山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

外国人労働者受け入れ拡大の入管法改定案について

要約
  • 国交委員会で入管法改正案に関連し、資料提出した建設作業従事者の失踪技能実習生の個票について石井大臣にたずねると「私どもの資料でないのでコメントは差控える」と答弁。極めて問題な態度だと強調しました。建設就労者受入事業の調査資料も黒塗りでしか開示されず、安倍政権の悪弊と指摘しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 入管法改定案に関わって伺います。
 野党は一致をして法務委員会との連合審査を求めてまいりました。国交省管轄の分野が深く関わっています。与党がこれに応じないのは不当であり、改めて強く求めたいと思います。
 失踪した技能実習生二千八百七十人からの入管の聴取票、これも政府が写しを提供しないために野党議員が時間を割いて写しを取りました。私も百枚以上書き写しました。閲覧はさせるのに写しを認めない、これ、嫌がらせとしか思えないです。これは断固抗議したいと思います。
 失踪者の中にも建設関係者が大勢見られておりますので、国土交通委員会としても、改めてこの個票、きちんと提示をされるべきだと思いますし、今回示されたのは二〇一七年の分だけなんですね。それ以前もあれば、今年に入ってからの分もあります。これ提出するように求めたいと思います。
 資料の一枚目、御覧ください。これは私が書き写した個票です。ベトナム人の男性で、技能実習一号です。銀行からの借入れで送り出し機関に百三十万円を支払って来日し、入国して約三か月で失踪したとされています。その理由は、送り出し機関で説明された作業内容と異なったためだと。従事していたのは建設作業です。月額給与は、来日前には十四万五千円と言われていましたが、実際には十万円。そこから二万円が控除されますが、これは事前の説明もありませんでした。労働時間は、週五十時間と聞いていましたが、六十時間でした。ここから割り出しますと、残業時間は月八十時間を超えて、時給は四百十七円。当然、最賃を下回ります。しかし、失踪理由の段を御覧いただくと、低賃金にも最賃以下にもチェックはありません。
 この間、報道がされております、六七%が最賃未満だったと言われているその個票というのはこういうものであります。過労死ラインの労働時間も最賃以下の賃金も、問題だという認識をする機会も是正を求める機会もないような、そういう技能実習生が失踪している、大勢いる。そしてまた、失踪に至らないけれども、そのような状況にいる方が大勢いるということが容易に想像をされます。
 大臣、これは通告しておりませんけれども、この個票を御覧になって、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) これは私どもの資料ではございませんので、コメントは控えます。
○山添拓君 その態度は極めて問題だと思いますよ。建設作業に従事しているんですよ、この方々が。こういう方が大勢います。大臣も一度、この個票の写し、私たち写経だって呼んでいましたけど、写経やってみてくださいよ。どんな思いになるか。そういう実態を見ないで、新たに技能実習生からほとんど特定技能一に移すと言っていますでしょう。建設業は一〇〇%、ほとんど一〇〇%が技能実習生からの移行ですよ。
 こういう最賃割れというのがこれだけ起こっているのは、何も不思議なことではありません。資料の二ページの東京新聞の記事にも触れられておりますが、労働組合の全建総連によれば、技能実習生の場合、送り込む監理団体が、最低賃金で統一してほしいと、こう建設会社に指示するケースがあるというんですね。埼玉県などでは複数あったと私も伺っています。受入れ企業としては、同じ職場で働いている日本人とのバランス上、賃上げしたいと思っている。しかし、そう思っても、監理団体から言われるので最賃しか払えないと、こういう状況があるそうです。つまり、最低賃金が事実上最高水準となっている。それが法令遵守だという顔をしているわけです。
 法務省に伺います。技能実習法第九条九号は、技能実習計画の認定の要件として、技能実習生に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることと掲げています。最低賃金を上回りさえすれば、この要件は満たすんですか。
○政府参考人(佐々木聖子君) 技能実習生に対する報酬につきましては、技能実習法上、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることを定めておりますが、その趣旨は、単に最低賃金が支払われていればよいというものではありません。であるからこそ、技能実習生に対する報酬が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることを外国人技能実習機構において技能実習計画の認定申請の際に審査をしております。
