山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第217通常国会

歴史修正の姿勢同じ 「ひめゆり」暴言追及/印との軍事協力批判 政府見解問う/WTOサービス貿易に関する約束表の改善の承認に対する反対討論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
航空協定、アセアンセンター設立協定の改正は、賛成です。
トランプ関税について伺います。
赤澤大臣は、米側との二度目の協議で、トウモロコシや大豆の輸入拡大案などを米側に示したとされます。先ほど福山委員の質疑の中で、米国が、協議の対象を追加の一四%分だけだと、こう言っているということが言われておりました。協議の対象、交渉の対象すら一致していないときに、もう譲歩案を日本側から示したのですか。

○外務大臣(岩屋毅君) 報道は様々に出ておりますけれども、協議の中身といいますか、詳細については、外交上のやり取りでありますし、つまびらかにすることは差し控えたいと思います。
今回の協議では、両国間の貿易の拡大、非関税措置、経済安保での協力などについて議論を深めることができたと承知をしておりまして、この協議結果を踏まえて、事務レベルで集中的に協議を行った上で、五月中旬以降の次回の閣僚間の協議につなげていく、そういうスケジュール感で進んでいるところでございます。

○山添拓君 いや、私は、国民的には説明いただくべきだと思いますよ。
自民党の森山幹事長は、トウモロコシも大豆もアメリカの輸入が増えることは別に問題ないと、こうおっしゃっています。飼料用のトウモロコシ、自給率はほとんどないと、大豆は七%と、だから、増えてもいいという発言なのですが。
しかし、こうして輸入に依存してきたことが、ロシアのウクライナ侵略を契機とした価格高騰の影響が我が国を直撃した理由でもあったと思います。今、食料自給率の向上が課題というときに、これは全くの逆行ではありませんか、大臣。

○国務大臣(岩屋毅君) ですから、報道は様々にありますけれども……(発言する者あり)いやいや、それは党の方での発言だと思いますが、政府としては、これは本当に真剣な交渉を今行っているその最中でございますので、その協議の詳細についてつまびらかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○山添拓君 しかし、赤澤大臣は、突っ込んだ議論ができたなどと評価は述べているわけです。勝手に突っ込まないでいただきたいと私は思いますね。
ベッセント財務長官は、四月二十八日のテレビ番組で、協議を進めるに当たっては標準化されたテンプレートがあると述べて、特別扱いを否定しています。この下で日本だけはと譲歩のカードを差し出すのは、悪手としか言いようがないと思います。国際社会と協調して、あくまでも全て撤回するように迫っていくべきだと指摘したいと思います。
今日の議題の一つはWTOに関わる確認書ですが、今こうして米国がWTO体制を事実上否定する一方的で乱暴なトランプ関税を世界に押し付けている下で本確認書の国会承認を求めるというのは、私は道理が立たないと思います。大臣、いかがですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 委員御指摘のように、WTOを中核とするルールに基づく自由貿易体制を維持し、拡大していくことは、我が国経済外交の柱だと思っております。特に保護主義や内向き志向が強まる中にあって、日本が自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮する重要性はますます高まっていると認識をしております。このような観点から、我が国は、WTOにおける議論を積極的に牽引してきておりますし、今後ともルール作りにしっかり取り組んでいきたいと考えております。
本確認書は、WTOにおいては二十四年ぶりに妥結したサービス貿易に関する新たなルールを定めるものであって、これは有志国間でのルール策定の好例であるというふうに思います。したがって、我が国が早期に本確認書を締結することは、ルールに基づく自由で開かれた貿易体制の維持強化に資するものだというふうに考えているところでございます。

