山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2019年・第200臨時国会

法務委員会で業績連動報酬の問題について追及。冒頭、桜を見る会についても追及。

要約
  • 法務委員会で業績連動報酬を追及 米国でモラルハザードが指摘されている仕組みですが、この日本でも。 政府出資の産業革新機構には安倍内閣発足直後に1040億円が追加出資され、 2014年度に3億円、2018年度には21億円の業績連動報酬が役員に支払われました。 公的資金が原資のモラルハザードと言えます。 政府出資のファンドへの高額報酬は批判をあび、産業革新機構を引き継いだ産業革新投資機構は業績連動報酬を廃止。 固定給と特別手当のみに減額したのです。 山添議員の指摘に対して、森まさこ法務大臣は「モラルハザードの懸念は承知しており、役員報酬を透明化する措置が必要」と答弁。 会社の業績は役員だけでは築けません。従業員の努力、蓄積、取引先や顧客の信頼を築いた結果等による成果です。 しかし、役員報酬と従業員給与との格差は拡大し、ユニクロではその差1000倍以上。 役員を強欲に駆り立てる業績連動報酬を改め、従業員給与との格差是正をすすめるべきです。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本日は会社法の改定案の質疑ですが、反社会的勢力の問題が企業のコンプライアンスにも関わる問題ですので、冒頭質問をさせていただきます。
午前中、真山議員の質疑の中でも出てまいりましたが、反社会的勢力を明記した二〇〇七年の犯罪対策閣僚会議の指針は、企業が反社会的勢力の不当な要求に毅然と対処し、その被害を防止するために、各企業が反社会的勢力の情報をデータベース化し、被害防止のために利用することが極めて重要かつ必要であると、こう書いております。
具体的には、他の目的のために取得をした反社会的勢力の個人情報を被害防止のために利用することは、これは本人の同意がなくても可能だと。また、暴力追放運動推進センターなどの第三者に提供することも、これは本人の同意なく可能だとされております。
法務省は企業にこういう対応を求めていると、大臣、これ間違いないですか。
○国務大臣(森まさこ君) 犯罪対策閣僚会議の指針において決まっております。
○山添拓君 今のとおりの内容が、一般企業に対してすらといいますか、一般企業に対しても求めているということなんですね。
そこで、今日は内閣府においでいただいております。桜を見る会のような公的行事に反社会的勢力が招待され、あるいは出席していたとすれば、当然その情報は政府としても把握をし、必要な対処を行うために利用したり、あるいは関係機関へ提供したりしていたと、こういうことですね。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えいたします。
桜を見る会の招待者についてのお尋ねだと理解してございますが、この会のその個々の招待者につきましては、招待されたかどうかも含めまして、個人に関する情報であるため、従来からお答えを差し控えさせていただいているところございます。
一方で、その会につきましては、様々な御意見をいただいているところでございます。今後、予算や招待人数を含めた全般的な見直しを幅広く意見を聞きながら行ってまいりたいと考えております。
○山添拓君 個人情報だからというのは理由にならないというのが指針の考えなんですよ。
官房長、企業に対しては情報の把握や提供を求めながら、政府は何もしなくてもよい、こういうことですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) 繰り返しで恐縮でございますが、個々の招待者につきましては、招待されたかどうかも含めまして、個人に関する情報であるため、従来からお答えを差し控えさせていただいております。
○山添拓君 今年の招待者に含まれていたのかいなかったのか、そのことについて警察に情報を提供していたのかどうか、これはいかがですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えをいたします。
個々の招待者に関するお尋ねと理解しております。招待されたかどうかも含めまして、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
○山添拓君 昨日、予算委員会の理事懇では、今年の招待者について、そのような情報があったのかどうか、警察と共有したのかどうか、お答えになっていると思います。答弁ください。
○政府参考人(大塚幸寛君) その桜を見る会の招待者名簿につきまして、その何か名簿全体を何か機械的に警察に渡すようなことは行っておりません。ただ、一般論といたしまして、政府として暴力団排除等の公益目的の達成のために必要な場合には、個別に警察に聞くことがあり得るということでございます。
