山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

平和・暮らし・財政圧迫 2024年度大軍拡予算案 本会議反対討論

○山添拓君 日本共産党を代表し、2024年度総予算3案に反対の討論を行います。

能登半島地震からまもなく3か月です。長期化する避難生活の改善とともに、被災者が安心して戻れるよう、踏み込んだ支援を行うべきです。

審議で求めた液状化被害の支援は、自治体の地盤強化対策などと一体に行う場合の国の補助率が2分の1に引上げられ、傾いた住宅の修復に最大120万円補助など一定の強化が図られました。より費用がかかるケースも支援が必要です。住宅再建の支援額は能登6市町に限定せず、被災者生活再建支援法の改正で増額すべきです。

農業用水路が壊れています。田植えに間に合うよう仮設パイプラインの設置など整備が求められます。隆起した漁港を復旧しなければ、漁業が成り立ちません。総理は、県管理も市町管理も同様に支援すると答弁しました。生業の再生を支え、希望を示すべきです。

外国人労働者は、こうした産業に欠かせない存在です。ところが政府は、1月1日時点の技能実習生の人数も、実習再開の有無も賃金の支払い状況も、監理団体任せでまともに把握していません。きめ細かな対応に改めるべきです。

珠洲に原発がなくてよかった――被災地で聞く痛切な声です。トラブルが相次いだ北陸電力志賀原発も、深刻な事故の一歩手前でした。現在の避難計画では、複合災害に対応できないことも改めて露呈しました。不可能な避難計画策定を自治体に押しつけるのは、無責任です。地震・津波が多発する国で、原発とは共存できません。

本予算案は、能登半島地震を受け予備費5000億円を増額しました。国会審議を回避する予備費の安易な積み増しではなく、党派を超えてつかんだ現場の実情を踏まえた支援へ、補正予算で対応するのが財政民主主義というべきです。

自民党の派閥ぐるみの裏金事件に、国民の怒りは爆発しています。

民主政治の土台を揺るがす組織的犯罪です。ところが岸田総理は、「組織的犯罪の定義は承知していない」などとうそぶきました。反省が見えません。

派閥幹部らの政治倫理審査会での弁明は、揃いも揃って覚えていない、関与していない、秘書に任せていた――到底信じられません。一方、裏金を不正に使っていないことだけは揃って断言するなど支離滅裂です。

総理が行う追加調査は、政倫審で語られなかった安倍派の幹部協議の疑念が理由といいます。キックバック再開に森元総理が関与していたとの新証言も報じられています。事実なら、政倫審で嘘を述べた疑いが生じます。国会と国民をどこまで愚弄するつもりですか。総理と自民党に、真相解明も自浄作用も期待できません。嘘をつけば偽証罪に問われる証人喚問がいよいよ必要です。森元総理を含め、証人喚問を重ねて強く求めます。

総理の資金管理団体の収入は、実に98%をパーティー収入が占めます。「多くの企業に参加いただいている」と総理も認めたとおり、パーティー券は形を変えた企業・団体献金にほかなりません。

94年の「政治改革」は、政党助成金をつくる一方、企業・団体献金の抜け道を残しました。これを最大限活用し、巨額の裏金づくりまで行ってきたのが自民党です。金権腐敗の根を絶つには、企業・団体献金の全面禁止しかありません。しがみついているのは自民党だけです。今国会での法改正を強く求めるものです。

「政治改革」からの30年は、「失われた30年」と重なります。自民党が大企業にたかるように献金を求め、裏金づくりにかまけ、その見返りに経済界の要求に応じてきた結果、国民のくらしと経済は疲弊し続けてきました。

この間、生活に密接した食料品や家庭用品ほど物価上昇が続き家計は悲鳴を上げています。1回限りの定額減税ではなく、消費税減税で物価全体を下げ、インボイスを中止すべきです。

