2025年・第217通常国会
- 2025年5月7日
- 憲法審査会
災害時こそ選挙権行使重要 選挙制度について参考人質疑
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
小島参考人に伺いたいと思います。
今日、御意見の陳述の中でも、東日本大震災の件、大変参考になりました。あわせて、熊本や能登でも支援にというお話があったかと思います。二〇一六年四月の熊本地震では三か月後に参議院選挙があり、また、昨年の能登半島の地震、豪雨、その後の総選挙と続きました。災害によっても対応の違いがあるかと思いますので、それらのケースでどのような御苦労や工夫があったかという点について御紹介いただければと思います。
○参考人(一般社団法人選挙制度実務研究会理事長・総務省管理執行アドバイザー 小島勇人君) まず、熊本地震ですけれども、熊本地震につきましては、ほとんどの被災地へ、特に一番感じたのが、西原村というところ行ったときに、もう役場自体がもうほぼほこりまみれ、職員も疲弊している、そういった中で本当に選挙できるのかという、そういう感じはありました。それで、我々が行って初めて参議院選挙があるということをきちっとお話をして、そうしたら彼らははっとして、やらなきゃいけないんですねというふうに思われました。
ですから、やはり寄り添う形で、我々が被災地にまず乗り込むという言い方おかしいですけれども、行って、直接いろいろ感じてお話を聞く、そういったことがまず大切であろうというふうに思いました。
それから、能登半島につきましても、これはもう総務省の本当に迅速な判断で、現地へ私も延べ六日間入って実際見させていただきましたけれども、輪島市に行ったときに、やはり職員の方々、担当の方、疲弊していました。非常にもう選挙どころじゃないよというあれでしたけれども、ただ、行っていろいろとお話を聞いて、我々がまあ何とかアドバイスできるからというふうなことをお話ししましたら、何となく心が和らいで、自分たちがやっぱりやるんだと、そういう気持ちになったということを私は強く感じました。
ですから、やはり現地で話を聞いてアドバイスをできる、そういう方々をどうやって派遣できるのかということがまず大事じゃないかなというふうに感じました。
○山添拓君 ありがとうございます。
選挙がそうした形で支援を経て実施されていることが非常に大事だと思います。
また、自治体職員は、この間、市町村合併が続き、また行政の合理化を進め過ぎたという問題もあって、災害時に限らず平時からそうした状況あるかと思います。ですから、平時から人的体制の強化が私は必要ではないかと感じます。
大泉参考人と小島参考人に伺いたいのですが、現場で選挙実務に当たってこられた皆さんは、今日もお話しいただきましたように、たとえ災害時でも、いかに円滑に選挙を実施し、選挙権の行使を可能にするかという角度で対応してこられたことかと思います。大泉参考人が、こういうときこそ代表者を選ぶという民主主義の重みとおっしゃったり、また、小島参考人も、一刻も早く自分たちの代表を選ぶという言葉を使われましたが、それ自体が私はとても重い発言だと思います。
一方で、この憲法審査会で議論されてきたのは選挙困難事態であり、これを理由に衆院議員の任期延長を可能にし、選挙そのものを延期できる、先送りしてしまおうということですが、そうなりますと、行政の側の発想は、いかに選挙を実施するかではなく、いかなる理由付けなら選挙を延期できるかと、選挙権を奪う理由を探していくという真逆のものになるのではないかと思います。この点どのようにお考えか、それぞれ伺いたいと思います。
○参考人(一般社団法人選挙制度実務研究会会長 大泉淳一君) ちょっと想像の話ですので何とも決め付けた言い方はできませんけれども、今まででしたら、やはり選挙は大事だということで、ずっと染み付いているといいますか、それを、何を我々がやんなきゃいけないかということを優先順位を決めて事務に当たっているのが選管職員あるいは総務省の職員というようなことだったと思いますけれども、今のお話がそういうふうになるかどうかは、ちょっとお答えはなかなか難しいんじゃないかと思います。
○参考人(小島勇人君) 私は、業務継続計画みたいなものをきちっと作っておかなければいけないと思います。よくBCPと言われますけれども、そういったものを作っておくということも必要になりますし、実際に何か起きたときの一般的な危機管理マニュアル的なものを作っておく必要があろうかなというふうに思います。御質問の趣旨にかなったお答えにはなっていないかもしれませんけど、いずれにしても、何かあったときに、業務遂行計画、これは選挙の執行も含めてということになります。
