山添 拓 参議院議員・日本共産党

国会報告

2021年・第204通常国会

所有者不明土地法案の参考人質疑

要約
  • 所有者不明土地法案の参考人質疑で質問。4人の参考人の中で阿部健太郎参考人には新設の相続申告登記で実務上懸念されることを質問。 阿部氏は「相続申告登記をした人が住所変更したときはその変更登記まで求められておらす、連絡先は一時的なものになる」と。

○参考人(今川嘉典君) おはようございます。
 日本司法書士会連合会会長の今川でございます。この度は、意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。
 先月、三月十九日の衆議院法務委員会におきましても参考人として意見を述べさせていただきました。本日も、司法書士についての説明と当連合会の活動を御紹介申し上げるとともに、衆議院での御議論や附帯決議などを踏まえ、改めまして本法案に対する我々の捉え方についてお話をさせていただきます。
 なお、一昨年、実に十七年ぶりに司法書士法が改正されまして、我々は法の中に使命規定を持つに至りました。先生方におかれましては、お力添えをいただいたことに対しまして、改めてこの場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 資料の御紹介をいたします。お手元にこのようなクリアファイルで配付をさせていただいております。この中には、当連合会並びに全国の司法書士会における相続登記促進に向けての活動のパンフレット、あるいは、一般の方に今回の法改正の趣旨を簡単に説明するQアンドA、それから、そもそも相続、相続登記はどういうものかということを市民に分かりやすく説明するためのハンドブックなどであります。特にこの「よくわかる相続」というハンドブックは、市民や自治体に対して今まで累計五十一万部配布をさせていただいております。もちろん無料で配布をさせていただいております。またお時間があるときにお目通しをいただければ幸いでございます。
 まず、司法書士について簡単に御案内をいたします。
 司法書士は、現在、法人会員を含め全国約二万三千五百の会員がおります。各自が全国五十の司法書士会に登録をしています。それら司法書士会を束ねる形として当連合会があります。司法書士は、日々、多くの不動産登記や商業登記の申請を行うとともに、裁判所に提出する書類の作成や簡易裁判所の代理を通じて裁判に関する事務を行っております。
 また、成年後見制度に関しましては、身近な暮らしの中の法律家として、高齢者や障害者の権利擁護のために、その制度成立当初より積極的に取組を行ってまいりまして、専門職の中では司法書士が最も多く後見人等に就任をしております。ちなみに、公表された数値を御紹介しますと、令和二年の就任件数は、司法書士が一万一千百八十四件、弁護士さんが七千七百三十一件、社会福祉士さんが五千四百三十七件となっております。
 所有者不明土地問題と司法書士の実務との関わりについてお話をいたします。
 所有者不明土地問題の発生の大きな要因として、相続登記や住所、氏名の変更登記が未了となっているということが挙げられております。この相続登記を含む不動産登記の大部分は司法書士が代理人となって申請をしており、我々は登記の専門家であると自負をしているところであります。したがって、国家的課題とも言える相続登記等の促進は、まさに我々自身の課題でもあるというふうに強く認識をしております。
 相続人の中に高齢者が含まれており、遺産分割協議を行うために成年後見人を選任しなければならないという例が少なくありません。このような場合には、司法書士は、家庭裁判所への成年後見開始の申立てをサポートするとともに、先ほども述べましたように、成年後見人に就任して遺産分割協議等も遂行しております。
 裁判事務に関しては、土地所有権の集約、例えば時効取得を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟や抵当権抹消登記手続訴訟等の業務を行っています。また、簡易裁判所における土地を目的とする訴えに関しまして、原告、被告双方又は一方に司法書士が訴訟代理人として選任された率は、司法統計上、平成二十七年から令和元年において平均約五七%となっておりまして、多くの司法書士が土地を目的とする訴えに関与しているということになります。
 空き家等の対策についても、自治体と連携をさせていただき、空き家対策計画に参画するとともに、自治体からの要請により所有者や相続人の調査、探索を行い、必要に応じて財産管理人に就任し、空き家の解体撤去等も行っております。
 そして、これからのお話になりますが、今回の改正により導入される新制度、すなわち相続登記や住所変更登記の義務化、相続人に対する負担軽減策として導入される幾つかの簡略化される登記手続などは、登記の専門家として当然対応させていただきます。また、共有不動産に関して新たに導入される持分取得や持分譲渡の制度、所有者不明土地管理人等の新たな財産管理制度なども、いずれも多くの司法書士がこれまで日常的に行ってきた業務の延長としてしっかりと対応できるというふうに考えております。
 今回の法案について、二点述べさせていただきます。
 まず、相続登記の義務化についてです。これは衆議院でも御議論が白熱していたと思います。
 先月、三月十九日の衆議院法務委員会でも述べましたとおり、当連合会といたしましては、単に相続登記を義務化することには消極でありました。国民への周知を徹底し、土地基本法に規律されている土地所有者の責務等を含めて新制度に対する理解を得ることがまず必要であり、あわせて、義務化を実効性あるものとするとの観点から、負担軽減策をパッケージとして導入することが必要であると考えています。また、民法や不動産登記法の改正とは別に、個人で管理したり流通に乗せることが困難な土地の受皿としてのランドバンクのような施策をも併せて取り入れることが必要と考えております。
 相続登記の義務化は国民の皆様に直接新たな負担を課すものであるため、その負担をできる限り小さくするとの観点から、我々は、相続登記に代わるより簡易な手続を行うことによって義務を履行したものとみなすこととする制度を設けることを提言していたところですが、その我々の主張の延長として、今回、相続人申告登記が導入されたことについては、本来の相続登記と比べて簡便な手続によることが可能であり、評価をいたしております。もちろん、原則としては、遺産の分割が行われ、その結果を踏まえた確定的な所有者を登記することが好ましいと考えているのは言うまでもありません。
 義務化に伴う過料につきましては、事前に登記官から登記申請を催告することなど相続人に対する配慮の仕組みが予定されており、厳罰化を目的とするものではないと認識しております。そして、過料措置の運用に当たっては、相続登記の義務化を実効性あるものとするための負担軽減措置に重きを置くよう、今後、省令や通達等で適切な運用が定められるものと期待をしていますし、実務の現場を知る者として、国民の皆様の負担軽減につながるような提言等を行っていく所存です。
