2025年・第217通常国会
- 2025年5月13日
- 外交防衛委員会
羽田空港のイミグレ業務 不当な雇用管理を追及
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
先週の当委員会で、航空協定二本の承認が議題となりました。外務大臣に伺いますが、日本がこれまでに締結した航空協定、幾つあるのか、また、それらを実施する上での受入れ体制の重要性についての認識を併せて伺います。
○外務大臣(岩屋毅君) 我が国は、これまでに国会承認を得て六十一の航空協定を締結をしております。航空協定を締結することによって、言うまでもなく、人の往来も貨物の往来も円滑に進むことになりますので、相手国との人的交流や経済交流が促進されることが期待されます。
また、人的交流の促進に当たりましては、これも言うまでもないことながら、入国管理業務を含め、訪日外国人の受入れ体制を政府全体として適切に整えることが重要だと認識をしております。
○山添拓君 政府がインバウンドの拡大を掲げる中で、昨年の入国者数がコロナ前のピークを上回って三千六百万人を超えています。今日は、空港の受入れ体制について聞きたいと思います。
海外から到着した乗客乗員は、検疫、入国審査、税関を経て正式に入国します。政府は、この間、革新的な出入国審査を実現する、空港の入国審査の待ち時間二十分以内などを目標に掲げて、旅客情報や顔写真、これらを税関、入管で同時提供していくキオスクという機械や、個人識別情報を取得するバイオカート、また自動化ゲートの導入などを進めてきました。委員の皆さんも利用されたことがあるかと思いますが、そうした審査のために乗客らを誘導、案内しサポートするのがイミグレーションアテンダントです。全国七つの国際空港で配置されています。乗客の中には機械に不慣れな方もいます。対応していないパスポートを持つ人もいます。特別永住者や米軍属を見極め、振り分け、また入国審査カードの記載を確認するなど、不審者を入国させない役割の一部も担っているかと思います。
入管庁に伺いますが、このイミグレアテンダント業務というのは、入管が一年契約で民間企業に委託し、国家公務員ではなくアルバイトが担っておりますが、大事な仕事ですよね。
○法務省 出入国在留管理庁 出入国管理部長(礒部哲郎君) イミグレーションアテンダントの業務内容については、空港の入国審査場等において入国、帰国する外国人及び日本人に対しての案内、誘導、整理するものでございまして、まさに日本に到着された方の顔となるものでございますので、非常に重要な仕事だというふうに認識しております。
○山添拓君 ありがとうございます。
その非常に重要な仕事の中で看過できない事態が起きています。
二〇二四年度、羽田空港のイミグレアテンダント業務を受託していたのは日本シティビルサービスという企業で、約二百人雇用していました。ところが、賃金が支払われず、昨年四月以降、初めて賃金が払われたのは八月だったそうです。これ、勤怠管理が間に合わず、入管からの送金が遅れたためだと聞いています。驚くべきことに、シフト管理や賃金の支払をしていたのは社員ではない特定の人物らのグループで、これは受託企業が毎年変わっても居座り続ける、まるで手配師のような存在だったそうなんですね。
賃金未払、あったこと認識されていますね。そして、昨年秋にはこうした部外者を審査場内に出入りさせないように指導するということがありましたね。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
令和六年度の東京出入国在留管理局羽田空港支局におけるイミグレーションアテンダント業務契約では、その仕様書において労働関係法令等を遵守しなければならないことが明記されておりますので、受注事業者において賃金未払が生じたことが発覚した場合には、羽田空港支局において是正、改善を求めているものと承知しております。
○山添拓君 いや、それで払われなかったことがありましたよね。また、部外者が入っていて差配していたと、そういうことはないようにという指導をしたこと、あったんじゃありませんか。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
東京出入国在留管理局羽田空港支局からは報告を受けておりますが、受注事業者における労使関係に関する事柄でございますので、詳細な内容については回答を差し控えさせていただければというふうに思っております。
