山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2025年・第217通常国会

イージス・システム艦の整備費用膨張 「高コストの粉飾やめ中止を」

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
練習機の事故については、私からも、救助と、また原因究明、しっかり進めていただきたいと思います。
法案について伺います。
本法案には、従来個別に整備してきたACSA、外国軍隊との物品、役務の提供に関する決済手続についての協定の国内実施法を一般化する内容が含まれております。これは、せんだってこの委員会でも審議をしました部隊間協力円滑化法、RAA法に続く共通規定化です。法案には、締約国の軍隊に対する物品又は役務の提供と題する条文がありますが、その締約国とはどこなのかという定めがありません。
政府の説明資料を見ますと、このような規定をすることは、国民により分かりやすい法制とするためだとしています。ただ、どこの国の約束かとも分からないのに、分かりやすいというのは、分かりません。大臣、これはどういう意味でしょうか。

○防衛大臣(中谷元君) 我が国は、現在までに七か国との間でACSAの締結をしておりますけれども、これまでは、ACSAに関する国内法上の規定については締結相手国ごとに個別の条文を整備をしてきました、それぞればらばらに。このため、ACSAの適用対象となる活動の範囲、また提供される物品の、役務の類型を確認するためには、締結相手国ごとに個別の条文を参照するということが必要になりまして、一見して分かりにくいという状況にありました。
今回の改正におきましては、ACSAに関する国内法の内容が定型化をしたとの判断の下に関連条文を共通規定化をして、これによりまして、共通規定化された条文を参照することでACSAに関する自衛隊法及びPKO法の規定の内容を総覧できるということになりまして、つまり、国民にとって分かりやすい法制になったと考えております。

○山添拓君 いや、私はどこの国が相手かということがきちんと明示されている方が分かりやすいと思います、一見してですね。
結局、国民にとっての分かりやすさということではなく、政府にとって一々国会に法案を出す必要がなくなると、そういう分かりやすさということにほかならないと思うんです。
資料の一枚目は、RAA法の法案審査で防衛省が法制局に出した資料です。共通規定化する趣旨について、一本にまとめることによって国民にとって分かりやすいものとなるとこのときもしておりました。
法制局に伺いますが、防衛省はどの国との規律であるかを特定せず、RAA法や本法案のように共通規定化して、そして国会審議を省略する、それを国民にとって分かりやすいと評価しているんですね。法制局としてはこれでよしとしたのでしょうか。

○内閣法制局 第二部長
先ほど防衛大臣から御答弁がありましたように、国民により分かりやすい法制とするという点、これは御説明にあったとおりというふうに私ども理解しておりまして、今般、ACSAに係る物品又は役務の提供に関する規定を共通規定化する理由の一つとしては妥当であるというふうに考えております。
また、そのほか今回の共通規定化に当たりましては、そういった点に加えまして、ACSAに規定する活動の範囲及び提供する物品又は役務の類型は定型化しているということ、これらの内容はいずれもACSAの根幹を成すものと評価できることですとか、今後締結するACSAにおいても同様の規定の内容が含まれることが想定されるといったような、そういった説明を私どもとして受けまして、内閣法制局としてこれを了としたものでございます。

○山添拓君 内閣法制局がそういう説明で了とされるべきではないと私は思いますね。
この資料には、社会保障協定を参考として例に挙げて、社会保障協定の国内担保法も共通化したのだからRAAも同様のメリットが見込まれると書いております。
しかし、RAAの際に指摘しましたように、両者は全く質が異なる分野の問題です。社会保障協定というのは、在外邦人や日本に住む外国人の医療保険や年金制度の掛け捨て防止の調整などを目的とするもので、これは人に着目した問題ですから、どの国の人であれ共通の規律とする合理性があるかと思います。
一方、RAAやACSAは、どの国の軍隊に対して特別の地位を与えるのか、また特別の便宜を認めるのかという問題ですから、これは我が国の主権に関わります。そして、憲法九条との関係が問われるわけです。
防衛省に伺いますが、そもそも防衛省は、この共通規定化に当たって問題がないのかどうか、法制局に対して特別の審査を求めたのでしょうか。

○防衛省 防衛政策局長(大和太郎君) お答えいたします。
RAA、それからACSAの国内実施法の共通規定化に関する法案につきましては、RAAに関しては、道路運送法等の適用除外、刑事手続等の特例、国の賠償責任の特例など、ACSAに関しては、自衛隊による締約相手国軍隊への物品、役務の提供といった共通規定化される内容についても、法的な観点から内閣法制局において審査を受け、国会に御提出したものであります。
このプロセスについては、他の法律案同様、政府提出法案として必要かつ適正な審査を経たものであったというふうに認識しているところであります。

