山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

貨物自動車運送事業法改正法案について質問

要約
  • その他 国交委員会で、荷主対策の強化や標準運賃の告示制度が盛り込まれた貨物自動車運送事業法案について質問。働き方改革の残業規制が自動車運送業に適用される2023年までの時限措置で、それまでに荷主による単価・納期設定から生じる問題が解消される保証はなく、引き続きの検討を要する問題と述べました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本法案には、荷主対策の強化や標準的な運賃の告示制度が盛り込まれております。トラック運転者の深刻な長時間労働、深夜勤務、あるいは低過ぎる単価設定の契約が荷主の関与の下で行われていることは、私も当委員会で指摘してきたことであります。規制の強化には賛同するものです。
資料をお配りしております。委員の皆さんは御承知のとおりのことかと思いますが、道路貨物運送業における二〇一七年度の脳・心臓疾患の労災認定件数は八十五件、うち死亡が三十七件で、業種別の中で認定件数としては飛び抜けて多くなっています。
総務省の就業構造基本調査によれば、週の労働時間が六十時間以上の雇用者割合は、全体の平均が一一・八%であるのに対し、自動車運転従事者は三七・三%、過労死が多い背景にはトラック運転者の長時間労働があります。
ところが、通常国会で安倍政権が成立させたいわゆる働き方改革関連法では、自動車運送業については残業時間の上限規制の適用を五年先送りとしました。しかも、年九百六十時間まで時間外労働を認めるものとなっています。
厚生労働省に確認しますが、これは年九百六十時間の規制だけで、一か月当たりの上限規制というものはないと、したがって、三六協定の中で例えば月百五十時間、こう定めることも可能なものとなっていると、こういうことでよろしいでしょうか。
○政府参考人(松本貴久君) お答えいたします。
働き方改革関連法において、自動車運転の業務については、平成三十六年四月一日以降、年九百六十時間という時間外労働の上限規制が適用されることとなります。
時間外労働の上限規制の一般則においては、委員今御指摘のように、特別条項を締結する際に、時間外・休日労働を一か月について百時間未満とすることや、時間外労働が月四十五時間以上となる月数は六か月以内に限ることといった規定がございますけれども、自動車の運転の業務についてはこれらの規定について適用されないこととなっております。
○山添拓君 罰則もないんですね。
年間九百六十時間というのは、一年を通じて月八十時間の時間外労働が合法だということであります。ですから、五年たっても、私から見れば青天井そのもの、これが適用されれば過労死がなくなるという保証はどこにもないわけです。もちろん物流の確保ということが非常に大事ですけれども、過労死を強いるような事態が許されないこともまた同じく強調しなければならないことだと思います。
本法案の国土交通大臣による荷主への働きかけの規定や標準運賃の告示制度については、この上限規制の施行時期に合わせる形で、二〇二三年度、平成三十五年度までの時限措置とされています。
荷主への働きかけの規定は、トラック事業者が法律や命令に違反する原因となるおそれのある行為を荷主がしている疑いがある場合、荷主に改善を要求したり、勧告、公表したりするというものでありますが、附則第一条の二第一項で定める違反原因行為、御説明の資料の中ではトラック事業者の違反原因となるおそれのある行為、これは具体的にはどのような行為が考えられるでしょうか、発議者の方にお願いします。
○衆議院議員(盛山正仁君) 今、山添委員が御指摘されました点でございますけれども、今般の改正によって新設される附則第一条の二の第一項におきましては、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反する原因となるおそれのある行為を違反原因行為と定義しているところであります。
同条におきまして、この違反原因行為を荷主がしている疑いがある場合には、国土交通大臣がまず関係行政機関の長に当該荷主の情報を共有するとともに、そして、関係行政機関の長と協力して、当該荷主の理解を得るための働きかけや、さらに、疑いが強まった場合における要請、勧告、公表することができるとした上で、独占禁止法違反の疑いがある場合には公正取引委員会に通知するものとするということとしております。
