山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2019年・第198通常国会

愛媛・肱川ダムの異常放流問題について

要約
  • 昨年7月の西日本豪雨で甚大な被害をもたらした肱川ダムの異常放流について、国交委員会で質問。ダムをいくら作って整備しても、下流の流下能力が変わらなければ今回のような災害は防げないことを明らかにした上で、ダム優先を改め各地の河川改修を急ぐべきと強調しました。


○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 昨年七月の西日本豪雨では、愛媛県肱川水系の氾濫で九人が犠牲となり、浸水家屋が約五千二百五十戸に達するなど、甚大な被害が生じました。上流にある野村ダムから最大毎秒約千八百トン、鹿野川ダムから約三千六百トン、安全とされる目安の六倍もの放流がされましたが、正確には伝わらず、避難の遅れと被害の拡大につながったとされます。
 大臣を始め国交省は、規則に従い適切にダムを操作した、こう繰り返し述べておられますが、適切に操作をした結果、人命を含む多大な被害がもたらされた。大臣、このことはどう認識していますか。
○国務大臣(石井啓一君) 肱川水系の野村ダム及び鹿野川ダムは、平成三十年七月豪雨におきまして、関係機関と合意の上で策定をいたしました操作規則によりダム操作や情報提供を行ったものと認識をしております。一方で、これまでに経験のない異常な豪雨によりまして、ダム下流で甚大な被害が発生したことは重く受け止めております。
 このため、肱川におきまして、検証等の場を設置をいたしますとともに、全国的な観点からも検討会を設置をいたしまして、その結果が取りまとめられたところであります。この取りまとめにおきましては、住民の避難行動につながるよう、ダムの放流情報の改善、利水容量の活用などのダムの更なる有効活用などの課題が示されております。
 これらの課題を真摯に受け止め、具体的な取組を推進していくことが重要であると認識をしております。
○山添拓君 今は適切という言葉を使われませんでしたが、皆さんも御記憶かと思いますが、直後にはかなりそういう言葉使われていたんですね。
 私は、昨年の夏、現地二度訪れましたが、堤防を越えたと思ったら二、三分で襲われた、もう少し逃げるのが遅ければ危なかった、一気に放流したことが洪水につながったのではないかという声があちこちで聞かれました。結果として、命や家財が奪われ、途方に暮れる住民の皆さんに対して適切だったという言葉がどう響くのか、これは考えて物を言うべきだと思います。
 現在の野村ダムの操作規則は一九九六年に改定されたもので、治水容量三百五十万トンを前提とし、中小規模の洪水に対応するものとなっています。しかし、以前から、利水容量の一部を事前放流にも活用できるようにし、治水のための容量を六百万トンまで増やすことが検討され、七月豪雨でもそのような対応が取られました。
 治水容量六百万トンを前提とし、大洪水に対応する操作規則で早い段階から放流量を増やしていればピーク時の放流量を減らせたのではないかと、こういう指摘がされておりますが、いかがですか。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
 平成三十年七月豪雨におきましては、気象庁の発表等によりまして豪雨が想定されましたことから、緊急的に利水者と調整を行った上で事前の放流を行いました。事前の放流を行う場合には、豪雨の予測が得られている必要があること、あるいはその予測に基づき利水者と調整を行い理解を得る必要があること、またダムの水位を低下させる速度も一定程度に抑制するといったような様々な制約がございまして、必ずしも六百万トンを確保できるというふうには限っておりません。
 結果として、六百万トンの容量を確保することはできましたけれども、そのような状況でございましたので、あらかじめ事前放流の確実な実施を、六百万トンを確保した上での事前放流、あるいは確実な実施を前提とした操作規則を策定するということは困難であったというふうに考えております。
 しかしながら、一方で、昨今の激甚化する自然災害に対しまして、安定的な洪水調節容量の更なる確保ということは非常に重要だというふうに考えておりますので、ダムの構造や洪水予測の精度、利水者の理解などを踏まえまして、更なるダムの有効活用に向けて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 利水者の理解を得た上で検討をすれば、協議によって操作規則を改定しておくという余地もあったと、これはこういうことですね。
○政府参考人(塚原浩一君) 繰り返しになりますけれども……(発言する者あり)はい。様々検討が必要でございますので、それと、六百万トンを確実に確保するという確証はございませんでしたので、それを前提とした操作規則をあらかじめ策定しておくということは難しかったかと考えております。
