山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2017年・第193通常国会

「航海命令」有事の際に発令される可能性 否定せず  

要約
  • 日本船主の海外子会社保有船を「準日本船舶」として日本船籍化させる海上運送法改定案について質問。
  • 同改定案での、国家の強制により海外の邦人輸送などの役務に就かせる「航海命令」が、日本船籍化された外国船に対して有事の際などに幅広く発令される可能性があることを質した。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本法案は、経済安全保障の確立のために日本船舶の確保が必要だとして、準日本船舶の認定対象を拡大するものです。海運業における課税を外形標準課税として実質的に減税をし、準日本船舶化を誘導する一方で、非常時には航海命令の対象とするものとなっています。
この航海命令は、災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合、国土交通大臣が命じることとなっています。ただし、東日本大震災の折にも航海命令は発動されておりません。
国交省に伺いますが、これはなぜだったんでしょうか。

○政府参考人(羽尾一郎君) お答えいたします。
東日本大震災の際には、我が国海運企業は自発的に救援物資の無償輸送を行ったことから、航海命令の発令要件に該当しなかったため、航海命令を発令するに至らなかったものでございます。

○山添拓君 それがやっぱり本来の姿であろうかと思います。かつてない規模の津波と原発事故による放射能汚染も生じ、燃料や食料あるいは生活必需品の不足が言われたときですら必要はなかったわけです。
二〇一四年の三月に国交省海事局の内航課が大規模災害時の船舶の活用等に関する調査検討会最終報告をまとめていますが、ここでは防災基本計画に船舶の活用を位置付けて、事業者との事前の協力協定など環境整備を整えておくと。いざというときには国交省が事業者に輸送の要請を行うことが想定されておりまして、航海命令は位置付けられておりません。
東日本大震災の際ですが、外国船舶の中で日本周辺への航海を制限した国がありましたでしょうか。

○政府参考人(羽尾一郎君) 東日本大震災後、各国による独自の航行制限及び各海運会社の判断による京浜港、東京、横浜港でございますが、への寄港の取りやめの事例はございました。具体的には、リベリアや米国が福島第一原発事故による放射線量の増加等への懸念から、福島第一原発から一定の距離の範囲内の海域における航海を避けるよう推奨いたしておりました。また、各海運会社の判断により、京浜港への外航船舶四十四隻の寄港取りやめがございました。

○山添拓君 日本近海への接近を禁止するとか、そこまでの措置がとられたことはなかったわけです。ですから、今の話を伺いますと、むしろ対策を要するのは、放射能の被害をいかに防ぐか、原発事故が災害救助の大きな障壁となったんだと、こういうこともうかがえると思います。日本中が被災して国内輸送では供給が間に合わないと、そして外国籍の船を使わなければならないと。しかも、その外国が日本への就航を禁止するような事態にこの航海命令想定されているんですが、これなかなか想定しづらいと私は思います。
原発事故が起きたらどうするんだと、こういうことであれば、むしろそんな壊滅的な事態を招くような原発政策の方こそ改めるべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 原発政策は私の所管ではございませんので、お答えは控えさせていただきたいと存じます。

