山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

神宮外苑再開発 国連ビジネスと人権作業部会報告書うけ事業者に住民等との対話促せ

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
まず、外務省に伺います。
国連ビジネスと人権作業部会について御説明いただきたいと思います。

○外務省 大臣官房参事官(松尾裕敬君) お答え申し上げます。
〔委員長退席、理事佐藤正久君着席〕
ビジネスと人権作業部会は、ビジネスと人権に関して調査、報告を行うために、人権理事会の決議に基づき設立され、独立した専門家五名から構成されたグループでございます。
ビジネスと人権作業部会を含め、国連人権理事会の各種作業部会の構成員たる専門家は、個人の資格においてその任務を果たすものとされております。その旨は、国連人権高等弁務官事務所のウェブサイトにも記載されております。
ビジネスと人権作業部会の活動目的については、例えば、国連のビジネスと人権に関する指導原則の普及、実施の促進、関係するグッドプラクティスの共有、各国訪問などが挙げられると承知しております。
また、同作業部会が取りまとめる国別訪問報告書は、ビジネスと人権をめぐる課題を明らかにし、人権を尊重するための取組に向けた普及啓発を目的とするものであると認識しております。
日本との関係について申し上げれば、同作業部会は昨年七月二十四日から八月四日にかけて訪日し、関係府省庁、自治体、企業関係者、市民社会などとの面会を実施の上、報告、訪日報告書を作成、公表したと承知しております。

○山添拓君 今お話のあった指導原則は二〇一一年の採択です。人権を守るための国家の義務や企業の責任、救済措置を柱にしています。そして各国の履行状況を調査しているわけですね。
日本政府もこの作業部会について意義ある存在だとして認識しているわけですね。

○政府参考人(松尾裕敬君) お答え申し上げます。
ビジネスと人権作業部会の活動については、人権の尊重のための取組に向けた普及啓発を目的とするものであり、意義があるものであると考えております。

○山添拓君 先ほども答弁ありましたが、昨年作業部会が来日し、十二日間にわたって様々調査を行っています。旧ジャニーズ事務所の問題、あるいは女性や障害者、外国人、LGBTQについて職場の人権状況など、包括的な調査を行っています。
今年五月二十七日に報告書が発表されました。日本の履行状況調査としては初めてとなります。
明治神宮外苑の再開発についてはどのような言及があったでしょうか。
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕

○政府参考人(松尾裕敬君) お尋ねのビジネスと人権作業部会の報告書における神宮外苑の再開発に関する言及については、利害関係者からの提起された環境問題に対処するための既存の政府のメカニズムや有効性については懸念が残る、作業部会は、特に、大規模開発計画に関する環境影響評価プロセスにおいて、住民協議が不十分であるという点に対して深刻な懸念を表明する、利害関係者から提起された事案の一つが、人権に悪影響を及ぼす可能性のある神宮外苑地区再開発プロジェクトである、作業部会は、意味のある協議、特に気候変動によって不釣合いな影響を受ける可能性のあるリスク集団やマイノリティー集団との協議が国連ビジネスと人権指導原則の下で求められていることを強調するとされております。

○山添拓君 再開発事業における住民との公開の協議、パブリックコンサルテーションが不十分だという指摘があります。広く市民や関係者の意見を募って、透明で民主的な決定、これはもう誰も否定しないものだと思いますが、その一例として挙げられた神宮外苑の再開発では、ビジネス主導で東京に暮らす住民の意向を無視して進められている、こういう批判がされているわけです。
作業部会の報告書が公表された翌日、日本政府が見解を示しました。神宮外苑については、事業者から意見を得ずに報告書をまとめるのは手続的に間違っている、大きな問題があるなどとして、項目ごと削除するように求めています。
外務大臣に伺います。
削除を求めるとしたのはなぜでしょうか。これは誰に意見照会を行ったものでしょうか。

○政府参考人(松尾裕敬君) ビジネスと人権作業部会が取りまとめる報告書は、ビジネスと人権に係る課題を明らかにし、人権を尊重するための取組に向けた普及啓発を目的とするものであると認識しております。
報告書における懸念、指摘事項の中には、我が国の取組について事実に反すると思われる内容や一方的な主張が含まれることから、日本政府として、国内の多様な意見を伝達する観点から、国連人権高等弁務官事務所に文書を提出いたしました。
日本政府が提出した文書は、報告書の各関連事項の記述につき、所管の関係府省庁や地方自治体がこれを検討の上、必要に応じ意見を作成し、それらを外務省が取りまとめて国連人権高等弁務官事務所に提出したものでございます。

○山添拓君 東京都に聞いたということですか。

○政府参考人(松尾裕敬君) 神宮外苑部分についての意見は東京都が検討、作成いたしました。

○山添拓君 政府はこの見解を出すに当たって住民には意見を聞いたんですか。

○政府参考人(松尾裕敬君) 外務省として住民の方に意見を聞いたということはございません。

○山添拓君 事業者が住民とまともな協議なく進めることが問題だとされているときに、事業者の意見を聞けという東京都の主張を基にこの返事出されたと、見解出されたと、こういうことになるんでしょうか。

○政府参考人(松尾裕敬君) 報告書の個別事項につきましては、当該事項を監督、所掌する関係府省庁や地方自治体が報告書の内容を検討し、必要に応じ意見を作成したものでございます。