この違反原因行為に該当し得る荷主の行為としては、例えば、過労運転防止義務違反を招くおそれがある行為として、荷主の荷さばき場において荷主都合による長時間の荷待ち時間を恒常的に発生させているような行為、過積載運行を招くおそれがある行為として、積込み直前に貨物量を増やすように指示するような行為、最高速度違反を招くおそれがある行為として、適切な運行では間に合わない到着時刻が指定されるような行為といったものがあると我々考えているところでございます。
○山添拓君 ありがとうございます。具体的に御紹介いただきました。
そうした事例は、これ、上限規制が適用された後でも十分発生し得るだろうと私は思います。
もう一方の附則第一条の三に定める標準的な運賃の告示制度、これを導入する趣旨は何でしょうか。
○衆議院議員(津村啓介君) 先ほどからるる御議論ございますけれども、背景にはこの業界の構造的な問題がこれはあるんだというふうに思います。
トラック運送業界は、先ほど六万数千社というお話がありましたが、中小事業者が大半でありますが、他方で、荷主さんも様々な荷主さんいらっしゃるとは思うんですが、比較的この企業規模が大きいケースも多く見られるわけで、どうしても価格交渉においてトラック業界の皆さんが要求をのまなきゃいけないといいますか、値下げ圧力にさらされているという業界の構造があるかと思います。
そうした意味におきまして、適正な原価、そして適正な利潤、こうしたものを基準とする標準的な運賃の告示制度を導入すれば、これが標準なんだということがその価格交渉の中で示せるわけですから、荷主さんからの不当な値下げ圧力を回避するための一つの助けになるかと思っております。
○山添拓君 荷主や元請による優越的地位の濫用など不公正取引が発生すると。そして、こうした事例もまた上限規制が導入されれば皆無になるというわけでもないだろうと私は思っております。
もちろん、上限規制のない五年後までの間にも対策が必要であり、今御紹介いただいた規制がトラック運転者の労働条件の改善のために有効に機能し得ることもまた確かだろうと思います。しかし、上限規制が施行されれば、それ以後は、荷主による買いたたき、不当に廉価な賃金単価の設定、無理な納期設定、これらを原因とする過積載や長時間運転あるいはスピード違反、こうした事実上の強要がなくなる、その保証もないだろうと思います。
本法案では、二つの規制を二〇二三年度、平成三十五年度までの時限措置としておりますが、その効果を検証しつつ、二〇二四年度以降もその必要性を検討することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(盛山正仁君) 先ほど来委員からもお話が出ておりますとおり、働き方改革関連法、これの期限、そして、それに向けて今回のこの法案を我々提案しているところでございます。
そこのところを是非御理解賜りたいと思うわけでございますけれども、この荷主による違反原因行為への対処及び標準的な運賃の制度は、この貨物自動車運送事業についての、働き方改革関連法の施行までに緊急にトラックドライバーの労働条件を改善する必要があるということで、同法の施行日前日であります平成三十六年三月三十一日までの時限措置として私たち提案をしているわけでございます。まずは、この期日までの間に、今般の法改正の趣旨を踏まえた運用がしっかりなされ、トラックドライバーの労働条件の改善が図られるものと期待をしているところでございます。
しかしながら、委員御指摘のとおり、本法案の効果を、どの時点でというのは今後いろいろ検討しなければならないと思いますけれども、貨物自動車運送事業者と荷主との取引関係の実態、あるいはトラックドライバーの労働条件の改善の状況など、こういった諸事情を踏まえまして、働き方改革法が施行された平成三十六年度以降、更なる措置の必要性があれば、そこについてまた検討することもあり得るものというふうに考えておりますが、まずは、現時点では平成三十五年度中に達成を目指したいというものでございます。
○山添拓君 状況を踏まえ検討していくということも御指摘いただきました。
本法案の成立、トラック協会を始め事業者と労働組合の双方が求めております。労働組合などからは、改善基準告示の法制化、罰則による実効性の確保、基準の強化についても繰り返し要求をされているところです。国会での審議も含めてこれらを直ちに行っていくべきことを指摘をし、また、この法案の実効性が担保されていくことを期待もして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。

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