山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2020年・第201通常国会

参院本会議で代表質問。

要約
  • 参院本会議で代表質問。 新型コロナ感染症対策について、緊急に医療体制を確保し、自粛と給付はセットで行う方針をと安倍総理に迫りました。 また、外出自粛要請など私権の制限で最も影響を受けるのは社会的弱者で、DVや虐待の相談・支援体制の拡充など、ジェンダーの視点を持った対策をと求めました。

○山添拓君 日本共産党を代表し、新型コロナウイルス感染症対策について、安倍総理に質問します。
 医療崩壊を起こさせないことは、文字どおり喫緊の課題です。
 専門家会議は、おととい、都市部を中心に感染者が急増していると指摘しました。昨日だけで九十七人の感染が確認された東京では、集団感染とともに経路不明の感染者が増加し、爆発的な感染拡大が懸念されています。
 ところが、東京都が確保した約七百床の九割が入院患者で既に埋まり、今後、重症者の増加に耐えられる保証がありません。小池都知事は四千床の確保を目指すと言いますが、容易ではありません。
 専門家会議は、爆発的感染が起こる前に医療供給体制の限度を超える負担が掛かり、医療現場が機能不全に陥ることが予想されると指摘し、東京を始め都市部において、今日明日にでも抜本的な対策を講じることが求められるとしました。事態は緊迫しています。病床数と医療資材、人的体制の確保のために、政府はどのような支援を行いますか。病床確保には、財政的補償が必要であることを強調するものです。
 重症患者の増加に備えて、入院治療の必要のない軽症患者についての対策を早急に検討すべきです。専門家会議は、軽症者には自宅療養以外に施設での宿泊の選択肢も用意すべきとしています。施設の確保や運営に必要となる経費は国の負担とすべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
 この間、都内の開業医から実態を伺ってきました。電話での再診や薬の処方の長期化など、外来受診による感染リスクを抑える努力がなされています。しかし、その結果、診療報酬が落ち込み、今後の経営悪化が心配されています。感染拡大防止と地域医療の維持という観点から、受診抑制に伴う損失に対し特別の手当てが必要と考えます。答弁を求めます。
 PCR検査の遅れが依然として指摘されています。
 総理は、二月二十九日の会見で、ウイルス検出を十五分程度に短縮できる簡易検査機器の開発を進め、三月中の利用開始を目指すとし、かかりつけ医など医師が必要と考える場合には、全ての人が検査を受けられる十分な検査能力を確保すると述べました。現時点で、これらは実現されたのでしょうか。爆発的な感染拡大を防止するために、検査数を抜本的に増やすことがいよいよ必要なのではありませんか。
 また、イギリスを始め海外で導入が進む血液抗体検査について、日本でも実施できるよう早急に取り組むべきです。答弁を求めます。
 SNSなどで、自粛と給付はセットだろうという声が大きく広がっています。
 東京では、カラオケ、ライブハウス、バーやナイトクラブの利用自粛を知事が求めました。ところが、自粛に対する補償が示されず、業者は苦境に立たされています。感染防止のためには店を閉めた方がいい、しかし、閉めれば店が立ち行かない。家賃や水光熱費、従業員の給料など固定費は日々発生し、借金がかさむ中、収入ゼロは避けられず、開店するしかないという声があります。
 自粛要請で協力を求めながら、あとは自己責任というのでは感染防止の実効性も損なわれます。総理、自粛要請は給付や補償とセットで行うべきです。明確にお答えください。
 イベント自粛の要請により、日本の文化芸術は危機に瀕しています。
 八万一千もの公演、イベントが中止や延期となり、その損失は一千七百五十億円と見込まれ、今後更に深刻化します。経済的に力の弱い小規模な劇団、楽団など、存立そのものが危うくなりつつあるとの悲痛な声が上がっています。
 ライブハウスなどで活躍するアーティストや音楽関係者がセーブ・アワ・スペースの名称で政府に助成を求める署名に取り組み、その数は僅か五日で三十万人を超えました。短期間に多くの人が賛同した訴えに総理はどう応えますか。文化の灯が消えてしまっては復活するのは大変というのであれば、一時的な給付金にとどまらず、持続可能な支援が必要ではありませんか。
 新学期を迎え、学生にも深刻な打撃が生じています。
 FREE、高等教育無償化プロジェクトの調査に、バイト先の塾が二週間休業、学費を確保できない、全てのシフトが削除され、生活費だけでなく就活費も困難など、切実な声が寄せられています。
 高い学費と借金になる奨学金に加え、新型コロナの影響で親の収入が激変し、学生はバイトの収入を断たれ、授業開始が延期されても独り暮らしの家賃は発生する、これでは学生生活を続ける見通しが立てられません。
 家計が急変している学生に、緊急に入学金や学費の減額、免除を行うべきです。影響は広範な学生に及びます。この際、学費を引き下げ、全ての学生が安心して学べるようにするべきです。今後、奨学金の返済にも支障を来すおそれがあります。奨学金の返還猶予は柔軟に対応し、奨学生に直ちに周知徹底すべきです。答弁を求めます。
