山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2021年・第204通常国会

予算委員会で、東京五輪と新型コロナ感染症対策について質問しました

要約
  • 総理がオリパラ開催を安全安心の大会という前提となっているバブル方式について質問。バブル方式が万全でないことを明らかにした上で「バブルの中が安全であれば、その外で必要な医療を受けられず苦しむ人、亡くなる人が大勢いても構わないのか、五輪だけ安全安心とは大問題」と追及。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
緊急事態宣言が五月末まで延長されます。短期集中で封じ込めと言っていましたが、封じ込めることができていません。専門家の意見を尊重せず、科学的な根拠に基づく対策となっていない、そのことに多くの国民が不安や懸念を抱いています。
日本感染症学会などが、週末、変異株に関する緊急シンポジウムを開きました。国立感染研の鈴木基感染症疫学センター長は、英国型の感染力は従来の一・五倍と分析し、従来と同じ対策では全く立ち行かない新しいウイルスが出てきていると考えなくてはいけないと訴えています。ワクチンが行き渡るまでの間にも抜本的な対策の強化が必要です。
ところが、例えば検査一つを取っても、高齢者施設などへの社会的検査は東京、大阪など十の都府県で三万近い対象施設の約半数でしか実施されておりません。通所型、訪問介護、これらは対象ですらありません。
総理に伺います。
従来求められてきた対策も不十分では、変異株の急速な拡大にとても対応できないではありませんか。いかがですか。
○国務大臣(西村康稔君) まさに今御指摘があったように、感染力が強い変異株であるからこそ、この連休という機会を捉えて休業要請まで行って、本来なら人々の活動が活発になる時期に人流を抑え、人と人との接触を抑えということで対応してきたわけであります。
かなり人出は減っておりますので、この効果が今週どこかで出てくるかどうか、これを見極めなきゃいけない。ちょっと検査件数が連休中ですごく減って急に増えておりますので人数が増えているように見えますが、これはならして見なきゃいけないというふうに、分析を進めたいというふうに考えております。
その上で、引き続き、東京、大阪はこうした強い危機感を持っておりますので、休業要請など強い措置を継続するということでありますので、国としても経済的にしっかりと支援をしていきたいと思いますし、また、厚労省の方を中心に検査キット、抗原検査キットを使って、八百万回分確保して、今月中旬以降、そうした高齢者施設、医療機関などで活用していくということでございますので、検査についても、私の方で担当しているモニタリング検査と併せて戦略的に大幅に拡充していければというふうに考えております。
○山添拓君 見極めに時間が必要なことは宣言出す段階から分かっていたと思うんですけどね。変異株を封じ込められるチャンスはごく初期に限られるということも指摘されております。インド株なども懸念されています。
これは総理にお答えいただきたいのですが、ワクチンの迅速接種と同時に、検査、医療、十分な補償で、ワクチン頼みに陥らずにやるべきことを行うべきだと、この姿勢は示していただきたい。いかがですか。
○内閣総理大臣(菅義偉君) ワクチンと同様に検査というのも、そこは今後感染拡大を防ぐためには極めて重要だという認識をしていますので、そこはしっかりやっていきたいと思います。
○山添拓君 そうして国内でも世界でも変異株が猛威を振るっている中です。懸念されるインド株も少なくとも十九か国で確認されているといいます。
アメリカのワシントン・ポスト紙は、コラムで日本政府に五輪の中止を促しました。大会開催を前進させている主な要因は金だと言い、五輪の中止で損切りすべきだと主張しています。ニューヨーク・タイムズは、コロナ禍の五輪開催は一大感染イベントになる可能性があると指摘し、フランスのル・モンドも、世界中から外国人が集まる五輪は変異株の祭典となり、感染を加速させる危険があるとしています。
総理に伺いますが、こうした批判が広がる中で、開催ありきで突き進むのですか。総理に伺います。
○国務大臣(丸川珠代君) 先日の五者協議で、まさにその変異株に対応した水際措置並びに選手村、会場等における防疫措置についてルールを定めました。
非常に厳格な行動管理を行い、また用務先、あと競技会場、それからそれぞれの宿泊地、この三地点以外は絶対に自由行動はないという、その三か所しか行かないというような状況になります。また、組織委員会がこの行動を全て管理するということとなってございます。
