山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2021年・第204通常国会

憲法審査会で国民投票法改定案について発議者に質問

要約
  • 憲法審査会で国民投票法改定案について発議者に質問。改憲世論は8%という事実に反省を述べる船田議員、総理や下村議員の発言を指摘され、自民党内で発議者との違いがあることを明らかにした中谷議員、法案成立を急ぐ理由を答えられない逢沢議員。山添拓 議員は「欠陥があるなら出し直しを」と。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
まず、自民党の発議者に伺います。
自民党の下村博文政調会長は、五月三日、自民党改憲四項目の一つである緊急事態条項に触れて、感染症拡大をその対象に加えるべきだと述べました。また、その際、今回のコロナをピンチをチャンスとして捉えるべきだと、こう述べたとも報じられております。
発議者も同じ認識でしょうか。
○衆議院議員(中谷元君) この発言が報道であったということは承知をいたしております。
コロナ禍によりまして、お亡くなりになったり、また職を失われたりするなど、様々に苦痛を抱えておられる方々がいらっしゃるということを踏まえますと、与党の政策責任者の言としてはやや配慮に欠けていたと言えるかもしれません。ただ、この発言の真意は、政治はいついかなるときも国や社会のより良い姿を模索し続けなければならないところ、現在のコロナ禍にあっても緊急事態における国の在り方がどのようにあるべきか、真摯に議論を続ける重要性を説く点にあったんではないでしょうか。
現在まさに平時じゃなくてコロナウイルスが蔓延中の緊急事態であります。国と地方の権限、国民の行動の制限と補償、PCRの検査や医療支援体制、特措法の在り方、そういった議論の中で、この法的根拠をしっかり議論をして、憲法における緊急事態の規定のことも含めた議論が国会でしっかりと関与した形で行われることが大事ではないかと、そのようなことを訴えておられたのではないかと思います。
○山添拓君 やや配慮に欠けるどころの話じゃないですよ。そして、それは政策責任者である下村氏と憲法審査会の現場で審議に臨んでおられる発議者の皆さんとでは異なる認識で進めてきたということになるんでしょうか。
これ、やや配慮に欠けるどころではなくて、こういう発言は不謹慎だと、こう認めるべきじゃありませんか。
○衆議院議員(中谷元君) まさに今コロナによっていろんな対応をされている中でありますが、我が党はもう既に憲法改正の議論の中で緊急事態における国の在り方についてのイメージを党でまとめて発表しております。
まさに、どのような対応がしっかりできるかというのは、やっぱり政策責任者としては国民の中で問題提起をして議論をして当然のことじゃないかと思います。
○山添拓君 コロナ対応が今うまくいっていないのは、憲法に緊急事態条項がないからではありません。やはり、ワクチンの大規模接種や大規模検査や、あるいは十分な補償や医療への支援や、あるいは東京オリンピックの中止、これやるべきことをやっていないということが最大の問題であります。
続けて、発議者に伺いますが、日経新聞とテレビ東京が毎月行っている世論調査は、政権に期待する政策は何かを問うています。直近の調査で、優先的な政策課題として、憲法改正を選んだのは八%でした。数年間遡っても、おおむねこの程度です。コロナの前も今もです。
改憲は政治の優先課題として求められていない、このことはお認めですか。
○衆議院議員(船田元君) ただいまの山添議員の御質問でございますが、私どもは、国民世論がなかなか、憲法改正についてその必要性を認める、その順位がなかなか上がっていかないということは、一つの大きな反省点だと思っております。
我々としては、やはり国会の憲法に関する議論を活性化させて、そのことにより国民の皆様の憲法に対する関心を高めるという、こういう大きな役割を持っておりますが、まだ十分ではないということにじくじたる思いをしております。