 厚労省の雇用情勢判断から改善という言葉が消えました。雇用の悪化が急速に拡大しています。
 政府は、新型コロナの影響による解雇、雇い止め、派遣切り、内定取消しを、それぞれどのように把握していますか。
 二月の労働力調査によれば、新規求人数は軒並み前年比マイナスとなり、製造業で二五%も落ち込んでいます。働く人の四割を占める非正規労働者について、大量の雇い止め、派遣切りが既に行われています。大企業を中心に雇用の維持を強く求めるべきだと考えますが、総理はどう対応されますか。答弁を求めます。
 日本経済は今、消費増税と新型コロナという二重の打撃で大不況に突入しています。総理は、昨年の増税前、リーマン・ショック級の出来事があれば増税しないと表明していました。今、リーマン・ショック時を上回る経済対策を行うというのなら、消費税減税は必要かつ現実的な選択肢ではありませんか。
 最後に、新型コロナ対策におけるジェンダーの視点の重要性について質問します。
 国連女性機関は、三月二十六日、女性と新型コロナウイルスと題する声明を発表し、国や自治体のコロナ対策が社会的、経済的に女性を取り残したものになっていないかと注意を喚起しています。政府は、その内容をどのようなものとして把握していますか。ジェンダーの視点を持った対策が日本でも求められると考えます。答弁を求めます。
 声明は、外出禁止や行動の自由の制限がDVや女性に対する暴力を誘発する危険を指摘し、被害者のためのホットラインと避難所、シェルターが基本的なサービスとして保障されるよう求めています。
 警察に通報されたDV件数が三六%増加したフランスでは、DV被害から逃れてきた人のために計二万泊分のホテルの部屋を購入するとし、オーストラリアは二十四時間の相談支援体制を強化するために約百億円投入を発表するなど、各国で対策が進んでいます。
 日本のNPO法人、全国女性シェルターネットは、DVや虐待相談窓口での支援の継続を訴える要望書を総理に提出しました。夫が在宅ワークになり、子供も休校でストレスがたまり、夫が家族に身体的な暴力を振るうようになったという声が寄せられているといいます。
 緊急の状況下でもDV、虐待相談窓口の運営を継続する、相談支援体制を拡充するといった対応を政府も進めるべきではありませんか。
 緊急事態宣言が取り沙汰され、外出自粛要請を始め私権の制限が更に広範にわたることが懸念されます。その際、最も影響を受けるのは、女性や子供、障害者など、ふだんから社会的に弱い立場に置かれている人々です。誰一人取り残さないという政治の姿勢を未曽有のコロナ危機への対応でこそ示すべきであることを強調し、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山添拓議員にお答えをいたします。
 新型コロナウイルス感染症に関する医療機関等に対する支援等についてお尋ねがありました。
 感染拡大防止と同時に、国内で感染者数が大幅に増えたときに備え、重症者対策を中心として医療提供体制を強化することは喫緊の課題と考えております。
 現在、治療のために必要な病床としては、感染症指定医療機関の病床を最大限動員し、二万五千床を超える病床を確保しております。また、特定の都道府県で患者数が大幅に増えた場合等に備え、隣県との間で広域搬送のための体制整備を進めているところです。
 人材の確保については、患者数が大幅に増えた場合に備え、都道府県に対して、地域の診療所など一般の医療機関に勤務している医療従事者の派遣や、現在医療機関に勤めていない医師、看護師等の把握と臨時の職務復帰による医療従事者の確保を進めています。
 加えて、基本的対処方針においては、患者が増加し重症者等に対する入院医療の提供に支障を来すおそれがある場合には、入院治療が必要ない軽症者等は自宅で療養し、その際、家族構成等から高齢者や基礎疾患を有する者等への感染のおそれがある場合には、地方公共団体は、軽症者が宿泊施設等での療養を行うなど、家族内感染のリスクを下げるための取組を講じることとしております。
 来週取りまとめる緊急対応策においては、第一の柱として医療提供体制の整備を掲げることとしており、こうした施設の確保も含め、重症者への医療に重点を置く医療提供体制の整備を強力に支援してまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響により事業の継続に支障が生じる医療機関に対しては、独立行政法人福祉医療機構が行う融資について無利子、無担保の優遇等を行っているところであり、今後とも、現場の声を伺いながら医療機関に対する支援を行ってまいります。
 PCR検査の簡易検査機器については、三月中に利用が開始されたところです。また、PCR検査については、四月一日時点で全国で一万件を超える検査能力を確保しているところですが、医師が必要と判断した方が確実に検査を受けられるよう、検査能力を更に高めていくこととしております。