○山添拓君 法制局に伺いますけれども、共通規定化そのものについて、憲法との関係など問題がないのか、また国会審議を省略していくという、結果としてはそうなるわけですが、そのことについて防衛省との間で特別な意見照会やそれに対する回答というのはありましたか。

○政府参考人(栗原秀忠君) ただいま御説明がありましたように、防衛省の方で立案された法律案につきまして、私どもとしては、先例も踏まえつつ、通常の法律案の審査としてこれを審査を行いまして、本法律案について法制局としての了解をしたものでございます。

○山添拓君 この共通規定化についての特別なやり取りはないということですね。

○政府参考人(栗原秀忠君) はい。御指摘のとおりでございます。

○山添拓君 防衛省から特段のお伺いを立てたわけではなく、法制局も特に意見を述べておりません。これ、どちらも余りにも無頓着で、また国会軽視が甚だしいという点は指摘したいと思います。
本法案は、イージスシステム搭載艦の導入に伴う体制整備として、海上自衛隊の定数を百二十五人増員することとしています。
陸上配備型、イージス・アショアの配備計画の時点から今日に至るまで、このイージス・アショア、またイージスシステム搭載艦、建造費の試算や予算計上額がどのように変遷してきたのか、防衛省に御説明いただきたいと思います。

○防衛省 整備計画局長(青柳肇君) お答えいたします。
イージス・アショアの取得経費につきましては、平成元年度予算において、一基当たり約千二百二億円を計上してございました。その後、令和二年十一月、イージス・アショアの代替案につきまして四つお示しした検討の方向性の一つとして、自己防護能力を確保した「まや」型ベースのイージスシステム搭載艦二隻を整備する案を示した際、導入経費の規模感といたしまして、一隻当たり約二千四百から二千五百億円以上との試算を行ったところでございます。
現在、イージス・アショアの構成品を利活用する形でイージスシステム搭載艦二隻の整備を進めてきているところでございます。令和六年度予算で計上した船体建造費等を含め、イージスシステム搭載艦の取得経費につきましては一隻当たり約三千九百億円となっておりますが、その後、取得経費については計上してございません。
済みません、失礼しました。平成元年度でございます、ごめんなさい、令和元年度でございます。失礼いたしました。

○山添拓君 取得経費というふうに限定をされたんですけれども、建造、取得、そして関連経費を含めて、現時点での二隻分の予算計上額というのは八千六百億余りになるかと思います。よろしいでしょうか。

○政府参考人(青柳肇君) 取得経費でございますか。(発言する者あり)関連経費。済みません、ちょっと、関連経費はですね、ちょっと済みません、今手元にございません、失礼いたしました。

○山添拓君 最新の数字でいいますと、取得経費、関連経費合わせて二隻で八千六百七十六億円とされております。ですから、陸上イージスの時点との比較では三・六倍に、また洋上に転換してからも五年間で一・七倍という額になっております。
防衛省、イージス・アショアの住民説明会では、イージス艦を増やすよりも費用対効果が優れている、だから陸上のイージスなんだと、こう説明をされていました。それが破綻したにもかかわらず、イージスシステム搭載艦に固執したために、当然ながら費用対効果は悪化し、費用が膨れ上がっていると。そのことはお認めでしょうか。

○政府参考人(青柳肇君) 我々、これ累次の検討におきまして、当然、当時のイージス・アショアからイージスシステム搭載艦になりましたが、その必要性に鑑みて、我々、これはしっかりと整備しなきゃいけないということで必要な経費を計上しているところでございます。

○山添拓君 必要かどうかという話ではなくて、費用がどうなっているかということを今私は聞いているんですね。
資料二枚目を御覧ください。
二〇二三年十月の財政審の分科会では、防衛省の兵器調達価格が軒並み高騰し、とりわけ一年もたたずに二千億円も増加したイージスシステム搭載艦が問題視されました。ここでは、コスト増加が懸念される根本的な理由として、陸上用に調達したSPY7レーダーを洋上用に転換することが挙げられ、世界初の試みだと、それに伴って新規コストや予見できないリスクへの対応コストが発生する可能性があると。米国の次期イージス艦は別のSPY6レーダーを採用予定で、SPY7はスケールメリットが働きにくいなどとしておりました。
資料の三枚目です。
これを受けて、同年十二月、防衛大臣と財務大臣の閣僚折衝が行われましたが、結局、イージスシステム搭載艦にはSPY7を使うと、それ以外について、それ以外のイージス艦について白紙的に検討を行うということにされました。
大臣に伺いますが、結局財政審が示した懸念を無視したのはなぜなんでしょうか。

