山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第219臨時国会

全被害者に全額補償を 生活保護の違法減額

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
最高裁は六月、二〇一三年からの生活保護基準引下げを取り消す判決を下しました。生きる権利を侵してきた政治が断罪されました。
総理に改めて認識を伺います。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 御指摘の最高裁判決において、厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったと指摘されました。当時の基準改定が違法と判断されたことについては、深く反省し、おわびを申し上げます。
その上で、今回の最高裁判決の趣旨及び内容を踏まえた今後の対応の在り方については、現在、厚生労働省の専門委員会において検討が進められていると承知をいたしております。
また、今、生きる権利というお話でございましたが、当時の生活保護基準が最低限度の生活を下回っていたとは最高裁判決では認定されておりません。

○山添拓君 最低限度の生活を下回る状態を強いてきたことは間違いありません。
原告団にも、総理、直接謝罪されますか。

○厚生労働大臣(上野賢一郎君) 総理が国会の場でそういった思いを表明されたということは、国民に対して表明されたということだと理解しております。

○山添拓君 総理、原告団に直接謝罪なさいませんか。

○内閣総理大臣(高市早苗君) これは、厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったと判断されました、指摘されました。ですから、当時の基準改定が違法と判断されたことには、この場をお借りしまして、深く反省し、おわびを申し上げます。(発言する者あり)

○委員長(藤川政人君) 高市早苗内閣総理大臣。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 今回の最高裁判決の趣旨及び内容を踏まえた今後の対応の在り方について、現在、厚生労働省の専門委員会で検討が進められております。その上で、厚生労働大臣とも相談をいたします。今後の対応についてでございます。

○山添拓君 直接謝罪されるべきだと思います。
何の議論もなく独断で最大一〇%も削減した背景には、二〇一二年自民党マニフェスト、生活保護費一〇%削減への忖度があったと一部地裁の判決も指摘しています。
二〇一二年、政権復帰の後、自民党の政調会長はどなたでしたか。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 私でございます。

○山添拓君 自民党としての責任をどう認識されていますか。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 平成二十五年の生活扶助基準の見直し、デフレ傾向が続く中で基準額が据え置かれておりました。ですから、従来の方法である低所得者世帯の消費水準を基にした場合は一〇%以上の引下げになってしまうところを、物価によりマイナス四・七八%の引下げということを行ったものでございます。これは、自民党の公約、つまり、一〇%のマイナス、目安にかかわらず、政府の判断として見直しを行ったものでございます。
しかしながら、判決では、物価変動率のみを指標として、審議会による審議手続を経なかったのは、判断の過程及び手続に過誤、欠落があったとされたものでございます。

○山添拓君 私、全然反省されているように聞こえないですね。
違法と判断されたと、独断でやったと、まともな指標もなく一〇%もの戦後最大の削減ですよ。それをあおってきたのが自民党のマニフェストだったということが指摘されています。その反省はありませんか。

○国務大臣(上野賢一郎君) 今総理からお話があったとおりでございまして、この当時の改定の経緯といたしまして、平成二十四年の八月に、これは民主党政権時代ですが、民主党、自民党、公明党の三党合意に基づく社会保障制度改革推進法が成立をいたしました。その規定の中に、附則の第二条におきまして給付水準の適正化を含む生活保護制度の見直しが規定をされておりますので、政府といたしましても、こうした国会での動向等も判断をし、そして当時の物価水準であったりそうした支出の水準であったり、そうしたものも総合的に判断をしながら引下げの方針を決定してきたものだと理解をしています。

○山添拓君 既に違法にされたものを今から正当化されようとなさるその発言ぶりには、私は理解に苦しみます。党としても反省、謝罪されるべきだと思います。
厚労大臣、二〇一三年以降、生活保護を利用した実人数、示してください。

○国務大臣(上野賢一郎君) 平成二十五年から令和七年までの生活保護受給者数の実際の実人員、これはいろいろ出たり入ったりありますので、それを総合的には把握をしておりません。
ただ、ただですね、ただ、平成二十五年基準改定前の平成二十五年七月の生活保護受給者数は二百十六万人でありまして、直近の令和七年八月の生活保護受給者数は百九十九万人となっております。
また、仮に、平成二十五年改定前の平成二十五年七月の生活保護受給者数二百十六万人に、平成二十五年八月から令和七年七月までに保護開始となった人数をそれぞれの毎月ごと、機械的に合算をしていけば五百四十三万人になりますが、これは非常に機械的な粗い試算でありまして、当然亡くなられた方もいらっしゃいますし、さっきまさに委員おっしゃったように出入りがありますので、これがそのままの人数というわけではないかと思っています。

