2026年・第221特別国会
- 2026年7月15日
- 憲法審査会
改憲手続き 不公正放置
○山添拓君 日本共産党を代表し、国民投票をめぐる諸課題について意見を述べます。
現行の国民投票法は、二〇〇七年、当時の安倍首相が任期中の改憲を公言する中、自民党などが強行採決で成立させたものです。元々、民意を酌み尽くし、正確に投票へと反映させるものとなっていません。これは重大かつ根本的な欠陥です。
第一に、現行法は、改憲案の承認要件となる過半数を有効投票総数の過半数という最も低いハードルにした上、最低投票率制度を規定していません。投票率によっては、有権者の一割台や二割台の賛成で憲法を変えてしまいかねず、これでは国民の総意による承認とはなり得ません。
第二に、人事院規則など、それ自体合憲性が問われる公務員の政治的行為禁止規定により公務員の意見表明を制限し、公務員や教育者の国民投票運動については地位利用を口実に制限しており、主権者である国民の自由な運動を不当に抑え込む内容となっています。
第三に、テレビや新聞の有料広告を投票日前二週間禁止する一方、それ以外は自由とし、資金力の多寡によって広告量が左右されます。また、国会に設置する広報協議会は広報の作成や無料の広告枠を扱うことになりますが、改憲派が多数の国会で、改憲内容について客観的かつ中立的な広報は期待できず、改憲派に有利な仕組みです。いずれも、国民主権と憲法改正手続を定めた憲法九十六条に反する、不公正かつ反民主的な内容と言うほかありません。
二〇〇七年の国民投票法制定時に十八項目の附帯決議が、一四年の改定時に二十項目もの附帯決議が本院で付されたのも、以上に述べた根本的な欠陥のゆえであり、これらはその後の検討の対象とされてきました。ところが、改憲に積極的な会派も含めて課題として認識しているにもかかわらず、こうした点の対応策が前回二一年の改定時に検討されることはなく、インターネット広告と併せたCM規制の在り方が附則四条二項の検討事項とされたにすぎませんでした。
今国会で審議中の改定案も、公選法並びのごく部分的な投票環境整備のための手当てのみで、重大かつ根本的な欠陥は二十年来置き去りです。にもかかわらず、あたかも改憲の準備が進んでいるかのように演出して法改定を急ぐのは、改憲手続をいかに軽んじているかを示すものと言うべきです。
そもそも、公選法並びの改正を重ねること自体に問題があります。議員や首長を選ぶ公選法上の選挙と改憲の賛否を問う国民投票では、その主体も内容も全く異なります。
二一年の改定案を審議した当審査会で、飯島滋明参考人は、憲法というのは、一回国民投票になってしまえば一生国民投票はないかもしれないと指摘しました。任期が到来すれば選び直すことができる議員や首長を選ぶ公選法上の選挙とは意味が異なります。投票の機会はなるべく多く保障すべきであり、いかに国民の意思を幅広く、かつ正確に反映する制度とするのかが課題であり、投票環境の整備の在り方はおのずから異なると言うべきです。
今、改憲手続法の改定を急ぐ理由はどこにあるのでしょうか。憲法は国民のものであり、権力者のものではありません。当審査会で繰り返し述べてきたように、多くの国民は一貫して、改憲を政治の優先課題として求めていません。改憲を盛んに求めているのは、時は来たなどと前のめりな高市総理を始め、政治の側です。立憲主義の下で憲法によって拘束される側の権力者が、拘束を解くよう求め、改憲をあおることほど理不尽で危険なことはありません。
併せて指摘しなければならないのは、この国会で政府・与党を中心にいかに憲法違反の暴挙が重ねられているかということです。
政府は、今国会で武器輸出の全面解禁に踏み出しました。国是である武器輸出禁止を完全に投げ捨て、軍需産業を支援し、武器輸出による利益をも見込んで経済成長を図ると言います。世界で軍事的な緊張が高まり、あるいは武力衝突により武器の需要が高まれば高まるほど繁栄する国を目指すのは、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求するとした憲法九条に基づく平和主義と相入れません。
国旗損壊処罰法案の審議が本院で続いています。国旗を大切に思う国民感情を保護するなどと言いながら、発議者がこの法案により愛国心が醸成されると本音を語るとおり、憲法十九条が保障する内心の自由に踏み込み、民主主義社会の大前提というべき二十一条の表現の自由を刑罰で制約し、しかも、刑罰法規の明確性を欠き、三十一条の罪刑法定主義にも反する違憲立法を一部の会派が恥ずかしげもなく通そうとしています。
本日、特別委員会で審議された皇室典範改定案は、本院で複数の会派が反対を明確にしているように、国会の総意とは程遠く、もとより、憲法一条の国民の総意に基づくとは到底言えません。養子制度の導入で男系男子を強化する一方、女性・女系皇族には決して皇位継承を認めず、男尊女卑を強めることは、日本社会のジェンダー差別を助長するものであり、憲法の条項と精神に反します。これらはほんの一端です。
議会制民主主義は、憲法が期待した権利保障のための統治機構です。ところが、その意味を履き違え、数の力さえあれば無理が通ると言わんばかりの強権姿勢が目に余ります。
七月十日夜、めちゃくちゃな政治に抗議しますと題し、国会前アクションが行われ、二万七千人が参加し、デモカレンダーによれば、これに連帯する行動は、全国四十五都道府県、百五十八か所、合計三万五千六百人余りが同時に声を上げました。
暮らしを後回しにし、自由を狭め、戦争へ近づいていくめちゃくちゃな政治に抗議しますという正面からの訴えを委員の皆さんはどう受け止めますか。暮らしも平和も、憲法に基づく政治でこそ展望が開けます。
改憲も改憲手続法の改定も必要ないことを重ねて強調し、意見とします。