山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2017年・第193通常国会

共謀罪法案  適用対象 捜査機関が判断 一般人も対象に

要約
  • 「共謀罪」法案をめぐり、犯罪の計画をした複数人が、「共謀罪」が適用される組織的犯罪集団に当たる場合と、単なる共犯関係にとどまる場合の区別の基準について質問。
  • 裁判の判例を示し、適用対象は捜査機関の判断次第になることを指摘、広く一般人が捜査、処罰対象となることを批判した。

 

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

資料をお配りしております。今日午前中、山下参考人からも紹介があったんですが、ビジネスロイヤーの方が共謀罪法案に反対する声明を発表されているという報道があります。

これ読みますと、六月七日の毎日新聞でございますが、「企業活動の停滞 懸念」と題して、国際取引や金融に詳しい山中真人弁護士の意見が寄せられております。

企業も共謀罪法案の対象になる。組織的犯罪集団という語感と、集団の定義が懸け離れているとして、企業は、法に触れる可能性があることを議論することもある。例えば節税。脱税との違いは専門家でも見解が分かれる。また、特許権についても、訴訟を覚悟してあえてぎりぎりのものを作り出すことがある。検討するだけで罪に当たるとなると、議論ができなくなり、企業活動は停滞するだろう。政府は正当な企業活動は対象にならないと言うだろうが、それならそう法律に書くべきだ。廃案にして再検討することが望ましい。こう述べています。

大臣、どう思いますか。

○国務大臣(金田勝年君) 通告のない質問をただいまいただきました。

したがいまして、直ちにお答えすることは難しいのでありますが、一般の法人が組織的犯罪集団に当たることはないと、このようにテロ等準備罪のこの法案については申し上げることができるのではないかと、このように考えております。

○山添拓君 通告していないんですけどね、これ、六月七日の報道なんですよ。参議院に来て審議が大事なところに差しかかっている中で、こういう懸念が新聞で報道されているんですね。当然御覧になっていてしかるべきだと思うんですね。

なぜこうした懸念が示されているのかということをお考えになっていないんでしょうか。話し合っただけで罪になる、二百七十七もの罪を創設する共謀罪法案が、普通の企業活動を含めてあらゆる場面で問題を生む、生じ得るということをこれ端的に示した意見だと思うんですね。

今、普通の法人、会社というのは対象にならないんだという趣旨でお話しになりましたけれども、しかし、普通のこうした活動が対象になるかもしれない、ならないならないと幾らおっしゃっても、それは保証にならないんですよ。だったら、そう法律に書くべきだという意見なんですよ。これにどう応えるかということが、この間、問われている。曖昧、不明確な構成要件だということが指摘されてきたということだと思います。

今日は余り時間がありませんので、質問を続けさせていただきますが、前回、単なる共犯であれば、共謀、計画の段階では罪に問われない、ところが、組織的犯罪集団だとなれば直ちに処罰の対象になる、処罰されるかされないかの分かれ目が非常に曖昧なんだと指摘をしました。友達グループと振り込め詐欺集団の違いは何なのかと尋ねたのに対して、刑事局長は、それは団体の組織性があるかないかだと答弁をされました。

ここで言う組織性というのは、現行法の二条一項に言う組織に当たるかどうかということだ、こういうことでよろしいですか。

○政府参考人(林眞琴君) 組織という言葉は二か所で使われておりまして、今の委員の御指摘が団体要件に当たるための組織、それに関わることであればそのとおりでございます。

○山添拓君 その際に、前回御紹介した二〇〇八年の神戸地裁の判決がございました。振り込め詐欺グループが現行法上の団体に当たるとされたものですが、この事件では二条一項の組織をどのような事実に基づいて認定していますか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の平成二十年七月十六日神戸地裁判決でございますが、これは判例データベースに登載されていると承知しておりますが、被告人は、この被告人をリーダーとし、その指揮命令に基づき、四名の者らが携帯電話等の入手、電話等による欺罔行為及び金員の振り込み行為要求を、また、別の四名の者らが預金口座からの払戻しを、別の者らが詐取金、だまし取った金の管理をするなどの任務の分担をあらかじめ定めた組織により、反復して、不特定多数人から、親族が保証債務等の返済に追われているかのように装って金員を詐取することにより利益を図ることを共同の目的とする団体を形成し、その団体の活動として、組織により、五名の者らと共謀の上、平成十七年七月から平成十八年五月までの間、四十七回にわたり、被害者らから被告人らが管理する他人名義の普通預金口座に現金合計約一億一千六百七十七万円を入金させるなどしたとして、組織的詐欺罪が適用された事案であると承知しております。

