山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第217通常国会

「賃金も間接差別禁止規定を」 希望が持てる雇用・労働環境の整備について参考人質疑

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
まず、今の話とも関わって浅倉参考人に伺いたいと思うのですが、男女の賃金格差をめぐって、昨年五月にAGCグリーンテック事件の東京地裁の判決がありました。家賃を八割補助する社宅制度を総合職だけに適用し、一般職に適用しない、これが間接的な女性差別で違法としたもので、間接差別禁止の法定後、初めての判断かと思います。一見して性別と関係なくても、結果として一方の性に不利を、不利益を与えるような基準あるいは制度というのはかなり幅広く存在し得るかと思います。
そこで、この判決も踏まえて、今後の監督指導や法改正なども、更に法改正が必要かどうかということも含めて、この間接差別禁止というアプローチについての政治の側で取り組むべき課題についての御意見を伺いたいと思います。

○参考人(浅倉むつ子君) ありがとうございます。
おっしゃったように、東京地裁が初めて、昨年AGCグリーンテック事件というところで間接差別が発生しており、それは不法行為に当たるというそういう判決が出て、私も非常にこれを読んで評価をしております。
ただ、すごく判決は工夫し工夫し、ようようのところで判決を出したということが推測できる判決文になっておりまして、というのも、社宅制度というのが福利厚生なんですね。福利厚生であるから男女雇用機会均等法の適用範囲であるというふうに言って、均等法の第七条という間接差別禁止規定があるので、それを推定すると、これは違法であるというふうに持っていったので、非常に裁判官は工夫されて判決を出したんだと思います。
ただ、先ほどから申し上げている労働基準法四条の賃金差別の禁止規定は間接差別禁止規定がないんですよね。ですので、社宅制度の福利厚生ならああいうふうに判決が出たけれども、じゃ、果たして労働基準法四条違反の間接差別という形で、住宅手当だったらどうかなというふうに、ちょっと研究者としてはそういうところが思うので、できれば、立法をもっと進めていただいて、これは政治の分野でどんどん、均等法とそれから労働基準法との整合性というものをしっかりとつくり上げて、賃金についても間接差別禁止規定というのを盛り込むというような法改正をしていただければなというふうに思っております。
以上です。

○山添拓君 賃金についても間接差別禁止というのは当然の要請かと思いますので、参考にしたいと思います。
高見参考人に伺います。
男性の仕事時間が極端に長くて、家事時間、家事関連の時間は極めて短いと、そういう指摘がありました。日本の長時間労働が性別役割分担の結果であるとともに原因にもなっていると思います。そして、女性が無償労働やケアの多くを担っているために非正規を選ばざるを得ず、それが職業選択の自由や自己実現も阻んでいる問題でもあります。
長時間労働の是正、これはもうもちろん必要だと思うんですが、それにとどまらず、先ほど諸外国では六時間に挑戦という話もありました。また、週休三日というところに挑戦しているところもあります。法定労働時間も含めた労働時間の短縮そのものが個人の自由な時間を拡大するとともに、生活時間も確保してジェンダー平等を進めていくと、その上で重要かと思うんですけれども、その労働時間の短縮、更なる短縮ですね、この点についての御意見を是非伺いたいと思います。

○参考人(独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 高見具広君) ありがとうございます。
貴重な論点だと思います。労働時間短縮、更なる短縮というのは当然必要なことであります。
で、どういうふうに短縮すべきかということで、一つは今委員が御指摘あったような法定労働時間を短縮する、あるいは週休三日というお話がありましたが、休日を増やす、あと、時間外労働をもっと規制を、上限を強めるとか、いろいろ方法はあると思います。
なかなか、結局労働時間規制って、私も法律専門じゃないので十分分からないところがありますが、労働時間の規制というのは、もちろん生活、健康を守るというのが一つと、あとは、その多様な働き方、多様な選択を促進するというのが一つあって、その中でどういうふうな労働時間制度がいいのかというところになると思います。もちろん、休日を増やすということで、何というか、可処分時間というか、使える時間が増えるというのもあります。
法定労働時間は、短縮というのは、一九八七年の労基法の改正で法定労働時間短縮して、その結果、労働時間が一定程度減少したというのも私も承知していますので、効果はあると思います。ただ、健康確保という面を考えたときにやっぱり大事なのが時間外労働なんだろうというふうに私は思っていて、そこに対してどうアプローチするかというのがやっぱり大事なところかなというふうには思っています。
特に、さっき先生がおっしゃったような男性が仕事時間がすごい極端に長いというのは、大きくはやっぱり残業がやっぱりいまだに多いということがやっぱり根本にありますので、もちろん法定労働時間短縮というのは先々見たときには必要なことかもしれませんが、まずは目の前の残業をいかに減らすかというところが大事であって、そのためには、もちろん労働時間規制という方法もありますが、やっぱりその会社の中での業務管理、とにかく時間になったから帰れではなくて、そのための業務を回していく業務管理を、進め方を効率化していくなどの方策で、それがまさに働き方改革だと思います。労働時間の残業をストップさせるだけじゃなくて、そのために働き方を変えていくということがやっぱり大事であるというふうに考えるところでございます。
はい、以上です。

