山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第196通常国会

シップリサイクル法案 便宜置籍船への対応求める

要約
  • 船舶の解体時に生じる環境問題、労働災害の防止のため、500トン以上の船舶について当該船舶に含まれる有害物質一覧表の作成を義務づける船舶再資源化解体実施法案(シップリサイクル法案)が、全会一致で成立。
  • 山添議員は、質疑で、日本の商船隊の9割にあたる便宜置籍船への対応、また、欧米で問題視されるビーチング方式について、政府の認識を質しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約、いわゆるシップリサイクル条約の国内法整備のための法案です。解体作業時の環境汚染を防ぎ、解体作業に従事する労働者の安全を確保することは当然必要であり、我が党も条約の承認に賛成をいたしました。

船側には、有害物質一覧表を作成し、国土交通大臣の確認を受けるよう求めております。ただし、これ義務付けられるのは法二条四項の特別特定日本船舶でありまして、外国籍の船は含まれません。

資料をお配りしておりますが、日本商船隊二千四百十一隻のうち日本籍船は二百十九隻、九・一%、圧倒的多数がパナマやリベリアなどに籍を置く便宜置籍船だとされております。パナマは条約に参加をしているということですが、リベリアやシンガポールはまだです。

便宜置籍船についても有害物質一覧表の作成や確認を、これは日本政府としても求めていくべきではないでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) シップリサイクル条約では、締約国は、非締約国の船舶が有利な取扱いを受けないために、必要に応じて非締約国の船舶にも条約の規定を適用できるとされておりまして、外国船舶監督制度によりこれを担保しております。このため、条約を締結していない便宜置籍国の船舶は、締約国内の港から退去させられるおそれがあり、便宜置籍国としてのメリットが損なわれることになります。

このような事態を避けるためにも、便宜置籍国は条約の締約国になると考えられておりますけれども、我が国としましても、既にシップリサイクル条約を締結しているパナマに加えまして、リベリア、バハマといった便宜置籍国に対し、条約の早期締結に向けた働きかけも行ってまいります。

また、便宜置籍国に加え、それ以外の国にも条約の早期締結を促し、我が国を含む多数の締約国が情報交換を適切に行うことにより、外国船舶監督を連携して実施することを通じて条約の実効性を更に高めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 外国船舶監督制度というのは三十三条にありますが、これは是正措置をとることができるとするだけですので、必ずやるものとはなっておりません。EUの域内法では、EU以外の船籍の船舶に対しても有害物質一覧表の作成を求めておりますので、日本も徹底をするべきだと意見を申し上げておきたいと思います。

そのEUの域内法では、解体施設について、EUが承認する仕組みとなっております。南アジアで使われるビーチング方式はEUが承認しない可能性があると言われております。国交省のシップリサイクル条約の批准に向けた検討会では、この点への懸念が共有されて、ビーチング排除が国際スタンダードとならないよう官民連携で国際的に働きかけを行うことにしたとされています。

しかし、ビーチング方式というのは、解体設備のない自然の砂浜を利用して行われるものです。油などの洗浄が不十分なまま解体されるために、火災や爆発事故の危険、あるいはアスベストなど有害物質による環境汚染、労働者の健康被害の拡大につながってきたと言われる方法であります。

大臣は、ビーチング方式そのものについて、指摘されているこうした問題についてどのように認識をされているでしょうか。将来的には解消されていくべき方式だとお考えでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 過去、解体国の一部のビーチング方式を採用している再資源化解体施設におきまして、安全面や環境面で様々な問題が生じたことは承知をしております。このような施設において、安全上及び環境上適切な解体が行われるよう改善が図られることは重要と認識をしております。

一方、シップリサイクル条約策定時のIMOの議論におきましては、ビーチング方式を含め、特定の解体の方式にかかわらず、再資源化解体施設が、条約が要求する安全環境要件に合致する場合には解体が認められることとされました。日本におきましては、干満差が大きい等のビーチング方式に適した自然状況を満たしている再資源化解体施設の適地はないと承知をしておりますが、一方で、これまで、ビーチング方式を採用するインド等において、施設の改善を図るため、官民を挙げた支援を行ってまいりました。

今後とも、引き続きまして、主要解体国の再資源化解体施設がシップリサイクル条約の要求する安全環境要件に合致できるよう、主要解体国に対して資金的、技術的な協力を行うことによりまして、当該再資源化解体施設において労働者の安全及び環境保護が確保されるよう努めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 環境への影響に配慮した改善、当然行われるべきだと思いますし、造船大国の一つとして責任ある対応を取るよう引き続き求めてまいりたいと思います。

法案については私どもも賛成をするということを申し上げて、今日は別のテーマで質問をさせていただきたいと思います。

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