○山添拓君 まあ私が質問したのは前半の始めの方のところだけなんですが。

弁護人は、これ単なる友人の集まりだと主張していたんですけれども、今おっしゃったような役割分担、指揮命令、そういう関係であっても、法律上は組織に当たると認定されてきたわけです。

この振り込め詐欺グループというのは、結合関係の基礎としての共同の目的は詐欺の実行にあるわけですから、今度の法案でいえば組織的犯罪集団にも当たり得るということだろうと思います。

そこで伺いますけれども、今の神戸地裁の判決のような組織の認定の仕方、これは共謀罪法案に言う組織的犯罪集団における組織の認定でも同じように認定されると伺ってよいでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の神戸地裁判決においては、この三条一項の当該罪に当たる行為を実行するための組織の該当性が争点となって、この点についての詳細な事実認定がされているわけではございませんので、神戸地裁判決における組織の認定と六条の二第一項の当該行為を実行するための組織の認定の共通性について答弁することは困難であると考えます。

○山添拓君 今答弁できないとおっしゃるんですけど、二条一項の組織というのと、今度新たに作られる六条の二の組織というのは同じものですからね、当然同じように認定するということだろうと思うんです。で、二条一項と三条一項も同じだということですから。

それで、一方で、八日の質疑の中で、この二条一項に組織性が書き込まれている趣旨として、立法当時の解釈本が他の議員の先生から紹介をされておりました。ちょっと繰り返しになりますが読み上げますと、組織により活動を行う継続的結合体は、組織性を有していないものに比べ、その構成員に対する関係では、共同目的による統制に加えて、組織の指揮命令による強い内部統制を及ぼすことができ、また、その活動の反復継続性という点でもより反復継続した活動を行いやすいという性格を有しているんだと、だから犯罪の実現可能性が高く、重大な被害やあるいは莫大な不正利益につながるんだとしております。

これは現行法ですから、組織性があることによって刑を重くするという理由として書かれているんですが、共謀罪で今度組織性が要求される理由もこの同じ趣旨によるものなんでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君) まず、先ほどその六条の二の一項での組織と二条一項の組織が同じだと言われましたけど、これについては、二条一項の組織というのは、これは団体の組織性の要件としての組織でございまして、六条の二の一項については、これは犯罪実行をどの組織が行うかということの組織でございますので、組織の定義自体は同じでも、全く位置付けが違います。

それを前提で申し上げますと、この組織的犯罪処罰法第二条第一項が団体の要件として組織性を要求した趣旨は、委員が今述べられたとおりでございます。他方で、その組織的犯罪処罰法の、じゃ三条の一項あるいはテロ等準備罪の六条の二、一項も同じでございますが、これについて、犯罪に当たる行為が団体の活動としてこれを実行するための組織により行われたとき、こういった要件をその組織的犯罪処罰法の三条一項で加重事由としていたり、あるいは今回、テロ等準備罪でそれを要件としている趣旨は、やはり、このような形態で起こされる犯罪は、通常、継続性や計画性が高度で、多数人が統一された意思の下で指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務に従って一体として犯罪を実行するという点でその目的実現の可能性が著しく高く、また重大な結果を生じやすい、あるいは莫大な不正の利益を生ずることが多く、特に悪質であって違法性が高いと、こういったことに着目したことでございます。

○山添拓君 まあ同じということなんですけど、要するに、刑を加重する理由と新たに罪をつくる理由と同じ理由なんですね。そして、その中で、今おっしゃらなかったところで、ちょっと省略をされたところなんですが、この解説文の中では、解釈本の中では、組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができる、だから組織性がある団体については刑を重くするべきだ、今度でいえば罪にするべきだという理屈になっているわけです。