○山添拓君 恐らくそうおっしゃるだろうと思ったんですが、やはり起きている現実を前提にお考えいただければと思っています。
同様のことは、国交省が考えている他の事例でも言えると思うんです。
先ほどもありましたが、航海命令想定されるのは、外国での治安悪化、テロや紛争が生じて邦人輸送やあるいは貿易の輸送に支障が生じると。例えば、ペルシャ湾が通航できないといった事態もあるわけです。外国籍の船が運航できない状況を想定をしていると。そういう状況で日本のタンカーに石油を運ばせるというのであれば、中東地域の各国と安定的な関係を保つ必要があります。ですから、アメリカ第一だというトランプ政権に付き従うような外交政策こそ転換すべきだと思います。
航海命令を発するケースには、いわゆる有事の場合は含まれないとされています。しかし、安倍政権は、集団的自衛権についての憲法解釈すら閣議決定でひっくり返し、安保法制、私たちは戦争法と呼んでいますが、これを強行しました。航海命令も条文上は「公共の安全の維持」と、こうあるだけで、そもそも有事は含まないと断言できるのかどうかも懸念があります。そして、安保法制は切れ目ない対応を可能にするといって、有事でなくても自衛隊が出動する場面を大幅に拡大したわけです。
お手元の資料の一枚目に表を載せていますが、この中で、例えば今度新たにつくられた集団的自衛権を行使できる場面としての存立危機事態、あるいは周辺事態法の改正によって日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だという重要影響事態、それから、これは日本が危険でなくても国際社会の平和と安全を脅かす事態だと言っている国際平和共同対処事態、あるいはPKO法の改正による駆け付け警護など武器使用が可能となる場面の拡大、こういったものがあるわけですが、これらのケースで、自衛隊員や武器、弾薬、物資の輸送あるいは邦人の輸送のために航海命令が発令される余地はあるんでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 航海命令につきましては、海上運送法第二十六条第一項の規定に従いまして、災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り発令することができるとされております。
御指摘のそれぞれの事態がこの海上運送法第二十六条第一項の規定に該当するかどうかにつきましては、各法律と海上運送法との間で観点等が異なりますので、一概にお答えをすることは困難でございます。
いずれにしましても、海上運送法第二十六条第二項において、航海命令を発令するに当たっては、航海に従事する船舶及び船員の安全の確保に配慮しなければならない旨規制されておりまして、船舶及び船員の安全が確保されない場合に航海命令を発令することは想定をしておりません。

○山添拓君 今、一概に答えることはできないという御答弁でした。ですから、これは有事でない場合が含まれていると。ですから、発令しないんだということは断定できない、航海命令を発令することを否定しないという御答弁だったと思います。
そうすると、安保法制によって航海命令が発令され得る危険な場面がこれ大幅に拡大したということになります。これは極めて重大なことです。有事でなくても自衛隊と一体の、あるいは危険な、極めて危険な海域での航海を命じる場合があるということだと思います。
防衛省に伺いますが、南スーダンのPKOに派遣する自衛隊が民間船舶を使用して武器弾薬や物資を運搬した事実はあるでしょうか。

○政府参考人(辰己昌良君) お答えいたします。
南スーダンPKOにおいて民間の船舶を利用して物資を輸送した例はございます。一方で、武器弾薬を輸送した例はございません。

○山添拓君 資料の二に南スーダンPKOの部隊展開・輸送計画、資料があります。右の方に定期コンテナ船と、日本からこの南スーダンに向けて物資を輸送する過程で使用したということが記されているとおりであります。
これで、もし、こうした際に日本の船舶がこの航行を拒否するということになれば、こういう場合に航海命令を発動し得るというのが先ほどの大臣の答弁を踏まえた結論になろうかと思います。今、世界中の紛争に日本が切れ目なく参加できるようにした下で、危険な航海を航海命令によって強制することがあってはならないと考えます。
次に、航海命令が発令されるのは、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合だと、先ほど大臣からも御答弁がありました。自発的には航海したくない海運業者に命令をして、これは断れば罰則が科されます。その際、船員の側は乗船を拒否することができるんでしょうか。乗船を強制したりあるいは拒否した場合に罰則を科したりする規定は法律上ありませんけれども、業務命令を拒否しても船員が不利益取扱いを受けないと、こう言えるでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 航海命令に係る船舶への乗組みを船員が拒否いたしたといたしましても、船員に対して乗組みを強制する制度や乗組みを拒否した船員に対する罰則はございません。
その上で、乗組船員が航海命令による航海であることを知らされずに航海に従事することのないよう、船員法第三十二条第二項の規定に基づき、船員の雇用主たる船舶所有者に対し、乗船前の雇入契約締結に際し、当該契約に係る航海が航海命令によるものであるときは、あらかじめその旨を書面を交付して説明することを義務付けているところでございます。