○山添拓君 大変な人数です。減額の影響は、しかも今日まで続いております。生活保護の利用者はもちろんですが、そうでない低所得者にも被害をもたらしました。
全額補償はしないとか、原告とそれ以外で補償額に差を付けるなどと報じられています。しかし、苦しんできたのは原告もそれ以外も同じです。
総理、最終的には政治決断です。全ての被害者への全額補償を決断すべきだと考えますが、総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 先ほど来申し上げていますとおり、専門委員会で検討が進められております。それは今後の対応の在り方ということでございますが、できるだけ速やかに、専門委員会としての結論を得た上で、政府としての方針を決定してまいります。

○山添拓君 暑くてもエアコンを我慢して、お風呂は冬でもシャワーだけ、食事は一日二食、最高裁判決で少しは安心できると思ったのに、四か月たっても何の対応もないと、そういう怒りの声が広がっております。
私は、減額をもう一度やり直すかのような議論がされていることに、これも信じ難い思いですが、このような紛争の蒸し返しは断じて許されないと考えます。いかがですか。

○国務大臣(上野賢一郎君) 繰り返しになって恐縮でございますが、この間、専門委員会の場で法律の専門家あるいは社会福祉の専門家、そうした皆さんに御参加をいただき、熱心に今後の対応等につきまして御議論をいただいているところでありますので、我々としては、その専門委員会での議論等を十分踏まえて対応を決定してまいりたいと考えています。

○山添拓君 政治決断が必要です。直ちに全額補償を重ねて求めます。
厚労大臣、生活扶助基準が影響する他の制度、全て挙げてください。

○国務大臣(上野賢一郎君) 委員御案内のとおりでありますが、社会保障の様々な制度につきましては、創設、改廃が度々行われますので、この生活扶助基準の改定が影響し得る制度は何かということにつきまして、その全てを網羅的に申し上げることはなかなか難しいと考えております。
ただ、ただ、平成二十五年改定当時の対応といたしましては、個人住民税の非課税限度額、また生活扶助基準等を参考にしている国の制度三十四制度、そして地方単独事業である三制度につきまして、改定の影響ができる限り及ばないように関係府省また地方自治体と連携をしながら対応を行ってきたところであります。

○山添拓君 制度の中身、代表的なものでいいですから挙げてください。

○国務大臣(上野賢一郎君) 一つは、個人住民税の非課税限度額であります。また、中国残留邦人等に対する支援給付、また国立ハンセン病療養所等入所者家族生活援護費等でございます。

○山添拓君 例えば就学援助、経済的に苦しい家庭の子供に給食費や学用品代を補助する制度の対象は、生活扶助基準と連動させる自治体が多いです。当時、東京中野区では二百人が対象から外れると報じられました。影響があったんじゃありませんか。

○国務大臣(上野賢一郎君) 就学援助制度につきましては、各市町村の判断でそういう制度を実施されている場合が多いというふうに考えております、各市町村の判断で実施されているものだと理解をしておりますが、当時、そうしたことも含めましてできる限り影響が出ないように政府としてはお願いをしてきたと承知をしています。

○山添拓君 しかし、影響があったと。影響があったかなかったか、全部確認できますか。

○国務大臣(上野賢一郎君) 網羅的に全てを把握しているわけではないとは承知をしております。
ただ、通告もございませんでしたので、その影響につきまして確たることは現段階では申し上げることができません。

○山添拓君 私は通告しております、どのような影響があったかということを。
これは総理に伺いたいんですけどね、生活保護基準というのはナショナルミニマムです。多くの人に関わるまさに命のとりでです。ですから、内閣の責任で、他制度への影響も全て把握をして、全ての被害者に対して回復をさせる措置をとるべきだと思います。いかがでしょう。

○国務大臣(上野賢一郎君) 様々な影響が出ないようにするということで、これまでの改定に対する対応を行ってまいりました。
その上で、最高裁判決を踏まえた今後の対応の在り方につきましては、現段階で結論が出ておりませんので、どうするかということを今確定的に申し上げることはできません。

○山添拓君 総理に答えていただきたい。影響があったのは生活保護だけじゃないんです。他の制度も把握されるべきじゃありませんか。

○内閣総理大臣(高市早苗君) 厚生労働大臣とよく協議をしてまいります。

○山添拓君 千人を超える原告が立ち上がって、既に二百三十人以上が亡くなっておられます。
私は、生存権侵害は極めて重い問題だと考えます。そして、社会保障削減路線そのものが駄目だということが断罪されたわけですから、転換すべきだと、このことを申し上げまして、質問を終わります。

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