山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

建築士法改正法案について質問

要約
  • 国交委員会で建築士人材の安定的な確保を図ろうとする建築士法改正法案に関連して質問。KYBなどの免震・制震オイルダンパー検査のデータ改ざん問題について国交省の責任を質した上で、完成検査を製造会社に任せる国交大臣の認定制度の仕組みそのものに問題があるとし、第三者チェックを提案しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 建築士試験の受験機会の拡大により、建築士人材の安定的な確保を図ろうとするものだと伺っております。
 私も、関係する団体の皆さんからもお話を伺い、受験者数の急減、高齢化の実態をお聞きしました。受験者数そのものがこの十年で四割減少し、合格者も三割以上減少しているとのことでありました。試験も大変難しく、実務に就いてからではまとまった勉強時間を確保するのが難しい、そこで年間百万円など予備校にお金を払って対策をするんだと聞きました。
 本法案で、受験の際には実務要件を必要とせず、大学などを卒業してすぐ、あるいは大学院在学中の受験を可能にするなど受験機会を増やし、若手に間口を広げようとするものだと認識しております。
 そこで、改めて伺いますが、一級建築士は建築物の安全性を確保する上でどのような役割を担う存在なのか、一級建築士が不足するとどのような不都合が生じるのか、基本的な点ですが、御答弁いただけますでしょうか。
○衆議院議員(盛山正仁君) 委員がよく御案内のとおり、一級建築士は、複雑で高度な技術を要する全ての建築物について、その設計、工事が設計図書どおりに実施されているかを確認する工事監理などを行うことができる国家資格でございます。安全、安心で良質な建築物の設計、工事監理等を通じまして、我が国の建築物の質の向上、安全性の確保全般について大変重要な役割を担う存在であると認識しております。
 ところが、先ほど増子委員の御質問の中にもありましたとおり、今、建築士事務所に所属をする一級建築士は、今年の四月の時点では、二十歳代はたったの一%、三十歳代は一一%となっております。それに対しまして六十歳以上は約四〇%となるなど高齢化が進んでおりますので、このままでありますと、将来の一級建築士の不足が明らかであると予見されているところでございます。
 先ほど御説明したとおりでございますが、一級建築士が不足をした場合、一級建築士にのみ設計、工事監理が認められている大規模で複雑、高度な技術を要する建築物の供給が今後困難になるとともに、我が国の建築物の安全性の確保等が困難になることが危惧されているところでございます。
○山添拓君 大変重要な役割を担う職業だということで、能力と適性を備えた担い手を確保していくことが国民的な課題であろうと思います。本法案により若手の受験者が増えることを願いますし、同時に、発注者からの無理な注文による長時間労働や、あるいは仕事内容に見合った待遇の確保など、働く環境の改善が同時に不可欠だということも指摘をしたいと思います。
 ところで、その建築士が職務を行う上で見過ごすことのできない重大な問題がこの間生じていると思います。KYBや川金ホールディングスによる免震・制振オイルダンパーの検査データの改ざん事案であります。大臣認定に適合していない、あるいは顧客との契約で約束した基準に適合していない免震・制振ダンパー、免震では八百八十五件、制振では七十九件、合計九百六十四件が確認されていると伺っております。
 ただ、これは今回初めてではなくて、免震材料という意味では二〇一五年の東洋ゴムの免震ゴム不正がありました。この際は、不正な申請書を提出し、建築基準法に基づく性能評価、大臣認定を受けた大臣認定の不正取得、あるいは、大臣認定の内容に適合しない製品であるにもかかわらず、性能値を改ざんして製造、出荷したという事案でありました。
 建築基準法三十七条で、建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要な部分に使用する建築材料は、JIS等の規格又は国交大臣の認定を受けたものでなければならないとされております。免震材料にはJISの規格がありませんので、全て大臣認定を受けることになっています。その大臣認定での不正です。
 国交省は、東洋ゴムの不正事案の後、免震材料に関する第三者委員会を設置し、この委員会は二〇一五年七月二十九日付けで報告書を発表しました。その二十一ページには、不正事案の発生原因の一つとして、大臣認定後のフォローが不十分であったと、あるいは二十三ページでは、再発防止策として大臣認定制度の見直しの方向性を論じています。この検討対象の中には、特に免震材料は、安全性に直結し、かつ、検証を行うためには特別な試験装置を要するなど市場では検証がなされない典型的な製品であるため、重点的に再発防止策を講ずべきであると、こうされていたわけです。
