山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

ロシアによるベラルーシ核配備 「明確な国際法違反」 政府は認めよ 

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法案については、必要な改正であり、賛成です。
ロシアのプーチン大統領が二十五日、隣国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると決定し、七月一日までにベラルーシ国内に保管施設を完成させると述べました。実施されれば、ソ連崩壊後初めてのこととなります。ウクライナの侵略自体、明白な国連憲章違反であり、即時完全無条件に撤退すべきであります。また、この間行ってきた核兵器による威嚇も断じて許されません。
しかも、今回の決定は、プーチン氏が二十一日に署名した中ロの共同声明で、全ての核保有国は核兵器を国外に配備すべきではなく、国外に配備した核兵器は撤去すべきだとしたこととも相入れないものです。配備撤回を強く求めます。
大臣の認識と日本政府の対応について伺います。

○外務大臣(林芳正君) 唯一の戦争被爆国である日本として、ロシアによる核兵器による威嚇、ましてや使用、これ断じて受け入れることはできないと考えております。
今回報じられておりますプーチン大統領によるベラルーシへの戦術核兵器配備の決定に関する発言については、ロシアがウクライナ侵略を続ける中で情勢を更に緊迫化させるものであり、非難をいたします。
日本として、ロシア及びベラルーシに対して、こうした緊張を高めるような行為を止めるよう求めるとともに、今後とも強い関心を持って事態の推移を注視してまいりたいと考えております。

○山添拓君 戦術核は戦場での局面転換などを狙って使うことが想定され、ベラルーシへの配備は核使用の危険を高め得るものです。ですから、断じて許されないのは当然だと思います。
その上で伺うんですが、大臣、この今回のロシアの決定はいかなる国際規範に違反するものだと考えているでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この核兵器不拡散条約でございますが、この第一条で、締約国である核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないことと規定をしておりまして、第二条で、締約国である非核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理、これをいかなる者からも直接又は間接に受領しないということ等を規定しております。
ここに言う移譲でございますが、所有権又は管理権の移転を指すものと考えられまして、また受領というのは、この移譲を受けることを指すと、こういうふうに考えられます。ここに言う管理ですが、これは核兵器の使用を一方的に決定する権能、つまり自らの決定により核兵器を発射する権能を意味すると考えられます。
こうした前提で申し上げますと、今回の発言に言う配備の状況が明らかでないということもあり、NPTとの関係において、この今申し上げました一条や二条との関係で断定的にまだ申し上げられる状況でないものの、このまさにプーチン大統領によるベラルーシへの戦術核兵器配備の決定に関する発言、これはまさにロシアがウクライナ侵略を続ける中で情勢を更に緊迫化させるものであり、日本政府として非難すると申し上げたとおりでございます。

○山添拓君 今御説明いただきましたNPTとの関係ですが、大臣から説明があったように、移譲あるいは受領と言えるのか、それがNPTの一条、二条に違反するものとなるかを分けることになるわけですが、ロシアは、今回の決定は核兵器の譲渡ではなく配備なのだと、ロシア軍が管理するからNPT一条に反しない、こう主張しています。ベラルーシも、管理権などを与えられていないことを理由に、NPTに何ら反しないと反論しています。
このとおりであるとすれば、これはロシアがベラルーシに戦術核を配備したとしてもNPT違反にはならないと、そのロシアやベラルーシの主張どおりであるとすればですね。日本政府としてもそういう認識なんですか。

○外務省 総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長(海部篤君) お答え申し上げます。
NPTの規定につきましては、先ほど大臣から御答弁差し上げたとおりでございます。その上で申し上げれば、これも大臣から先ほど御答弁申し上げたとおり、今回の発言に言う、その結果としての配備の状況、これがどういうものになるのかというところが明らかではないため、NPTとの関係においてお尋ねのあった一条、二条といったような具体的な条文との関係を含めて、断定的に申し上げることはできないということを申し上げた上で、今回のこの決定に関する発言というものは情勢を更に緊迫化させるというものであって、日本政府として非難するということを申し上げているということでございます。

