山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2023年5月26日

軍需産業支援法案 本参議院で審議入り

大軍拡実施法の一つ、軍需産業支援法案が参議院で審議入りし、本会議で代表質問を行いました。

冒頭、「防衛装備品基盤強化法案、すなわち軍需産業支援法案」と述べたところで、与党席を中心にざわめきが起こりしばらく続きました。先日の軍拡財源法案のときにも同じ現象が。「軍拡」「軍需産業支援」ーーありのままを指摘されると嘲笑うかのように過剰反応するところに、矛盾が見えます。

以下に質問原稿をご紹介します。

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 日本共産党を代表し、防衛装備品基盤強化法案すなわち軍需産業支援法案について質問します。

 岸田政権は、安保3文書に基づき憲法違反の敵基地攻撃能力保有を解禁し、長射程ミサイルの開発や量産など5年で43兆円もの大軍拡を進めようとしています。本法案は、軍需産業を「防衛力そのもの」と位置づけ、生産・技術基盤を強化する、大軍拡実施法の一つにほかなりません。

 3文書の改定に向けて政府が設置した有識者会議の報告書は、軍需産業について「政府だけが買い手である構造から脱却し、海外に市場を広げ、国内企業が成長産業としての防衛部門に積極的に投資する環境をつくることが必要」と唱え、防衛力整備計画は武器輸出について、「販路拡大を通じた、防衛産業の成長性の確保にも効果的である」などとしています。

 政府は、軍需産業を成長産業にしたいのですか。国内軍需産業の販路開拓のために武器輸出を拡大していくつもりですか。

 2016年1月7日の参院本会議で当時の安倍総理は、「武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりません」と答弁しました。ところが国家安全保障戦略は、「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」などといい、官民一体の武器輸出を文字通り国家戦略としています。安倍氏の答弁を180度転換するものではありませんか。そもそも海外で兵器を売り歩くことが、どうして「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」に結びつくのですか。

 2014年に閣議決定された「防衛装備移転三原則」とその運用指針は、輸出の対象を救難や輸送など5分野に限定し、殺傷能力のある兵器については、米国など安全保障で協力する国との共同開発や生産に限っています。

 一方、与党間では、殺傷能力のある兵器を含めて輸出範囲を拡大する協議が行われています。本法案で支援する武器輸出も、三原則の運用が変わればそれに応じて内容が変わるのではありませんか。与党協議中を理由に答弁を拒み、採決後に大幅に拡大しようとするのは、国会審議を愚弄するものであり許されません。以上、防衛大臣の答弁を求めます。

 自民党の昨年4月の提言は、ウクライナを例に挙げ、「国際法違反の侵略を受けている国」に「幅広い分野の装備」を渡せるよう政府に検討を求めました。しかし日経新聞の2月の世論調査では、ウクライナに「武器を提供する必要はない」との回答が76%に上っています。来日したゼレンスキー大統領が期待すると述べたのは、戦後復興における「日本の技術」でした。岸田総理自身、3月にウクライナを訪問した際、「日本ならではの支援」を続けると表明しています。憲法9条をもつ日本は、国際紛争の助長を回避する立場で、あくまでも非軍事の人道・復興支援に徹するべきです。答弁を求めます。

 政府は長年、武器輸出を禁止してきました。外務省のホームページには現在も、「『武器』の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため」慎重に対応してきたと掲げています。これが、政府の従来の認識だったのではありませんか。

軍需産業を守るためといい、「平和国家」の立場も国是というべき武器輸出禁止も蔑ろにするのは本末転倒ではありませんか。以上、外務大臣の答弁を求めます。

 本法案は、自衛隊の任務遂行に不可欠な兵器を製造する企業が、製造ラインの強化や事業譲渡を行う場合、政府がその費用を直接負担することとしています。「任務遂行に不可欠」かどうかは、いかなる基準で判断するのですか。自衛隊のあらゆる装備が「任務遂行に不可欠」となりかねないのではありませんか。また、補助金や助成金ではなく全額政府が負担するのはなぜですか。