 今回の免震ダンパーも、大臣認定を受ける必要のある免震材料でありました。ところが、今年九月までデータが改ざんされた製品が出荷され続けたわけです。
 大臣に伺いたいのですが、これ、なぜ見抜けなかったのか、御答弁をお願いします。
○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省におきましては、平成二十七年三月の免震ゴムに係る不適切事案を踏まえまして、平成二十八年より、免震材料の大臣認定の取得段階におきまして製造部門から独立をした品質管理推進責任者が選任されていることなど、品質管理に関する基準の適合を求めるとともに、事業者が大臣認定取得後に市場に出荷する製品については、平成二十七年以降、免震ダンパーについてもサンプル調査を実施をしてまいりました。
 しかしながら、今回の事案に係る大臣認定は全て平成二十七年以前に取得をされており、また、サンプル調査も東洋ゴム事案を踏まえまして免震ゴム等を中心に行ってきたため、今回の事案が発覚したKYB等につきましては未実施でありました。
 今回の事案を防止できなかったことは極めて遺憾でありまして、二度とこうした事態が生じないよう再発防止を図ってまいりたいと考えております。
○山添拓君 ゴムだけでなく免震材料全般について重点的な再発防止策を求められていたにもかかわらず、今回の事態を引き起こしたというのは、やっぱり第三者委員会の報告書をどう受け止めていたのかということが問われる事態ではないかと思います。
 そもそも、大臣認定制度というのは、特殊な建築材料や製造方法について評価員による性能評価とその認定から成るものです。提出された試験データやマニュアルが基準をクリアしていれば、その後に製造される個体も全て基準をクリアしている、こうみなす仕組みであります。今御指摘のあった品質管理推進責任者が社内規格に照らして監督しますけれども、あくまでも企業任せだと。製品の出荷後に不正が発覚をすれば、東洋ゴムであれ今回の免震ダンパーであれ立入検査を行うわけですが、不正を事前に防ぐ手段がないと言って差し支えないと思います。
 大臣認定というお墨付きを与える以上は、ユーザーとしては国交省の太鼓判が押されたものと考えるのが普通であります。しかし、実際には、公的な、あるいは第三者の目は全く入っていない個体、製品が出荷される。完成検査を製造会社に任せるという仕組みそのものの抱える問題であり、これは改めるべきではないかと考えます。
 少なくとも第三者が事前にチェックするような仕組みをつくる、その検討を進めるべきではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省におきましては、事業者に対しまして、事案発覚後直ちに所有者と関係者への丁寧な説明、徹底した原因究明及び再発防止策の報告等を指示するとともに、交換用の製品など出荷するダンパーの全てについて第三者による立会いの下で出荷時検査を実施をさせております。この措置を永続的に実施することは困難が伴うことから、実施の継続性なども考慮した再発防止策を検討する必要があると考えております。
 国土交通省におきましては、専門的見地から国土交通省に対して再発防止策等について提言を行っていただくことを目的といたしまして、外部有識者委員会を設置したところであります。事業者が設置をした外部調査委員会等による原因究明の取りまとめ状況、大臣認定を取得した免震材料製造事業者の品質管理体制に関する実態調査の状況なども踏まえつつ検討を進め、年度内をめどに報告を取りまとめていただく予定であります。
 国土交通省といたしましては、引き続き所有者等の安心の確保に向けて各社を指導するとともに、外部有識者委員会よりいただいた提言を踏まえまして、再発防止に向け必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
○山添拓君 もう時間ですのでまとめますけれども、大地震が頻発をしております。建築物の安全性を確保する検査体制の抜本的な改善が必要であり、それが建築士がその職務を全うできる前提でもあるということを指摘して、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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