○山添拓君 新しいやり方だということも強調されるんですが、コンセンサスが原則のWTOで、本確認書は有志国のみによる確認にとどまっています。大体、WTOも日米FTAも、今大臣がおっしゃったルール、自由貿易のルールを主導してきた米国自身が事実上破棄しているわけですね。ですから、惰性で続けていてよいのか。立ち止まり、検証すべきだと思います。
資料をお配りしておりますが、自民党の西田昌司参議院議員が三日、那覇市で行われたシンポジウムで、ひめゆりの塔の展示をひどい、歴史の書換えだと述べた問題について伺います。
師範学校女子部、第一高等女学校の生徒は、一九四五年三月、ひめゆり部隊として南風原町の陸軍病院に動員され、負傷兵の世話や水くみ、危険な外での遺体の埋葬まで行いました。日本軍の南部への撤退に伴い、五月には病院とともに南部へ移り、六つのごうに分かれ、医療器具も薬品もなく、病院は機能を失いました。そして、六月十八日夜、突然、学徒隊に解散命令が出され、砲弾が飛び交う中、放り出されました。動員された生徒、教師二百四十人のうち百三十六人が亡くなりましたが、うち百十七人、八六%は解散命令後に亡くなったり行方不明になったりしています。日本軍の作戦による犠牲なんですよね。ひめゆり学徒隊に象徴されるように、軍隊は住民を守らない、それが沖縄戦の教訓です。
防衛大臣、その認識をお持ちでしょうか。

○防衛大臣(中谷元君) 沖縄は、さきの大戦の末期においては、県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われて、県民合わせて二十万人もの多くの尊い命が失われました。特に、南部一帯においては多くの住民の方々が犠牲になったと認識をいたしております。沖縄県の資料によりますと、沖縄戦において、男女中学校の生徒たちが動員をされて、その戦死者は九百八十人に上ると承知をいたしております。
防衛大臣としましては、この筆舌に尽くし難い困難と癒えることのない深い悲しみ、これらを胸に刻みながら、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないと考えております。

○山添拓君 歴史の書換えだなどと述べた西田議員の発言ですが、日本軍がどんどん入ってきてひめゆり隊が死ぬことになった、そしてアメリカが入ってきて沖縄が解放された、そういう文脈で書いている。このような記載はないというのがひめゆり平和祈念資料館の普天間館長などの発言であり、そもそも展示は生存者の証言や資料に基づいたもので、一方的に日米のどちらが正しい、悪いという展示ではないんだと、こういうこともおっしゃっております。
政府としても、西田氏の発言は事実に反するものだと、こういう認識でしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 御指摘の西田委員の発言は承知いたしておりますが、個別の議員の一つ一つの発言について防衛省としてコメントをするということは差し控えます。
その上で申し上げれば、先ほど申し上げたとおり、沖縄におきましては、さきの大戦で一般住民を巻き込んだ苛烈な地上戦が行われまして、二十万人もの尊い命が奪われるなど、本当に筆舌に尽くし難い苦難を経験されたと認識しております。防衛大臣としては、このような沖縄の歴史をしっかり心に刻みながら、引き続き、我が国の防衛を全うするとともに、沖縄の基地負担軽減に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○山添拓君 軍隊は住民を守らないという沖縄での沖縄戦の教訓、それが沖縄の戦後の平和教育の中でも広く伝えられてきていると思います。大臣はそのことを認識されているでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 結果といたしましては、二十万人もの多くの尊い命が沖縄の地上戦で失われたということで、非常に筆舌に尽くし難い苦難を経験されたということにつきましては、防衛大臣としても、沖縄のこの経験、歴史、教訓、これをしっかり胸に刻みながら、引き続き、我が国の防衛を全うするとともに、沖縄の基地負担軽減に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

○山添拓君 ならば、歴史の書換えだなどと述べた西田氏の発言は、大臣の、また政府の認識とも違うわけですから、コメントしないなどと言わずに、それは違うと、政府とは違うと、これはおっしゃった方がいいと思いますよ。

○国務大臣(中谷元君) 先ほど申し上げたとおりでありまして、議員の発言は承知しておりますけれども、個別の議員の一つ一つの発言について防衛省としてコメントするということは差し控えさせていただきます。