○山添拓君 一般論を聞いているのではありません。今年どうだったかということで、今年は情報提供していないというお答えでありました。ましてや名簿を廃棄済みで確認できないと、こうおっしゃっているんですね。これは政府の態度からしても矛盾するあるまじき事態だと言わなければなりません。
ちなみに、今日は大塚官房長に来ていただきましたので、廃棄したという招待者データについても確認しておきたいと思います。
昨日の本会議で安倍首相は、シンクライアント方式の下でサーバー上のデータが削除され、バックアップ期間、これは最大八週間だと伺いました、これを経過したので復元もできない、こういう答弁でありました。ところが、内閣府がデータを削除した日時は、我が党の宮本徹衆議院議員が資料請求をした五月九日頃と言われております。
少なくとも、それから八週間、二か月程度はこのデータ復元できたということですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) バックアップ期間は最大八週間ということで設けているところでございます。
○山添拓君 はっきり答えてください。その期間中であればデータは復元できたんですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) バックアップの保管期間内であれば復元は可能だというふうに考えております。
○山添拓君 これ、重大な問題だと思うんですね。
宮本議員は、五月十三日の決算委員会や二十一日の財務金融委員会で資料の廃棄について具体的に指摘をしています。事務所からも再三にわたって内閣府に説明を求めておりました。復元が可能であるにもかかわらず、その事実を知らせず、いたずらにバックアップ期間をも経過させたというのが今の御説明であります。これは意図的な隠蔽と言われても仕方ないことであります。
内閣府に改めてお願いしますが、いつ削除をしたのか、データをいつ削除したのか、正確に確認いただきたいと思います。いかがですか。
○政府参考人(大塚幸寛君) データの削除につきましては、必ずしもきちんとした記録が残っておりませんので、五月九日頃というふうにお答えしているところでございます。
ただ、いずれにいたしましても、この名簿の廃棄あるいは電子媒体の削除、これは元々の公文書管理のガイドライン等々に基づきました、あらかじめ定められたルールと手続に従って削除した文書でございまして、その文書を復元する必要はないものと考えております。
○山添拓君 ここまで問題になって、復元する必要がないなんてよく言えたものだと思うんですよね。
これについては改めて、場所を改めて質疑をいたしますけれども、必ず復元作業をしていただきたいと。シンクライアント方式であっても、サーバー上のデータが全部なくなってしまって復元できないなんてことはないんだと、もう昨日から繰り返しいろんな方がネット上でも指摘をされております。改めてお願いをしたいと思います。
この点を指摘をしまして、会社法の改定案について伺います。内閣府については、以上で結構ですので、御退席いただいて構いません。
取締役の報酬として株式やストックオプションを付与する、いわゆる業績連動報酬を拡大しようとしております。この方針は二〇一五年の日本再興戦略で位置付けられたものであり、経産省が「「攻めの経営」を促す役員報酬」と題して方針を示しています。
資料をお配りしておりますが、五ページ、六ページ、我が国は欧米諸国と比較して基本報酬の割合が高く、業績連動型のインセンティブ報酬が少ないとされております。
経産省に伺いますけれども、業績連動型の報酬が低いということは何か問題があるんですか。
○委員長(竹谷とし子君) 大塚大臣官房長は御退席いただいて結構でございます。
○政府参考人(中原裕彦君) お答え申し上げます。
業績連動報酬の導入につきましては、経営陣に中長期の企業価値の向上のインセンティブを付与するために有効な手段であるものというふうに認識をさせていただいてございます。コーポレートガバナンス・コードにおきましても、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきというふうにされてございます。
経済産業省といたしましても、こうした我が国企業における業績連動報酬の導入がこうした趣旨にのっとって円滑にされるように、こうした手引などを策定しまして、持続的な成長につながるということを期待しているところでございます。
○山添拓君 経産省、インセンティブ報酬を導入したことによって企業の業績が向上したという、その検証結果でもあるんですか。
○政府参考人(中原裕彦君) 手引を作成する段階において定量的に何か具体的なその検証結果というものをお示ししているわけではございませんけれども、政府におきまして推進しているコーポレートガバナンス・コード、あるいはコーポレートガバナンスの分野におきます議論におきまして、中長期的な業績と連動する割合とか、現金報酬と自社株報酬との割合を適切にしながら持続的な成長につながるように、こうした導入を努めてまいりたいということでございます。
○山添拓君 それは希望的な観測であって、定量的な検証結果はないということなんですね。
