山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2020年・第203臨時国会

参院文科委員会でオリパラ特措法案について質問

要約
  • 参院文科委員会でオリパラ特措法案について質問。 世界的な感染拡大のもと、オリパラ開催の政治判断については、科学的知見やスポーツ界の意見を踏まえるべきで、開催ありきの延長には賛同はできない。延期の費用負担についても、法案審議で大枠すら示されていないと、橋本オリパラ大臣に迫りました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 菅総理は、IOC、バッハ会長との会談で、人類がウイルスに打ちかったあかしとして二〇二一年の東京オリンピック・パラリンピックを開催すると述べ、橋本大臣も開催は決定だと答弁されております。しかし、例えばANNの十一月の世論調査では、七月開催でよいは三三%、更に延期二八%、中止三一%と、世論は分かれています。世界的にも国内でもコロナの感染拡大に収束の兆しがなく、今後予測できない下では当然のことだと思います。
 感染状況によっては来年夏の開催は確実ではありません。その際、私は、開催ありきで突き進むのも、また勝手に中止や延期を判断するのも相当ではないと考えます。例えば安倍前総理は、一年延期をIOCに提案したことについて、専門家の助言はいただいていないが、政治的に判断しなければならないと答弁していましたが、これは科学的とは言えないと思うんですね。
 政治判断の前提として、専門的知見やスポーツ界の意見などを踏まえるべきだと考えますが、大臣の認識を伺います。
○国務大臣(橋本聖子君) 今、この九月から開催をしております東京大会における新型コロナウイルス感染症対策について、国、東京都、大会組織委員会によるコロナ対策調整会議におきまして、このコロナ対策に関して、観客あるいはホストタウンですとか選手を取り巻く環境、そういったものについての議論を行っております。
 その中で、当然、感染症対策の専門家の先生方にも御参加をいただいて指導していただいておりますので、そういった全ての関係者の方、医科学的な問題も含めて解決をするためにどうあるべきかという議論でありますので、これをしっかりと寄り添う形で踏まえて、年内をめどに中間整理を行う予定としております。
○山添拓君 専門家の意見は当然だと思いますし、例えばJOCの理事の山口香さんは、次の決断がされるときにはスポーツ界も議論に加わるべきだと述べています。独断ではなく、意見聴取、検討を経た上での判断を是非お約束いただきたいと思っています。
 今後どの程度費用が膨らむのか見えないことも重大です。コロナで暮らしとなりわいの困難が広がる中、開催できるか分からないオリンピックに更に予算をつぎ込むのかと、こういう懸念も当然あるわけです。報道では三千億円の増加とされておりますが、明らかではありません。
 そこで伺いますが、一年延期で増額が予想される費用は、具体的にはその内容はどのようなものでしょうか。また、開催都市契約のバージョンフォーでは、本契約当事者は共同して評価及び議論を継続するとの理解の下、追加の費用について責任を負うとしていますが、この本契約当事者の中に国は入っていません。国は新たに費用負担をしないのかということについて伺います。
○国務大臣(橋本聖子君) まず最初の御指摘でありますけれども、追加経費の内容であります。主なものを具体的に挙げさせていただきたいというふうに思いますが、大会組織委員会によりますと、東京大会の延期に伴い発生する経費として主なものは、仮設の観客席やプレハブなどのリース、レンタル費用、そして資材の一時保管、また撤去した資材を再設置するなどの工事の費用、そして工事の一時中止期間中に資材等を点検、管理する費用などがあるというふうに認識をしております。
 また、費用負担についてですけれども、開催都市契約は、IOC、東京都、大会組織委員会、日本オリンピック委員会、JOCのこの東京大会を開催する、運営する、開催と運営をする四者の間で結ばれた契約であり、国は当事者ではございません。そのため、開催都市契約の条文の解釈について、国としてお答えする立場ではございません。
○山添拓君 いや、国は新たに費用負担をしないのかどうかという点について伺います。
○国務大臣(橋本聖子君) 東京大会の開催経費については、これまでも大会運営の実施主体である大会組織委員会から毎年年末に大会経費としてその全体像が公表されてきたところであります。
 追加の大会経費に係る役割の分担ということになると思いますけれども、IOCや大会組織委員会を中心とした延期に伴う経費の精査状況やコロナ対策調整会議における議論の整理などを踏まえながら、今後、東京都や大会組織委員会を中心に国も関わって検討がなされていくものと承知をしております。
○山添拓君 国も関わってというだけではなくて、立候補ファイルの段階では、組織委員会が資金不足になれば都が補填するとしていました。しかし、東京都は、コロナ禍で財政調整基金を切り崩して、この先税収の大幅な減収も見込まれています。一方で、IOCは最大八百五十億だと、先手を打っているわけですけれども、これは政府としてもIOCの言い値では困るという、そういう姿勢が必要なんじゃないでしょうか。