 いずれにいたしましても、司法書士としましては、国民の皆様が過料に処されるといったことがなるべくないよう、正確な情報と的確なアドバイスを提供するなど、周知活動等に努めてまいりたいと存じます。
 相続登記の義務化が与える影響ですけれども、相続登記の義務化に関する本法案が成立しましたら、その影響は国民の皆様に直接及ぶことになります。それに加え、私ども司法書士の意識も明確に変化すると考えておりますし、変えていかなければならないと思っております。
 依頼者から相談を受ける際、相続登記はしなくてはなりませんかといった質問を受けることが多くございます。これまでは、相続登記をすることは義務ではありませんが、登記をしておいた方がよろしいですよという回答が限度でありました。このような回答を差し上げた場合、依頼者からは、誰も使っていない土地だし、義務もないのであれば登記しなくてもいいですねという対応を取られる方も一定数おられました。相続登記がされていないことによって様々な社会的問題が発生すること、それから、後々、御自身やそのお子さんにも将来負担を抱えることになることなどを、現在でも説明は申し上げております、そして登記申請を促しているところでございますが、これからは、国民の皆様に対し、所有者としての基本的な責務も含めて、更に御理解をしていただくよう周知活動を行ってまいる所存でございます。
 二つ目に、新たな財産管理制度についてですが、所有者不明土地管理制度や管理不全土地管理制度などの新たな財産管理制度の導入が予定されています。
 財産管理制度は、従来、人を単位とし、原則としてその人の全財産を管理するという制度でした。ある意味、重厚な制度であり、選任を申し立てる者及び選任された管理人の双方において重い負担が伴う場合もありました。
 しかし、提出法案では、所有者不明土地管理人等、不動産単位の財産管理を実現することができるようになっています。これは、不動産の状況に応じ柔軟でかつ効率的な管理を行うことができる提案であると受け止めています。
 司法書士は、これまで、不在者財産管理人や相続財産管理人に就任し、その事務を行ってまいりましたが、その経験を生かし、新たな財産管理制度にも的確に対応してまいります。
 そのためには、当連合会といたしまして、管理人養成のための充実した研修カリキュラムを組むとともに、裁判所に対し候補者名簿を提出するといったことも検討しているところでございます。
 司法書士の取組について御紹介を申し上げます。
 当連合会では、昭和六十年から、相続登記はお済みですか月間と題しまして、相談会の開催など相続登記の促進に関する事業を実施してきております。
 また、平成二十八年頃からは、法務局と各司法書士会とが連携をして、未来につなぐ相続登記プロジェクトとして、国民に対し相続登記の重要性を周知するための活動を全国的に行っております。
 また、所有者不明土地特措法に基づいて平成三十年度からスタートしている長期相続登記未了土地の解消作業においては、全国の法務局の相続人調査事務に関する入札において、全ての法務局において司法書士の団体が落札をして、法定相続人の調査を実施しております。
 そのほか、相続に関する研修会、講演会、シンポジウムの開催などを通じ、相続登記の重要性を訴えてきました。
 更なる取組として、本年三月一日より、全国五十の司法書士会に相続登記相談センターを設置しております。また、全国どこからでも統一フリーダイヤルで最寄りの司法書士会につなぐシステムも構築をしております。既に多くの国民の皆様から相続登記の義務化などに対する相談が寄せられているところです。
 加えて、相続登記の義務化によって国民の皆様が不測の事態に陥らないようにすべく、今後もシンポジウムや広報活動等、様々な周知の活動を行ってまいりたいというふうに考えております。
 これまで申し上げましたとおり、全国の司法書士は、相続登記の申請、その前段階としての相続人調査、裁判業務を通じての土地所有権の集約、担保権の抹消、成年後見制度を活用した遺産分割協議などに関与してきました。また、不在者財産管理人や相続財産管理人に就任し、所有者不明土地問題の解消とその発生を抑止するための業務も行っております。
 本改正による新制度の運用に当たっては、正確な情報の提供と適切なアドバイスなど、専門家がしっかりとサポートすることが不可欠であります。したがって、司法書士の役割は今後は一層重要なものになると考えております。法案が成立した際も、これまでの実績を生かし、司法書士会総体を挙げて所有者不明土地問題の解消及び抑止のために活動していく所存でございます。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 次に、國吉参考人にお願いいたします。國吉参考人。
○参考人(國吉正和君) 皆様、おはようございます。
 日本土地家屋調査士会連合会会長の國吉正和でございます。本日、このような場面で意見を申し上げる機会をいただき、本当にありがとうございます。
 今日重要な問題となっております、所有者不明、不動産登記を見ても所有者の所在の把握が難しい土地に対する解決策等について、日本土地家屋調査士会連合会でも、日頃の業務において日々対処しなければならない事柄として、以前より問題提起させていただいておりました。法制審議会民法・不動産登記法部会の委員として参加させていただき、実務家の立場から問題点を説明し、議論をしていただきました。
 今回の民法等の一部を改正する法律案、そして相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案について意見を述べさせていただきたいと思います。
 私ども土地家屋調査士は、昭和二十五年七月三十一日、土地家屋調査士法の制定により誕生し、昨年、令和二年に七十周年となりました。その記念すべき年に改正土地家屋調査士法が施行され、一部改正された土地家屋調査士法において、土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として、不動産に関する権利の明確化に寄与し、もって国民生活の安定と向上に資することを使命とするという使命規定を持つ資格者として位置付けられました。先生方には、改正法の制定に当たり御協力いただきましたこと、改めて感謝申し上げます。
 我々土地家屋調査士の会員は、全国で約一万六千二百名の個人会員と約四百七十の法人会員が登録し、全国五十会の単位会を組織し、当連合会が設立されているところです。そして、五十会の全ての単位会が土地の境界紛争解決のためのADR機関を運営しております。また、表示に関する登記等の相談業務も、各単位会を中心に、法務局、司法書士会等関連団体と協力し定期的に行い、依頼者、市民の皆様に活用いただいているところです。