○山添拓君 総理、こうした海外からの批判についてどう認識していますか。
○内閣総理大臣(菅義偉君) 先ほども私答弁をさせていただいたんですけれども、開催に当たっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加ができるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく、こういうことを申し上げました。
いずれにしろ、海外でそういう今論調があるようですけれども、外国人の方を、観客は入場不可とか、そういう考えていることがまだまだ伝わっていないじゃないかなというふうに思います。
ただ、いずれにしろ、やはり開催するに当たっては、選手や大会関係者の感染対策、これしっかり講じて安心して参加できるようにすると同時に、国民の命と健康を守る、ここも極めて重要なことであります。命と健康を守るのは、これは政府の責任でありますから、そうしたことをしっかり行った上で対応していきたいというふうに思います。
○山添拓君 IOCのバッハ会長の来日も延期となりました。一人来られるのも難しい中で、選手と関係者だけで少なくとも三万人、関係者など、報道関係者など最大九万人の来日など到底無理だと言わなければなりません。水際対策が成功していないことへの反省もなく、五輪だけはうまくいくと、これは幻想ですよ。
総理に伺いたいのですが、内閣官房参与の高橋洋一氏が昨日ツイッターで、各国の新規感染者数のグラフを挙げて、日本はこの程度の「さざ波」、これで五輪中止とかいうと笑笑、と発信しました。治療を受けられずに亡くなる方がいる中で、こうした認識の方が政策決定に関与していることが大問題ですが、高橋氏は五月四日、総理とも三十分余り面会したそうであります。総理は同じ認識を共有されたのですか。だから五輪の開催に固執しているのですか。
○内閣総理大臣(菅義偉君) 高橋氏については、私、経済見通しとか経済運営、そうしたものを官房長官以前から相談をしております。そういう中で、今回、参与にさせていただきました。
五輪のことについては全く相談をしていません。
○山添拓君 では、こういう認識を示されていることについてはどうお考えですか。
○内閣総理大臣(菅義偉君) 高橋さん個人の主張について私から答弁することは控えるべきだろうと思います。
○山添拓君 官房参与ということで非常勤の国家公務員として総理に進言をしている、そういう方の認識だから問題にしております。
バブル方式で選手や大会関係者を泡のように包み込む。入国後は毎日検査し、公共交通機関の利用は認めない。選手村と練習会場、競技会場のみを行き来する。外部との接触がないから安全、安心だと。IOCは選手向けにワクチンも提供するとしています。
総理が安全、安心の大会とおっしゃるのも、このバブル方式を前提としているかと思います。しかし、バブルの中が安全でさえあれば、その外で必要な医療を受けられない方が苦しむ、あるいは亡くなる方が大勢おられる、それでも構わないということなのですか。
○内閣総理大臣(菅義偉君) まず、日々新型コロナで治療される、あるいはワクチン接種に当たっておられる医療関係者の皆さんに深く感謝を申し上げたいと思います。
大会委員会において、国民の皆さんの命と健康はしっかり守る、その前提の上に立って、この大会に出席される方たちのそうした感染対策もしっかりやる、そうしたことがこの大会に向けての政府としての基本的な考え方であります。
○山添拓君 ですから、それはバブルで包まれた中は安全、安心と、しかしその外はどうなってもよいと、そういうようにすら聞こえる、だからこそ問題にしているわけです。
組織委員会が日本看護協会に対して五百名の看護師派遣を求めていたことが大問題になりました。バブル方式を機能させるためにも医療提供体制が前提とされていると思います。
パネルをお示しします。(資料提示)
「#看護師の五輪派遣は困ります」、愛知県の医療福祉関係の労働組合、医労連が呼びかけたツイッターデモは瞬く間に広がり、四十二万ツイートを超えています。
私がお話を伺った医療機関では、ふだんから人手が足りず、看護師の派遣を依頼しているそうです。紹介会社に払う金額だけで年間一千万円を超えることもあるといいます。それでも昨年末からは交代の次の人が紹介されてこないと。派遣要請ふだんからやっているけれども、今コロナでそれも立ち行かない状態だとおっしゃっています。ですから、五輪への派遣要請があっても絶対に出さない、出せないと、そういうお話でした。
総理、この声に、現場からの声に正面から向き合うべきではありませんか。