また、やはり我々は、そういった国民世論はもちろん大事にしなければいけませんけれども、同時に、国会の責任として、やはり憲法について我々の国民としての意思をどのように表現するか、あるいは現行の憲法においてどういう点を直すべきなのか、また直さないべきなのか、こういうことについて国民の意思を測っていくという点では、憲法に対する民主主義を高める、こういう大変大事な役割を担っておりますので、我々は国民世論を高めると同時に、我々自身の憲法論議をしっかりと進めることが国会議員の責務であると、このように考えて、従事しておる次第でございます。
○山添拓君 今、反省すべきだとおっしゃいましたけれども、反省するべきは改憲ありきで議論を進めるというその姿勢だと思います。
例えば、朝日新聞の世論調査では、今指摘のあった緊急事態条項、これ、今の憲法を変えずに対応する、あるいは変える必要はない、合計六〇%です。読売新聞では、憲法を改正して政府の責務や権限に関する規定を条文に明記すべきだというのが五九%を占めていますが、しかし、これについて読売新聞の評価は、「政府のコロナ対策への不満が、現状の対応では限界があるとの認識につながっているようだ。」としています。
先ほど紹介した日経、テレ東の四月の調査では、優先してほしい政策課題としてコロナ対策を挙げた人が七割でした。当然だと思うんです。目の前の命と暮らしを守ることができていない、その状況の下で、ピンチをチャンスにと言って改憲論議を急ぐ、これは火事場泥棒と言われても仕方ないと言わなければなりません。
そもそも、安倍、菅政権の下では改憲を論じる前提を欠くのではないかという点も指摘したいと思います。
二〇一四年六月、改憲手続法、今日も審議しております国民投票法改定が強行された際、参議院の附帯決議の第四項は、政府が自由に憲法解釈を変更できるものではないとしていました。にもかかわらず、安倍政権は、直後の翌七月、集団的自衛権の行使は認めないとしてきた憲法九条の解釈を百八十度転換する閣議決定を行い、翌二〇一五年、安保法制、戦争法を強行しました。
日本共産党は附帯決議にも反対しましたが、これ与党は賛成されたものです。附帯決議を踏まえずに政府が違憲の解釈変更を強行したことについて、発議者はどのような御認識でしょうか。
○衆議院議員(中谷元君) もう憲法をいかに考えるかということでございますが、これにつきましては、国会、衆参両方でもう百時間以上審議をして、法律を議論をして成立に至ったということでございますので、政府が独走してその思いどおり解釈を変えてしまったということでなくて、国会で議論をして、その合意の下に変更したということです。
○山添拓君 閣議決定による解釈変更は、国会審議の前なんですよね。それを先にやったということで、安保法制の違憲訴訟では、元内閣法制局長官の宮崎礼壹氏が証言しています。集団的自衛権の容認部分は憲法九条との関係で両立しないものであって、それは一見明白に違憲という域に達していると述べています。これ、元内閣法制局長官の証言です。違憲の解釈変更であることは明らかです。
こうして解釈変更による、解釈改憲による九条の破壊が今や極限にまで達して、憲法との整合性をどうにも説明が付かなくなり、今度は明文改憲まで進めようとしているわけです。
続いて、自民党の発議者に伺います。
菅首相は、五月三日、改憲派の集会にメッセージを寄せて、国民投票法改定案に言及し、憲法改正議論の最初の一歩として成立を目指さなければならないと述べました。
発議者はこの点で同じ認識でしょうか。
○衆議院議員(中谷元君) 第一歩というのは緊急事態のことですか。(発言する者あり)あっ、これは手続法でありますので、より厳正な国民投票の中で、この憲法改正がしっかりと国民の合意の下に行われるという、非常にこれはこの土台の部分で、これこそやっぱり憲法改正の一番大事な部分じゃないでしょうか。
○山添拓君 この国民投票法改正案が憲法改正議論の最初の一歩だというのが菅首相のメッセージですが、同じ認識ですか。
○衆議院議員(中谷元君) 衆議院の審査会の現場におきましても、こういった憲法本体の議論とこの国民投票の議論と両方議論をしておりますが、その中でも、やはりこの大前提としてこの国民投票法における改正の手続、これをしっかりしたものにするべきだということで、こちらを優先して審議をしていったというのは事実でございます。