○山添拓君 住民の意見を聞けというのがこの報告書の求めなんですよね。事業者の意見を聞けと東京都が言っていると。で、それをそのまま見解として表明したと。政府の見解ですから、東京都の見解とは書かれていないんですよ。
大臣、外務省としてはどう認識されているんですか。

○外務大臣(上川陽子君) まず、外務省の役割ということでございますが、これは外交活動の一環として、今般の案件につきましても、訪日受入れの窓口官庁として当該文書の提出を行ったところであります。
作業部会の関心事項は多岐にわたっておりまして、個別事項につきましては、当該事項を監督、所管する関係府省庁や、また地方自治体が報告書の内容を検討し、必要に応じ意見を作成したものでございます。
個別事項につきまして監督、所管する立場にはない外務省といたしましては、こうした所管府省庁及び地方自治体が作成した意見の内容の正否につきまして判断する立場にはございませんで、外務省はまさに国内の多様な意見を伝達するという観点から、この意見を取りまとめた上でOHCHRに提出したところでございます。
こうした取組につきましては、これまでも同様であると認識をしております。

○山添拓君 しかし、この見解は政府の見解として出されているんです。それを東京都から言われて、東京都が述べていると書くこともせずに政府として全項目、この項目ですね、神宮外苑についての項目、全部削除を求めると。そこまで言うわけですから、やはり政府としてどう認識しているのかということを示されるべきだと思うんですね。作業部会については意義がある存在だと最初に答弁されましたから。にもかかわらず、全部削除を求めると。それでよいのかということを問われると思うんです。
報告書は、環境問題に対処するための政府の既存のメカニズムの有効性について懸念を表明しています。特に指摘されているのが住民との協議の不十分さです。
資料の二枚目にお付けしていますが、作業部会のヒアリングも受けた明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会は、計画の詳細が開示されたときには既に多くの条例変更がなされていて後戻りできないような段階まで進んでいた、ようやく開催された説明会は三百八十メートル範囲の住民に参加が限られ、影響を受ける近隣の世帯の多くが説明を受けられていませんなどとして、十分な説明を受け、意見を届ける権利を求めています。
環境省に伺いますが、ビジネスと人権の指導原則に照らして、環境影響評価プロセスにおける事業者と住民との協議、これはやはり必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○環境省 大臣官房政策立案総括審議官(大森恵子君) お答えいたします。
環境影響評価法は、現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保を目的としており、地域との適切なコミュニケーションを図ることは大変重要と考えております。
具体的には、事業に係る適切な環境保全を確保するため、環境影響評価手続の中で、事業者に対し説明会の実施や国民から広く意見を聴取する機会の確保を義務付けております。これは、ビジネスと人権の観点からは、企業の環境面における人権尊重の考え方に沿ったものであると理解しております。

○山添拓君 ところが、外苑の再開発の環境アセスでは、ユネスコの諮問機関であるICOMOSのヘリテージアラートは無視されています。国際影響評価学会、IAIA日本支部は、アセスの枠組み自体に歴史的な価値や保全すべき都市緑地の価値、生物多様性など重要な項目が評価されていない、持続可能性への負の影響がほとんど評価できない仕組みだと批判しています。また、日弁連も、情報不足、調査手法の誤りや科学的でない記載があると指摘をしております。
政府は作業部会の報告書の案の段階で削除すべきだという見解を伝えたそうですが、作業部会は神宮外苑についても記載した報告書を公表しました。政府の見解は取り入れなかったということですね。六月下旬には人権理事会でこの報告書が報告をされると伺っています。
大臣に伺いますが、その際、政府としてどのような意見を述べるつもりでしょうか。また削除せよということはもうおっしゃらない方がいいと思いますが、いかがでしょう。

○政府参考人(松尾裕敬君) 本報告書につきましては、六月二十五日及び二十六日にジュネーブの国連人権理事会で開催が予定されているビジネスと人権作業部会とのインタラクティブ・ダイアローグでの、において報告されると承知しております。その中での我が国の対応については今後検討してまいります。
いずれにいたしましても、ビジネスと人権作業部会が取りまとめる報告書は、ビジネスと人権をめぐる課題を明らかにし、人権を尊重するための取組に向けた普及啓発を目的とするものであると認識しており、これも踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。

○山添拓君 やっぱり、ビジネスと人権とかSDGsとかを看板倒れにしちゃいけないと思うんですよ、本気で捉えるのであれば。意義ある方針と掲げるからには、政府が主張なさるべきは、事業者の意見を聞けということではないと私は思いますよ。事業者に対して住民や専門家や学術研究会との対話を行うように促すことだと思います。また、東京都に対しては、そうした対話もなしに勝手に事業を進めさせることのないように求めるのが本来政府の役割だと思います。
神宮外苑の森は、皆さんも御承知のとおり、献金や献木や勤労奉仕、多くの方の思いと力で造成された国民共有の財産です。少なくとも、国や都の一存、また事業者の経済的利益ありきの再開発というのはふさわしくないと思います。明治神宮について日本共産党がそう言っているんですから、これはもう自民党も共産党もなく、やっぱりこれは価値ある存在として認めていくべきものだということを述べまして、質問を終わります。

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