ですから、やれない理由を探すというのはどうかなという感じはしますけれども、とにかく、やるという、とにかく現行法の中ではやるという、地方公共団体の責務、法定受託事務、自治事務ですからやるということになります。ただ、憲法の改正でどうなるかということは別として、現行法では私たちとしてはきちっと執行していく。
ただ、それを補完する意味で、繰延べ投票制度だとか繰延べ開票制度ですとかあるということでございます。ですから、現行法の中できっちりどういう形でできるのかということを議論していくということはまず先決かなと私は思います。
○山添拓君 私もそのように思います。
現在の公選法の下で国政選挙で繰延べ投票となったのは二度だけだと今日も御説明がありましたが、災害など重大な事態が生じた場合にこそ民意を反映する国会が必要であり、選挙権行使をなるべく可能にする体制づくりこそが重要だということであろうと思います。また、現行法の下ではやはり選挙を実施するにはどうするかという発想で動いてこられたと、このこと自体が私は大変民主主義にとって大事なことではないかと思います。
重ねて大泉参考人、小島参考人に伺いたいのですが、昨年十月の解散・総選挙は、石破首相が就任から八日後に衆議院を解散し、その十八日後に投開票を迎えました。首相就任から八日後の解散、二十六日後の投開票、いずれも戦後最短でした。
期間が短いために選挙実務に生じた混乱など、御承知の限りで御紹介いただければと思います。
○参考人(大泉淳一君) ちょっと私はもう実務から離れているので直接は分かりませんけれども、なるべく、選管としてはゴーが出ないと動けないわけですから、そのゴーサインといいますか、解散が決まったと、あるいは総選挙がいつあるか決まったという前提で動くわけでございます。更に言いますと、ポスター掲示場などにつきましても入札しなきゃいけないと。なので、ある程度の期間が必要でございますけれども、それができないわけではない期間は絶対欲しいというようなことだと思います。
選挙自体が、いろいろ困難はあったかもしれませんけれども行われたということは、皆様方の努力があったのではないかと思います。
○参考人(小島勇人君) 今回のケースもそうですけど、前もちょっと解散から短かったということあるんですけれども、私は、選挙管理委員会職員としての経験から申し上げますと、やはり、ニュース等で解散という言葉が出てくる、そういったことになりますと、いつになるか分からないにしても、遠い将来何があるか分かりませんけれども、それに向かって水面下での一定の準備はせざるを得ないということでございます。ですから、例えばポスター掲示場を立てるにしても、ポスター掲示場の設置場所の選定だとかそういったことは水面下でやらざるを得ないし、公示日がいつになるかというのは分かりませんけれども、ある程度勝手に想定して、公示日がこの日になったらこうするんだ、ああするんだというようなことをやってきたということでございます。
今回、解散から八日後に公示ということでありましたけれども、ある意味では若干早めに、ニュアンスとしてですね、いつ選挙期日になるんだというようなことがそれなりのお立場の方から御発言があったりして、それは一つのよりどころにしながら準備をしたということは否定はできないというふうに思います。
いずれにしても、総選挙、私も十何回やってきましたけれども、総選挙というのはそういうものなんですよ。任期満了による選挙というのは一回しか私も経験していませんけれども、とにかく想定して動かざるを得ないというのが現場だというふうに今思います。
ただ、きちっと解散しなければ執行経費等も使えませんので、いずれにしても本当に綱渡り的に準備をする、投票所の手配をしておく、二つ三つの選挙期日を想定しながらやる、開票所もそうです。現場というのはそういうところだということでございます。
○山添拓君 時間ですので終わりにしますけれども、海外の有権者のための在外投票では準備が間に合わなかったという話や、台湾では一部投票できなかったという例が生じたということも承知しております。
解散を弄ぶ政治が選挙権を侵害している、そういう現状こそ憲法上大問題だという点を指摘しまして、質問を終わります。