山添 拓 参議院議員/弁護士 東京選挙区候補 日本共産党

国会報告

2022年・第208通常国会

法務委員会で、民事訴訟法改正案の期間限定裁判、民事裁判提訴の手数料問題について質問しました。

要約

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
前回に続いて、法定審理期間訴訟手続、いわゆる期間限定裁判について伺います。
今日の民事局長の答弁を伺っていますと、この手続は、企業同士の争い、あるいはビジネスの世界、企業法務の立場から、勝敗よりコストを優先する、まあ時間や費用のめどが立つことが必要だという場面があるのだと、そういう答弁が繰り返されておりました。
専ら企業法務で使われることを想定しているのでしょうか。法案はそうはなっていないんじゃないでしょうか。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
法文上は、その企業同士の紛争、民事上の紛争に限定してはおりません。私が申し上げたのは、典型的にそういう例で活用することが見込まれるのではないかということを申し上げたにとどまるものでございます。
○山添拓君 典型的に使われることが見込まれるというだけではなく、不向きな事件もあるのだと、そういう類型もあるのだという前提でのお話だったと思うんです。
ところが、そういう不向きなケースを明確に全て除外するものにはなっていないです。本人訴訟も除外されません。本人訴訟の多い簡易裁判所の事件も除外されておりません。そうですね。
○政府参考人(金子修君) 委員御承知のとおりですが、一定の事件の、当初から類型的に不向きと思われる事件は除外しております。あとは要件を、一定の要件を掛けているというものでありまして、全面的に本人訴訟を、代理人が付いていない、訴訟代理人が付いていない訴訟を除外しているという規定にはなっておりません。
○山添拓君 ですから、法律である以上は提出者が幾ら想定をしていたとしてもあらゆる場面で使われる可能性があると。そういう前提で、その際に懸念される点があるのかどうか、本当にこのような主張や立証の機会を限定するような仕組みでよいのかどうかという批判や懸念の声が上げられているわけです。それをあたかも限られた場合にしか使われないだろうと、そういう前提で答弁されるのは私は疑問に思います。そして、この仕組みはやはり期間を優先するものだと思うんですね。
二〇〇六年の民事訴訟を利用した調査を分析した早稲田大学の菅原郁夫氏によれば、利用者が評価で重視しているのは、時間というよりも審理過程の評価あるいは裁判官の評価が大きかったとされています。これは二〇〇〇年や二〇一一年の調査でも同様の傾向だとされています。それは必ずしも勝訴か敗訴かではなく、もちろん勝訴、敗訴というのは大事ですけれども、それだけではなく、その理由付けに納得できるかどうか、公正な裁判がされたかどうか、言い分を聞いてくれる裁判官だったかどうか、そういう点が大事だったということであります。
法務省に伺います。こうした調査がされてきたことは御承知かと思いますが、実際に裁判を利用した人の評価において、こういった点が重視されていることについてどのような認識でしょうか。
○政府参考人(金子修君) そのような調査があったということは認識しております。実際に利用された方の満足度の調査なんだろうと思いますけれども、それは、その内容は、その結果というのは尊重すべきものだというふうに思っていますし、実際に利用された方がどういう点に裁判所に対し、あるいは裁判に対して期待をしているかということを示すものだという認識を持っております。
○山添拓君 ですから、その中では、私が今お伝えしたように、裁判は納得感が大事だと、その際には時間を要することもあるかもしれないと。時間を最優先することはこの納得感に影響しかねないと私は思います。
資料の二ページを御覧ください。二〇一七年の第七回裁判の迅速化に係る検証に関する報告書です。
近年、単純平易な事件の大幅な減少及び相当程度複雑困難な事件の大幅な増加により、事件全体としては複雑困難化が進んでおり、特に、争点等についての認識共有が困難となる非典型的な損害賠償請求事件が増加しているとあります。その傾向を示すグラフも同じ資料に載っております。
法務省に伺います。期間限定裁判を導入することによって、ここにあるうちのどのような類型の事件で期間の予測が可能になるとお考えでしょうか。
○政府参考人(金子修君) その同じ類型の中でも事案によって困難度等あるいは判断するに必要な証拠等も違いますので、一概に申し上げることは難しいと考えております。