 土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量、筆界特定手続の代理、土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民間紛争解決手続、いわゆるADRの代理関係業務を主な業務としております。土地の分筆登記、地積更正登記、又は土地取引における境界の確定業務など、土地に関する業務については、一筆一筆の土地の境界を隣接土地所有者との立会い確認を経て、隣地、土地相互の境界が将来にわたり安定したものとなり、紛争を生じさせないよう気を配り、業務を行っております。当然ながら、土地の境界の確認においては、依頼者から依頼された土地に隣接する全ての土地との境界を確認することが基本となっております。
 今日、先生方にお配りしております、私どもの、クリアファイルに入っております、ちょっと資料として、一つ、不動産登記法施行規則第九十三条の調査報告書というものを例示として挙げさせていただいております。そこの二ページ目から四ページ目にありますとおり、隣接土地所有者との境界確認の経緯などを登記所に報告するという形を取っております。
 また、土地の境界確認の重要性、必要性については、委員の先生方に同じく資料としてお配りさせていただいておりますパンフレットを後ほど御覧になっていただければと存じますけれども、当連合会では、くいを残して悔いを残さず、いわゆる境界標を残して悔いを残さないという標語とともに、境界確認と境界標を設置することによる隣接関係の安定と安心を唱えてきたところでございます。
 ところが、近年、隣地所有者等との連絡が取れない、また、連絡が取れたとしても、境界に関する所有者の意識が薄く、立会いに応じていただけないという事案が多く見られるようになりました。そのため、隣地との境界立会いについては、土地について行うべき管理の一内容として土地所有者の義務としてまとめていただきたいと訴えてまいりました。
 このことは、民法典ではなく、土地基本法により土地所有者の責務という形で規定され、土地の所有者は、その所有する土地に関する登記手続その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならないとされました。この土地基本法の精神を促進して、今後の規律の制定などに生かしていただきたいと思っております。
 今日の問題で、一つであり大きな問題となっている事柄が、所有者の所在の把握が難しい土地が多いということであります。この場合には、土地の分筆登記手続や不動産流通のための確定測量が滞るといったことになってしまいます。土地家屋調査士は、業務を通じ、依頼者のみではなく、依頼地を囲む全ての隣地所有者の皆様との境界確認を行っておりますので、この所有者不明土地に遭遇する機会が最も多い資格者であると思っております。この問題の重要性を以前より訴えてきたところであります。
 そこで、今回の法改正に対しましても、当連合会では、土地所有者の把握が可能となる仕組みを考えるべきであるという意見を発信してまいりました。その結果、法改正案では、相隣関係については、私どもの業務にも関係いたしますが、境界標の調査又は境界に関する測量のため必要な範囲で隣地を使用することができる、ただし、目的、日時、場所、方法を隣地所有者及び使用者に通知するという規律、そして、他の土地に設備を設置しなければ水道、ガスなどの供給が受けられない場合の設備の設置権の規律の整備が提出されています。これらの規律は、隣接地が所有者不明土地であったとしても、土地所有者が自らの事業等を行うためにも必要なことであると理解しております。
 次に、所有者不明土地等の管理制度についてでありますが、隣地の所有者と境界の確認をする必要がある場合に、隣接地の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、筆界特定手続を利用するほか、最近では、不在者財産管理制度を活用し、財産管理人と土地の境界確認をすることによってその目的を達することが行われております。
 今回創設することとされております所有者不明土地管理人制度は、人の財産全体ではなく、個別の土地についての管理制度です。まさに今述べました土地の境界の問題など、一筆の土地の個別の事情を解決する最適な制度であると理解しております。
 そして、不動産登記法における所有者不明土地に関する問題としては、登記簿に記載された所有者の情報が実態と異なっていることが非常に多く存在し、九州の大きさに匹敵するとも言われました。その原因に、相続登記が未了である、住所の変更等が登記に反映されていない、そして外国人、外国に住所を有する所有者に連絡等が取れないということが言われ、私どもの実務の現場においても、先ほど申し上げましたとおり、土地に関する調査の段階で業務に支障を来しているのが実態であります。
 不動産登記法の改正案では、相続登記、住所等の変更登記の義務化、そして外国に住所のある者の日本国内における連絡先の登記、所有不動産記録証明書の交付など、所有者不明土地の問題解決に有効な措置が盛り込まれたものと理解しております。
 最後に、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律でありますが、所有者不明土地の発生を抑制するための方策としては重要であると理解しております。
 これらの法案が成案となり、所有者不明土地の問題の解決に大いに寄与できることを希望しているものであります。
 そして、これらの法案に対し、より実効性が確保できますよう、当連合会から四つの意見を述べさせていただきます。
 一つ目は、隣地使用権、設備使用権についてです。
 これらの使用権が創設されたとしても、やみくもに使用できるものではないと理解しております。その使用によって相隣関係に新たな紛争を生じさせないよう、隣地所有者、使用者に対し、手続的な部分で使用者に対しきちんとガイドラインを作成し、その啓蒙を行うことが必要であると考えています。
 二つ目は、新たに創設される管理人制度についてです。
 利害関係人の請求により、個別の土地、建物について管理人が選任されることとなりますので、各不動産の個別の事情、利害関係人の請求の目的などを考慮し、それぞれの事案に適した管理人が選任されるべきであると考えています。それぞれの事案に適した管理人は、各資格者の適性を考慮し、選任を行うシステムを構築するべきであると考えております。
 三つ目ですが、所有者不明土地をこれ以降増やさないための相続登記、所有者住所等の変更登記、外国に住所のある者の日本国内における連絡先の登記、そして所有不動産記録証明書の交付等の規定は有意義で有用なものと歓迎しております。
 ただし、今回の改正では、表題部所有者についての規律が対象外となっております。その理由は、主として登記のシステム上の問題等にあると理解しております。もっとも、表題部所有者のままになっている土地、建物は現に存在しておりますし、将来的な課題として、これらについても表題部所有者を対象とすることを検討いただきたいと考えております。特に、所有不動産記録証明制度については、その有用性に鑑み、優先して表題部所有者を対象に加えていただけるよう検討をお願いしたいと考えております。
