山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2020年・第201通常国会

黒川氏への追加調査と検察庁法案について

要約
  • 黒川氏への追加調査と検察庁法案について森法相に質問。処分決定の経過、法案作成過程の資料を示さない秘密主義。公正であるべき法務・検察行政の信頼を失墜さ せています。法相が打ち出した刷新会議は中身が伴わない「やってる感」の演出。刷新されるべきは安倍内閣! 黒川氏の招致を要求しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
賭けマージャンで辞職した東京高検黒川前検事長について、週刊誌で新たな疑惑が報じられています。同じ記者三名と十年以上前から、多いときには週三回も通っていたなどとするものです。
先週、法務省は週刊誌報道の真偽を確認するために調査を行いました。新たに事実が判明すれば処分は変わり得るだろうと思います。追加の処分を、あっ、追加の調査をされますか、大臣。
○国務大臣(森まさこ君) 黒川氏については、約三年前から月一、二回程度、金銭を賭けたマージャンをしていたことを踏まえて処分したものであり、記事にあるような事実を証言したとされる者を特定することもできず、また古い時期のものでもあり、再調査の必要性はないものと考えております。
○山添拓君 処分の対象とされていない事実なんですよ。訓告措置の後は、がんとして動こうとしないということですか。
財務省は、佐川元理財局長について退官後にも追加で懲戒の処分、懲戒相当という扱いですが、いたしました。人事院の指針や東京高検の指針ではこれは懲戒相当だと、ずうっと指摘がされております。基準があっても、安倍内閣の人事は十分恣意的にされているということがここで証明されているわけです。法と証拠に基づき事案の解明に当たるべき検察が、内閣が関与する下で証拠収集に手心を加えるといかに正義がゆがめられるか、自らさらすようなものですよ。
法務省が示した書面には、先例も踏まえると訓告処分が相当だと記されております。大臣、伺いますが、過去に検察官や検事長が賭博や利益供与を理由に処分された先例がありますか。
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
御指摘のような事例は見当たりません。
○山添拓君 過去に例がありません。
刑事局長はおとといの質疑で野球賭博や賭けマージャンの事案を紹介しておりましたが、それらは法務省職員の例であって検察官ではありませんでした。
これは、事は内閣が任命する検事長の問題です。十分な調査を踏まえて慎重に判断するべきです。急いで処分し辞職をさせるのは火消しであり、幕引きを狙う政治的な動きにほかならないと指摘しなければなりません。
内閣の責任者である安倍首相に予算委員会で説明いただくしかないと私は考えます。同時に、内閣も法務省も事実調査をしないというのであれば、異例な人事の経緯も含めて実態を解明するのは国会の責任だと考えます。
黒川氏のこの委員会への参考人招致を求めます。
○委員長(竹谷とし子君) 後刻理事会で協議します。
○山添拓君 検察庁法改定案について伺います。
資料をお配りしておりますが、この法案の最大の問題点は、六十三歳以降も検事長などが役職にとどまれる特例、六十五歳の定年後も勤務を続けられる特例、それらを認めるかどうか内閣が判断するという点であります。
大臣は、二十五日の決算委員会で、そもそも検察官の人事権者は内閣だと、それは法改正で変わらないと言い、こうした特例規定が入っても何の問題もないとの認識を示しています。確かに、検事長などは行政官であって、その任命権者は内閣です。しかし同時に、検察官は準司法官でもあり、独立性が求められます。
大臣に伺いますが、従来、内閣は検察の独立性を保つためにどのような任命をしてきたのですか。
○国務大臣(森まさこ君) 適材適所における任命をしてきたものと承知しております。
○山添拓君 内閣がこの人がいい、この人が駄目だということを判断してきたということですか、これまでも。
○国務大臣(森まさこ君) 閣議請議をして内閣において決定されていると承知しています。
○山添拓君 閣議請議の前の段階です。
では、閣議請議する際には、どういう人をどのように閣議請議してきたのですか。
○国務大臣(森まさこ君) 人事上のプロセスでありますので詳細は差し控えますが、適任者を閣議請議してきたものと承知しております。
○山添拓君 法務省や検察庁が適任だとする提案する人事を閣議請議してきたということではないのですか。
