山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2019年・第198通常国会

航空法改正案について

要約
  • 国交委員会で航空法改正案について質問。航空機の重要装備品を国が1点ごと直接検査する制度を廃止し、耐空証明でも1年ごとの国の検査を免除する対象を拡大する規制緩和を含みます。この間、IHIの検査不正やNCAの不適切整備など国が見抜けなかったことに反省なく、安全を民間任せにする問題点を指摘。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本法案では、航空機の重要な装備品について国が一点ごとに直接検査する予備品証明検査を廃止しようとしています。その理由について、二〇一九年一月の航空機検査制度等検討小委員会の最終取りまとめではどのように論じているでしょうか。簡潔にお答えください。
○政府参考人(蝦名邦晴君) お答え申し上げます。
これまで、我が国では、エンジンやプロペラ等の一部の重要な装備品のみについて安全規制の対象としておりましたが、現代におきましては、航空機に使用されている装備品等は飛躍的にデジタル化、高度化をしておりまして、一部の重要な装備品のみの安全性確認では航空機全体の安全性を確保することは困難となっております。
また、今般、MRJの型式証明取得によりまして我が国は航空機及びその装備品等を輸出していくことになりますけれども、欧米等の諸外国におきましては、航空機に装備する全ての装備品等について一律の安全規制を掛けておりまして、欧米基準との相違はMRJの円滑な輸出の障害となる可能性がございます。
さらに、例えば機材不具合等で重要な装備品の交換が必要となった場合に、国の予備品証明を受けるまでは航空機の装備をすることができず、その間、運航便の遅延や欠航等のおそれがあるなど、国の直接検査を前提とする制度は航空機の使用者にとって大きな負担となります。
このような状況を踏まえまして、国が重要な装備品について一点ごとに検査をし、その安全性を確認する予備品証明制度を廃止して、新たな装備品の安全規制を設けることといたしました。
今後は、国土交通省が能力を認定した事業場が装備品の製造、修理又は改造の作業開始から作業完了まで一貫して安全基準への適合性を確認することによりまして装備品等の安全性を確保してまいりたいと考えております。
○山添拓君 いろいろおっしゃるんですけれども、検査を受ける側の負担、こうおっしゃった、航空機使用者の負担と。その負担を主たる理由にして、国の検査をなくして民間に委ねようという規制緩和だというのがこの本質だろうと思います。
今おっしゃったように、全ての装備品について、国交大臣が認定したメーカーの確認さえあれば予備品証明を受けたものとみなすという仕組みが提案されています。果たしてそれで安全性が担保されるのかという問題です。
この間、IHIやジャムコといった装備品メーカーの認定事業場で、航空機のエンジン部品やシートなどの製造、修理、検査過程における不正が明らかになっております。国交省は、四月九日、IHIに対して業務改善命令を行いました。不正の内容、件数と発覚に至る経過を御説明ください。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 国土交通省東京航空局は、IHIの民間エンジン事業部瑞穂工場に対しまして、本年一月から二月にかけて随時の立入検査を実施し、その後、報告徴収を実施したところ、エンジンの修理作業及び検査において多数の不適切事案が確認されました。
具体的には、部品の検査を資格を有さない者が実施していた事案、所定の作業工程どおりに実施しなかった作業について適切に実施したかのように作業記録書の検査実施日を改ざんした事案、計測機器の定期検査記録書の検査実施日が適切でない事案といった不適切事案が確認されました。
今般の調査は過去十年に遡り実施し、エンジン三十四台及び部品百二十五点において不適切な作業が行われてきたことが確認されております。
なお、件数につきましては、IHIの分類によりますと、不適切な検査押印が九百七十四件、また、不適切な検査実施日の記載が二百七十七件で、総数といたしましては千二百五十一件となっております。
○山添拓君 IHIは、二〇〇四年にも不正が発覚をして業務改善命令を受けております。しかし、そのときは、発覚したのは内部告発がきっかけだと報じられました。
今回もIHIが自ら申告してきたものではありませんね。これ、イエスかノーかで。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 自ら報告してきたものではございません。
○山添拓君 不正は少なくとも十年前からなんですね。
国交省は、二年ごとにこの認定を更新しており、例えば直近の認定は二〇一七年の十二月です。しかし、そのとき不正は見抜けていないわけです。
航空局、これ、どう認識されていますか。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 航空機の検査に当たりましては、航空機検査官がIHIに立入りをいたしまして検査をいたしておりますが、その時点では今回の不適切な事案というのは確認はできなかったということでございます。
○山添拓君 反省がないと思うんですね。