 四つ目ですが、土地所有権の国庫帰属については、承認申請の要件として、境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いのある土地は要件から外れます。承認は土地の一筆ごとに行うものとするという規定になっております。境界、つまり所有権の範囲が明確になっていないと、国庫に帰属した後に管理すべき土地の範囲が分からず支障が生じることとなるため、承認申請の際に境界が明らかになっていることは当然に求められることだと思っております。
 国庫への帰属を望む国民からすると、手続は簡便に、費用は安価にと望むのが当然であります。また、本制度の適切な利用を促すという面からも、そのような制度運用が求められると考えます。
 一方で、承認は一筆毎に行われるため、当該土地の筆界と承認申請において境界とされたラインとが大きくそごした場合には、管理のために余計な時間と費用を要すこととなります。国の負担が増える結果になるため、筆界と申請時において境界とされたラインとは基本的に一致することが望まれます。これらの間で大きくそごが生じるケースがどの程度起こるかについては制度施行後の運用状況を見ていく必要があると思います。
 今回の法案が成案した後の将来の課題として、筆界特定手続における筆界調査委員、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律における所有者等探索委員等と同様に、民間資格者を活用し、法務局の実地調査が適正、的確に行われるような仕組みの構築の要否について注意を払う必要があると考えております。
 土地家屋調査士は、今回の改正案に対し積極的な対応をしてまいりたいと思います。今申し上げました意見に対しても、組織として国民のために協力していく用意をしております。是非数々の問題が解決されることを願っております。
 以上、私ども日本土地家屋調査士会連合会としての意見を申し上げさせていただきました。
 本日はありがとうございます。
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 次に、阿部参考人にお願いいたします。阿部参考人。
○参考人(阿部健太郎君) おはようございます。
 ただいま御紹介をいただきました全国青年司法書士協議会会長の阿部健太郎と申します。
 この度、このような発言の機会をいただきましたことに改めて御礼申し上げます。ありがとうございます。
 当協議会は、全国約二千五百名の青年司法書士から組成される任意の団体であります。様々な社会問題に対し、青年司法書士の目線で取組を行っております。創立は一九七〇年、昭和四十五年であり、昨年で創立五十周年を迎えました。当協議会に関する詳細につきましては、本日パンフレットを配付させていただいております。こちらのパンフレットを御覧いただければ幸いです。
 それでは、まず、民法等の一部を改正する法律案に関する当協議会の考えについて意見を述べたいと思います。
 今回の法律案は、所有者不明土地問題を解消することを主な目的としておりますが、その中でも長期相続未了土地の問題について、お手元の資料に配付しております、こちらの資料の一ページ目にも記載させておりますとおり、市民の価値観や家族観の変容などにより、意思に基づく遺産分割を行うことができず、相続が発生するたびごとに未分割のまま法定相続による承継がなされる結果、権利が分散してしまうことに本質的な問題があると考えております。
 私たち司法書士も、日々執務の現場で市民の方から相談に対応しておりますが、合意形成が困難となる主な理由は四つに分類できると考えております。
 一つ目は、核家族化や高齢化などによる当事者の関係性の希薄化が挙げられます。特に、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースでは、高齢であったり代襲相続の発生などにより関係当事者が初対面であるケースなども珍しくないため、遺産分割協議を進めることが困難であるケースが散見されています。
 二つ目は、合意形成を支援する社会的な制度や資源の不足が挙げられると考えております。現状、合意形成を行うための社会資源としては裁判所の役割が大きいところですが、市民の裁判への抵抗感や費用負担、申立て手続の手間など、利用に際し障壁がないとは言えない状態です。
 令和元年度の司法統計によれば、家庭裁判所の遺産分割事件は一万二千七百八十五件であり、令和元年度の死亡者数百三十八万一千九十三名の一%にも満たない状況であり、同様に、令和元年度の相続その他一般承継による所有権移転登記件数である百十七万六千二百三十九件と比べても一%となっております。
 裁判所での遺産分割事件数と死亡者数や相続登記件数を直接比較すること自体には関係性を見出すことはできないとしても、実際に裁判所で解決に向けた対応がなされている案件に比べ、高齢化や関係性の希薄化によって合意形成が困難になっている案件などは、必ずしも当事者間に紛争が内在しているわけではなく、裁判所での解決にはなじまないケースも一定数あるというふうに考えております。そのような事例において、合意形成をサポートする制度や社会資源の不足も一因じゃないかと考えている次第です。
 三つ目は、まさに相続人間にて紛争が生じ、合意形成が困難である場合です。この場合は、司法書士が書類作成を行った上で裁判所への申立てを行ったり、弁護士を代理人として依頼し、解決を模索するような案件です。
 四つ目は、不動産の利用価値及び経済価値が無価値又は限りなく僅少であり、換価も困難であるため、遺産を承継する相続人が、遺産承継をすることが相続人の負担となってしまう場合です。このような場合、結果として承継先が決まらず、放置されることとなる場合があります。
 本日は、実際に当協議会の会員が受託した案件の相続関係を、守秘義務に考慮し、加工して図示した資料も配付しております。
 配付資料二ページ目は、兄弟相続が相続人であり、関係当事者が十七名いる事案です。三ページ目は、高齢者になる配偶者が自宅を相続するに当たり、他界した配偶者の兄弟姉妹に連絡し、合意形成をしなければならないという事案です。いずれのケースも関係当事者間の関係性が非常に希薄であり、住所や電話番号などといった連絡先さえも把握しておらず、当事者だけでは合意形成が困難であったことから、登記手続に関する相談を端緒として、司法書士において支援を行った結果、合意に基づく権利確定を行うことができた事案となっております。
 このように、関係当事者のみでは合意形成が困難である場合にどのようにして合意形成を支援していくのか、この点が非常に重要になると考えております。
 長期相続未了問題の本質については、これまで申し上げてまいりました関係当事者間による合意形成の困難さにあると考えておりますところ、今回の法律改正がどの程度有効であるのか、しっかり検証が必要であると考えております。
 相続登記を義務化し、新たに相続人申告制度を導入することで、確かに、これまでと比べ、相続人を把握し、関係当事者の連絡先を知る端緒を確保するという意味において一定の効果は期待できるかもしれません。しかしながら、先ほどから申し上げておりますとおり、合意形成に至らなければ長期相続未了の解決に資することはなく、その点において、今回の法改正では対応が行き届いていない部分が存在するのではないかと考えております。