アメリカの経済学者のサミュエル・ボウルズ氏は、経済的インセンティブと道徳的行動との間のある種の負の相乗効果を示唆している、こういう実験結果に基づいた指摘もされております。むしろ、マイナスの効果が指摘されていることを認識すべきであります。
資料の三ページから四ページには東京高裁で部総括判事を務めた須藤典明氏の論文を載せております。
二〇〇八年のリーマン・ショックの際、アメリカのAIG保険がハイリスク商品に膨大な投資をしていたために破綻の危機に陥りました。アメリカ政府は、保険に加入していた市民が大変多かったものですから、その市民を保護するために、AIGに千七百三十億ドル、一ドル百円としますと十七兆三千億円もの政府資金で救済を図りました。ところが、AIGは、支援によって破綻を免れた途端に、経営幹部に総額一億六千五百万ドル、百六十五億円ものボーナスを支払ったんですね。百万ドル、一億円以上のボーナスを受け取った幹部が七十三人もいたといいます。あるいは、同じく経営不振に陥ったアメリカン航空は、倒産回避を名目に従業員に三百四十億円もの給与カットを求めました。組合がやむを得ずこれを受け入れますと、経営陣は、何と懸案だった大幅な給与カットを成功させたといって二百億円ものボーナスを受け取ったんですね。
大臣、伺いますけれども、業績連動報酬というのはこうしたモラルハザードを招き得る、こういう認識をお持ちでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 業績連動報酬が取締役のモラルハザードを引き起こすおそれがあるのではないかといった御懸念があることは承知しております。改正法案においては、業績連動報酬が取締役にとって適切なインセンティブとして機能するようになるよう、上場会社等の取締役会において取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方針を定めなければならないとしまして、取締役の報酬の決定手続に関する透明性を向上させる措置を講じておりますので、御懸念に対応するものになっておると思います。
もっとも、取締役の報酬等に関する開示の在り方については、これまでも国会における審議の中で山添委員を始めとした様々な御指摘をいただいておるところでございますので、今後も実務の動向を注視しながら必要な検討をしてまいりたいと考えております。
○山添拓君 労働者や取引先はもちろん、株主にとっても、取締役が目先の利益にとらわれるということは、これは長期的には決して良い影響をもたらすとは限らない問題であります。批判があることを認識しているという答弁でありましたが、先日、大久保拓也参考人からも、その対策として、各会社で報酬の付与の仕方、ストックオプションの行使条件の設定などを行わせ、報酬の開示を充実させることが必要だと指摘されていたことも言及しておきたいと思います。
日本でも既にモラルハザードは起きているんですね。昨年来、政府が出資するファンドである産業革新投資機構、JIC取締役の高額報酬が問題とされてきました。その前身である産業革新機構、INCJの時代にも高額報酬が用意され、退職時に成功報酬で最大七億円、さらに業績連動報酬もありました。二〇一二年度には政府予算で二百億円、その後、安倍政権になってからの補正予算で一千四十億円が追加出資をされ、これを用いて投資をした結果黒字になったということで、二〇一四年度に三億円が業績連動報酬として支払われています。二〇一八年度には、業績連動報酬の額は二十一億円。公的資金が投入されている実質的な官営事業で黒字が出ると高額報酬、これはAIGと同じ、同様の事態であります。
JICは、先日、新たな報酬基準を公表し、固定給とボーナスのような特別手当にとどめて、業績連動報酬は廃止することとしております。
経産省、伺いますが、なぜ廃止になったんですか。
○政府参考人(中原裕彦君) お答え申し上げます。
JICの経営陣の業務は主として認可ファンドを監督する立場ということでありますなど、INCJとは仕組みが変わるため、その両者の経営陣の報酬を単純に比較することは難しいとは存じております。
なお、経済産業省としましては、この報酬水準につきましては、今年三月に経済産業省が公表しました、今後の産業革新投資機構(JIC)の運営体制等についてにおいてお示しした考え方に沿ったものでありまして、他の公的機関の経営陣の報酬を踏まえて適切なものであろうというふうに考えているところでございます。
○山添拓君 いろいろおっしゃるんですけど、やっぱりモラルハザードの批判を受けたものだと思うんですね。欧米では、CEOなどへの高額報酬は社会的な格差拡大の大きな要因とされております。日本でも、取締役と労働者の収入格差の是正こそが求められます。
資料の一枚目、二枚目、東洋経済の、社員と役員の年収格差が大きいトップ五百社、二ページ目は上位の五十です。皆さん御存じの会社もたくさんあるかと思います。