○山添拓君 ありがとうございます。
近藤参考人に伺いたいと思います。
非正規雇用が二十年で一・五倍になり、二千万人を超える状況で、その多くが低賃金、不安定雇用で、賃金が上がらない日本の構造的な要因になってきたと思います。
この非正規は、しかも、政策的に増やしてきたものでもあろうと思います。ですから、この就職氷河期世代、これは自己責任論を前提にして、政策的に選択肢が狭められてきた世代と言えると思うんですね。
そこで、そういう世代が徐々に年を重ねていくという状況の下で、先ほどからのお話を伺っている、いて私が認識する限りでは、セーフティーネットも含めて、その就職氷河期世代での下で過ごしてきた一人一人のその選択肢を広く提供するような、そういう政策的な対応が必要という御趣旨かなとも思うんです。
で、その際に、やはり基本はその経済的な支えが不可欠だということになろうと思います。払える人に払ってもらおうということなんですが、では、その払える人というのは誰なのかというときに、やっぱりこの二十年、三十年、失われた三十年と言われるその日本の状況を見たときに、一方でもうけを上げてきた大企業があると、ですから経常利益が上がり、配当も上がり、場合によっては役員報酬も上がり、しかし給料は増えないと、賃金が上がらない日本という、そういう状況があります。
ですから、そのもうけに何らかの形で、これは賃金なのか社会保険という形なのか、あるいはその税という形なのか分かりませんが、不公正を正すという意味では、方やもうかってきた、もうけを上げてきた側があり、方や賃金が上がらない、しかも困難を強いられてきた側があると、そこに切り込まずしては是正はできないんではないかと。つまり、先ほどおっしゃったように、手取りを増やす、税の取戻しというだけではやはり限界があるんじゃないかというふうに考えるんですが、その点について御意見を伺いたいと思います。

○参考人(東京大学社会科学研究所教授 近藤絢子君) ありがとうございます。
そのおっしゃるとおりで、税を取り戻すだと、税金を納めていない人には戻しようがないという問題がありまして、なので、一番問題になっているのは、税金を、納める税金自体がもうそもそもそんなに高くない人たちというのは、税金をゼロにする以上の給付を受けることができていないという問題があって、なので、そこでどうにかした方がいいということが本当にあるんですけど、ただ、私自身がその制度設計の方が専門ではないので何とも余り具体的なことが言えないという問題がありまして。
あと、その冒頭でおっしゃられた非正規雇用の話なんですけれども、ここ結構大事なポイントかなと思うのであえて発言させていただきたいんですけど、確かに非正規雇用増えているんですけれども、その非正規雇用の増加分というのは、かなりの割合が専業主婦だった人がパートタイムで働くようになった増加分なんですね。
なので、それよりも問題なのは、正規雇用か非正規雇用かという問題ではなくて、正規雇用だとしても非常に労働条件が悪いという人たちが氷河期世代非常に多くて、実は正規雇用比率というのを見てみると、それなりにやっぱり年齢とともに上がっていっているんですね。なんですけれども、恐らく国もかなり正社員転換に対して補助金出したりとかしていて、その効果もあるんだと思うんですけど、正社員と言われても中に非常に格差があって、なので、余り正規、非正規のところばかり注目し過ぎると、正社員になりさえすればいいだろうというふうになってしまうと、それは逆に危険かなと思っています。
話を戻して、そうですね、ちょっとその企業、労働分配率みたいな話は私正直余り詳しくないので何とも言い難いんですけれども、やはり払える人からうまく徴収するということを考えていかないと高齢化で国の財政が破綻してしまうというのが一方にあって、でもやっぱりそれに対しては非常に政治的な抵抗感が大きいという問題が他方にあるので、その辺のバランスは非常に難しいと思うんですけれども、でもやっぱり取れるところから取っていかなければ配るお金の原資がないという問題が、多分今、日本も直面している問題だと思います。
ありがとうございます。

○山添拓君 ありがとうございます。
正規雇用であっても、最低賃金の上昇に伴って、最低賃金水準で働く正規雇用が広がっているという問題もありますので、御指摘はそのとおりかなと思いました。
最後に、時間の許す限りで浅倉参考人に、今日、女性差別撤廃委員会のことを御紹介いただきましたが、日本の拠出金を使わせないと、女性差別撤廃委員会にですね、国連機関にそう通告をしたというニュースがありました。これは皇室典範についての勧告が理由だと言っています。来日しての調査も拒否すると言っていますので、ちょっと最後にその点の御意見だけ伺いたいというふうに思います。

○参考人(早稲田大学名誉教授 浅倉むつ子君) ありがとうございます。
女性差別撤廃委員会から出た勧告というのは六十項目あります。そのうちのたった一つの項目を盾にして国連の委員会に拠出金を出さない、あるいは使わせないという判断は、全く私は、国連の人権委員会の意義を理解していないやり方だというふうに考えていますので、是非ともこのような決定は撤回していただきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○山添拓君 ありがとうございます。終わります。

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