 当協議会では、相続登記の義務化に関し、二〇二一年二月二十五日付けにて会長声明を発出いたしました。会長声明では四つの点について指摘させていただいております。本日は、そのうち二つについて、お時間をいただいて御説明させていただきたいと思います。
 まず、一つ目の課題は、先ほどから申し上げておりますとおり、相続登記の義務化と長期相続登記未了の解消の整合性に関する指摘となります。こちらにつきましては、本日配付資料四ページにも図示させていただきましたとおりであり、本質的解決に必要となる合意形成に至らないケースが増える結果になることを危惧しております。
 相続人申告登記につきましては、新しい制度であるため、運用面などの詳細については今後検討されるものと思われますが、本日配付資料五ページに記載のとおり、様々な課題があると考えております。
 特に、兄弟姉妹が相続人であるケースなどでは、相続人申告登記に必要となる戸籍の収集も相応な負担となることが予想されますため、市民の負担軽減に寄与するとも限らず、また、二次相続など、今後相続が複数世代にわたって発生した場合の登記記録方法などにも課題が残ると考えております。
 戸籍収集に関しましては、戸籍法が改正され、広域交付などの導入も準備されており、また、四月十三日の参議院法務委員会において、山添議員の質疑に対する政府答弁において、相続人申告登記の添付書類の範囲は工夫し、検討を行う旨が答弁されておりますので、今後負担軽減などが検討されることとは存じますが、どこまで負担軽減が図ることができるのか、注視をしているところでおります。
 二つ目の課題といたしましては、登記名義人の住所、氏名の変更について登記を義務化する点についてであります。この点については、個人情報やプライバシーの観点から課題があると考えております。
 今回の法改正により、所有権登記名義人は住所、氏名につき登記記録上に公表することが義務付けられることになります。
 しかし、近年の個人情報への意識の高まりに対し、逆行する施策であるのではないかと感じているところです。この点につきましては、現登記制度においても、登記申請を行うことで登記記録上に住所、氏名が公示される点、財産分与などの登記原因も公示されるため離婚といった身分事項まで登記記録から推察できてしまう点、抵当権の債権額などが公示される点などについて、市民の意識や感覚と登記事項を広く公示する必要性との調整を行うべき時期に来ているのではないかと考えているところです。
 所有権登記名義人の住所、氏名の変更を義務化することで、婚姻や離婚、養子縁組といった極めて私的な身分事項であり非常にセンシティブな事項が登記記録から容易に推察できる状態となります。登記の公益的な側面を強化するとの考えは理解できるものの、利用者たる市民の理解が得られるのか疑問視しており、本改正にて手当てしているDV被害者などのケースに限らず、登記名義人の個人情報やプライバシーに配慮した形での制度運用が必要であると考えております。
 長期相続登記未了問題の解消に当たっては、発生の予防と利用の円滑化という二つの側面から総合的かつ本格的な対策を行う必要があり、様々な施策をパッケージにて実施することを検討している点は衆議院の審議などでも繰り返し答弁がなされているところです。
 発生予防の観点から、遺言や信託を始めとした生前の財産承継に関する支援体制の拡充が重要であるのはもちろんのこと、利用の円滑化につき以下の二点の視点から支援体制の必要性を提言し、意見陳述のまとめとさせていただきたいと思います。
 一点目は、本日の意見陳述において終始一貫して述べてまいりました合意形成支援については、まずは裁判所における手続の利便性を向上させ、夜間、休日の調停の拡大やウエブの活用、申立て費用を始めとする経済的支援などを行うことが必要であると考えております。
 また、様々な機関や専門家の助力を得ながら、市民の意思に基づく合意形成を後押しする新たな施策が重要であると考えております。特に、関係当事者間において紛争性が顕在化しておらず、人間関係や年齢などが要因で合意に至らない事案などにおいては、第三者が中立的な立場で関係当事者の交通整理を行うことで合意形成ができる場面も多いため、ADRの活用や各種専門家が支援できる環境の整備を含め、広く社会資源の活用を検討することが必要であると考えています。
 相続登記の義務化により、法定相続による持分登記や相続人申告登記のみがなされ、終局的な権利の帰属が確定しないという状態にならぬよう、市民への周知を行い、遺産分割に基づく登記を促進し、長期相続未了問題の解決に資することは、私たち司法書士が担う責務でもあると強く考えております。
 四月十三日の法務委員会の審議において、上川法務大臣より、相続登記や遺産分割を取り扱う司法書士などの専門職者と十分に連携することが重要との御発言もいただいておりますので、登記手続や裁判所提出書類の作成などの業務を通じて、我々司法書士も引き続き合意形成の支援を積極的に行ってまいりたいと考えております。
 また、二点目は、関係当事者のいずれも承継を望まない不動産などについては、モラルハザードとの均衡を考慮しつつ、国土利用の観点から、国や市町村が管理する受皿の拡大の必要性を感じております。
 私人にて管理する意識が低下し、事実上管理がなされていない不動産について、相続登記を義務化し、土地所有者の責務としての管理を求めたとしても、結果として不完全な管理しかなされず、土地の利活用には寄与しないケースも出てくるのではないかと考えております。
 土地の計画とともに権利関係が更に複雑化する可能性もあるため、土地の利用に関し国、地方公共団体が積極的に関与することが求められると考えております。関係当事者だけでは解決が困難である事案などでは、国や地方公共団体が積極的に対応することが求められ、土地の利活用に関する様々な情報提供や広報を含めた周知も重要となります。
 日々、相談の現場で不動産に関する様々な市民の声を耳にし、最前線で対応している我々司法書士も、相談を通じて様々な施策や制度を教授するなど、周知への役割も果たしていく責任があると改めて感じているところです。
 所有者不明土地問題は我が国が直面する大きな社会的課題であり、当協議会の問題意識及び解決に向けた提言が課題克服に向けて少しでも寄与するものであれば幸いです。
 以上をもって私の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 次に、吉原参考人にお願いいたします。吉原参考人。
○参考人(吉原祥子君) 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。公益財団法人東京財団政策研究所の吉原と申します。
 東京財団は民間の政策シンクタンクで、私はその中で、所有者不明土地問題について調査を行ってまいりました。また、法制審議会民法・不動産登記法部会に委員として参加させていただきました。