そこで、次に伺うのが、資料の二枚目にございますけれども、東京高裁の二〇〇二年一月十六日の判決で、これは高裁段階で一部は確定し一部は上告されておりますが、七人組の詐欺事件です。いわゆる紳士録に掲載された人物に無差別に電話を掛けて、いろんな名目で金をだまし取ったという事件ですね。

一審は組織犯罪処罰法の適用を否定しました。そのため検察官が控訴をしたんですけれども、まず、一審判決はなぜ団体に当たらないと判断したんでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君) 一審判決、これは横浜地裁川崎支部、平成十三年三月十二日判決でございますが、これは、被告人Aはグループのリーダー的存在ではあったものの、同じ被害者から再度現金を取る回し打ちという役割を担う担当者を決める以外、他の被告人が犯行を行うに当たって時折必要な助言や指示を出していたにすぎず、電話を掛ける態様や方法、活動時間等については各被告人の裁量に任されていたこと、また、ノルマ等は設定されておらず、成功した金額が低いからといって被告人Aから叱責されたり制裁を加えられることはなく、単に当該被告人の利得額が減るだけのことだったことなどを考え合わせると、被告人らのグループが組織的犯罪処罰法が加重の根拠としたような宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼしていた団体というには疑問があり、その団体性は希薄であって、同法が予定する団体とは著しく異なっていると言わざるを得ないなどとして、被告人Aらのグループについて組織的犯罪処罰法二条一項の団体に当たるとは認められないとしたものと承知しております。

○山添拓君 今御紹介いただいたところの前に、資料の二枚目の上の方の黄色で強調した部分ですけれども、ここでは、組織的犯罪処罰法が団体の定義に組織性による制約を加えたのは云々かんぬんとありまして、先ほど私が申し上げた解釈文の中身を述べているんですね。

なぜ組織性が認められるのかということについて、要するに組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができるから組織犯罪については刑を重くするんだと。ところが、このグループについていえば、この法律が刑の加重の根拠としたような宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができた団体というには疑問があるんだと。ですから、立法当時の解釈、法律の解釈に忠実にその意味では従って、解釈本をほとんどなぞる形で、宗教団体や暴力団のような指揮命令関係による強い内部統制のあるグループではないと、組織性は認められないと判断しているわけです。

ところが、高裁判決は一審の判断を覆しました。組織性についてどのように論じていますか。

○政府参考人(林眞琴君) 今申し上げた一審に対しまして、委員御指摘の東京高裁、平成十四年一月十六日判決は、事実認定自体はおおむね第一審の同様と事実認定の下で、次のように言っております。

被告人Aは、被告人らのグループの中で単なる役割分担を超えた上位者としての地位があり、被告人Aのみが他の者を従わせる指示をすることのできる立場にあったと見ることができ、本件各犯行は、個々の犯行について具体的な指揮命令をしなくとも、被告人Aの指揮命令に基づく犯行であると評価できる。また、被告人らのグループは、新規の被害者を開拓することを中心に行う者、回し打ちを主に担当する者、実行行為のほか雑用等を担当する者、送金や口座の新規開設を担当する者などの任務の分担があり、円滑に詐欺、恐喝が遂行できるようなシステムになっていたのであり、関与者が少なくても組織によって実行されていると言えるなどとしまして、被告人Aらのグループに組織性を認め、組織的犯罪処罰法二条一項の団体に当たると認めたものと承知しております。

○山添拓君 肝腎なところをお読みいただけなかったんですけれども、資料二枚目に一審判決の誤りについて論じた部分として引用しております。少し読み上げます。

この点に関する、つまり組織性に関する原判決の判示は、組織的犯罪処罰法の立法の主要な根拠を参考としたものであろうが、言うまでもなく、内部統制の強さは刑加重の要件ではなく、加重の立法根拠にすぎないと。そこで、内部統制の強弱は単なる犯情の差にすぎない、情状で考慮すべき事情にすぎないのであって、これを適用要件に絡めて判断するのは相当でないと。そして、むしろその立法趣旨からすれば、団体の構成員の結び付きは、組織的な犯罪を行うという共同の目的に沿った合理的なもので足りるはずだと。こう言っているんですね。