 御指摘の抗体検査については、診療、治療の一環として活用することに伴う一定の課題もあることから、政府として現在、その有用性や使用方法も含め専門家と検討を行っているところです。
 政府の行う自粛要請と損失補償についてお尋ねがありました。
 お尋ねの自粛要請によって生ずる個別の損失に対する補償については、直接の自粛要請の対象となっていない分野においても売上げや発生の減によって甚大な影響が生じていることも勘案すると、政府として様々な事業活動の中で発生する民間事業者や個人の方々の個別の損失を直接補償することは困難です。
 しかしながら、来週取りまとめる経済対策においては、中小・小規模事業者や個人事業主の方々が継続して事業に取り組めるよう、民間金融機関でも無利子の制度融資を受けることができる制度を整えるとともに、特に厳しい状況にある中小・小規模事業者等に対して、事業を持続するための新たな給付金制度も創設してまいります。
 また、今は国難とも呼ぶべき事態にありますが、こういうときだからこそ人々の心を癒やす文化や芸術の力が必要であり、困難にあっても文化の灯は絶対に絶やしてはならないと考えています。自粛等によって冷え込んだ文化芸術を再び盛り上げ、持続的な活動が行われるよう、前例にとらわれることなく思い切った支援策を実行してまいります。
 高等教育における学費や奨学金等についてお尋ねがありました。
 高等教育無償化の新制度等の運用について、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を受けて家計が急変した場合には、それを加味した所得見込みで支援の判定を行うこととはしています。また、入学金や授業料の納付が困難な学生には、それらの納付猶予や減免等を行うよう大学等に対し要請しており、さらに、奨学金の返還についても、返還困難な事情が生じた場合には返還期間を猶予する仕組みなどを整備し、その周知徹底を図ってまいります。
 政府としては、こうした取組を通じて家庭の経済事情にかかわらず子供たちの誰もが自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる社会をつくってまいります。
 雇用維持の要請等についてお尋ねがありました。
 政府としては、厚生労働省において、都道府県労働局や業界団体を通じた情報収集等を通じて、解雇、雇い止め、採用内定の取消し等の状況の把握に日々努めているところです。既に、雇用調整助成金制度の大幅な拡充や強力な資金繰り支援など、事業の継続と雇用の維持のために必要な対策を直ちに実行しているところですが、経済団体等を通じて企業の皆様に対し、解雇、雇い止め、採用内定の取消し等を防止するため、こうした施策も活用し最大限の経営努力を行うことをお願いしてきたところです。来週には緊急経済対策を取りまとめ、こうした施策を更に強化し、雇用の維持に全力で取り組んでまいります。
 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。
 消費税については、急速に高齢化が進む我が国にあって、若者からお年寄りまで全ての世代が安心できる社会保障を構築するためにどうしても必要な財源と考えています。今般の新型コロナウイルス感染症の経済への甚大な影響に対しては、そのマグニチュードに見合うだけの、リーマン・ショック時の経済対策の規模を上回る規模の緊急経済対策を財政、金融、税制を総動員して策定することとしていますが、その施策は効果があるものではならないと考えています。
 このため、政府としては、今、大変厳しい状況の中でも何とか事業を継続していただき、地域の雇用と国民生活をしっかりと守り抜いていくために、こうした方々に対する現金給付制度の創設を含め思い切った対策を講じるとともに、感染拡大が抑制された段階を見据え、甚大な影響を受けている旅行、運輸、外食、イベントなどにフォーカスした短期集中で大胆な需要喚起策などを講じることで、大変な状況にある方々に直接手が届く効果的な支援策を実施していく考えです。
 新型コロナウイルス対策におけるジェンダーの視点についてお尋ねがありました。
 いかなる状況にあっても、女性に対する暴力や児童虐待は決して許されません。とりわけ、感染症によって社会不安が高まる中で、社会的に弱い立場にある皆さんを守ることは極めて重要な課題です。
 このため、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針においても、各種対策の実施に当たり、女性等に与える影響を十分配慮することを明記したところです。これを受けて、政府として、今朝、地方公共団体に対し、DVの相談対応から保護に至るまで、支援の継続的かつ迅速な対応を依頼いたしました。本年度から新たに民間シェルターに対する支援などの施策を盛り込んだところでありますが、近く策定する経済対策においても、DVについて深夜、休日にも対応できる相談窓口の設置を盛り込むなど、被害者支援体制の充実を図ってまいります。(拍手)

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