○国務大臣(田村憲久君) 当然、看護師の皆様方には大変な今役割を担っていただいております。でありますから、コロナ、コロナの対応となると、感染管理も含めて様々な知識をお持ちで経験のある方々、こういう方々に対応いただいております。それから療養施設、ここに関してはそこまで治療等々には関わりませんが、しかしやっぱり一定程度危険な中での対応。
一方で、五輪に関しては、様々なその専門職としての役割はあると思いますが、例えば選手の方々が会場等々でいろんなことを、けが等々に対する対応、こういうことに関してはそこまでコロナの感染管理のいろんな知識や能力をお持ち、若しくは経験がなくても対応いただけるわけで、潜在看護師、約七十万人以上推計でおられると言われておりますけれども、こういう中にも様々な方々がおられるわけであります。そういう方々も含めて、看護協会、日本看護協会の皆様方に是非ともこのオリンピックにおいても様々な形で御協力をいただける方、こういう方の掘り起こしといいますか、お願いをさせていただいておるわけでありまして、もちろん、我々といたしましては、コロナの対応という形の中で、国民の健康、命を守るために看護職の中でそういう御活躍をいただいている方々にはその対応をしっかりとお願いをさせていただきたいというふうに思っております。
○山添拓君 現場の悲痛な叫びに対して全然向き合っていただいていないと思うんですね。
潜在看護師、休んでいる方がいる、そういう方は事情があって休んでいるわけですよね。子育てや介護、条件がなくて戻れない。戻って働けと、そういう簡単な話ではないということも、私たち、現場の方からも伺っています。そうした看護師を派遣できる体制があるのであれば、感染が深刻な地域にまず派遣すべきだということも指摘したいと思うんです。
丸川大臣に伺いますけれども、看護師の派遣というのはこの五百人だけではありませんね。それ以外に何人派遣の要請をお願いしているんですか。
○国務大臣(丸川珠代君) 大変恐縮ですが、私ども、この看護師だけで今トータルどれだけお願いしているかというのはちょっと組織委員会からお伺いをしておりません。
ただ、医療関係者全体ということでありますと、日単位で一番最高に必要なときでどのくらい必要かということで今数字を、もう一度持ってまいりますので、少々お待ちください。申し訳ありません。
○委員長(山本順三君) じゃ、速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(山本順三君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(丸川珠代君) 失礼いたしました。
一日当たりの医師、看護師の人員、最も多くの会場、これ七都府県になりますが、七月二十五日、この日は三十二の競技会場がございます。医師は三百人程度、看護師は四百人程度、このうち発熱関係の外来等をやっていただく方、コロナウイルス感染症対策ということになるかと思いますが、医師百人弱、看護師百人強ということを目指していると伺っております。
○山添拓君 つまり、五百人の派遣要請、それ自体集まる保証はありませんけれども、それだけでも足りないと。しかも、これは観客を入れない前提での想定です。観客をもし入れるということになれば、更に多くの医療従事者を五輪に派遣させるということになります。総理は地域医療に影響をもたらさないようにということをこの間答弁しておられますが、これ深刻な影響をもたらすことになります。
会場だけではありません。例えばサーフィン会場のある千葉県一宮町は、ブラジルの代表チームが拠点とする予定でしたが、検査体制の確保や陽性者が出た場合に対応できる医療機関がないことなどを理由に受入れを断ったといいます。
全国で五百二十五の自治体がホストタウンに登録し、事前の合宿や大会後の地域交流が予定されております。ホストタウン以外にも約百の自治体が事前合宿を受け入れると伺っています。それぞれで毎日検査し、陽性者を保護し、治療をするということが必要になります。ただでさえコロナ対応、ワクチン対応に懸命の自治体に、五輪の対応で検査や医療の体制整備を求めていく、こういうことになるんでしょうか。
○国務大臣(丸川珠代君) 御指摘のとおり、ホストタウンに滞在中の出場前の選手等についても、原則毎日検査をしていただくことになっております。受入れ自治体の関係者の皆様も、直接選手と触れる方は安全を確保するために検査を受けていただくということにしております。