○山添拓君 難しかったということなんですが、当時の操作規則そのものがベストだったとは言えないわけです。ですから、その規則に従った操作だからといって適切だと言い切れるわけでもないのだろうと考えます。
 野村地区でお話を伺いますと、ダムがあるから安全だと思っていた、そういう声が多数ありました。これは、元町長もそう考えて最後まで避難しなかったんですね。この区間は九六年までに改修もされています。行政の側にも同様の意識があったのではないかと思われます。そのため、浸水想定区域図も作成されず、ハザードマップが作られておりませんでした。
 私は、野村ダムの川西所長から、ハザードマップがないことを所長が知ったのは緊急放流の二日前、七月五日だったと伺いました。そのため、越水した場合にどのぐらい浸水するのか、流下能力はどのぐらいなのか、これどうやって調べようかという感じだったと伺いました。
 ダムの管理者として、越水時の被害想定を認識できないような状況自体が問題なのではないでしょうか。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
 野村地区におきましては、委員御指摘のとおり、ハザードマップは作成されておりませんでした。一方で、ダム管理所におきましては、下流の河川の流下能力とダムの放流量との関係から浸水被害の可能性については把握をしておりまして、平成三十年七月豪雨におきましては、関係機関への通知や警報に加えまして、ホットラインによりまして、現在の予測では放流量が河道の能力を超えるというようなことを情報提供を行ったところでございます。こういった七月豪雨を踏まえた検討会におきまして、住民の適切な避難行動に結び付く浸水想定区域図やハザードマップの作成、周知は必要であるという御指摘をいただいております。
 これを踏まえまして、国土交通省におきましては、三か年緊急対策によりまして必要な浸水想定区域図の作成を進めているところでございます。さらに、市町村がハザードマップを作成するに当たりまして技術支援を行うなど、ハザードマップを活用した住民の適切な避難行動に結び付く取組を進めてまいりたいと考えております。
○山添拓君 大洪水が来た場合には一気に放流量を増やしていくと、これは入ってきた分と同じだけ流していくという緊急放流を行うしかない、こういうことが想定されていたわけですが、その場合にどの地域で避難情報を伝える必要があるのか、ダム管理者の側で把握しようがなかったということなんですよね。ですから、それ自体大問題だと指摘しなければなりません。さらに、サイレンやスピーカーが聞こえない、あるいは緊張感のない放送だった、放流量のその異常さが伝わっていなかったなど、情報提供の在り方が問われることになり、先ほど来の検証の場が設けられました。
 昨年十二月にその取りまとめが発表されましたが、ここではダムの防災操作の課題についてはどのように整理していますか。
○政府参考人(塚原浩一君) 御指摘の検証等の場におきましては、より効果的なダム操作につきまして、利水のための容量を関係者の協力の下、洪水調節のために更なる活用を進めるべきではないか、またダム下流河川の流下能力の不足によってダムの放流量が制約を受けていた、またダム操作に関する降雨あるいは洪水流入の予測の精度の向上が必要ではないかなどの課題が示されたところでございます。
 このような結果を踏まえまして、より効果的なダム操作につきまして取組を進めてまいりたいと考えております。
○山添拓君 流下能力の不足、つまり下の、下流の河川で流せる量が制約されていると、どれだけダムが大きくても流せる量が制約されるんだと、こういう話であります。
 二〇〇四年の河川整備計画では、下流の河川改修の整備状況に対応してダムの操作ルールを適宜見直すとされておりましたが、肱川では下流に堤防がそもそもないような区間もあり、二十年以上操作規則を変えられずに昨年の豪雨を迎えることになりました。
 資料の二ページ目に配付してありますが、野村ダム、鹿野川ダムの新たなダム操作ルールの考え方によりますと、真ん中ですね、おおむね五年後には、平成三十年七月豪雨で越水しないと、こう書いております。野村ダム、鹿野川ダムの容量増大や下流の流下能力を確保することによって、おおむね五年で昨年のような被害は防ぐことができたんだと、こういう認識ですか。
○政府参考人(塚原浩一君) 御指摘のおおむね五年後の見込みということでございますけれども、おおむね五年後には、既に昨年度末に完了いたしました鹿野川ダムの改造事業に加えまして、河川激甚災害対策特別緊急事業、今回の災害を受けた緊急事業による河川改修が完了する予定となっております。それに伴いまして、堤防がかさ上げされるとともに、野村ダムと鹿野川ダムの操作規則の更なる改定が可能となります。
 これによりまして、平成三十年七月豪雨と同規模の洪水に対しましても河川水位が堤防の高さは超えないということまでは見込まれます。しかしながら、この状態では、堤防ぎりぎりまで水位が上がる可能性がございますので、必ずしも十分に洪水を安全に流せる状態までには至らないというふうに考えております。