ですから、立法者としては、あるいはその解釈本としては、組織性のある犯罪を重く処罰する理屈は、理由は、強い内部統制が利くものだから、だから結果発生の危険性が、実現可能性が高まるんだ、こういう理屈で言っているんですけれども、ところが、それに忠実に沿った一審判決が覆されて、むしろ内部統制の強さは余り問題じゃないんだと、適用できるかできないかの問題としては余り関係ないんだというふうに認定しているわけです。団体構成員の結び付きは合理的なもので足りるとまで言っている。

政府は、この間、組織性というのは指揮命令系統や役割分担の問題だと言って、何かこうイメージするとすごく大掛かりな統率の取れた集団を描いているんですけれども、そんな必要はないというのが実務なんですよ。こういう判決のような組織性の認定のされ方、共謀罪の組織的犯罪集団の認定においても同じような認定がされていくことになるんじゃありませんか。どうですか。

○政府参考人(林眞琴君) これは、今回、一審、二審で判断が分かれたのは、やはりこれは要件であるところの、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務に従って構成員が一体として行動する人の結合体に当たるかどうか、この点についての判断が分かれたものと考えております。

いずれにしましても、この事実関係の中で、先ほど申し上げたようなグループというものについては判断は分かれましたが、かなりその組織の中に指揮命令というものが存在して、役割分担というものが実際にあった事案についてその裁判所の判断が分かれたものだと考えています。

○山添拓君 最後、裁判所の判断が分かれたという話がありました。結局、事実認定であれ、その評価の問題に関わるんだということをお認めになったということだと思うんですね。

組織的犯罪集団は極めて限定的な場合にしか認められないと述べた与党の議員の方もおられましたが、とんでもないんですよ。現にこの東京高裁の事件では、一審判決が立法時の解釈本に従って厳格に解釈しようとしたのに、高裁ではひっくり返って、これは最高裁でも是認している結果になっているんですね。大臣や刑事局長が幾ら限定されると言ったところで、法の解釈、適用、これは現場の検察官や裁判官が行うわけです。法律で明文の縛りがない限りは、限定されるということはないわけです。

これまで政府が否定されてきたようなサークルだとか同窓会、楽譜のコピーをするアマチュアの合唱団、あるいは山にキノコに行くキノコ取りのサークル、こういうものが何でも対象になり得るということなんですね。それこそ一般人が対象になるかならないかというさっきの話でいえば、なるかもしれない。そのことが私は重大な問題だと思うんです。対象になるかもしれない、なっているかもしれないからいつでも監視されているかもしれない、その不安が今多くの方に共有されている問題なんだということ、是非大臣にも認識をいただきたいと思っています。

時間がなくなりますので、最後、大臣に伺いたいんですけれども、今御紹介申し上げたように、立法当時に立法者がどのように言っていたか、あるいはその政府が解釈して解釈本でどのように書いていたか、それにかかわらず、裁判所では、大臣がこの間言ってこられたような暴力団や薬物密売組織、テロ集団、これに限らず、どんどん組織的犯罪集団と認めるということがあり得るわけですよ、法律で限定していないわけだから。その懸念が広がっているということに対して、大臣、どのようにお考えですか。

○国務大臣(金田勝年君) 事前の通告がないですが、度々、度々質問をいただきます。それで、お答えをします、お答えをします。今度は通告ください。

適用対象となる団体の限定によって、テロ等準備罪において一般の会社や市民団体がテロ等準備罪の処罰の対象となることはないと申し上げております。テロ等準備罪については、対象となる団体をテロリズム集団その他の組織的犯罪集団に限定をしております。テロリズム集団その他の組織的犯罪集団は、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする集団をいうことですから、これに該当し得るのは、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団のほか、例えば暴力団、薬物密売組織といった、そうした違法行為を目的としている団体に限られるものであります。一般の会社や市民団体は、犯罪を行うことを共同の目的としていることは考えられず、組織的犯罪集団に当たらないことが明らかでありますから、テロ等準備罪の処罰の対象となることはありません。

○山添拓君 全然お聞きいただいていなかったと思うんですね。

大臣が幾らそう言っていても、実務はそうなっていないじゃないかということを事実をもって示したのに誠実にお答えにならない。こんな答弁を繰り返していて、これで時間が来たから終わりだなんてとんでもないと思います。

以上で終わります。

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