○山添拓君 いやいや、審査場内に部外者が入っていたら、これは重大な問題ですよ。明かせないという話じゃないと思うんですよ。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
出入国審査場に入場するに当たりましては、(発言する者あり)済みません。
個別の案件における受注業者の関係でございますので、回答を差し控えさせていただければというふうに思っております。
○山添拓君 こんなことまで差し控えていたらまずいと思いますよ。だって、不審な入国者がいないかどうかを確認するための入国審査業務なんですよ。そこに不審者が入っていたということなんですよね。それ自体私は異常な事態だと思うんです。
昨年、賃金不払が解消したのは、労働者が個別に労基署などに相談したこととともに、労働組合をつくって団体交渉を申し入れて労働協約で正常化を図っていったということが大きかったわけです。すると、会社側は労働組合を疎ましく思ったのか、事務所の壁に組合活動を牽制する指導書を張り出し、さきの手配師のような人物が、労働組合は不要、次の会社で組合員は全員不採用などと発言していることまで発覚したといいます。こうした下で今年度受託したのが阪急交通社という企業です。
前提として伺いますが、受託企業が組合員を排除するなど労働関係法令に違反する行為をすることは許されないですね。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
受託業者との契約におきまして、労働関係、労働基準法等関係法令その他従業員に対する法令上の責任を全て負い、責任を持って従業員を管理するものとするということで規定しているところでございます。
○山添拓君 ですから、組合員であるからといって排除するようなことはないように、それは当然求められますよね。
○政府参考人(礒部哲郎君) そのように認識しております。
○山添拓君 受託企業が毎年変わっても、労働者は引き続き雇用されるのが普通でした。仕事は継続していますし、経験者が引き続き働くことが合理的だからです。ところが、阪急交通社は、組合役員を始め組合員の多くを不採用としました。名前と生年月日しか伝えていない段階で不採用となった人もいます。
入管庁、これは認識していますか。
○政府参考人(礒部哲郎君) 東京出入国在留管理局羽田空港支局から報告は受けておりますが、受注事業者における労使関係に関する事柄でございますので、詳細な内容についてはお答えを差し控えさせていただければと思っております。
○山添拓君 お答えを差し控えられては困るのですが。
入管庁として、こうした労働関係法令に違反することのないようにということを阪急交通社に伝えたことはありますね。
○政府参考人(礒部哲郎君) そのような事態が生じた場合には阪急交通社の方に確認をするということはしている、するということになります。
○山添拓君 今年、そういう対応を取ったことありますか。既にそういう対応を取って、阪急交通社に対して労働関係法令に違反することのないようにと伝えていますよね。
○政府参考人(礒部哲郎君) 個別の事業者との具体的なやり取りについては回答を差し控えさせていただければというふうに思っております。
○山添拓君 はっきりさせた方がいいと思いますよ。私どもが労働組合の皆さんから伺いますと、阪急交通社は、組合に対しては、入管庁からそうした申入れがあったことについて、事実は申入れしているのに、入管庁からそんなことは言われていないと、こういうふうにとぼけているそうなんですね。私は、受託企業が変わったからといって、その企業の採用の自由の問題だといって任せておける話じゃないと思うんですよ。
入管庁御承知だと思いますが、阪急交通社は二年前にもこの羽田でイミグレ業務を受託して、その業務を再委託して、そして賃金未払を生じさせていました。今度また委託したこと自体が私は疑問だと思うんです。
そもそも、このイミグレアテンダント業務ですが、一年ごとの委託契約としているのはなぜなのかと。その下で、一年たてばリセットとばかりにいい加減な雇用管理の企業が参入して、阪急交通社は前年度より時給も下げているんですね。コストカットを図って、そして物言う労働者を切り捨てています。不合理じゃありませんか。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
一年ごとの契約としているということにつきましては、近年の訪日外国人の急増やビジット・ジャパン・ウェブを利用した入国審査の導入など、年々、質、量共に目まぐるしく出入国の状況が変化していく中で、その業務内容や必要配置人員等につきまして毎年見直すことが適切だと考えておりますので、一年ごとの契約としているところでございます。