○山添拓君 船員はその時々の雇入契約とは別に事業者と雇用契約も結んでいます。ですから、その船員にとってはここで断れば次はない、こういうプレッシャーが働くことになります。
一九六八年の十二月二十四日付けで電電公社の千代田丸事件の最高裁判決というものが出されています。これ、一九五六年当時、朝鮮海峡の公海上に李承晩ラインという境界線が引かれ、その内側に入れば攻撃すると通告されていた中で、米軍の要請により電電公社が海底ケーブルの敷設を命じました。これに対して、労働組合が危険だといって乗船を拒否する運動を展開したのに対して公社が懲戒解雇を行った、こういう事件です。最高裁は解雇無効だと判断しています。
こうした先例を踏まえれば、航海命令を拒否したとしても乗組員を不利益に取り扱ってはならない、このことを法律上も明らかにすべきではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(羽尾一郎君) お答えいたします。
先ほど大臣からお答えを申し上げましたように、個々の乗組船員が個々の実際の船舶に乗り組むに当たりましては雇入れのいわゆる手続を行います、雇入契約の締結を行います。その際に、この航海が航海命令によるというときにつきましてはあらかじめその旨を書面を交付して説明すると、こういう形に既に法制でなっておりまして、そういう運用の下では委員御指摘のような御懸念は当たらないというふうに考えております。

○山添拓君 船員の側がどういう状況に置かれるのかと、その実態を是非踏まえた政策をしていただく必要があると思います。
船員を、日本人船員をとりわけ増やしていこうというのが政府の政策ではありますが、そしてまた、それは私も必要だと考えますが、しかし、先ほど来お話もありますとおり進んでいないわけです。
今度トン数標準税制の適用を受けるために計画される船員確保計画、この認定基準の中では、日本船舶や準日本船舶、それぞれ日本人の船員を何名確保すべきだとしていますか。

○政府参考人(羽尾一郎君) お答えいたします。
日本船舶・船員確保計画の認定に関する基準というものがございまして、その中で、日本船舶一隻当たり外航日本人船員四名を、準日本船舶一隻当たり国際航海に従事できる日本人海技士二名をそれぞれ確保することとされております。

○山添拓君 しかし、実際には増えていないわけです。これは努力義務にすぎず、日本人船員を養成し、採用を増やすという目標はあるんですけれども、しかし、日本人船員自体を増やしていく、総枠を増やしていくという目標にはなっていないからだということだと思います。
資料の五枚目に、日本企業が運航する外航船の乗組員、国籍別の比率を載せています。七三・七%がフィリピン人で、日本人の船員は三・九%にすぎません。日本人の船員と外国人の船員の雇用条件、とりわけ雇用契約や賃金、どのような違いがあるんでしょうか。

○政府参考人(羽尾一郎君) お答えいたします。
外航海運事業者と船員の個別の労働契約につきましては労使間で締結されるものであり、国として詳細は承知いたしておりません。ただ、その契約形態につきましては、一般的に日本人船員は終身雇用、外国人船員は期間雇用が多いと、こう聞いております。これらの雇用形態の違い、ベースとしての給与、賞与レベルの違い、こういったことに加えまして、国による社会保障制度の違い等によりまして、日本人船員と外国人船員の賃金については相対的に一定程度の差があるものと考えられます。

○山添拓君 実態を調査するという御予定はないんでしょうか。

○政府参考人(羽尾一郎君) お答えいたします。
私どもも、海運事業者の日本人船員の確保、これが非常に大事なことだと思っております。そういう観点から、日本船舶、日本人船員確保計画、こういったものに基づきまして日本人外航船員の確保を進めております。そういう観点から、必要に応じて判断してまいりたいと、このように思っております。

○山添拓君 海運業者が国際競争力の名の下にコストカットを進めて、便宜置籍船化を進めて、そして安い賃金で外国人を雇い入れる、こういう実態が続いてきたわけです。そうした在り方そのものを転換させていく方向での海事政策を取っていくことが必要だということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

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