○山添拓君 一つ一つで済まされるような程度の発言ではないと思います。
私は、大臣自身についても、その認識に疑念を抱いております。大臣は沖縄戦を指揮した牛島司令官の辞世の句について、平和を願う歌だと美化しております。沖縄戦は、国体護持を至上命令に本土決戦を遅らせるための捨て石作戦でした。首里陥落を前に住民が避難している南部への撤退を決め、持久戦を続ける決断をしたのが牛島司令官にほかなりません。軍民混在、その南部でおびただしい犠牲をもたらしました。ひめゆりの犠牲もこうした中で起きたものです。
牛島司令官は、自決に先立って徹底抗戦を命じて、犠牲を更に拡大させました。大臣にその認識はありますか。

○国務大臣(中谷元君) 沖縄戦における認識というのは先ほどお話ししたとおりでありますが、この御指摘の問題は、一五旅団のホームページに掲載されている、当時の臨時第一混成群の初代群長であります桑江一佐の訓示について述べたものでありまして、この訓示は沖縄県の本土復帰に伴う部隊の発足時のものであります。そして、沖縄県の発展、沖縄県民の平和な明るい生活、福祉の向上に寄与したいという決意が示されておりまして、牛島司令官の辞世の句というのは、この訓示の一部を構成するものであります。御指摘のこの群長の答弁につきましては、この平和に係る決意も踏まえまして、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないという考えの下に、文民統制の主体である防衛大臣として我が国の平和の願いを述べたものでございます。

○山添拓君 それは到底通らないと思いますよ。
私は大臣自身の、牛島司令官がこの沖縄戦、凄惨な結果をもたらしたとさっき大臣自身も述べられた。その結末をもたらしたこと、その責任について、犠牲を拡大させた、更に拡大させた張本人だとも言えるわけです。その認識を問いましたが、お答えがありません。
西田氏は、自分たちが納得できる歴史をつくらないといけないという発言もされております。私もノーカット版、今出ておりますから、拝見しましたが、そう述べています。事実をゆがめて歴史を修正する姿勢は、これは大臣とも通じていると指摘せざるを得ません。
シンポジウムは神社庁や神道政治連盟県本部主催のようですが、自民党県連も共催だといいますから、自民党としての責任が問われる問題です。直ちに謝罪と撤回をするべきだと、私からも指摘をしたいと思います。
もう一点、どうしても今日聞いておきたいと思う点がありますので、御質問したいと思います。
インド政府は七日、パキスタンに対する軍事作戦を開始したと発表しました。四月二十二日に起きた銃撃事件の報復であり、テロリストの拠点に対する攻撃とも述べています。国連のグテーレス事務総長は、制御不能に陥りやすい軍事衝突を避ける必要性を強調し、今こそ最大限の自制と瀬戸際からの脱却が必要だと述べています。
外務大臣に伺います。
このような報復攻撃は、国連憲章と国際法に照らして決して正当化されません。しかも双方が核保有国です。自制が強く求められます。大臣の認識を伺います。

○国務大臣(岩屋毅君) 我が国としてもこの事態を深刻に懸念をいたしております。
これが更なる報復の応酬を招いて本格的な軍事紛争にエスカレートすることを強く懸念をしておりまして、インド、パキスタン双方が自制をして、対話を通じて事態を安定化させることを強く求めたいと思います。そういう考え方に基づいて、昨晩、ジャイシャンカル・インド外務大臣と電話をいたしまして、その旨伝えました。パキスタンの大臣ともできるだけ早く電話会談を行いたいと思っております。
その上で、個別具体な事情や軍事行動の具体的内容を含む関連の情報について、我が国としてこの段階で事実関係を十分に把握することが困難でありますので、今般のことを、確定的な法的評価を行う、今般のことに関して、ことはこの段階では困難であると考えております。

