山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2021年・第204通常国会

参院憲法審査会で意見表明

要約
  • 憲法に緊急事態条項を創設すべきとの議論があるが、内閣の一存で国会の機能を止め法律に代わる命令をだすようになれば、人権の制限と抑圧の危険はもとより、政府への異論や批判が封じられかねないと指摘しました

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 新型コロナが世界的に猛威を振るい、国内で三度目の緊急事態宣言が出される中、憲法施行から七十四年を迎えようとしています。憲法前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とうたいます。この理念を実現する政治が切実に求められています。
 憲法審査会は、二〇〇七年、改憲に執念を燃やす第一次安倍政権が、改憲手続法を強行して設置したものです。改憲原案を発議し、審査する機関であり、ここでの議論を進めることは、勢い改憲案のすり合わせに向かいかねません。日本共産党は、国民世論が改憲を求めない中、審査会を動かす必要はなく、動かしてはならないと考えます。
 安倍氏は、政権に復帰した二〇一二年以降、絶えず憲法審査会での改憲論議をあおってきました。二〇一七年五月三日には、九条に自衛隊を明記する改憲案を唐突に打ち出し、二〇二〇年と期限を切って進めようとしました。安倍政権を継承した菅首相も、審査会での議論を期待する、それが国会議員の責任だとまで述べています。しかし、行政府の長である首相が国会に改憲論議を押し付けるのは、憲法九十九条の憲法尊重擁護義務にも三権分立の原則にも反する異常な姿であり、道理がありません。
 改憲ありきの異常さは改憲項目の変遷にも表れています。安倍氏が当初主張したのは、九十六条改憲でした。国会発議のハードルを下げてしまおうという狙いはあけすけであり、改憲論者からも裏口入学と批判されました。九条に自衛隊を書き込む改憲案は、国民の支持を得るどころか九条改憲を許すなという世論と運動が大きく広がり、安倍氏が掲げた二〇二〇年改憲はとうとう実現できませんでした。すると、今度は、コロナ対応を理由に緊急事態条項だと言います。何が何でも改憲をしようとする余り、そのテーマは目まぐるしく変遷してきました。しかし、世論調査で政権に改憲を期待すると答える人は数%にすぎません。だからこそ、安倍氏は首相退任に当たり、国民的な世論が十分に盛り上がらなかったと述べたのであり、菅首相も訪米中のインタビューで、現状では非常に難しいと認めなければならないと述べざるを得ませんでした。その事実を正面から受け止めるべきです。
 安倍、菅政権は、明文改憲の策動と並行し、乱暴な憲法破壊を続けてきました。集団的自衛権の行使容認の閣議決定の末に、安保法制、戦争法を強行し、秘密保護法、共謀罪など数々の違憲立法を押し進め、日本学術会議への人事介入で学問の自由をも踏みにじっています。とりわけ安保法制の下で九条の破壊が新たな段階に進みつつあります。
 日米首脳会談の共同声明は、日米軍事同盟の一層の強化を掲げ、そのために日本政府は防衛力の強化を約束し、際限のない軍拡に突き進もうとしています。同時に、声明は、中国への対応についても、台湾海峡の平和と安定の重要性についても、日米同盟強化の文脈に位置付けました。この下で、政府は、台湾有事の際、安保法制に言う重要影響事態や存立危機事態を認定することも検討しているといいます。戦闘地域で自衛隊が米軍に後方支援したり、集団的自衛権を行使して参戦したりすることが現実となりかねません。
 日米両国が台湾問題に軍事的に関与する方向に進むことは断じて許されません。軍事対軍事の危険な悪循環に陥るのではなく、違憲の安保法制を廃止し、九条を生かした自主独立の平和外交へと歩みを進めるべきです。核の傘、抑止力への依存を改め、核兵器禁止条約に参加すべきです。
 現在、新型コロナの感染拡大と医療崩壊の危険を招いているのは憲法のせいではありません。無為無策で対応能力を欠く菅政権のコロナ対策が事態を深刻にしています。
 憲法に緊急事態条項を創設すべきという議論があります。内閣の一存で国会の機能を止め、法律に代わる命令を出すようになればどうなるか。人権の制限と抑圧の危険はもとより、政府への異論や批判が封じられかねません。
 コロナ危機の一年、国民が声を上げ、野党も提案し、一人十万円の現金給付を始め、支援策の拡充、生活困窮者や女性、学生などへの対策を進める力となりました。アベノマスクやGoToキャンペーン、開催ありきの東京五輪など、事実と科学に基づかない政治を正す上でも、国会審議は極めて重要です。緊急事態条項は危険で無用です。
 衆院議員の任期満了が近づく中、感染拡大で選挙ができない懸念も論じられます。しかし、衆議院解散中は参議院の緊急集会で対応することが憲法五十四条二項に明記されています。選挙ができないほどの感染状況を懸念するなら、何より感染の封じ込めに全力を尽くすべきです。コロナ危機に便乗して改憲論議をあおるのは究極の火事場泥棒だと言わなければなりません。
 なお、個人の尊重に最大の価値を置く憲法の下で、投票価値の平等の実現は大前提です。合区解消を理由に一票の較差を容認することは、参議院の民主的正統性の基盤を崩し、権限縮小の議論に結び付きかねません。国民の政治参加をひとしく保障する選挙制度こそ実現すべきです。
 立憲主義と法治主義に反し、民主主義を軽んじる強権政治は終わりにすべきです。憲法を生かし、命と暮らしを守り、個人の尊厳、多様性の尊重とジェンダー平等の社会を実現する政治へ、政権交代で転換する決意を述べ、意見表明とします。

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