二〇一八年の一位はPC向けゲームのネクソンです。役員の平均報酬は三億三千百三十三万円、従業員平均年収五百五十六万円の約六十倍です。代表取締役の報酬は七億七千二百万円で、従業員の約百三十九倍という驚くべき数字です。六位のファーストリテイリング、ユニクロですね、ここは社内取締役は柳井正氏のみで、役員報酬は二億四千万円、従業員の平均七百九十一万円に対して格差は三十倍です。ただ、柳井氏は、このほかに配当収入で八十億円以上得ておりますので、それとの比較では格差は一千倍以上ということになります。
役員報酬の平均が一億円以上の企業が五十七社とされています。従業員と役員の平均に十倍以上の格差がある会社は百三十三社だったといいます。これ、非正規社員との比較では更に大きくなるだろうと思います。
大臣に伺いますけれども、業績連動報酬に言う業績というのは何ですか。これ、取締役が一人で築くものなんですか。
○国務大臣(森まさこ君) 業績についてのお尋ねがありましたが、もちろん取締役一人で築くものではなく、取締役が業務の経営方針を定めた上で株主、従業員を始めとした会社全体により業績というものが積み上げられるというふうに理解しております。
○山添拓君 私もそう思います。経営陣がどれだけ優れた手腕を持っていたとしても、それだけで利益が出たり、業績が改善したりするわけではないだろうと思います。業績が上がるのは、労働者の努力があり、長年蓄積されたノウハウや信用や取引先の協力があってこそではないでしょうか。業績連動だといって、業績が少しでも上向きになれば取締役の報酬が上がるという仕組みはこれ本当に妥当なのか、これは大いに疑問だと私は考えます。
さらに、改定案は、ストックオプションについて取締役を優遇するものとなっております。ストックオプションというのは、職務執行の対価として株式を受ける、受け取る権利のことですけれども、権利を行使して実際に株式を受け取る際には出資が必要とされてきました。この出資も不要にするということです。
財務省は、二〇一七年度以降、業績連動型の報酬について優遇税制を取ってきました。本当は質問するつもりでしたが、時間がありませんので、経産省に伺いたいと思うんですが、二〇一八年度の税制改正要望では、税制適格ストックオプションによる減収額は年間幾らと試算しているでしょうか。また、八年間の推計ではいかがですか。
○政府参考人(中原裕彦君) お答え申し上げます。
経済産業省は、平成三十一年度の税制改正要望におきまして、ストックオプション税制の拡充を要求させていただきました。具体的には、付与対象者の範囲、それから権利行使期間、年間権利行使限度額の要件について制限を緩和するというものでございます。
経済産業省としましては、この三つの要求に当たって、平成三十一年度の税制改正、租税特別措置の要望事項として十三億五千二百万円の減収見込額を想定をしていたところでございます。
○山添拓君 年間とそれから八年間の計画、これいずれもお答えいただきたいんですが。
○委員長(竹谷とし子君) 答弁可能ですか。
○政府参考人(中原裕彦君) 後刻、ちょっと確認をして、御報告申し上げます。済みません。
○山添拓君 ちょっとこれは通告してあるものですから答えていただきたい。
速記を止めてください。
○委員長(竹谷とし子君) 速記を止めてください。
〔午後一時五十分速記中止〕
〔午後二時二分速記開始〕
○委員長(竹谷とし子君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(中原裕彦君) 失礼申し上げました。お答え申し上げます。
八年間で四百九十二億、約四百九十二億ということでございます。
○山添拓君 ありがとうございました。
実績がどうなったかは分かんないです、要望ですので、これぐらいの推計だという数字ですけれども。私が申し上げたかったのは、業績を上げている企業の役員についてこれだけの税収の穴を空けるような仕組みを取る必要があるのかと、こういう問題でありました。
こうして報酬においては優遇を図る一方で、会社との利益相反性が強い仕組みを導入しようとしております。その一つが補償契約であります。役員が損害賠償請求をされた場合に、会社がその責任額や訴訟費用を補償するものであります。
経産省が事務局を務めたコーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会、その解釈指針では、補償の要件として、職務を行うについて悪意又は重過失がないことを要件とすると書かれております。現行法の下でも、この補償契約を可能にするための要件として、悪意、重過失がないことを要件とするんだと。
ところが、法案では、衆議院で前川拓郎参考人が指摘していますように、いわゆる防御費用、弁護士費用などについて、役員に悪意又は重過失がある場合でも補償が認められることとなっております。会社補償制度は、優秀な人材の確保や、役員が賠償責任を恐れて職務執行が過度に萎縮することのないようにという趣旨で設けられます。しかし、そもそも悪意又は重過失、これ重過失といっても悪意と同視すべき重過失であります、こういうものが認められる役員は会社が確保しなければならないような優秀な人材と言えるのかと疑問が呈されております。