実質賃金は22か月マイナスが続いてきました。「物価高を上回る所得の実現」が本丸というなら、中小企業と非正規ワーカーの賃上げこそ、カギというべきです。

与党税制改正大綱は、赤字企業が多い中小では「賃上げ減税」は有効でないと認めました。ところが本予算案は、懲りもせず賃上げ減税の拡大を掲げます。これでは失敗を重ねかねません。

大企業の内部留保に適切に課税して財源をつくり、中小企業の賃上げに直接支援を行い、最低賃金を速やかに1500円に引き上げる、実効ある賃上げ策に踏み出すべきです。

性別役割分担を前提に、女性は家計補助的な働き方でよいという位置づけが根強くあり、非正規や一般職は圧倒的に女性が多く低賃金です。間接差別をなくすことを、政治の課題にするべきです。不当な雇い止めをなくし、同一価値労働同一賃金など均等待遇を実現する、非正規ワーカーの待遇改善をいよいよ進めるべきです。

バス路線の廃止・撤退が相次いでいます。国交大臣は運転手不足が原因と答弁しました。ならばその賃金・処遇を改善し、タクシーを含め地域交通の担い手を支えるべきです。

総理は、医療や介護、福祉などの賃上げは喫緊の重要な課題といいます。ではなぜ、訪問介護の基本報酬引下げなのですか。厚労大臣は、加算措置があると言いますが、加算でカバーできる保証はありません。訪問介護事業所の4割近くが赤字です。自民党や公明党がかつて公約としていたように、国費を投入し、基本報酬引き下げを撤回すべきです。

年金改定率2.7%は、昨年の物価上昇率3.2%を下回り、実質所得が下がっています。これでは年金生活者は、「物価高を上回る所得の実現」から置き去りです。月額7万円弱の年金では足りず、痛む膝を引きずりながら仕事を続ける高齢女性の声があります。厚労大臣は、22年度までに目標を超えた年金積立金の運用益が36兆円に上ることを認めました。計画的に取り崩して還元し、くらせる年金へと再改定すべきです。

政府が、英国、イタリアと開発する次期戦闘機の輸出を閣議決定したことに断固抗議し、撤回を求めます。どれだけ歯止めを装っても、戦闘機は紛れもない殺傷兵器です。際限ない武器輸出に道をひらくものです。国際紛争を助長する武器輸出は行わない、国会決議で確認された憲法に基づく大原則を、密室協議で勝手に変えるなど断じて認められません。

本予算案は、8兆円に上る軍事費を計上しています。安保三文書に基づく大軍拡の2年目で早くも1.5倍、2.5兆円も積み増し、新たな兵器購入ローンである後年度負担額は14兆円を超えます。憲法違反の長射程ミサイルの開発と大量導入、自衛隊を米軍指揮下に置く統合作戦司令部の設置、全国の基地強靱化など、日米一体の敵基地攻撃態勢の構築を進めるのではなく、対話と協力の平和外交の努力こそ進めるべきです。地元に説明もなく進めようとしている沖縄・うるま市の陸上自衛隊訓練場計画は、断念すべきです。

防衛省の有識者会議では、「5年で43兆円」を突破する議論が早くも行われ、そのメンバーに三菱重工現会長が含まれていることが明らかになりました。総理は、「おかしいことではない」と強弁しますが、巨額の兵器発注を受ける企業がタブーなき大軍拡をあおるのは、タガが外れているというほかありません。

今国会で焦点の子育て支援策は、「国を挙げてとりくむ」としています。ところが政府は、社会保障以外の分野の歳出改革で生じる財源は、すべて防衛力強化に充てるため、少子化対策には回さないといいます。大軍拡が、くらしの予算を圧迫しています。平和を壊し、くらしを脅かし、財政をゆがめる大軍拡は、やめるべきです。

自らの派閥や、自らの資金管理団体の会計さえまともに管理できない自民党に、国家財政を預けることはできません。政治は、裏金ではなく、一人ひとりの声と行動によってこそ動かすものです。自民党政治を終わらせ、希望ある日本へ転換する決意を述べ、討論とします。

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