○国務大臣(橋本聖子君) 東京大会の延期に伴う経費について、六月のIOC理事会において示された安全、安心、費用節減、簡素化という基本原則にのっとって精査が進められておりまして、十月のIOC理事会において、大会組織委員会より、これまでの簡素化による効果が報告をされたところであります。
 五月に開催されたIOCの理事会においては、東京大会の延期に伴うIOCの追加負担を最大八億ドルと見込み、このうち六・五億ドルを大会延期に係るコスト、一・五億ドルをIFやNOC等に対する支援となっておりますが、その詳細な内容は公表されておりません。
 いずれにいたしましても、追加の大会経費に係る役割分担については、今後、東京都、組織委員会を中心に国も加わってしっかりと検討をなされていきますので、国自身がどの部分において負担をするべきかということをまずは精査をさせていただきたいというふうに思います。
○山添拓君 国民負担や都民負担が増える可能性が高い問題ですが、その金額も負担割合も、今こうして一年延期のための法案審議をする中で、大枠すら示されておりません。これ、重大な問題だと思うんです。
 資料をお示ししております。次の問題に行きます。
 政府の調整会議では、外国人観客の受入れについて、入国後の二週間隔離と公共交通機関の使用禁止を条件とするのは観戦を事実上困難とするとし、これらを不要とする検討が行われています。しかし、これは余りに短絡的ではないかと思うんですね。
 現在、原則入国禁止措置となっている百五十二か国から来日する人には、空港での検査で陰性が確認されても十四日間の待機、そして公共交通機関は使用禁止です。ビジネストラックという枠組みで十四日間待機を求めない場合でも、公共交通機関については使用禁止とされています。
 厚労省に伺いますが、なぜこうした扱いになっているのでしょうか。
○政府参考人(依田泰君) お答え申し上げます。
 ただいま委員から御指摘ございますように、ビジネストラックやレジデンストラック等による入国につきましては、指定場所での十四日間の待機、また公共交通機関での不使用を要請を行っていることに加えまして、また、こうした公共交通機関の不使用などの防疫措置につきまして、受入れ企業、団体、確約することを条件として、感染拡大防止の徹底を図ると、水際対策の強化の一環として実施をしているというところでございます。
○山添拓君 ビジネストラックは不特定多数の人とは接触しないという前提があるのだと思いますが、厚労省に確認しますけど、これ潜伏期間の問題で、ウイルスの特性上、十四日間の待機中に感染が確認される場合もあり得ると、こういうことですね。
○政府参考人(依田泰君) こうした取扱い、十四日間の待機でございますけれども、新型コロナウイルス感染症につきましては、十四日間の潜伏期間があるといったようなところを踏まえて現在実施をしているというところでございます。
○山添拓君 この点はもう御承知のとおりなんですけれども、大臣に伺いますけど、やはり外国人観客について、二週間隔離、公共交通機関不使用を条件としない扱いというのは、少なくとも現時点では現実的ではありませんし、適切とも言えないのではないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(橋本聖子君) 二週間の隔離、公共交通機関不使用を緩和する場合については、これらと同程度の防疫措置を構築する必要がありますが、具体的な措置内容については、今後の国内外の感染状況等を考慮し、来年の春までに決定をする予定としております。
○山添拓君 これはウイルスの特性の問題ですので、感染状況がどういう状況になっても対応を検討しなくちゃいけないことだと思います。
 東京都医師会の尾崎会長は、全世界から観客を呼んでできるかといったら限りなく難しいと、もしやるとすれば無観客が現実的には妥当との見方を示しています。これ、改めて検討すべきだと思います。
 次に、医療体制について伺います。
 選手村の総合診療所のほか、各会場に医務室を計百三十か所以上設ける計画とされています。スタッフの数は一万人以上、医療従事者だけでも五千人以上が必要とされていますが、このうち報酬を支払うのは責任者の約五十名だけで、それ以外は無報酬あるいは病院から勤務扱いで派遣してもらうと、基本はボランティアということです。
 コロナで疲弊する医療機関に減収補填がなされず、多くが赤字を抱えて職員の給料やボーナスがカットされています。この下でただ働きせよというのは、さすがに無理を強いるものなんじゃないでしょうか。
○国務大臣(橋本聖子君) 選手村の総合診療所や各会場の医療、医務室における御指摘でありますけれども、大会期間中における医療体制については、組織委員会において、選手村に総合診療所、各競技会場には選手用、観客用の医務室を設置、運営するほか、これらの施設の機能を超える治療、検査が必要な場合は大会指定病院に搬送するなどの体制と承知をしております。