○山添拓君 少なくとも、ここで平均審理期間が比較的長い事件類型、損害賠償事件、この報告書では非典型的な損害賠償請求事件が増加していると記していますが、こういう事件について期間の予測が可能になりますか。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
それも事案によると思いますね。損害賠償事件等でも、事前の交渉が先行していて、あとこの点についてだけ裁判所に判断を求めたいというようなこともあろうかと思いますので、そういう場合にはこの法定審理期間訴訟手続を活用の前提となる期間の予測というものも立つということもあるのではないかと思います。
一般的に、損害賠償事件だから、あるいは、例えば建築紛争等の難しい損害賠償事件にはおよそ使えないというような考え方はしていないということでございます。
○山添拓君 それは裁判の実態とは異なる認識ではないかと思います。
衆議院で、山本和彦参考人は、裁判が長期化する要因の一つは事件の困難化にあると答えています。それは、法曹人口が増えて簡単な事件は裁判に至らずに解決をする、今おっしゃった事前の交渉の中で解決をしている、難しい事件が裁判所に来る傾向があるのではないかと述べています。こうした複雑困難で、原告、被告間の対立が激しい事件については、期間限定裁判によっても予測可能性が立つようになるわけではありません。
その上で、仕組みそのものについて伺います。
いずれかの当事者が申し立てれば、裁判所は期間限定裁判をやめて通常訴訟に移行します。当事者としては、このままでは負けそうだと思ったときに移行を希望するだろうと思うんですね。例えば、結審してあと一か月で判決と、しかし、その間に和解期日が入って裁判官から心証を開示されると、あなたは負けそうだから少し譲歩しなさいと、こう言われると。ならば、もう少し主張、立証を補強しようと通常訴訟への移行を希望することは十分あり得ると思います。
こうしたタイミングでの移行の申立ては、法律上は制限されていません。可能だということになっています。期間限定裁判の合意をした者が判決間近になって理由を問わずにそれを翻すと。それでも訴訟上の信義則に反しないということなんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 今御提示いただいたような場合であっても、通常手続への移行について、何かこう理由を述べて、それが正当でなければ認められないという仕組みは取っておりませんので、今御指摘のような場合であっても、それは移行は認められるというふうに一般的には考えることになるんだろうと思います。
○山添拓君 大臣も訴訟上の信義則に反しないと衆議院で述べているんですが、期間限定裁判では主張や証拠の提出は五か月以内と決定をされます。五か月あれば十分だと裁判所が判断した事件であるはずです。ところが、衆議院では、この通常訴訟に移行した後に新たな証拠や主張を追加的に提出することは、時機に後れた攻撃防御方法の提出として却下されることはないという答弁がありました。
相手方もいますから、相手方にとっても五か月で大体終わりだろうと、もう後出しされることはないだろうと、そういう状況をつくってきているはずなんですね。ところが、それでも、この手続においては通常訴訟に移行した後は幾らでも後出しができると。なぜなんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
これは、言わば手続の最初から最後まで当事者がこの手続を利用することを了としているという状態が継続していることが前提につくっている仕組みです。ですので、途中で一方当事者が考えが変わって、これは通常の手続でやりたいといった場合には、その手続を、その意向を尊重するというものとしてつくっているということになります。
ですから、時機に後れた攻撃防御による却下という発想にはなかなか親しみづらいというふうに考えております。
○山添拓君 ですから、訴訟の進行上の様々な民事訴訟法の原則も崩してしまう、やっぱり矛盾だらけの制度になってしまうと思います。
判決に対して異議申立てをすると、口頭弁論終結前の状態に戻り、同じ裁判官がもう一度判決を行います。しかし、この裁判官は既に事件について心証を形成して、一度は判決まで下しています。敗訴した当事者にとって、敗訴判決を書いた裁判官に逆転判決を期待するのはなかなか難しいと思います。
