2025年・第218臨時国会
- 2025年8月5日
- 予算委員会
日米訓練 核想定 首相否定せず 予算委で追及
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
七月二十七日、中国新聞は、日米両政府の定例協議で核兵器を使用するシナリオを議論していたことが分かったと報じました。昨年十二月、日米が初めて作った拡大抑止に関するガイドラインで、核を使う場合の政府間調整の手順を定め、日本側が意見を伝えることができる規定を明文化したとされます。続く二十八日、今度は、昨年二月に日米が行った軍事シミュレーション、キーンエッジで、台湾有事を想定し、中国が核兵器の使用を示唆する発言をしたという設定がされ、自衛隊が米軍に対して核の脅しで対抗するよう再三求め、米側は最終的にこれに応じたと報じられました。いずれも一面トップです。共同通信の配信で、被爆地を始め衝撃が広がっております。
核兵器のない世界を目指し、いかなる事態でも核の使用には反対するのが被爆国日本の役割です。
総理に伺います。日米で核の使用を想定したシナリオを描いているのでしょうか。また、合同軍事演習で核使用を想定した訓練を行ったというのは事実でしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 二〇二四年、昨年の十二月に策定された日米政府間の拡大抑止に関するガイドラインは、拡大抑止に関連する既存の日米同盟における協議やコミュニケーションに係る手続を強化し、抑止を最大化するための戦略的メッセージングを取り扱うとともに、日本の防衛力によって増進されるアメリカの拡大抑止のための取組を強化する、このようなものでございます。
昨年の二月に防衛省・自衛隊が令和五年度の日米共同統合演習、キーンエッジを実施したのはそのとおりでございますが、一部において報じられました当該演習における日米間の議論については全くの事実無根でございますので、そのようなやり取りは行っておりません。
拡大抑止の実効性というものをきちんと担保をするということのために必要な措置をとっていく、必要な確認を行っていくということは、これは当然のことでございます。そうでなければ拡大抑止というものは成り立たないものでございますが、その拡大抑止を実効あらしむることによって核を使わないという、これについては御党と意見は違いますが、私どもとしてはそのような考え方に基づいて日米安全保障体制のより良きを期しておるところでございます。
○山添拓君 防衛大臣も会見で事実無根と述べているのですが、その対象は、報じられたような核の脅しで対応するよう自衛隊が米軍に求めたというそのやり取りについて事実無根と、こう述べているんですね。そうしますと、それ以外の点、核の使用を想定した訓練を行ったのかどうか、あるいはそのようなシナリオを持っているのかどうか、これはいかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 前段の御指摘はそのとおりです。そのような議論を具体的にしたものではございません。核の脅しというようなことが実際に行われたものではございませんということは繰り返して申し上げておきたいと存じます。
後段は機微に触れることでございますので事細かにはお答えはできませんが、いかにして核抑止、拡大抑止の実効性を図ることにより核の使用というものを抑えるか、これを抑止するかということが議論の本質でございます。我が国として拒否的抑止力を考えておりまして、報復的抑止力、懲罰的抑止力というのを一切考えておりません。そうしますと、報復的抑止力と拒否的抑止力の組合せによっていかにして抑止力をより実効あらしむるかということについて日本とアメリカの間でいろんな議論があるのはむしろ当然のことだと考えております。
○山添拓君 私は、機微に触れるという言葉で詳細を語られないことが大問題だと思います。
ガイドラインの中には核の使用を想定したシナリオはないと断言されないわけですね。今後、米軍と自衛隊が核の運用をめぐる協議や訓練を行うことはないと断言できないですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それを前提とした訓練は行ったという事実はございません。
先ほど申し上げたように、懲罰的抑止力あるいは報復的抑止力がなぜ抑止力たり得るかということでございます。そして、それが抑止力たり得るためにいろんな想定がなされるのは当然のことですが、その目的はいかにして核が使われないかということにあるのは是非御理解をいただきたいと思います。
○山添拓君 しかし、その中で、核の使用をも含むような想定をしてきたのではないかと報じられ、今総理は機微に触れると言って、それは否定されないわけですね。私はそれは大問題だと思います。
政府が核抑止にしがみつくために、国会には核共有を主張する政党や、核武装が安上がりと発言する議員まで出てきております。しかし、被爆者の願いは核兵器廃絶です。明日、広島は被爆八十年、日本被団協のノーベル平和賞受賞後初めての八月六日を迎えます。総理は、核抑止ではなく、核廃絶の先頭に立つことこそ求められると考えます。認識いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それは、核共有については、きちんと時間を取って安全保障委員会でも議論をさせていただきたいと思っております。それは所有権を共有するものでも何でもございません。意思決定のプロセスをいかに共有するかということでございますし、リスクあるいは意思決定の過程を共有することによって国家の主体性というものもきちんと確保されなければならないと思っておるのでございます。
私は、核のない世界というものはもちろん我々が唯一の被爆国として追求していかねばならないものであります。しかしながら、現実問題として、その前に核戦争のない世界というものをつくっていかねばならない。それは、核をどうすれば使用しないかということを概念の中核とするものでございます。この二つの概念は決して矛盾すると私は考えておりません。
○山添拓君 核戦争につながりかねない準備を密室協議で進めるなど断じて許されないということは指摘したいと思います。
被爆者の声に応え、被爆の実相を世界に広げ、核兵器禁止条約に参加し、核廃絶をリードすることこそ日本の役割だと、この点を厳しく指摘し、質問を終わります。