○山添拓君 これは、断定できないというのは情けない話だと思うんですよ。明らかにこうして核兵器を拡散させているわけですから。その一条、二条違反だということを断定されない。
では、別の条文との関係ではどうでしょうか。NPTの六条は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置、並びに全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について誠実に交渉を行うことを約束するとするものです。全ての締約国が負う核軍縮と撤廃に向けた誠実交渉義務ですね。
外務省に伺いますが、今回の決定は、ロシアについても、ベラルーシについても、核軍縮を目指すべき締約国の義務には、これには反して、核兵器を拡大していくという行為です。NPT六条には違反するものですね。

○政府参考人(海部篤君) お答え申し上げます。
御指摘のございましたNPT第六条でございますけれども、締約国、これ、全ての締約国はという意味でございますが、「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」と規定しております。まさにこうした措置などにつきまして締約国が誠実に交渉を行うということを求めております。
翻って、今回のプーチン大統領によるベラルーシへの配備の決定に関する発言について、NPTとの関係について、配備の状況が明らかでないためお尋ねの第六条との関係を含めて断定的に申し上げられないものの、例えばNPTについて、プーチン大統領は、昨年八月に行われましたNPTの運用検討会議に際しまして、NPTは安全保障及び戦略的安定性の国際システムの重要な要素の一つであると、あるいは、NPTの締約国そしてその寄託国の一つとしてロシアは条約の文言及び精神を一貫して遵守しているというメッセージを発するなどしております。こういう中で今回の発言が行われたということは、これはもう非難されるべきことであるというふうに考えてございます。
また、アメリカ、ロシア両国が核軍縮において重要な進展を示した条約である、別の、新START条約というものございますけれども、その履行停止についても、ロシアがそれを行っているということで、これは強く懸念されるべきであるというふうに日本政府として考えているところでございます。

○山添拓君 いや、非難は当然ですよ。非難は当然ですが、その非難の根拠として、国際法のいかなる、いかなる国際規範に反すると考えているのかということを問うています。
このNPTの六条との関係でも明言されないわけですね。核軍縮に向けた交渉義務があるにもかかわらず核を拡散させているわけですから、これ明らかに反する行動と言うべきだと思うんですが、明言されない。なぜ明言されないんでしょうか。
これ大臣に伺いますけれども、岸田総理は昨年八月、今の話にも出たNPT再検討会議の演説で、NPTは軍縮・不拡散体制の礎石と言い、我が国はNPTの守護者などとも述べました。そのNPTは、ロシアがベラルーシに戦術核を配備することすら禁止していない、違法だと断定できない、そういうものだと大臣おっしゃるんですか。

○国務大臣(林芳正君) このNPTの一条、二条、また今説明いたしました六条についての解釈は今申し上げたとおりでございまして、まさにこの今回の発言に言う配備の状況が明らかでないということからこの一条と二条との関係等を含めて断定的には申し上げられないというふうにこのNPTとの関係では申し上げましたが、冒頭申し上げましたように、まさに更に緊迫化させるということで、このこと自体は日本政府として非難をするということでございます。

○山添拓君 その上で、国際規範として何に反するのかと問うているわけです。
プーチン氏は、米国は長い間ヨーロッパの同盟国に核兵器を配備してきた、我々も同じことをすると述べています。
外務省、念のために伺いますが、米国がいかなる国にどれだけの戦術核弾頭を配備しているか承知していますか。

○政府参考人(海部篤君) お答え申し上げます。
今、済みません、手元に確たる資料ございませんので、断定的に、明確にですね、限定的に申し上げることはちょっと困難でございますけれども、例えばドイツあるいはイタリアというようなところに米軍の核兵器が、核共有、ニュークリアシェアリング、いわゆるニュークリアシェアリングという名の下で置かれているということがございます。