この点について、杉山参考人は、異議申立てがされるのは新しい証拠や重要な証拠が実はあったケースではないかとお話しでした。こういう場合でなければ、裁判官は異議申立てをしても直ちに弁論を終結して判決してしまうんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) これも事案によりますけれども、異議申立てをして通常の手続に移行した後におよそ何も訴訟行為をすることがないということは普通は想定されないので、あと、こういうことを、通常手続に移行した後で、こういう証拠の申請をしたいというようなことがあろうかと思います。ただ、その事案によって、あるいはそれまでの証拠調べのされた、証拠調べの状況によっては、申請された証拠が採用されないということは一般的にはあります。これは通常訴訟の中でも常に起こることですけれども、そういうことはありますけれども、一般的には、何か申立てがあれば、新たな証拠申請なりの申立てがあれば、それについて裁判所はそのときの審理状況に踏まえて判断していくということになると思います。
○山添拓君 何か煮え切らない答弁なんですけれども、終結してしまうこともあり得るという、否定はされていないと思うんですね。これは短い期間で焦って行った不十分な主張、立証を挽回できないということになりかねません。これは裁判を受ける権利に関わると思います。
最後に、ちょっと別の点で伺いたいのですが、この訴訟をちゅうちょする要因となっているのが期間だということで今回出されているわけですが、これは時間だけではなく費用面も大きいと、今日、与野党を問わず指摘がありました。
最後、大臣に伺いたいんですが、民事訴訟費用に関する法律が一部改正をされますが、オンライン申立てによる割引は予定されるものの、裁判で請求する金額、訴額に応じて決まる手数料は改定されないというお話もありました。既に答弁もありましたので、ちょっと大臣、率直に伺いたいんですけれども、一千万円を求める裁判なら五万円の手数料なんですね。一億求める場合は三十二万円掛かるんです。請求額が大きいか小さいかによって裁判官の力の入れようというのは、これは変わるものなんでしょうかね、変わってよいものなんでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) いやいや、あの、その委員の御質問の趣旨がよく理解できないんですけれども、もう一度具体的に御質問いただけませんでしょうか。
○山添拓君 請求額に応じて裁判の手数料の納付額というのは異なる設定になっていますね、さっきスライド制っておっしゃいました。一千万円を請求する裁判の場合は五万円という金額が設定されています。一億なら三十二万円という設定になっています。高くなればなるほど高い額を納付しなければなりません。ですから、公害事件ですとか過労死事件ですとか、請求額が大きくなる事件は大変大きくなるんですけれども、事件の請求額が大きいか小さいかによって裁判官のその手間というのは、掛けるべき力の入れようというのは変わらないべきではないのかと、どんな事件であっても丁寧に主張、立証を吟味し判決をするということは、これ当然ではないかと思うんですけれども。
○委員長(矢倉克夫君) 端的にお願いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) いかなる事案であっても裁判官は全力で審理に向かわれることだと思いますけれども、お尋ねは、その費用のことについてのお尋ねをなさりたいということだと受け止めましたので、その趣旨でお答えを申し上げます。
現行制度の下におきましては、スライド方式は、取得可能な利益の多寡に応じて手数料の額に差を設け、負担の公平を図るとの観点などからなお合理性があるものと我々は認識をいたしております。
もっとも、現時点で確定的な見通しを申し上げることは困難ですけれども、今般の裁判手続のIT化により事務の合理化が図られ、裁判手続の運営コストが全体として低減されることも期待されるところでございます。したがいまして、今後の訴え提起の手数料の在り方については、施行後における裁判手続の事務処理の実態等を踏まえつつ、関係団体の意見聴取にも努めるなどしながら、負担の公平の見地から必要な検討をしてまいりたいと考えております。
○委員長(矢倉克夫君) 時間です。
○山添拓君 司法アクセスを容易にするために、手数料の低減、是非検討いただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございます。

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