○国務大臣(森まさこ君) 従来においては、適材適所の人事をしていたものと承知をしております。
なお、私になってからは常に法務省が推薦する人事で閣議請議をしております。
○山添拓君 そういうことだと思うんですよ。法務・検察の人事案を追認する、形式的には内閣が任命しますが、実質的には検察の独立性を担保してきたと。これ、ぎりぎりの在り方だと思います。法案はそれを壊そうというものです。法務・検察の提案を承認するのではなく、内閣の定めでふるいに掛ける、官邸のおめがねにかなう者だけを続投させる、そういう仕組みです。
大臣は、同じく二十五日、こうした例は諸外国にもあると答弁しました。そこで私は、法務省にその規定ぶりや任命権者の関与の在り方など資料提供を依頼しました。すると、昨日、そうした資料はございませんとメールで回答がありました。資料二ページ、これは三月の当委員会で私が求めた解釈変更を検討した際に法務省が参照した資料の一覧ですが、ここにも諸外国の例はありません。
大臣、法案の作成に当たって諸外国の例を参考にしたわけではありませんね。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
諸外国の例は情報としては把握はしておりますが、そもそもその制度が、人事制度ですので相当違いますので、立案に当たって参考にしたという意味ではここに記載してあるものでございます。
○山添拓君 相当違うものを、諸外国もあるからとおっしゃったんですよ、大臣。
大臣が挙げたフランスは、検察官しか起訴ができない日本とは異なって、被害者も予審開始請求で訴追ができます。大臣が挙げたドイツは、起訴するかどうか裁量のある日本とは異なって、十分な証拠がある場合には検察官は起訴しなければならない。検察官の位置付けが違うわけです。諸外国にもあるから日本でも、これほど単純な話ではないということですよ、大臣。そうですね。大臣。大臣です。
○国務大臣(森まさこ君) 今の御質問の趣旨が必ずしも正確に分かりかねますが、刑事局長が答弁したとおりでございます。
○山添拓君 私は大臣の認識に根本的な疑問を抱かざるを得ません。日本国憲法が定める、求める三権分立、司法権の独立とそれに密接に関わる検察官の独立性について一体どう御認識なのか。準司法官だと口では言っても、要は国家公務員だ、だから国公法と同じ規定で問題ないのだ、諸外国にも似たようなものがあるから日本でも取り込むのだ。これでは、私は法務大臣としての資質が問われると思います。
大臣はまた、国民主権の見地から、民主的統制を及ぼすために、行政権が検察官の人事を行うのだと述べています。だから、特例によって内閣が、特例において内閣が判断するのも許されるとおっしゃるのでしょう。しかし、民主的統制が働くべきなのは、検察官が暴走するとか非違行為があるような場合です。そして、その仕組みは既に現行法にあります。懲戒や、あるいは国会議員も入った検察官適格審査会がそのための仕組みではないのですか。
○国務大臣(森まさこ君) まず、検察官の独立性のことについて御言及がございましたが、そもそも検察官については、法律上その人事権者は内閣又は法務大臣でございます。これは改正前後で変わるところはございません。これは、検察官の準司法官的性格、検察官の独立性を保持しつつも、国民主権の見地から、公務員である検察官に民主的な統制を及ぼすためであり、行政権に属する者が検察官の任命を行うものでございます。
ところで、改正検察庁法の勤務延長及び役降り特例の制度は、そもそも任命権者である内閣等の判断により、改正法及び内閣で定める事由等の準則に基づき、公務の運営に著しい支障が生じると認められる場合に、引き続きその職務を遂行することを認めるものであって、身分上の不利益処分を行うものではございません。したがって、勤務延長も役降り特例の制度も、いずれも本来的に検察権行使に圧力を加えるものではなく、検察官の独立性を害さないというふうに考えます。
○山添拓君 大臣、質問も聞いていただきたい。今の答弁ペーパーは、私の質問に全然即したものじゃないですよ。
民主的統制というのであれば、検察官が暴走する、あるいは非違行為がある、こうしたときに対処することが必要だろうと。独立性だといって独善的になってはいけない。そのときに機能するべきは懲戒や検察官適格審査会ではないのかと。この質問にお答えいただきたい。
○国務大臣(森まさこ君) 民主的統制のことについて御質問があったので、先ほどの民主的統制について御答弁を申し上げたものでございます。