○山添拓君 私が伺ったのは、その下で、実際には労働者が雇用の不安定さの下で切り捨てられています。しかも、今、毎日シフトに穴が出て、急募が呼びかけられているそうです。ですから、業務が滞れば不利益は利用者に及びます。これは継続して必要な業務だと思います、量の増減はあるかもしれませんけれども。継続して必要な業務であれば、その雇用は継続されるべきだと思うんですね。
入管庁としての発注の仕方自体も改めるべきだと思いますが、いかがでしょう。
○政府参考人(礒部哲郎君) 仕様書の作成に当たりましては、適切な業務の履行を確保した上で多くの事業者が入札への参加を検討できるよう、可能な限り事業者の裁量を制限するものとしないことが望ましいものと考えております。
この点、イミグレーションアテンダントの業務につきましては、未経験者であっても語学力や接遇能力の優れた方、意欲の高い方の応募も想定されることから、事業者におきまして質の高い業務の履行のために必要な者を柔軟に採用できるよう、仕様書において前年度までの契約でイミグレーションアテンダント業務に従事してきた者を引き続き採用することとする規定は設けていないところでございます。
○山添拓君 しかし、そうはいっても、経験のある人が、慣れた人が引き続き仕事をするということは、これは入管にとってもメリットなんじゃありませんか。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
入管にとっても、能力のある方にイミグレーションアテンダントをやっていただくということは、非常に有り難いことでございますし、重要なことであろうというふうに思っております。そういった観点で、今年度の東京出入国在留管理局羽田空港支局におけるそのイミグレーションアテンダント業務委託契約では、業務の質の向上や業務従事者の習熟のため、その仕様書において、受注事業者に対しまして、本業務従事者に業務マニュアル及び接遇に関する留意事項を精読させることや研修を必ず受けさせることを求めているところでございます。
○山添拓君 ところが、それまで働いていた人が継続して仕事ができなくなっています。この事態は改めるべきだと思います。
羽田空港は二十四時間空港で、深夜、早朝も国際線が発着します。交通手段は限られていますから、職場に泊まるしかないというシフトが発生します。ところが、必ずしも寝室が確保されておらず、職員が床に段ボールを敷いて寝ざるを得ない、ロビーの長椅子で横になって仮眠するしかない、そういう劣悪な状況が常態化しているといいます。
これ、実はイミグレ業務に当たるこの職員だけではなくて、入管庁の職員もそうだということも伺いました。いかがですか。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
東京出入国在留管理局羽田空港支局におきましては、同支局職員が勤務する上で仮眠等を取得するために必要なベッド数を確保しているところでございます。また、イミグレーションアテンダント業務に従事する受注事業者の職員の寝室につきましては、その業務委託契約の仕様書におきまして受注事業者が業務の履行のため必要と認める施設及びロッカー、ベッド等の物品を使用できるものとしています。
空港内における業務委託という特性上、施設等の利用に制限はございますが、当庁といたしましては、今後とも適切な業務環境の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
○山添拓君 そのベッド、幾つあるんです。
○政府参考人(礒部哲郎君) お答え申し上げます。
日々の充足状況につきましては委託元である東京出入国在留管理局羽田空港支局において網羅的に把握しているものではございませんが、勤務管理につきましては受注事業者において適切に行うべきものであり、受注事業者においては、使用できる施設、物品に制限があることを踏まえた上で勤務シフトを組んでいるものと承知しております。
○委員長(滝沢求君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をまとめてください。
○山添拓君 はい。もうあとまとめます。
ベッド六つしかないというんですね。それでは埋まってしまうと。空港内ですとか、あるいは周辺施設ですから、当然限界があるわけです。ところが、インバウンド拡大で推進してきた、まあ邁進してきたと言っていいと思いますが、そのために、玄関口である羽田空港でこの有様です。
私は、現実を直視して、是正を図るように強く求めたいと思います。終わります。