○防衛大臣(中谷元君) 財政審から御指摘を受けたわけでありますが、その後、選定につきましては、まず、SPY7搭載の艦艇につきましては、その後、スペイン、カナダの水上艦艇がSPY7を搭載して就航していく予定でありまして、米国のSPY7の基となった地上レーダー、LRDRと申しますけど、この共通の構成品が用いられることからスケールメリットを見込むことができるということ、また、将来のイージス艦に搭載するレーダーにつきましては、「こんごう」型の後継艦は運用構想を検討している段階でありまして、現時点ではSPY6、SPY7いずれの可能性も排除されないということ、そして、この米海軍のイージス艦との相互運用性につきましては、SPY6とSPY7を搭載する船の間で目標情報を共有できるということから、日米で異なるレーダーを使用しているからといって運用上の問題が生じることはないというようなことを鑑みまして、今回の決定としたわけでございます。

○山添拓君 いや、ほかの国も買うんだという話がありましたが、では、その開発費をなぜ日本側が負担することになるのかと、こういう主張もされております。
財務省に伺いますが、財政審で示されたコスト増加の懸念はSPY7ゆえの懸念だったはずです。にもかかわらず、SPY7の導入をよしとしたのでしょうか。

○財務省 主計局次長(前田努君) お答えを申し上げます。
今先生にお示しをいただきました令和五年十月の財政制度等審議会における資料でございますが、ここで述べていることは、装備品については、調達時の価格のみならず、その運用段階等におけるコストの増加、これが課題となっている中、具体的な例としてイージスシステム搭載艦を挙げまして、今先生の御指摘ございました搭載予定のSPY7レーダーに関して、これがライフサイクルコストの増加リスクの背景要因の一つとなるということを指摘した上で、今後、ライフサイクルコストの増加要因の分析や評価、これを適切に行っていくべきという問題提起を行ったものでございまして、これを踏まえて、イージスシステム搭載艦につきましては、これ、防衛省の方から本年四月に公表されましたプロジェクト管理対象装備品等の現状においてにおきまして、まず、このイージスシステム搭載艦のライフサイクルコストのベースライン、これを設定をいただきました。に加えまして、米国政府や民間事業者を含めた実効的なプロジェクト管理体制を構築し事業リスクを管理することなど、ライフサイクルコストを抑制するための施策の取組状況が記載をされてございます。
そういう意味では、財政制度等審議会のこれは指摘に沿った取組が行われているものだというふうに我々としては承知をしてございます。

○山添拓君 そうしますと、財政審の時点から、当時から、もうSPY7については決めていると、今後のことだけを問題にしていたんだと、そういうことになるんですか。

○政府参考人(前田努君) お答えを申し上げます。
繰り返しになりますけれども、財政制度等審議会においては、SPY7レーダーに関して、ライフサイクルコストの増加リスクの背景要因の一つとなることを取り上げているもので、イージスシステム搭載艦でSPY7レーダーを採用することを撤回するということを指摘をしているわけではございません。

○山添拓君 結局、財政審で議論していることというのはその程度の話なんですよね。もう走り出していることであれば、指摘はするけれども、今後気を付けなさいと、その程度で、今後の上振れリスクがあることも見過ごしてSPY7の導入を進めていったということが明らかになったんだと思います。
そしてまた、財務大臣と防衛大臣との閣僚折衝では、今後の導入レーダーについてはゼロベース、白紙的に検討とありましたが、大臣の答弁にもあったように、今後もSPY6なのかSPY7なのかまだ決められないということでありました。
政府は、四月十七日、イージスシステム搭載艦について、建造費や維持費を合わせた総額、ライフサイクルコストの試算を公表しました。これ、内訳とともに御説明ください。

○防衛装備庁 プロジェクト管理部長(嶺康晴君) お答え申し上げます。
イージスシステム搭載艦の建造費、維持費についてでございますけど、公表したライフサイクルコストの算定におきましては、同艦の使用期間について就役から四十年間を想定しておりまして、そのライフサイクルコストにつきましては二隻分の総額で約一・九兆円というふうに今見積もっているところでございます。
内訳につきましては、まず構想段階で十七億円、これ研究・開発段階はございませんので……(発言する者あり)

○山添拓君 そんなに詳しくは結構ですが、陸上配備のイージス・アショアの段階では、運用三十年でライフサイクルコストを説明されておりました。どうも護衛艦というのは三十年ぐらいで退役するというふうに佐藤筆頭などもかつて主張されていたかと思います。なぜ四十年で算出しているんでしょうか。

○政府参考人(嶺康晴君) お答え申し上げます。
直近の「まや」型も同様に四十年ということで来ておりますので、同様にしております。

○山添拓君 私は、わざわざ三十年とこれまでしていたものを四十年にして費用対効果を良く見せようとしているのではと、これは疑ってしまいますね。どのみち長く使っていれば、陳腐化した、老朽化したと言って更新を主張されるだろうと思います。四十年使うなどと言って高コストを粉飾するような、こういうやり方はやっぱりやめるべきだと、もうきっぱり断念すべきだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。

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