務負担行為について法律で特例を設けている例は、本法案のほかに、PFI事業、市場化テスト事業、省エネルギー改修事業の三つあります。このうち、省エネ改修事業は最近十年実績がありません。
財務省に伺います。
PFI事業や市場化テスト事業、長期契約とすることによるコスト縮減を目的としているのでしょうか。また、縮減額というのは示されているんでしょうか。

○財務大臣政務官(瀬戸隆一君) ちょっと縮減額については今手元にございませんが、財政法におきまして、国庫債務負担行為の年限をいたずらに長期化させることは後年度の財政の硬直化を招くことがありますので、個別法等に定めがある場合を除き、その年限を五か年度以内と定めているところであります。
その上で、まず、PFI事業につきましては、国が長期にわたりリース契約を締結することが想定される中で、長期にわたり安定した契約を締結できない場合には事業を実施する民間企業が現れないおそれがあるため、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づき、最長三十か年度までの契約を可能としているものと承知しております。

○山添拓君 要するに、コストじゃないんですね、目的は。PFIも市場化テストも、契約の性質上、長期になるので特例が必要というものです。取得契約は一回限りです。コスト削減だけを理由に特例の特例を設けているのは本法案だけです。
資料の三ページを御覧ください。
国庫債務負担行為、新たにローンを組んだ金額の推移と、このうち防衛関係費の割合を示しました。二〇一五年度五六・七%、その後、二二年度まで五割前後で推移していますが、二三年度は全体が十一・四兆円に跳ね上がって、うち七・九兆円、六九%が軍事費です。二四年度も同水準です。
国庫債務負担行為が全体として急増し、軍事費の割合も上昇しています。これは財政規律を大きくゆがめていると思いますが、財務省、いかがですか。

○大臣政務官(瀬戸隆一君) 国庫債務負担行為の金額及びこれに占める防衛費の割合につきましては、今防衛力整備計画以前の令和四年度予算では総額五・八兆円に対し防衛関係費では四八・六%の二・八兆円、令和六年度予算では総額十一・四兆円に対し防衛関係費は六六・九%の七・六兆円となっておりまして、御指摘のとおり、直近、国庫債務負担行為の金額及び防衛関係費の割合は共に増加しているものと承知しております。
これは、一昨年末に決定しました防衛力整備計画等を踏まえて必要となる経費を計上したことによるものと認識しておりますが、財務省としては、引き続き、国庫債務負担行為の金額を含め、各年度の予算編成において防衛関連予算の内容をしっかりと精査してまいります。

○山添拓君 財務省なので、もうちょっと財政規律について認識語っていただきたいなと思っていたんですが。
大臣、今国会で大きな焦点となっている少子化対策、子育て支援策は国を挙げて取り組むとされている政策です。ところが、その財源は社会保障関係費の中だけでやりくりすることになっているんですね。医療、介護の一・一兆円の公費の削減、あるいは公的医療保険料に上乗せして徴収する支援金一兆円など、全て社会保障の中での奪い合いになっているんですよ。その理由について、内閣官房は、社会保障関係費以外の経費を対象とする歳出改革は防衛力強化のための財源に整理されているからだと説明しています。つまり、社会保障を除くあらゆる分野は軍拡のために節約せよと、子育てや医療に回すお金は一円もないということなんですよね。
大臣、要するに大軍拡が社会保障を圧迫している、この上、長期契約を恒久的に行えば、軍事最優先のいびつな国家財政が更に深刻化するではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(木原稔君) もちろん、国の政策として、少子化対策あるいは子育て支援、重要なものであると理解をいたしますが、一方で、この防衛生産・技術基盤というものも、我が国の安全保障政策上、非常に重要なものであると、これは両立させなければいけないものというふうに考えております。

○山添拓君 時間が来てしまいましたので財務省には伺えませんが、私は、敵基地攻撃能力の保有を始め、大軍拡そのものをやめるべきだと思います。一層の財政の硬直化をもたらし、財政民主主義を壊す長期契約法、延命、恒久化、その改悪には賛同できません。
以上です。

―――

○山添拓君 日本共産党を代表し、防衛調達特措法改定案に反対の討論を行います。
本法案は、五年の時限立法である防衛調達特措法、いわゆる長期契約法を恒久化するものです。
反対理由の第一は、財政民主主義に反し、国会の予算審議権を侵害するからです。
憲法八十九条は、財政民主主義に基づき予算単年度主義を採用しています。戦前、侵略戦争に突き進んだ政府が軍事費を特例扱いし、甚大な犠牲をもたらした痛苦の教訓に照らし、特に軍事費について民主的コントロールを及ぼすためです。
現行特措法は、財政法で例外的に最長五年とされる国庫債務負担行為を防衛調達に限り更に最長十年に延長するもので、言わば特例の特例です。十年にわたる軍事費の先取りは、予算単年度主義を余りにも形骸化するものです。
政府は、後年度負担分の支出も毎年議決を経るので財政民主主義に反しないと強弁しますが、中途解約した場合に政府が負う損害賠償リスクは具体的に説明できませんでした。事実上、国会の予算審議権を奪うことになるのは明らかです。特例の特例について時限立法を恒久化し、更に国会の関与を弱めることは断じて許されません。
反対理由の第二は、安保三文書に基づく大軍拡の財源を確保するものだからです。
敵基地攻撃能力となる長射程ミサイルの取得やイージスシステム搭載艦の整備、全国の自衛隊施設の強靱化など、岸田政権が専守防衛を投げ捨て空前の大軍拡を推し進める下で、今年度の後年度負担は総額十・七兆円、来年度は十四・二兆円に急増しています。このうち、長期契約によるものは今年度約四千八百億円、来年度約七千九百億円に上り、本法案はこうした軍備拡張の財源を将来にわたって保障しようとするものです。
審議を通じて明らかにしたように、来年度予算案で計画される兵器の輸入は契約額の九割が後年度負担とされ、巨額の借金を未来に回します。国庫債務負担行為全体の総額は年間五兆円台から十一兆円台へと倍増し、このうち軍事費が占める割合も五割前後から七割近くへと跳ね上がっています。異常な軍事偏重が財政の硬直化を一層深刻にし、子育てや医療、介護など暮らしの予算を圧迫しています。
政府は長期契約によるコスト縮減効果を強調しますが、五年で四十三兆円に上る大軍拡の下では微々たる額にすぎません。
対話と協力の東アジアをつくる平和外交を進め、平和も暮らしも脅かす大軍拡を中止することこそ、最大のコスト縮減と言うべきです。
以上指摘し、反対討論といたします。

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