○山添拓君 NATO軍用としてヨーロッパ五か国、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの六か所の空軍基地に配備されているとされています。ですから、アメリカの戦術核配備は事実なわけですね。
政府の説明では、アメリカが配備してきたからロシアも同じことをするというプーチン氏の言い分に法的根拠に基づいて反論はできないということになるんでしょうか。NATO軍用の核兵器の配備も、NPT一条、二条あるいは六条に反するものだと言うべきではないのですか。

○政府参考人(海部篤君) お答え申し上げます。
NATOで行われておりますニュークリアシェアリングでございますけれども、アメリカの管理下にある核兵器を非核兵器国である一部のNATO加盟国の領土内に配備をいたしまして、同盟の核抑止ミッションとそれに関連する政治的責任及び意思決定を共有する仕組みであるというふうに理解しておりまして、核兵器そのものの共有ではないとされていると理解をしております。
一般的にNPT上の整理を申し上げますと、核兵器が同盟関係にある非核兵器国の領域内に核兵器を配備しても、当該非核兵器国が核兵器国の同意なしに核兵器を発射する権能を譲り渡されたのでなければ核兵器の所有権又はその管理権が移譲されたことにはならないので、このような状況はNPTの下では禁止をされていないというような一般的な整理になると、このような整理は従来から国会等の場で御説明をさせていただいてきているところでございます。
以上です。

○山添拓君 それでは、つまり、NPTに基づく限りはベラルーシへの戦術核配備はNPTに違反しないなどという言い分を許してしまいかねないと、それでよいのかということが問われていると私は思います。
事態は緊迫しています。先ほどもお話ありましたが、ロシアは今年二月、新戦略兵器削減条約、新STARTの履行停止を表明し、戦略核の情報を米側に提供するのをやめてしまいました。米国家安全保障会議、NSCは二十八日、これに対抗して、ロシアへの戦略核兵器の情報提供を停止したと明らかにしました。これ、重大な事態だと思います。新START、米ロ間に残る唯一の核軍縮合意です。これに基づいて様々情報をデータ交換してきたわけですね。情報提供の中止は核兵器についての相互不信を格段に高めることになるでしょう。
大臣に伺います。
ロシアに対してもアメリカに対しても、核軍縮合意をほごにするような対応をやめるようにこれは求めるべきではありませんか。

○国務大臣(林芳正君) 今月の二十八日、これ現地時間でございますが、米国政府は、ロシアが新戦略兵器削減条約の履行を停止し、同条約上の義務である情報提供を行わないこととしたことを受け、ロシアに条約遵守への復帰、これを促すために同様の措置をとることとしたと述べたと承知しております。同時に、米国政府は、新STARTが軍備管理及び戦略的安定性の維持に関する重要な条約であるとも述べたと承知をしておりまして、我が国として、この新START、これは米ロ間の戦略的安定性に資すると同時に、両国の核軍縮における重要な進展を示すものであると考えておりまして、引き続き動向を注視してまいりたいと考えております。

○山添拓君 先ほどの御説明では、NPTに違反しないのではないかと、ベラルーシへの戦術核配備がですね、そういう話でした。断定できないという答弁でした。
一昨年発効した核兵器禁止条約一条(g)項は、どこであれ、また誰の管理であれ核兵器を置くこと自体を禁止しています。ですから、ベラルーシの戦術核配備は核禁条約という国際規範には明らかに違反するものです。国際NGOのICAN、核兵器廃絶国際キャンペーンは、ロシアの行動は核禁条約に違反しているとして、核兵器の削減に真剣に取り組む国は条約に署名し、核が使用される可能性を低めなければならないと指摘しています。
やはり、核兵器禁止条約こそ必要であり、有効です。日本はこれに参加し、広げるべきです。今、ロシアのように、実際に侵略戦争を進めて核兵器による威嚇をためらわない核保有国が現れています。核抑止論は破綻しています。ですから、この抑止論神話というのはいいかげんにやめるべきだと、ましてや、この危機に乗じて日本が米国との核共有を進めるなど論外だということを指摘して、質問を終わります。
ありがとうございました。

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