○山添拓君 つまり、お答えはいただけないということなんですよ。懲戒という仕組みは、安倍内閣の下で機能していないわけですよ。
今度の特例は、非違行為のあった、問題行為のあった検察官を辞めさせるというものではありません。それは大臣のおっしゃるとおりです。むしろ、内閣が気に入った検察官を続投させるものです。これは民主的統制とは真逆の制度をつくるものだと言わなければなりません。
そもそも昨年十月時点の法案にはこんな特例規定はありませんでした。非常にさっぱりしたものでした。資料の一ページ目です。変わったのはなぜなのか。時間ができたから、こうして膨大な条文に変わったのだと言っています。
大臣、こういうふうに条文を変えたのは大臣が指示されたからですか。
○政府参考人(川原隆司君) その点はこれまでも御答弁申し上げていますが、刑事局の担当者において検討をということで始めたもので、大臣の御指示があったものでございません。
あと、済みません、先ほど私ちょっと不十分な答弁をしましたのでお答えさせていただきます。
先ほどの二ページの資料ですが、これ解釈変更を検討したときの資料でございます。あと、私が先ほど外国の関係で申し上げましたのは、そういう制度があることを前提とした上で具体的な条文を考える上ではそれは制度が違うので参考にならないということでありまして、その外国の制度それ自体を立案の参考にしなかったという趣旨で申し上げたものではございません。
○山添拓君 外国の制度は参考にすべきものじゃなかったわけですよね。
大臣、伺いますけれども、現場の検察官からこういう特例がないと困るという声を聞かれたのですか。
○国務大臣(森まさこ君) 私は常に現場の検察官には接しておりません。
○山添拓君 刑事局長、いかがですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
私ども刑事局におきましては、検察に関する所管をしておりまして、常に検察の情勢は把握しておりますので、こういう問題があるから一つ一つヒアリング的に聞くというものでなく、私どもが把握している検察に関する情勢に鑑みて、担当者において先ほど委員御指摘のような検討作業をしたものでございます。
○山添拓君 では、その検察における情勢はこの私に開示いただいた資料二ページ、法解釈変更するに当たって検討した資料の中のどれですか。検察の実情。
○政府参考人(川原隆司君) 検察の実情というのは私ども刑事局の業務において常に把握しているものでありまして、二ページにある資料は、解釈変更をするに当たりまして、国家公務員法の解釈等、法解釈の関係で参考にしております。
したがいまして、刑事局において把握している検察に関する情勢はこの資料に載っているものではございません。
○山添拓君 資料はないんですよね。資料二ページにあるように、法律をにらんでいたら思い付いたという説明なんですよ。これは、要するに政府側が必要とした特例だということであります。現場からはないだろうと。
検察官は誕生日の前日に例外なく退官します。あらかじめ退官が分かっているから、支障が生じそうであれば手当てをする、それが検察の定年制度です。必要とする声もないのに、時間ができたので考え付いたと、検察の独立性という基本的な問題に関わるのに、専門家の意見を求めることもないと、こんなにおかしな話はありません。この法案は、黒川人事が浮上したために慌てて作り替えたものにほかならないものです。
大臣、最後に伺いますが、検察への信頼回復のために、法務・検察行政刷新会議を立ち上げるよう指示されました。何をテーマにされるんですか。メンバーはどなたですか。
○国務大臣(森まさこ君) 今回の黒川氏の件をきっかけに法務行政、検察行政に対する国民の皆様から様々な御指摘、御批判をいただいておりますので、法務・検察が適正にその役割を果たしていくために国民の皆様の信頼が不可欠でございますことから、そういった国民の声に寄り添う形で様々な御意見をいただき、検察の綱紀粛正、法務行政の在り方等について検討をしていく会議にしたいと思います。
この内容の詳細については現在調整中でございます。
○山添拓君 何も決まっていない。
法務・検察の信頼を失墜させたのは何ですか。もちろん黒川さんは問題でしょう。しかし同時に、違法な人事と不透明な処分いずれについても説明責任を果たさない森大臣を含む政府の姿勢こそが信用を失わせています。これ、現場の検察官や役人の皆さん、いい迷惑だと思うんです。刷新すべきは安倍内閣だということを申し上げて、質問を終わります。

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