 本日は、これまでの調査結果と、そして、民法・不動産登記法部会の議論を踏まえながら、この度の法案について所見を申し述べます。お手元にA4一枚の資料を配付させていただきましたので、御参照いただければ幸いです。
 この度の法改正議論の契機となった所有者不明土地問題とは、不動産登記簿などの所有者台帳により土地の所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡が付かない事象を指します。東京財団では、この問題の実態や構造を把握するために、これまで全国の自治体へのアンケート調査などを行ってまいりました。そこから見えてきたのは、人口減少、高齢化といった社会の変化に対して、不動産登記制度や、さらに、その根底にある相続の仕組みなど、従来の制度が十分に対応できていない実態でした。
 アンケート調査に自治体から寄せられた回答には、例えば、相続登記が進みづらい理由として、現行法において相続登記が義務ではないことや、手続の煩雑さや費用の問題を挙げる声が多くありました。また、山林や耕作放棄された農地など、わざわざ相続登記をするメリットが相続人の側に感じられなくなっているといった記述や、土地の売買も鎮静化しており、正しく相続登記を行っていなくても当面実質的な問題が発生しないケースが増えているといったコメントも寄せられました。また、土地の資産価値の低さや管理責任を理由に相続放棄が増加傾向にあることや、親族関係の希薄化に伴う遺産分割協議の難航を指摘する声もありました。
 さらに、所有者が不存在となった土地の利用について、財産管理制度などの仕組みはあるものの、費用対効果が見込めず放置せざるを得ない事例もあることなど、制度的な課題を指摘するコメントもありました。こうした問題は、自治体の努力だけでは解決は困難であり、国による制度の見直しが必要です。
 振り返ってみますと、日本の土地制度は、明治以来、人口の増加や、土地は有利な資産という前提の下で構築されてきました。従来の土地政策は、戦後の高度経済成長やバブル経済を背景に地価高騰や乱開発など市場の行き過ぎを抑制することが主眼であり、現在、日本の各地で発生している低未利用の土地の管理や人口が減る中での相続の在り方など、市場原理では解決が難しい、また個人の所有権にも関わる課題については踏み込んだ検討が行われてきたとは言えません。
 所有者不明土地問題とは、そうした従来の制度と人口減少という社会の変化のはざまで広がってきた構造的な問題です。万能薬はありません。また、特効薬もないと思います。問題の解決のためには、既に不明化してしまった土地への対応策と、そして今後の問題の発生予防のための方策を土地政策と民事基本法制の両面から一つ一つ積み重ねていくことが必要です。
 こうした観点から見ますと、この度の民法等の一部を改正する法律案並びに相続土地国庫帰属法案は、まさに社会の要請に応える法律案であると言えます。この度の法案では、所有者不明土地問題の発生防止と土地の適正な利用と管理、そして相続による権利の承継の円滑化に向け、共有制度、相続制度、財産管理制度など、多岐にわたる重要論点について抜本的な改正案が示されています。これだけ多くの重要な見直しが行われたことに大変驚くとともに、これらは土地の権利関係に多大な時間を費やしてきた地域の関係者の方々の間では待ち望まれてきたことであると思います。
 それでは、今後、こうした新たな制度について議論を深め、広く社会に浸透させていくにはどのような点が大切になるでしょうか。二点述べたいと思います。
 まず一点が、この法案を読み解く上で鍵となる土地基本法の存在です。
 先ほど國吉参考人のお話にもございましたが、政府による所有者不明土地問題への一連の対策の中で、昨年、約三十年ぶりに土地基本法が改正されました。そこでは、所有者不明土地の発生抑制や災害の予防、復興など、持続可能な地域の形成を図る観点から、土地の適正な利用と並んで、新たに管理の必要性が明示されました。そして、所有者の責務として、登記など権利関係の明確化と土地の境界の明確化に努めることが新たに規定されました。さらに、土地所有者の適正な利用、管理を支える観点から、国、地方公共団体、事業者、国民一般の責務にも管理の重要性が盛り込まれています。
 この度の民事基本法制の改正案にある相続登記の義務化や所有者不明土地管理制度の創設などの土台には、この土地基本法の考え方があります。今後、法案の議論を深め、また新たな制度を広く社会に普及していくに当たっては、こうした土地基本法の考え方を土台として、社会の中で共通認識を醸成していくことが大切であると考えます。
 新たな制度を広く社会に浸透させていく上でもう一つ大切な点が、制度の実効性をどのように高めていくかということです。
 所有者不明土地問題は、短期的な費用対効果から考えれば、誰にとっても解決のインセンティブが働きづらい課題です。また、土地や相続についての制度改革は個人の権利に関わる問題であり、国民の理解がなければ進めることはできません。そう考えますと、新たな制度の普及と実効性の確保には、今後、地道な息の長い取組が必要であると考えます。
 具体的には、相続登記の義務化は、できるだけ手続コストを下げるとともに、制度の丁寧な周知を図り、一人一人の行動を促していくことが求められます。
 不動産登記制度の持つ、個人の権利を保全し、取引の円滑に資するということと、それから、物権の変動を公示をし、それが社会の中で様々な場面で利活用されていくという、その役割を改めて認識をし、一人一人が登記をしていくということの重要性を確保していくということが大事になります。
 そして、遺産分割協議が早期に行われ、その結果が登記に反映をされるという、そのあるべき姿に向けて、この度の改正案では、相続人申告登記制度などの手続の負担の軽減化策など、具体的な政策がパッケージとして提案されております。これらは、国民の負担の軽減と、それから法律の実効性の確保ということを考えて、バランスを取った上での制度提案だというふうに受け止めております。
 条文を読む限りにおいてはなかなかその詳細が見えないところもございますので、これらを社会に広く周知していく上では、是非、利用者の側に立った分かりやすい説明を努めていくということが大切であろうと感じているところです。
 そして、所有者不明土地管理制度などの新たな財産管理制度の創設においては、各管理人の選任場面や要件を分かりやすく整理し、また、管理人の選任申立てに関わる費用負担の在り方を工夫するなど、制度が有効に活用されるよう環境を整えることが必要です。
 相続土地国庫帰属の制度については、窓口となる法務局の人員、予算を確保するとともに、農林水産省、財務省など関係省庁間の政策連携を図り、そして、住民からの問合せへの対応など、法務局と市町村が円滑に連携していく必要があります。その際には、市町村の業務の効率化や合理化に配慮することも大切です。
 相続土地国庫帰属の制度は文字どおりゼロからのスタートであり、また、国民の関心や期待が高い分、厳格な審査要件や負担金の在り方などについて今後様々な議論や検討が必要になると予想されます。しかし、こうした制度が新たに提案され、実現に向けて動いているということ、また、こうした議論が始まっているということ自体が大変大きな一歩であると考えております。