○山添拓君 つまり、最初の一歩であり、この法案は改憲論議を進めるための呼び水であると、そういうことをお認めになるわけですか。元々行政府の長である首相が国会に対して改憲論議をあおること自体、憲法尊重擁護義務に反するやり方であったと思います。
安倍首相は退任時に、国民的な世論が十分に盛り上がらなかったと述べました。菅首相も訪米中のインタビューで、現状では非常に難しいと認めなければならないと、政権の考えで簡単に変えられるようなものではないと認めるに至っています。
改憲そのものが求められていないと、それは歴代の首相が、まあ安倍首相、菅首相が認めていることですけれども、それでも改憲論議を進めようと思い、その最初の一歩としてこの法案を発議した、提出したということなんですか。
○衆議院議員(中谷元君) そうではありません。この憲法については様々な意見もあるし、課題もありますけど、それを行う前提として、きちんとした形で憲法改正が行われると。法案の方も与野党で議論して、より多くの国民に参加をして、できるだけ幅広く合意が得られるような手続をということで、この憲法改正の手続法ですね、これを審議をしてきたということです。
それから、その第一歩とか言いますけど、様々な項目が今憲法で議論しなきゃいけないことがあるんですね。その中で、緊急事態も、世界中見ても緊急事態のない国というのはほとんどありません。やっぱり平時じゃなくて緊急に対応しなきゃいけない場合に、まるでその政府が独走するようなこと言われますけど、これ、ちゃんと国会が関与して、シビリアンコントロールではありませんが、政府を見張るわけです。その期間中に自然と対応できるというようなことも必要でありますので、そういうことも是非改正の課題の一つとしては捉えていくべきではないかと思います。たくさんそういった課題というのはあるということを申し上げたいと思います。
○山添拓君 この総理の発言を引いて私は最初の一歩ということを述べたんですけれども、そうではないということを発議者今述べられました。総理のお考えと自民党の現場で審議に臨んでいる方の考えが違う下で行われているということになるのかと、これも指摘しなければならないと思います。
国民投票法には、二〇〇七年の制定時に参議院で十八項目の附帯決議が付され、一四年の改定時には二十項目の附帯決議が付されました。公務員や教育者の国民投票運動の在り方や、最低投票率、CM規制など、改憲国民投票の根幹に関わる事項について検討を求める条項もありました。
先ほど最低投票率についてはお話がありましたが、それ以外にも検討を求める条項あったわけですね。これらは参議院が求めたものです。附帯決議の中で求めた内容です。
ところが、その多くが今度の法案では検討が加えられておりません。それはなぜでしょうか。
○衆議院議員(船田元君) ただいま山添議員がお話しになりました点でありますが、衆議院における本法案の質疑を通じまして、国民投票法には大きく分けて二つの部分があるということが明確になりました。
すなわち、国民投票法は、投票環境整備など投開票に関わる外的事項、外形的事項、それから国民投票運動に係るCM規制などに代表される投票の質に関する部分から構成されている。この今回の七項目の改正案につきましては、投票環境向上という投開票に関わる外形的事項について公選法に合わせてアップデートするというものでございます。
これに対しまして、御指摘の公務員の国民投票運動、それから、先ほども議論ありましたが、最低投票率、それからCM規制、こういう項目については、投票の質に関わる、そういう部分でございますので、これは今後、大いに衆参両院の憲法審査会において議論すべき重要な課題であるということで取り組むべきものと思っております。
○山添拓君 つまり、本院が附帯決議で求めた内容について、投票の質に関わるものだという整理をされましたが、その点についての議論は、検討は後回しにし、これ避けて通れない議論のはずですが、後回しにした欠陥法案として出してきたということになります。
修正案の提出者に伺います。
衆議院における修正によって、附則の第四条を追加されました。そのことによって、今答弁があったような欠陥については解消されたのでしょうか。欠陥を抱えたままであることを確認したというのがこの修正の意味なのでしょうか。
