山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第219臨時国会

東京二十三区の高額な火葬料金に関する質問主意書

東京二十三区の高額な火葬料金に関する質問主意書

「墓地、納骨堂又は火葬場の経営の許可の取扱いについて」(一九六八年四月五日付け厚生省環境衛生局環境衛生課長通知)によれば、政府は火葬場の経営主体について、「永続性と非営利性」を確保する観点から「原則として市町村等の地方公共団体でなければなら」ないとしている。一方、墓地、埋葬等に関する法律(一九四八年法律第四十八号。以下「墓地埋葬法」という。)制定以前に創業した火葬事業者がある東京二十三区では、九箇所の火葬場中、公営は二箇所にとどまり、七箇所が民間経営、うち六箇所は同一法人(東京博善株式会社)が経営している。東京博善株式会社が経営する火葬場においては、二〇二一年以降火葬料金の値上げが繰り返され、一般的な場合で九万円に達する。同じ東京都内でも、多摩地域の公営火葬場における火葬料金が無料又は一万円(管内住民の場合)であることと比較しても著しく高額であり、区民の負担は極めて重くなっている。

小池百合子東京都知事は二〇二五年第三回都議会定例会において、「都内に多く存在する民間火葬場の火葬料金などの指導を適切に行えますように、区と連携しまして、法改正等を国に要望いたします。」と答弁しており、政府の対応が求められている。

以上を踏まえて、以下質問する。

一 火葬場の経営は利益追求の手段であってはならないと考えるが、政府の認識を示されたい。

二 墓地埋葬法第一条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」と規定している。

火葬は、単に故人やその遺族の個人的利益のためではなく、社会的公共的な利益のために必要とされ実施されてきたものである。火葬を行うことによる「受益者」を誰と考えているか、政府の認識を示されたい。

三 福岡資麿厚生労働大臣(当時)は二〇二五年九月三十日の記者会見において、「火葬料金の指導等は、現行法の運用で可能と考えています」と発言している。

同発言中の「現行法」とは、墓地埋葬法を指すと理解してよいか示されたい。また、「現行法」が墓地埋葬法を指す場合、「現行法の運用で可能」とは、同法のいずれの条文に基づく、どのような権限行使によって指導等ができるという趣旨か示されたい。

四 墓地埋葬法第十八条では、「都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員に、火葬場に立ち入り・・・検査させ・・・火葬場の管理者から必要な報告を求めることができる。」とし、第十九条では、「都道府県知事は、公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要があると認めるときは、・・・火葬場の施設の整備改善、・・・使用の制限若しくは禁止を命じ、・・・許可を取り消すことができる。」としている。

火葬料金が法外に高い場合は前記の「必要があると認めるとき」に該当し、都道府県知事(東京特別区においては区長)の判断で同法第十八条及び第十九条に基づく措置を講ずることができると理解してよいか示されたい。

五 墓地埋葬法には、火葬料金について特段の規定はない。「火葬場の経営・管理について」(二〇二二年十一月二十四日付け厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課通知)によれば、株式会社により経営されている火葬場において火葬料金等が相次いで引き上げられるなどの報道がされていることに言及した上で、許可権者である都道府県知事等に対し、「適正な火葬場の経営・管理について指導監督の徹底を改めてお願いいたします。」と対応を求めている。

東京二十三区における許可権者である区長が、火葬料金に関して区として独自に条例を定め事業者への「指導監督の徹底」を行うことについては、法律上妨げられないと理解してよいか示されたい。

六 墓地埋葬法上、東京二十三区における火葬場の経営の許可、火葬場の管理者からの報告徴収、火葬場の施設の整備改善や使用の制限・禁止の命令等は、区長が行う自治事務であるが、特別区が東京都と協議し当該事務を委託する旨の規約を定めれば、墓地埋葬法上の権限を東京都知事が行使することも可能になると理解してよいか示されたい。

七 小池東京都知事は二〇二五年第三回都議会定例会の所信表明において、「料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えますよう、法の見直しを国に求めていく」と述べている。同所信表明以降、東京都や特別区長会から国に対して寄せられた火葬場や火葬料金等に関する要望や問合せの内容を示されたい。また、その要望等に対する政府の回答を具体的に示されたい。

八 火葬場の経営主体が葬儀など火葬場以外の事業を行っている場合、火葬場に関する事業と他の事業の会計を区分することにより、火葬場経営に関する収支の透明性・非営利性を確保することが必要と考えるが、政府の認識を示されたい。

右質問する。


参議院議員山添拓君提出東京二十三区の高額な火葬料金に関する質問に対する答弁書

一について

お尋ねについては、「火葬場の経営・管理に関する指導監督について」(令和七年十月三十一日付け健生衛発一○三一第二号厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課長通知。以下「指導監督通知」という。)において、「火葬場の経営が利益追求の手段となって、利用者が犠牲になるようなことがあってはならず、誰もが火葬場を利用できる必要がある」と示しているとおりである。

二について

御指摘の「火葬を行うことによる「受益者」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、「火葬」は、墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号。以下「法」という。)第一条に規定するとおり、「国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われる」必要があるものであり、また、一についてで述べたとおり、指導監督通知において、「火葬場の経営が利益追求の手段となって、利用者が犠牲になるようなことがあってはならず、誰もが火葬場を利用できる必要がある」と示しているところである。

三について

御指摘の「現行法」とは、「墓地埋葬法を指す」ものであるが、「現行法の運用で可能」との発言は、お尋ねのように「同法のいずれの条文に基づく、どのような権限行使によって指導等ができる」かについて具体的に念頭に置いたものではなく、火葬場を誰もが利用することができるよう、例えば、火葬場に対して、火葬料金の設定の考え方や根拠等について明らかにするよう求めることや、火葬料金の額が火葬場の経営及び管理に係る費用に比して明らかに高額な場合に一定の指導を行うことは、現行法令に反するものではないとの趣旨のものである。

四について

御指摘の「火葬料金が法外に高い場合」の状況等は様々であると考えられ、お尋ねに一概にお答えすることは困難である。

五について

御指摘の「法律上妨げられない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「条例」が法令等に違反しないか否かについては、個別具体の内容等によるものと考えられ、一概にお答えすることは困難である。なお、一般論として申し上げれば、条例により、火葬場を誰もが利用することができるよう、御指摘の「火葬料金」に関して一定の規制を行うことは、火葬等が支障なく行われることを旨とする法の趣旨目的を損なわない限りにおいて、「法律の範囲内で条例を制定することができる」と定める憲法第九十四条に必ずしも反するものではないと考える。なお、その規制の具体的内容については、これにより一定の制限がなされることとなる営業の自由との関係で、必要性や合理性の面から慎重に検討されるべきものと考える。

六について

お尋ねについては、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十四の規定による「事務の委託」として可能である。

七について

御指摘の「要望や問合せ」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、例えば、厚生労働省において、東京都から、御指摘の「所信表明」に関する情報の提供は受けているところ、これに対する特段の「回答」は行っていない。

八について

お尋ねについては、指導監督通知において、火葬場の「財務状況の把握」に関し、「火葬場経営以外の事業を行っている場合には、火葬場の経理・会計が当該他の事業と区分されており、火葬場の経営・管理に必要な費用の範囲内で運営されていることについて、財務関係書類等により確認できるようになっていること」と示しているとおりである。

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