悪意、重過失でも補償が認められるのであれば、違法行為に手を染めてでも目先の利益を上げようとする誘惑を引き起こし、職務の適正性が損なわれるという指摘、その懸念は、この法案では払拭されないんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(森まさこ君) 防御費用は訴訟等の進行過程で必要となるわけでございますが、その時点では役員等に悪意又は重大な過失が認められるか否かを判断することは通常は難しく、当該役員等が適切な防御活動を行うことができるように、これに要する費用を株式会社が負担することが株式会社の損害の拡大の抑止等につながり、株式会社の利益にもなり得ると考えられます。
また、仮に役員等に悪意又は重大な過失があるときであっても、通常要する範囲内の防御費用であれば、これを補償の対象に含めたとしても、通常は役員等の職務の適正性を害するおそれが高いとまでは言うことができないと考えられます。
そこで、改正法案では、いわゆる防御費用を補償することができることとしております。
○山添拓君 私は、今の御説明は、悪意、重過失が事後的に確定をしても補償の対象としていく、そのことの必要性や許容性までを説明する理由にはなっていないと思います。
前川参考人は、談合やカルテル、違法な政治献金、製品の性能偽装などに知って関与した取締役は、自らの私的な利益を図る目的ではないんだと、むしろ目先の会社の利益を図るために長期にわたる会社の利益を犠牲にし、法令違反を行ってきたと指摘をされております。
ですから、こういう自分の利益を図るためではなく会社の利益のためを思って、しかし、それでも違法行為に踏み出すと、だからこそ違法行為に踏み出す、こういうモラルハザードをこの規定では防げないんじゃないかと思いますが、大臣、最後にいかがですか。
○国務大臣(森まさこ君) もっとも、役員等が不当な目的、今いろいろとおっしゃいましたけど、不当な目的で職務を執行していたような場合、事後的のことをおっしゃいましたけれども、改正法案は、事後に、当該役員が自己又は第三者の不正な利益を図り、又は当該株式会社に損害を加える目的で職務を執行していることを知った場合には、当該役員等に対し、補償した金額に相当する金銭の返還を請求することができるものとしております。
○山添拓君 時間が参りましたので、これで質疑を終わらなければなりませんが、アメリカでは訴訟費用が高額で個人が負担し切れない、だから導入されたものなんですね。専ら外国の経営者や機関投資家の求めに応じた法整備でありますし、資料の七ページにお示ししておりますように、日本の経済界も積極的に賛成とはしておりません。日本で導入する必要はないということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。

 
○山添拓君 日本共産党を代表し、会社法改定案及び関係法律の整備等に関する法律案に反対の討論を行います。
以下、反対理由を述べます。
第一は、株主提案権の制限についてです。
株主提案権の濫用事例はごくまれであること、数のみをもって濫用とみなされるわけではないことが審議を通じても明らかになりました。民法の権利濫用法理により解決が図られており、上限を十とすべき立法事実がありません。株主提案権は株主総会の形骸化を防ぎ、会社と株主、株主相互間のコミュニケーションを促進する目的で導入されたものであり、立法によるいたずらな制限は制度趣旨に反します。
また、議決権行使書面の閲覧を制限する規定についても、権利濫用の実例が示されておりません。謄写請求について会社がコピーや撮影を禁止するなど過度に制限している実態があり、こうした問題こそ調査し、改めるべきです。
第二は、取締役の報酬に関わる問題です。
改定案は、取締役への株式報酬の無償発行を可能とし、ストックオプションの権利行使に際して出資を不要とするなど資本充実の原則に対する重大な例外を設け、業績連動報酬の拡大を促そうとしています。しかし、業績連動報酬が積極的に活用される欧米では、目先の高額報酬のために業績向上を演出するなどモラルハザードが指摘されており、質疑の中で政府もその懸念を認めました。業績は役員の手腕のみがもたらすのではなく、労働者や長年のノウハウと信用、取引先の協力などの蓄積が支えています。本来求められるのは、役員の高額報酬ではなく、労働者との格差の是正というべきです。
また、改定案には、法制審で議論されていた役員報酬の個別開示、代表取締役への再一任の制限は経済界の反対で盛り込まれていません。透明化の措置は不十分です。
第三は、取締役の責任を過度に軽減する会社補償契約、DアンドO保険に関する規定です。取締役が損害賠償請求や株主代表訴訟を提起された際、本来取締役が負うべき訴訟費用や賠償額を会社に肩代わりさせることは利益相反性が顕著であり、取締役の職務の適正性を損なう可能性があります。特に、悪意重過失の取締役についてまで訴訟費用などを補償する必要はありません。
以上、本改定案は、株主総会の効率化に傾き、企業経営の透明化とは程遠く、取締役を短期的な利益追求に駆り立てる一方で、不祥事を防ぐための必要十分な企業統治の在り方を目指すものとも言い難く、反対するものです。

ページ
トップ