加えて、修正案の附則第四条第二号は、国民投票の公平及び公正を確保するための次に掲げる事項その他必要な事項について、施行後三年を目途とする措置の対象としています。
その他必要な事項とは何でしょうか。
○衆議院議員(奥野総一郎君) 先ほど来申していますが、国民主権ですから、憲法改正の場合はできるだけ多くの国民が投票に参加をして、そして、その民意が公平公正に反映されるような手続でなきゃいけないということでありまして、制定時はそこも十分考えられていたと思いますが、先ほど来申し上げているように、民放連の自主規制ができなかったり、あるいはネット社会の発達とか様々な要素が加わってきて、今はそうした憲法の要請である民意が適切に反映されるかとか、より多くの人が参加できるかというところで、この国民投票には問題があるというふうに認識をしていると。
ただし、更に、更に我々が懸念をしているのは、七項目だけ終わって、先ほど来も皆さん、四項目とか憲法議論に前のめりなんですが、憲法議論しちゃいかぬというわけじゃないんですが、それをやりたいがために、こうした根本的な問題ですよね、国民投票法の根本的な問題、民意が適切に反映されないというようなところをおろそかにして先に進んでしまうんじゃないかということを我々は懸念をしているので、こういう修正案を付してきちんと検討するように国会に、国に義務付けたというところであります。
そういう意味で、こういった問題点があるということを認め、更にそれを解消しようということを義務付けているという条項であります。
じゃ、具体的に何を指すのかと、その他必要な事項というのは何を指すのかということでありますが、もちろん、その例示として挙がっているCM規制だったり資金規制だったりネットの適正利用というのが代表的な例でありますが、それにこだわるわけではなくて、ハウス、先ほど附帯決議の話もありましたが、ハウスの中でそういう議論があれば、それについても当然議論をして、より良い国民投票法にするということを求めている規定だということであります。
○山添拓君 確認ですけれども、国民投票の公平公正の確保という点では、附則で明記されている公選法並びの二項目やCM規制、運動資金の規制、ネット規制以外にも、二〇〇七年の制定時や一四年の改正時に、改定時に附帯決議で求められていた公務員の国民投票運動の在り方や最低投票率についてもここでいう検討の対象には含まれると、そういうことですか。
○衆議院議員(奥野総一郎君) それぞれのハウスが考えられることですから、ここで全てそれは含まれるというわけではありませんが、あくまで例示ですから、必要だとハウスが判断すれば、そういう議論になるということだと思います。
○山添拓君 こうして必要な議論がまだまだ積み残された状態のままだということを示した状態でこの法案は参議院に送られてきました。
改めて発議者に伺いますが、こうした検討が不可欠な課題を置き去りにして、今国会でどうしても成立を急ぐ理由は何ですか。
○衆議院議員(逢沢一郎君) 御承知のように、衆議院の憲法審査会の質疑の段階で立憲民主党から修正案が提出をされ、修正議決の形で本法律案は参議院に送付をされ、今現在、参議院憲法審査会で質疑を行っていただいているところであります。
今日が実質的な質疑の初日でございます。林会長を始め幹事の先生方が今後どのようにこの審査会の日程を考えられるか、また、そのことは十二分に議論をいただけるものというふうに承知をいたしております。
私自身は本法律案の提出者でございます。提出者の立場からいたしますと、衆議院の段階で修正議決、より多くの政党会派の皆様から賛成をいただく形で今まさに参議院でスタートを切ったわけでございます。十二分に審議をいただき、速やかに採決をしていただきたい、それが提出者の本意でございます。
どうぞ御理解を賜りますようによろしくお願いをいたします。
○山添拓君 急ぐ理由については答弁がありませんでした。理由はありません。欠陥があるのなら出し直すのが筋であります。このまま押し通すのは断固反対だということを申し上げて、質問を終わります。

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