認定事業場に委ねるという仕組みが機能していないわけですよ。ですから、更なる緩和というのは、これ許されないと思うんですけれども、機能していないということをお認めになりますか。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 航空機の検査の確認に当たりましては、IHIが実施しております検査の状況、それから修理の体制、品質管理体制といったことを確認をいたしております。
今後も引き続き厳格な検査体制を実施していきたいと思っております。
○山添拓君 そうおっしゃるんですけど、不正は見抜けていなかったと。
IHIの発表では、不正件数、十年で千二百五十一件とさっきございました。ところが、経産省が航空機製造事業法に基づいて行った行政処分では、不正の作業件数は二年間で六千三百四十件とされております。この開きは、国交省の認定は国内の航空会社向けの部品のみを対象とすると。これに対して経産省は、国内向け、国外向けを問わず対象とするためだということです。
しかし、国内であれ、国外であれ、空の安全に関わる不正は重大であります。ところが、経産省は、この不正を確認しても、経産省が外国の航空当局に通知をするということはありません。国交省は、国外向けについては不正を把握する権限すらなく、不正を働いた事業者から任意で聞き取って当該の外国当局には事実上通知するだけだと伺いました。
これ、大臣に伺いますが、不正の全容を把握して安全性を担保していくためには、国交省としても国外向けを含めてこれ把握できるようにするべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 経産省所管の航空機製造事業法は、航空機の製造や修理の方法を規律することによりまして、その事業場の生産技術の向上を図ることを目的としていることから、外国航空会社向けも含めた製品を対象にしていると承知をしております。
一方で、航空安全の観点からは、航空機や装備品等に対する整備作業につきましては、当該航空機や装備品等の使用者を管轄する航空当局が規制を行うことが国際的な枠組みとなっておりまして、我が国の航空法もこれに準じたものとなっております。
このため、IHIにおける外国航空会社向けエンジンの整備作業につきましては、それぞれ納入する米国、欧州、中国等の外国の航空当局が個別に整備認定事業場としてIHIを認定をし、その整備作業の監視、監督を行っております。今般の不適切事案につきましても、各外国航空当局はIHIから直接詳細の報告を受け、自国航空機の安全確保の観点から必要な対応を行っていると承知をしております。
したがいまして、このような枠組みの中では、IHIが外国航空会社向け製品の整備を実施することにつきまして、国土交通省として直接監督する立場にはございません。一方で、その枠組みとは別にいたしまして、国土交通省としては、各外国当局宛てに今般の不適切事案について情報提供を行っており、外国当局から協力要請があれば適切に対応していくこととしておるところであります。
○山添拓君 なかなか前向きに御答弁されないんですが、現に不正が次々明らかになっております。これからMRJを含めて航空機も航空機の部品も輸出を更に拡大しようというところですので、航空行政は対外的にも責任を果たすべきだと主張したいと思います。
次に、航空機の耐空証明についてです。
これは自動車でいう車検のようなもので、国が一年ごとに直接検査し更新するのが原則で、整備体制のある航空会社のみを対象に連続式の耐空証明、すなわち整備を完全に委ねるという仕組みが認められております。
本法案は、連続式の対象をエアライン以外にも拡大し、国による毎年の検査を免除しようとしています。その理由について、これも、検討小委員会の最終取りまとめでは、これも使用者の負担、これが理由の一つに掲げられていると思いますが、それで間違いないですね。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 御指摘の点でございますけれども、一定規模の航空機数を有し組織的な整備体制を有している官公庁や、航空機を、能力ある認定事業場に全面的に委託しているものなど、適切に整備を実施している場合であっても、耐空証明の有効期間を延長できることとされていないことから、関係者から更新耐空証明検査の手続の合理化が求められております。また、航空機使用者からの委託を受けて航空機の整備、修理を行う専門事業者が国内外で大きく増加しており、その能力も向上しております。
こうしたことから、今般の改正によりまして、航空運送事業者以外の航空機使用者であっても、十分な整備能力を有すると認められる場合には耐空証明の有効期間を延長できることといたしたいと考えております。
○山添拓君 ここでも検査を受ける側の負担を理由にして、国の検査に代えて民間に委ねる範囲を拡大するというわけです。
しかし、小委員会の取りまとめでは、むしろ、例えば、二〇一五年七月の調布飛行場の小型機墜落事故など、航空機使用者の更なる安全意識の向上が求められる、こういうことも指摘をしております。国の関与がより求められる、そういう現状であるにもかかわらず、国による一年ごとの検査を免れる仕組みを拡大しようとしております。
連続式耐空証明を取得していたNCA、日本貨物航空で、昨年、整備不正が明らかになりました。同社調査委員会による調査報告書ではどのような不正があったとされていますか。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 昨年七月に事業改善命令及び業務改善命令を実施した日本貨物航空におきましては、同社の調査委員会の報告書によりますと、平成二十五年八月より、ボーイング式747型機の整備に関して不適切な整備処置が合計八件行われていることが判明しております。