 このため、そういったリスクがあるということも含めまして、避難等に必要な情報が適切に住民等へ伝わるよう、市町村等々の関係機関と連携をいたしましてソフト対策にも取り組んでまいりますとともに、更なる河川整備にも取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 いや、私はこの越水しないと書きながら、実は危険があるんだというふうにおっしゃるというのは、ちょっとこれは新たな誤解を生みかねないものじゃないかと思うんですね。
 だって、昨年の被害というのは、これもう想定外の大雨によってもう到底耐えられないようなものだったと説明されてきたわけですよ。ところが、五年もあれば対応できるんだと言っているように受け取られる、そういう表記の仕方だと思うんですね。これ、大体五年で対応できるのであれば、なぜ二十年来、河川整備が遅れてきたのかという疑問が当然湧くわけです。
 河川整備計画でも、昔から水害の常襲地域だと、無堤地区が数多く残って、非常に治水安全度の低い状況だと書かれているぐらいに対策が求められて、しかも住民の皆さんからは、下流の辺りは中州に砂州ができて大変心配だと、こういう声も多数寄せられていたようなところなんですね。
 確認をいたしますが、この図でおおむね十年後は山鳥坂ダムが完成すると書かれています。鹿野川ダムの改造で洪水吐きが完成し、山鳥坂ダムが完成していても、下流の流下能力が変わらない限りは今回のような事態は防げなかったということですね。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
 おおむね五年後につきましては、先ほどの激特事業、それから野村ダム、鹿野川ダムの操作規則の変更等によりまして、七月豪雨につきまして堤防ぎりぎりの水位まで何とか持ちこたえるというような想定をしてございます。
 さらに、十年後の状況につきましては、山鳥坂ダムの完成も含めまして、七月豪雨と同規模の洪水を安全に流せるような更なる河川の整備について今後進めてまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 河川の整備が不可欠だということは間違いないだろうと思うんです。
 そこで伺いますが、肱川における河川改修事業費とダム建設事業費について、過去五年の当初予算の総額をお示しください。
○政府参考人(塚原浩一君) 肱川におけます平成二十六年度から平成三十年度までの過去五年間の直轄河川改修事業費の当初予算の総額は、約七十億円でございます。
 ダムにつきましては、山鳥坂ダム建設事業及び鹿野川ダムの改造事業のダム建設事業費の当初予算の総額は、約三百六十七億円となっております。
○山添拓君 河川改修はダムの五分の一なんですよね。しかもこれ、年々減らされてきておりました。ダム優先はもういいかげんに改めるべきだと指摘をしたいと思います。
 肱川のように、ダムがあっても大洪水に耐えられないという箇所が全国にあるということがこの間判明しております。昨年、政府が行った重要インフラ緊急点検では、ダムの操作規則を改善するために下流の改修が必要なダムが二十一あったとされております。
 ダムだけでは被害は防げないということを住民に周知するとともに、各地で河川改修を急ぐべきだと考えますが、大臣、どのような御認識ですか。
○国務大臣(石井啓一君) 平成三十年七月豪雨等を受けました重要インフラの緊急点検によれば、ダム下流などで洪水浸水想定区域図が策定することとされていない箇所があること、ダムの操作規則改善のために下流の改修が必要なダムが二十一か所あることなどが明らかになったところであります。
 これらの結果を踏まえまして、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策におきまして、ダム下流の洪水浸水想定区域図の作成や住民への周知等のソフト対策とともに、ダム下流の河川改修などのハード対策を重点的に進めていくこととしております。
 国土交通省では、今後とも、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものとの考え方に立ちまして、ハード、ソフト一体となって社会全体でこれに備える水防災意識社会の再構築を推進をしてまいりたいと考えております。
○山添拓君 時間ですので終わりますが、資料の三ページ目には、先ほど足立委員からも指摘のあった、気候変動によって百年に一度の豪雨による降水量が全国平均で一・一倍、最大一・四倍という試算が示されております。河川整備基本方針、基本計画の見直しを全国的に開始すべきだということも指摘をしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

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