○山添拓君 しかし、それが実際にはそうなっていないんですよ。日本人と同等以上というのは最賃水準だということになっているわけです。したがって、より悪質な事業者が最賃以下で雇うということは十分あり得るわけです。そして、最賃水準の外国人が多数いれば、日本人の水準も下がっていくということになります。こういう技能実習生をめぐる実態を徹底して検証することが新たな受入れを検討する上では当然求められるということを改めて指摘したいと思います。
 十一月二十七日の質疑で伺った建設業における緊急雇用、外国人建設就労者受入事業、先ほど来お話も出ておりますが、これについても伺います。
 国交省が委託して行わせている巡回指導の報告書について、二〇一五年度分、一六年度分、これも開示するように求めておりましたところ、十二月三日の深夜にようやく開示をされました。ところが、新たに開示された報告書、ここにありますけれども、肝腎の指導や注意喚起、助言についての内容が真っ黒なんですよね。ここにありますが、一六年度でいえば、二十七ページから八十ページにわたって真っ黒です。さらには、これ違法や不当な事例について真っ黒なんですよ。好事例、推奨事例についてはちゃっかり載せているんですね。二〇一七年度には、暴力を受けている、日本語が通じないという理由で解雇された、再入国時にベトナムの送り出し機関に何ドル支払いなど、赤裸々な描写があったホットラインへの相談内容も、そのほとんどが真っ黒です。二百九十八ページから、ここからですね、真っ黒ですよ。この二十五、六ページにわたって真っ黒であります。
 相談内容も対応内容も隠してしまったわけです。これ、どういうつもりですか。肝腎な部分がないじゃないですか。これでは検証のしようがありません。直ちに明らかにすべきです。
○政府参考人(野村正史君) 今委員御指摘のありましたとおり、平成二十七年度、そして二十八年度の報告書について、前回の審議でも、今精査をしておりますということで、精査をさせていただいてそのような形で提出をさせていただいたことは事実であります。
 それで、実は、二十七年度、二十八年度、二十九年度、報告書のまとめ方に若干相違がございまして、例えば、さきに提出しました二十九年度についてはあらましで載っているものが、今委員お示しされたところは実は個票そのものでありますので、例えばその失踪の、失踪というか、ホットライン関係については逐一全部相談の内容が載っておることもあり、個人情報保護等の観点からそこを開示しないということにしております。
○山添拓君 いろいろおっしゃいますけど、開示した資料、二十九年度、一七年度については開示したわけですよ。開示した資料で追及されると分かれば、今度は黒塗り、墨塗りでしか出さない。都合が悪くなると隠してごまかす。これ、本当に安倍政権の一貫した悪癖だと私は言いたいと思うんですよね。
 二〇一七年度分では、賃金支払の状況として、先ほどもありましたが、五百十八社への巡回指導で二百四社に改善指導、四割で違法が確認されておりました。一五年度、一六年度ではどうでしたか。
○政府参考人(野村正史君) 平成二十七年度、二十八年度につきましては、今ほどちょっと申し上げましたけれども、まだ巡回指導先等が比較的少なかったこともあって、その様々な巡回指導の際の確認項目と、それから指導の類型、改善指導とか注意喚起とかそういうものをクロスした一覧表の形で、報告書に記載がない形で報告がされました。
 そして、今の話のように、報告書にはまた個票が登載はされておりますけれども、その中では、今度は逆にそれぞれの事案に対して改善指導、注意喚起、助言の別がどうなっているのかということが必ずしも明らかでないために、恐縮でございますが、いま少し細かな精査が必要となってございますが、今御質問を受けましたので、取りあえず平成二十七年度、大変恐縮ですが、先生の配付されている資料にもございますけれども、実は改善指導を含んで、注意喚起、助言、それらをトータルして五十一件のそういう形での指導をしておるんですけれども、その中で賃金関係二十五件ございました。
 ただ、この二十五件の中には、例えば口座振替の同意書のような多少手続的なものも含まれておりまして、ちょっとその、何ですか、項目が必ずしも二十九年度の項目と一致しているかどうかについても精査が必要ですけれども、一応、五十一件中二十五件でございました。
○山添拓君 つまり、全体について、二十七年、八年、九年と比較可能な形ではお示しいただけないということでありました。
 資料の三ページを御覧ください。国交省が出せないというので、私どもの方で比較可能な形で集計を行いました。指導、注意喚起、助言の合計数、これしか出せないものですからこれで比較をしております。一五年度から一七年度にかけて、特定監理団体で二十件、五十五件、八十二件と増加しています。受入れ企業についても、今お話ありました五十一件、そして三百四十六件、千六百十四件と激増しています。もちろん巡回件数も年を追って増えていますけれども、それを上回るペースで指導などの増加が見られるわけです。受入れが増えれば増えるほど指導改善が必要なケースが増えていると、このことを物語っていると思います。