具体的な事例といたしましては、雷によります機体外板のくぼみの深さを計測していないにもかかわらず、深さが許容値以内であると整備記録を改ざんしている事例などが挙げられております。
○山添拓君 このNCAは、二〇一六年にも不適切整備を理由に国交省から厳重注意を受け、再発防止策をまとめておりました。ところが、不正は、その前後ですね、二〇一五年が、今の八事例の中では一番古いものだと思いますが、続けられていた、これも国は見抜けずにきたわけですよ。
航空局、このことはどう認識されていますか。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 航空機の認定事業場に対する監査は、航空局によりまして定期的に行われているわけでございますけれども、今回の不正事案についてはその際に確認することはできなかったということでございます。
○山添拓君 この点でも余り反省がないと思うんですね。
NCAの調査報告書では、不正の直接的な原因として人員不足を挙げております。整備士の人員が質的にも量的にも不足する、その一方で便数が増えて日々の業務をこなすのに手いっぱいだったと。
今、LCCが増加をしておりますので、整備士の不足は全体的な課題でもあります。こうした中で、装備品の認定事業場や連続式耐空証明を与えた航空機の使用者を監督する国の航空機検査官の体制拡充が急務であります。
この間の推移と、またMRJに関する検査官の推移も併せて御説明ください。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 国土交通省におきましては、航空機検査官を含め、航空機や装備品の安全性に関する業務に従事している者は、平成二十年度は七十二人であり、以後徐々に増加して、本年四月一日現在では全体として計百三十六人となっております。
このうち、MRJの型式証明の審査等をつかさどる航空機技術審査センターは、平成二十年度以前は十七人の体制でしたけれども、平成二十三年度に七十三人体制に拡大して現在に至っております。
○山添拓君 資料の三ページにその表を付けておきましたが、増えた六十四人のうち五十六人、九割近くがMRJの関係なんですね。
これから更に装備品の認定事業場を増やしたり、連続式を与えて耐空証明についての監督体制を取っていく、こういうときに、今の体制ではこの先やっぱりおぼつかないのではないかと。量的にも充実していくことが必要ではないでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(蝦名邦晴君) 今般の制度の改正によりまして国の予備品証明検査を廃止することになりますので、当該検査を行っている人員を今後増加する認定事業場の監視、監督業務に配置転換することなどによりまして、既存の人員を有効活用することが可能とも考えております。
また、認定事業場数の推移などに応じまして、認定事業場の監視、監督業務を行う航空機検査官の体制整備についても引き続き検討してまいりたいと考えております。
○山添拓君 国内で、認定事業場や連続式の耐空証明、メーカーやエアライン任せの仕組みの下で不正が相次いでおります。先ほどもございましたが、ボーイング737MAX型の墜落事故をめぐっても、原因と見られるシステムの安全評価を当局がボーイング任せとしてきた、これが背景ではないかと報じられております。民間任せでは安全確保の限界があるということが国内外で浮き彫りになっております。
検査を受ける側の要望に基づいて規制を緩和して民間に委ねるのでは安全を担保できないのではないかと、こう考えますけれども、最後に大臣の見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) 今回の法改正の趣旨は、国による航空機や装備品といったものの一点ごとの検査から、それらを製造、修理、又は改造する民間事業者の能力を国が認定し、その後も認定の更新や継続的な監視、監督を行うことにより安全を確保する制度への移行を図るものであります。
国土交通省といたしましては、不適切事案が立て続けに発生していることから、法改正に加えまして、従来はあらかじめ通知をしておりました随時検査を、今後、原則抜き打ちで実施することといたしまして、検査におきましては、認定事業場が実施した検査の記録の裏付けまで確認をする、社員に対する無記名アンケートを実施する、法令遵守や現場コミュニケーションを含む内部統制の状況について経営層に聴取するなど、検査方法を見直すとともに、検査を実施する国の職員への研修を強化をしてまいります。
さらに、認定事業場に対しましても、管理体制の強化といたしまして、検査員等の印鑑管理の徹底、業務量に応じて必要な知識、能力を有する者を適切に配置、管理し、定期的に国に報告、経営層を含む全社員に対して、安全意識の徹底、関係法令、規程等の遵守及びコンプライアンス教育の徹底、安全管理システム等に関する教育の充実を求めることといたします。
これらによりまして、今後、認定事業場の不適切事案を未然に防止するとともに、万一不適切事案が発覚した場合には、引き続き、適切かつ厳正に行政処分を行うことによりまして航空機の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。
○山添拓君 時間ですので終わります。
ありがとうございました。

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