 このコロナ対策調整会議におきまして、そういった医療現場の実態も踏まえながら、しっかりと専門家の御意見をお聞きして検討を進めていきたいというふうに思っております。
○山添拓君 先ほど、この点は石川委員からも質疑がありましたけれども、資料の三ページに新聞記事も紹介しております。コロナ前の検討の結果としての現在の体制です。この先、更に発熱外来などを設置することになれば、人手は更に必要になると思います。記事にもありますが、都内の大学病院の責任者は、組織委員会は必要人数や待遇をゼロから協議するべきだと話をされています。原則無報酬というやり方を含めて、現状の計画では医療体制は破綻しかねないと思います。これは抜本的に検討し直すべきだということを指摘させていただきたいと思います。
 組織委員会は、持続可能性に配慮した調達コードにおいて、国際的労働基準の遵守・尊重など、適正な労務管理と労働環境の確保を求めていくとし、ILOとの間ではディーセントワーク促進に向けた合意書、協力覚書に署名しています。これは初めてのもので、非常に意義あるものだと思いますが、例えば、そうした合意がある下で解決していない労使関係の問題ということも残されております。
 大会のオフィシャルパートナー企業である日本航空では、二〇一〇年の経営破綻時に強行したパイロット八十一名、客室乗務員八十四名の整理解雇事件がいまだに解決しておりません。ILOから四次にわたる勧告で労使の対話が求められ、赤坂社長も解決を図りたいと述べながら事態が動かないままです。
 ILOの百六十六号勧告では、経済的理由で解雇された者には再雇用の優先権を与えるべきだとされているのですが、これは日本も賛成したものです。しかし、日本航空は、整理解雇の後、五千六百名を超える客室乗務員を採用しながら、解雇された者からは一人も再雇用していないんですね。
 大臣に伺いますが、こうした国際労働基準ないし行動規範にそぐわない労使関係が見られる場合、これはやはり、その是正が図られてしかるべきなのではないでしょうか。
○国務大臣(橋本聖子君) 組織委員会が定める持続可能性に配慮した調達コードでは、調達する物品、サービス等の製造、流通等に関してサプライヤー等に求める基準が定められておりまして、労働に関しても、国際的労働基準の遵守・尊重を始め、九つの事項について基準が定められております。
 調達コードの実効性を担保するための方法、規定というのは、これから事案が発生した際には組織委員会において適切に対応するものと考えておりまして、しっかりと対応しなければいけないと思います。
○委員長(太田房江君) 時間が参っております。
○山添拓君 ありがとうございます。
 時間ですので、終わります。
 調達コードもILOとの協力覚書も、掲げたからには実効あるものにするべきだと思います。組織委員会は個別の問題を含めて適切に対処すべきことを求めて、質疑を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

○山添拓君 日本共産党を代表して、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本法案は、全大臣を構成員とする推進本部や専任の担当大臣を置く政府の推進体制を二〇二一年度末まで一年間延長することを中心とするものです。五年前に制定された本特措法は、オリンピックの開催を我が国が活力を取り戻す弾みとなると位置付け、大臣を増員して専任の担当大臣を配置し、オリンピックを名目とした都市の再開発や大型公共事業をより強力に推進する体制をつくろうとするものです。
 我が党は、こうしたやり方は、オリンピック精神、また簡素で無理のない取組を求める国民、都民の声、さらに、IOCが二〇一四年十二月に発表したオリンピック・アジェンダ二〇二〇の精神にも逆行するものだとして反対しました。その推進本部の設置期限を延長する本法案には賛同できません。
 しかも、本年三月、東京大会の開催は新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する下で来年七月に延期されました。現在、新型コロナの感染は再び世界的に拡大し、世界でも日本でも収束のめどは立っていません。開催には大会に関係する全ての人に安全、安心な環境が保障されることが必要不可欠です。
 政府は、人類がウイルスに打ちかったあかしとして東京大会を開催すると言いますが、選手、観客の受入れや医療体制を始め、安全、安心な開催のあかしは示されていません。大幅な増額が予想される経費については、その大枠も国や東京都の負担割合も不明確なままです。大会開催の条件が整っていないにもかかわらず、開催ありきで推進体制を延長することには賛成できません。
 今必要なことは、新型コロナの感染拡大の下で大会開催が可能なのかどうか、専門家の治験やアスリートの声、国民、都民の意見に幅広く耳を傾け、冷静な判断を行うことではないでしょうか。何よりも、感染拡大を防止し、人々の命と暮らしを守ることを最優先するのが政治の責任だと申し上げ、討論を終わります。

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