 大臣は、前回、現行の巡回指導等の制度の仕組みも参考としつつ、新たな特定技能一号などの受入れの仕組みを検討すると答弁をされました。改めて伺いますが、参考にしてとは、これはどういう意味ですか。
○国務大臣(石井啓一君) 外国人を雇用する建設事業者の多くが中小零細企業であり、労働関係法令等の理解が十分でないことを踏まえれば、新たな特定技能制度におきましても、現行の外国人建設就労者受入事業において行っております国土交通大臣による報酬予定額等を明記した計画の審査、認定及び制度推進事業実施機関による巡回指導の措置と同様の効果が得られる仕組みが必要であると考えているところでございます。
○山添拓君 巡回指導というのは、今指摘しましたとおり、やればやるほど指導件数が増えているんですよね。ですから、違法や不正を抑止することにはなっていないわけです。しかも、巡回が必要だと今から言うというのは、これ受入れ企業と特定監理団体に任せていては適正さは保てない、これが建設業の特例制度における教訓だと言っているに等しいわけですね。何しろ、本来不正をつかむべき特定監理団体は不正を一件も自ら見抜いていなかったわけですから。
 そこで、法務省に伺いますが、既に建設業の特例制度で受入れ企業任せでは駄目だと分かっております。ましてや、新たにつくる登録支援機関は、届出制のみで許可制ではありません。営利企業も入ります。人材ビジネスであって、監理団体ではありません。独立した監視の仕組みすらないような業種では、違法や不正がこれ野放しにされるんじゃありませんか。
○政府参考人(佐々木聖子君) 各業所管省庁におきまして、各業種、分野の特性や実態を踏まえた受入れの適正化を検討されていると思います。効果的な取組があれば、その情報を他の分野とも共有し、場合によっては他の分野が参考にすることが望ましいと思います。
 いずれにしても、本制度における外国人労働者の受入れが適正なものとなるよう、関係省庁連携して制度の運用に努めてまいりたいと考えています。
○山添拓君 今の点がまさに白紙委任だと言われているところなんですよね。検討中だ、他の分野で行っていることが参考になるなら参考にしてくれ、これでは議論の土台がありません。それによって適正さが担保されるという保証もどこにもないじゃありませんか。だから私たちは、こんな状況で法案審議を進めるべきじゃない、採決などもってのほかだということを言ってきたわけです。
 この受入事業の受入れ状況実態把握調査の中には、驚くべき事実もありました。特例制度の下でも失踪者がいるということです。
 資料の五ページ、調査対象の特定監理団体の四割近くで退職、帰国した者がいたと報告がありますが、その中で、退職、帰国の理由のうち二八・二%が行方不明となっています。大臣が全体として適正だと言う中での行方不明です。これらはいかなる事情によるものなのか、調査されていますか。
○国務大臣(石井啓一君) 御指摘の外国人建設就労者受入事業に係ります実態把握調査は、各受入れ企業等に対しまして外国人建設就労者の就労状況についてアンケート調査をしているものであります。
 本調査におきましては、失踪者の有無については回答を求めておりますが、失踪者の発生理由については調査をしておりません。
 なお、国土交通省におきましては、失踪者が発生した際には報告を受けることになっておりまして、この報告がなされた企業については巡回指導時における企業や就労者の状況を再確認をし、複数の特定監理団体に行方不明者発生の背景等についても聞き取りを行っているところであります。
 一方、失踪者の発生状況を踏まえまして、昨年末には外国人建設就労者の受入れを行っている特定監理団体に対しまして、監理の更なる適正化を求める通知を発出をいたしました。また、外国人建設就労者受入事業の適正な実施について関係者間で協議を行う適正監理推進協議会におきましても現状を共有をいたしまして、必要な対策を検討することとしております。
○山添拓君 いろいろお答えになりましたけど、要するに調査を行っていないんですね。
 時間がなくなってしまいましたのでもう終わるんですけれども、これ見ていただくと、健康管理、健康上の問題を理由にする人が一二・八%、それから賃金、手当に関することも二・六%、これらも不本意な帰国であることが十分想定されるわけです。技能実習を働き抜いた外国人が今特例制度の下で就労しています。それでもなお行方不明、人権侵害があり得る、これは重大だということを指摘して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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