 人口減少時代における土地の利用、管理の新しいサイクルを模索する過程とも言え、このプロセス自体が重要な過程を持つものだと考えております。そして、こうした民事基本法制の見直しによって土地の適正な利用、管理が実現し、問題の発生、拡大が抑制されることで、土地政策における管理不全土地対策や低未利用土地の利用促進策が地域で進展することが望まれます。
 所有者不明土地問題は、様々な土地利用の足かせとなり、地域の活力をそぐものです。今後の防災や減災など、あるいは災害復旧などの支障ともなります。是非この問題を我々の世代で解決し、土地を次の世代へ適切に引き継いでいけるよう、この度の二つの法案が成立することを心より願っております。
 以上が所見でございます。ありがとうございました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 参考人の皆さん、本日は大変ありがとうございます。
 初めに、吉原参考人に伺います。
 三年前に国交省の所有者不明土地特措法案の参考人質疑でもおいでをいただきまして、その際、私も国土交通委員でしたので、その節は大変お世話になりました。当時の特措法は公共事業における収用や利用権の設定を内容とするもので、その法案としては、所有者不明土地の発生を抑制したりあるいは解消したりという問題の根本解決とはならないものだと、そしてそれは次の課題だと、当時、参考人も意見を述べていただいておりました。
 そこで、この法案は、今度の法案は、その次の課題への十分な回答と言えるのかどうかですね。先ほど万能薬、特効薬はないというお話ありましたけれども、対症療法ぐらいにはなるのか、それとも更にまだ課題がかなり残されているという御認識か、伺えますでしょうか。
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 ここが、今回、抜本的な見直しが数多くされておりまして、対症療法を超えた抜本的な解決策が複数示されていると思っています。ただし、その効果が出てくるのは、十年、二十年、三十年掛かると思います。例えば、共有制度の解消をしやすくすることとか、あるいは遺産分割協議の期間制限のこと、それから財産管理、新たな財産管理制度の創設など、それから国庫帰属の制度、そして登記の義務化、そうした抜本的な見直しが行われたということは本当に驚くべきことだと思っています。
 これからは、むしろ、これだけの制度をつくって、さあ、これからどうやってこれを育てていくんだろうかということを考えると、次なる課題も非常に大きいなという感じがいたします。
 それから、残された課題は何があるかというと、例えば相続放棄の問題があります。相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、そこに財産管理人を誰かが、利害関係人が選任をすれば、管理人が申し立てられて、権利の流動化が始まっていきますけれども、誰もそこの土地に対して管理人の申立てをしなかった場合というのは、やはりそこは宙に浮いたままになってしまうということはあります。
 今回、九百四十条の改正ということで、元相続人の権利の範囲というものも明確化されましたし、相続放棄の在り方というのが今後、一つ、本当は余りこういうことを言うと民法の先生方には怒られてしまうんですけれども、あると思います。
 それから、今回の法改正の議論で、一つ途中で落ちましたのが時効取得ですね。実質的に共有者の一人がずっとその家に住んでいたり土地を管理している場合に時効取得を認められるかという論点も途中で落ちました。それは今後の課題として残っているかと思います。
○山添拓君 ありがとうございます。
 國吉参考人に伺います。
 土地家屋調査士の皆さんは、国交省の、地籍、管轄する地籍調査ですね、あるいは法務省の所管する法務局備付け地図の作成などにも携わっておられると伺っています。これ、近隣の方への聞き込みだとかあるいは地歴の調査だとか、本当に大変な作業かと思うんですが、地籍調査というのは、聞きますと全国で五二%ぐらい、あるいは法務局備付け地図というのは五七%ぐらいと、全国を網羅するには、もうこれ数十年掛かるということを伺います。
 所有者不明土地を解消していく上でも、あるいは基本的なインフラ整備という点でも、こうした作業を加速させることは必要だと思うんですけれども、その際、政策ですとかあるいは予算の上で、国政のですね、政策や予算の上で何が求められているとお考えでしょうか。
○参考人(國吉正和君) 地籍調査、それから十四条地図の作成についてはいろいろな問題点を指摘され、今回の土地基本法の形では、地籍調査の新十か年計画の中では、例えば筆界特定手続の利用をするとか、それから、各実行する行政からの筆界案の提出などによって筆界未定の土地をなるべく少なくしたいという手続つくりました。それによって、その実効性をどれだけあるかというのはまだ今後見ていかなければならないと思います。
 そして、地籍調査ですけれども、例えば街区先行型といいまして、一筆一筆の中までではなくて、いわゆる街区をまず固めようという、一応形を進めていこうということもありますので、それらのことも一応考慮しながらこれから先の地籍調査の有効性などもやっぱり見ていかなければいけないなというふうには思っています。
 特にこの十四条地図などについては、先ほども言いましたように、全ての筆界点について立会いをしていくというプロセスがあります。そういったものも含めて、例えば我々が、土地家屋調査士などの専門家ができれば関与できる、なるべく関与できるようなシステムですとかなどを、やっぱりこれから先、構築というか、より進めていくということが重要なのかなというふうには考えております。
○山添拓君 ありがとうございます。
 それでは、今川参考人と阿部参考人に伺います。
 この法案では、相続登記を義務化すると同時に、より簡易な仕組みとして相続申告登記が新設をされます。申告登記では、必ずしも相続人の全員が判明するとは限りませんし、持分が明らかになるわけでもありません。したがって、法定相続分の所有権をそこから移転するという手続もできず、所有者不明土地の実質的な解消になるわけではないかと思います。
 先ほど今川参考人も、遺産分割の促進があるべきであって、まず申告登記から行くべきじゃないという御意見述べられておりましたが、そのとおりだと思うんですね。しかし、法務省は、相続登記よりむしろ申告登記の活用を希望、期待すると、こういうふうに国会では述べています。
 ですから、こうした登記、申告登記ですね、実際には増えていくことが予想されるわけですが、その際に実務上懸念される点について、今の段階で想定されることがありましたらお願いいたします。
○参考人(今川嘉典君) 懸念されることというのは、相続人申告登記だけをしてそのまま放置しておくということだろうと思います。