○山添拓君 事実関係を確定することができないんだと、そうおっしゃるんですけど、この軍事作戦行動の開始の直前の五日に防衛大臣がインドを訪れています。シン国防大臣と会談され、軍事協力の強化に向けた協議体の新設も約束しておられます。
資料をお配りしておりますが、この記事では、インドは戦闘機や戦車のエンジン分野で日本の支援を求め、今後、検討を開始すると報じています。
六日付けジャパン・タイムズはより詳しく、日本がエンジンの輸出を含めインドの戦闘機や戦車開発をどう支援できるか精査する計画だとし、これは日本の武器輸出指針の緩和を受けたものだと報じています。また、英国、イタリアと進める次世代戦闘機の共同開発にインドも加わるよう日本側からアプローチしていることにも言及しています。
防衛大臣に伺います。テロの報復だと言って隣国との戦闘をいとわないインドと、武器輸出による支援も含めて軍事協力を進めるのですか。

○国務大臣(中谷元君) 私は五日、インドを訪問しまして、シン・インド国防大臣と日印防衛相会談を実施しました。内容は、地域の情勢、国際情勢が非常に複雑化をしていると、そして、不確実性が高まる中で、法の支配に基づき、平和で繁栄したインド太平洋地域を目指すという理念を共有する両国が防衛面での協力と連携を更に強化をしていくという重要性と必要性を増しているというような話でございました。
防衛省としましては、このような対話の枠組みを通じてインドとの連携を強化をして、インド太平洋地域の平和と安定に貢献をしてまいりたいということでございます。
その話の中で、やはりこのパキスタンとの間の紛争の問題がございましたので、私はこのカシミールで発生したテロについて、犠牲となられた方々への哀悼の意、そして、テロはいかなる理由をもっても正当化できない旨を伝えました。そして、その上で、南アジアの平和と安定のために、関係国が責任ある行動を取ることを期待する旨述べました。
今回の事態が更に報復の応酬を招き、本格的な軍事紛争にエスカレートすることを強く懸念をしておりまして、南アジアの平和と安定のために、インド、パキスタン双方が自制をしまして、対話を通じて事態を安定化させるということを強く求めたいと思います。

○山添拓君 時間ですからまとめますが、法の支配と果たして言える状況なのかということだと思うんですね。同志国だといって、どれだけ深刻な問題を抱えた相手でも無原則に軍事協力を進めて、あわよくば武器輸出で軍需産業で経済成長を、そういう発想は、私は、死の商人国家と呼ばれても仕方ない事態だと思いますし、もとより、憲法のじゅうりんであって許されない、このことを指摘して、質問を終わります。

―――

○山添拓君 日本共産党を代表し、日・チェコ航空協定、日・ルクセンブルク航空協定及びASEAN貿易投資観光促進センター設立協定第二次改正についての承認に賛成、WTO約束表の改善(サービス国内規制)に関する確認書の締結についての承認に反対の討論を行います。
本確認書は、金融、運輸、通信、コンピューター、情報、知的財産等、サービスの国際取引に当たって必要とされる資格や免許の要件、手続等に関連する加盟国の措置、すなわちサービス国内規制がサービス貿易に対する不必要な障害とならないことを確保するため、WTO協定の附属書の一つであるGATSに基づき作成が進められました。消費者の安全や利便性の向上、国内の産業振興政策として講じる様々な国内規制がいわゆる非関税障壁となりかねないといい、約束表の改善によって海外事業者の参入を容易にしようとするものです。
WTO協定は、多国籍展開する大企業の利益拡大を図る一方、発展途上国をいつまでも不利な状態に置き続けます。本確認書は、サービス国内規制について、加盟国のサービス市場への参入の障害を減らし、先進国の大企業の利益を一層拡大するためのルール作りにほかなりません。WTOで一九九九年から交渉が行われたものの、インドなど途上国の強い反対があり、全会一致でのルール形成が困難となり、結局、有志国のみによって妥結に至った経過もこうしたWTO協定の性格を反映しています。
米国トランプ政権が、米国自身が主導してきたWTOを始めとする自由貿易ルールを一方的かつ乱暴に踏み破るトランプ関税を進めています。世界中で人、物、金を移動させるグローバル企業の利益最優先の貿易ルールは、深刻な行き詰まりを示しています。
各国の経済主権、食料主権に立脚した新たな公正な貿易ルールが求められているときに、WTO協定を拡大強化する本確認書の承認に賛成することはできません。
以上、討論とします。

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