 兵器や部品の製造企業への貸付けについて、政策金融公庫が「配慮」することとしています。どのような融資条件を想定しているのですか。通常の中小企業融資を受けられないような場合であっても「配慮」するという意味ですか。なぜ、軍需産業だけは特別扱いで融資の「配慮」を求めるのですか。

 様々な支援の手を打っても手段がない場合、国が製造ライン等を買い取る「国有化」の仕組みまで盛り込まれています。戦前・戦中の工廠(国営軍需工場)の復活につながるとの批判を、どう受け止めますか。

 国有化した製造ライン等は別の企業に譲渡するといいます。しかし、そもそも事業譲渡による買い手がつかなかった場合に次のステップとして認められるのが国有化であり、簡単に譲渡先が見つかるとは思えません。いつまで国有を続けるのか、期限はありますか。管理・運営を行う企業が仮に現れたとしても、長期にわたり国有民営の状態が続きかねません。赤字の兵器製造ラインを国がいつまでも保有し続けるのですか。お答えください。

 背任、天下り、談合、水増し請求、さらには不祥事による指名停止中の受注など防衛省と軍需産業による不正は、枚挙にいとまがありません。

 旧防衛施設庁が、職員とそのOBらの主導で天下りの受け入れ具合を考慮して有利な発注を行う官製談合事件を起こし廃止されたのは、2007年のことです。官民の癒着が厳しく批判されたのを受け、「公共調達の適正化」に関する財務大臣通達が出され、防衛調達も真にやむを得ないものを除き一般競争入札など競争性のある方式によることとされました。この経過を、大臣はお忘れですか。

 防衛省はその後、一転して随意契約を拡大、2015年には、日本経団連が「防衛産業政策の実行に向けた提言」で随意契約の活用を求め、防衛省もその期待に応じてきました。

 本法案は、競争入札どころか特定の兵器製造企業を政府が直接支援し、場合によっては施設を国有化した上で特定の企業に管理・運営を委ねようとするものであり、官民の癒着が構造的に懸念されます。汚職や腐敗を繰り返す危険は、従来以上に高まるのではありませんか。

 本法案は、防衛省と契約する企業やその下請け企業の従業員に秘密保全義務を課し、漏えいした場合は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を科す規定を新設します。現在でも契約上の秘密保持義務を負わせ、違反に対して違約金が予定されています。防衛省は何件の違反事例を確認していますか。それはどのようなケースでしたか。契約上の義務では足りず、刑事罰の対象となる法律上の義務とするのはなぜですか。

 本法案は、防衛大臣が指定する秘密を取り扱う従業員の氏名、役職その他の防衛大臣が定める事項について、防衛大臣に報告する義務を定めています。「防衛大臣が定める事項」とはなんですか。病歴や信用状態、思想や交友関係などを経営者にチェックさせ報告を求めるなら、プライバシーの侵害ではありませんか。報告事項の回答に応じない従業員について、解雇や配置転換、賃下げなど労働者に不利益が及ぶことはないと断言できますか。以上、防衛大臣の答弁を求めます。

 安保3文書と本法案は、企業にも従業員にも軍需産業へのいっそうの適応を求め、これに応じる場合には至れり尽くせりの支援メニューを用意し、空前の大軍拡で莫大な利益を保証しようとするものです。

 一方今年度予算では、中小企業予算や農業予算が連続して削減されました。社会保障費も削られ、国立病院や年金の積立金まで軍事費に充てられようとしています。「国防は最大の福祉」などという与党議員がいましたが、くらしの予算を削り軍事費に充てるのは言語道断です。

 政治が行うべきは、戦争を起こさせないために平和外交を尽くすことです。軍事に軍事で対抗し、経済と産業までゆがめるなど断じて許されないことを指摘し、質問とします。

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