 先ほどから何度も申し上げておりますように、本来、遺産分割協議を経た確定的な権利者の登記をしていくというのが本来の目的でありまして、何らかの形でそれができないという場合に法定相続分による登記をするということもあるんですが、それはやはり未分割の状態を表す暫定的なものであるという意識を持ってもらわなきゃいけないと。そして、それもままならないときには相続人申告登記という救済措置もあるんだというふうに考えるべきでありまして、遺産分割協議を経た登記と法定相続分による登記と相続人申告登記を同列に並べて考えるべきではないというふうに思います。
 そして、一方、今これは、私申し上げましたのは相続人の立場からの考え方でありまして、一方、登記は公示制度でありまして、その登記簿を見る人の立場からすると、全く登記がされていない状態、それから法定相続分で住所、氏名、持分まで入っている状態、それと相続人申告登記の状態というのを考えたときに、少なくとも相続人申告登記の場合は連絡先ぐらいは分かるようにはなっているという意味で、その登記情報を見る人からするとある程度有用なものであるということは間違いないなと。
 ただ、そこで終わらせるかどうかは実は我々の責任でもあろうと思っておりますので、もう再三述べておりますが、遺産分割を促進して確定的な登記がされるよう我々専門家がしっかりとサポートしていくべきだろうなと、まあ弁護士さんと一緒にサポートしていくべきだろうなというふうに思っております。
○参考人(阿部健太郎君) ありがとうございます。
 私たちの方も申告登記に問題意識は持っておりまして、お配りさせていただきました今日の資料の方の六ページ、ごめんなさい、五ページ、六ページ辺りにも幾つか詳細に私たちの問題意識を述べさせていただいております。
 時間の関係もありますので、この中で幾つか挙げて御答弁という形にさせていただきたいというふうに思いますけれども、まだこれから、相続申告登記ということの運用についてはこれからということもありますので幾つか推測という面もありますけれども、山添先生の方でも前回御質疑いただきました二次相続への対応の辺りも非常にどうなるかが分からないというふうになっているという点と、申告登記をした後に住所や氏名が変更したとしても、その変更登記自体はすることが求められていないので、一時的には住所、氏名は申告登記で登記されますが、その申告登記した方が更に住所や氏名を変更した場合はそれが登記記録として残りませんので、すごくスポットでの登記記録、連絡先は確保できるんですが、また次の瞬間にはその方の連絡先が、その日以降のものはまた追わなければいけなくなってしまうという点において、ひどく限定的な連絡先の確保手段になっているのではないだろうかという点。
 また、付記登記を、相続人申告登記をした方が更にお亡くなりになった場合は付記登記の付記登記をしていくというような形になっていますが、これが数世代続くと、付記登記の付記登記の付記登記の付記登記というような形で、永遠に付記登記が繰り重なっていくと。最終的に、付記登記が何度も繰り返された後、合意を形成して登記をする場合は、最初の登記名義人のところに戻ってもう一回ゼロから相続登記を何世代もしなければ、結果、利活用ができないということにもなりますので、やはりこの申告登記というものは、決して全く意味がないということは申し上げませんが、まだまだ課題があるのではないか、それをいかにこれから運用上で改善する工夫ができるかというところがこれからの課題かなというふうに思っております。
 以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。
 それでは、残りの時間で今川参考人、阿部参考人、吉原参考人それぞれに、もし御意見あれば一言ずついただきたいと思っているんですが、今のお話からも遺産分割が大事だということかと思います。この法案では、同時に、民法改正によって遺産分割における具体的相続分の主張を十年に制限しようという内容があります。この法案提出の経過に照らせば、これも所有者不明土地の解消のための一つの手段と考えられているものと思います。
 所有者不明土地の解消というのは、相続人のためというよりは、公共事業や災害復旧や、あるいは土地を取得して事業を行いたい者のために登記の公示的な効果を期待するもので、半ば公益目的だと思うんですね。それによって遺産分割における特別受益や寄与分の主張ができる権利を制約していくと。ですから、公益目的によって権利を制約するということになります。しかも、その範囲は、土地だけではなく、建物や動産や債権などほかの遺産にも及ぶことになります。
 この目的と手段との合理性についてどのようにお考えかということについて、最後に御意見伺いたいと思います。
○参考人(今川嘉典君) 今川です。
 先生御指摘のとおり、遺産分割協議は義務でもなかったですし、いつやってもいいということで、特別受益や寄与分といった具体的相続分もいつ主張してもいいということになっていまして、それが十年を経過したらできなくなるということは、これは権利行使の仕方が変わるわけですから、影響はあると思います。
 ただ、遺産分割協議をする中で、長期間、期間が経過しますと、その具体的相続分を証拠立てるものも乏しくなってきて、勢い遺産分割協議が長期化するという問題も多分あるんだろうなというふうに思います。そこはバランスで、どこかで区切りを付けるということも必要だということで、今回十年という数字が出てきたんだろうなと思っております。
 ですから、国民には十分周知をしなければならないと思いますが、この十年という数字についてはまずは受け入れて、遺産分割協議を促進する方へ向かうべきかなというふうに今のところは考えております。
 以上です。
○参考人(阿部健太郎君) こちらにつきましても先生と同じ問題意識を持っておりまして、十年経過したことによって具体的相続分についての権利主張ができなくなる、これは非常に市民には大きな影響を与えるところだというふうに思いますので、こちらを導入するに当たっては、やはりかなりの周知をしなければいけないというところ。
 ただ、今、今川参考人が申し上げましたとおり、とはいえ、やはり一定のところで区切らないと、それが今後の遺産分割の合意形成の阻害要因にもなる。要するに、資料もない、証拠もない中で主張をされると、結果、合意の妨げになるということも実際起きているということですので、その辺りの整合性をどう取るかというところはやはり重要であるのかなというふうに考えるところです。
 以上です。
○参考人(吉原祥子君) 私もお二人、さきの参考人の方々と基本的に同じ意見です。十年をたつ前に、経る前に相続し、遺産分割協議を行うことは、相続人のためにもなるというふうに考えております。
 また、十年経過した後でも、相続人間で合意ができれば具体的相続分に基づく分割というものは可能ですし、また、十年経過する前に裁判所に申立てをするといった方策も設けられておりますので、そこは法制上もバランスが取られているのではないかと考えております。
○山添拓君 ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。