これらの検査については国が全面的にバックアップをしておりまして、まず、費用の負担を国が行っております。加えて、民間の検査会社、これも国で全国を見ていただける民間の検査会社に低廉な費用でやっていただけるよう今調整を進めているところでございます。加えて、医療に関しては、やはり都道府県が医療の全体を見ておりますので、都道府県がこのホストタウン、自分の都道府県で抱えておられるところの調整に当たっていただくための費用というのも国で支弁をしております。
○山添拓君 もうそうした対応はとてもできないということでホストタウンを辞退した、そういう自治体が二十を超えて存在しています。
四月六日にホストタウン関係省庁連絡会議を開かれましたが、その場でも感染症対策は見直しの作業中としています。ですから、この先、対策もまだ決まっていない、自治体には更に負担をもたらすことになっていきます。総理、こういう負担をあらゆる機関にもたらすと、それでも開催ありきで本当に進むのでしょうか。
私は少し別の角度からも伺いたいと思うんですね。
今感染が大爆発しているインドで、カヌーの代表チームが予選の出場を断念しました。最終予選を兼ねたアジア選手権がタイで開かれておりましたが、インドからの入国を全面禁止としたために出場できなくなったものです。カナダは、五輪の出場が懸かった世界リレーや体操の最終予選への代表派遣を断念しました。出場自体を諦めるということです。
各国の感染状況、ワクチンの接種状況には残念ながら格差があります。出場の辞退や断念、今後も広がる、そうしたことが予想されます。フェアではありません。フェアでない五輪というのは、いかなる差別も伴うことなく、友情、連帯、フェアプレー、その精神を掲げる五輪憲章とも反するものになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(丸川珠代君) それぞれの国の感染状況の対応、あるいは我が国の感染状況をどう判断されるかというのは国ごとにいろいろな御判断があろうかと思いますが、この選考大会への出場の可否というのは各国それぞれの理由で決めておられまして、IOC等が一律に出場してください、駄目ですという話でもありませんし、我が国がどうするという話でもございません。
東京大会までの間、もちろん我々も徹底して感染の抑制に政府として努めると同時に、我々の感染対策も進めてまいりますが、少なくとも、事前合宿を取りやめたところは幾つか聞いておりますけれども、ホストタウンとしての交流は続けていただいているということでございますので、そこは是非御承知おきをいただきたいと存じます。
○山添拓君 だって、一般の人と選手たちは交わらないと言っているわけですから、ホストタウンの交流といってもオンラインの交流になるわけですよね。そうした交流をすることで本当におもてなしとなるのかということも既に懸念をされております。
パネルをお示しします。
四月以降、東京大会のテストイベントが十八の競技で行われております。競技の運営や大会運営の能力を高めるということを目的にしたテスト大会ですが、コロナ対策でも文字どおりテストですね。ところが、国外選手が参加したのは四競技だけです。コロナ対策を定めたプレーブックの第二版のとおりに開催できたものというのは、大臣、ありますか。
○国務大臣(丸川珠代君) 基本的には第二版の考え方に基づいてやらせていただいております。
○山添拓君 九十六時間前、二回の検査、いずれの大会でも行われていないんじゃありませんか。
○国務大臣(丸川珠代君) 恐縮です。それは第三版の考え方になります。
○山添拓君 つまり、本番と同じようにテストできたものは一度もないんですよ。そして、この先、国外選手を招くテスト大会は予定されておりません。今おっしゃった第三版は六月頃にできるといいますが、ぶっつけ本番です。テストがテストになっていないわけです。
総理、宇都宮健児さんが呼びかけた、人々の命と暮らしを守るために東京五輪の開催中止を求めますというネット署名が三十万筆を超えています。委員の皆さんには資料をお配りしております。パネルも示そうと思いましたが、自民党に止められてしまいました。
読売新聞の世論調査で六割近くの方が中止と答えています。中止を求める国民の声を無視して突き進むんですか。最後にお答えいただきたい。
○内閣総理大臣(菅義偉君) 開催に当たっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康はしっかり守ってまいります。
○山添拓君 同じ答弁ばっかりです。
五輪は中止を決断し、目の前のコロナ対策に集中するべきです。中止の検討すらせず、IOC任せで主体的に判断しようとしないのは余りにも無責任だと、このことを指摘して、質問を終わります。

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