山添 拓 参議院議員/弁護士 東京選挙区候補 日本共産党

国会報告

2022年・第208通常国会

法務委員会で、民事訴訟法改正案(IT化)の、オンラインでの口頭弁論手続きについて質問しました。

要約
  • 法務委員会で、民事訴訟法改正案(IT化)の、オンラインでの口頭弁論手続きについて質問。 片方だけがリアルの法廷での弁論を希望し、片方がオンラインを希望している場合、法廷のなかで一方当事者だけがオンラインという、歪な法廷になりかねないと指摘しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
裁判のIT化、特に口頭弁論期日をウエブ会議の方法で行う規定について伺います。
私は弁護士として、福島原発事故の被害賠償事件のような集団訴訟、あるいは国や企業を相手とする労働組合の事件などに取り組んでおりました。その経験に照らせば、口頭弁論が果たす役割というのは極めて重要だと認識しています。
代理人の弁護士がその訴訟の意義や主張の要点について弁論を行う、相手方の姿勢をただし、裁判官の訴訟指揮に対して意見をする、あるいは当事者自身が被害の実態や訴訟に臨む思いを述べるなど、様々な活動が行われています。裁判の基本原則である直接主義、口頭主義にのっとり、裁判官の心証形成や審理の充実にも寄与するものであろうと思います。
法廷でこうした関係者が一堂に会して、また傍聴人が見守る中で口頭弁論期日が行われるということの意義について、法務省はどのような認識をお持ちでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 基本的には、山添委員御指摘のとおり、当事者が実際に裁判所に参集してお互いの意見を闘わす、そのような状況について裁判所が直接見聞きする、その重要性は十分理解しているつもりでございます。
○山添拓君 法案の八十七条の二は、その口頭弁論期日について、相当と認めるときは当事者の意見を聴いてウエブ会議にすることができるとしています。当事者の一方又は双方が反対した場合も、裁判所が相当と判断すればウエブ会議とするのでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 八十七条の二の条文は、今委員の御指摘のとおりです。
その「当事者の意見を聴いて、」となっていますので、当事者の了解がある場合に限って行うことができるというふうにはしていませんので、可能性としては否定されないということになります。
○山添拓君 証人尋問については、当事者に異議がない場合という規定になっています。口頭弁論期日については、当事者に異議があってもウエブ会議等によることを認めるということになるのでしょうか。公害事件や労働事件やあるいは国家賠償請求の事件などで、被害者など原告側はリアルの法廷で弁論や意見陳述を希望し、被告側はオンラインで結構と、こういう場合、裁判所は認めるんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 具体的にどのような場合にウエブ会議による口頭弁論の期日における手続を行うことが相当と言えるかどうかという点についてはお答えすることが困難ですし、また裁判所がその点の判断をする場合に当事者の意向をどの程度重視するかという点も事案によって異なり得るものと考えられます。最終的には裁判所において、事案の性質や内容、その期日で行うことが予定されている手続の内容、それから手続に関与する当事者の意向等を考慮して適切に判断されることになるものと考えます。
したがいまして、今委員が御指摘の、最後に御指摘になったような、一方の当事者において他方当事者がウエブ会議の方法により参加するということに反対する旨の意見を述べた場合について、そのような場合でも裁判所においてウエブ会議による口頭弁論の期日における手続を行うことが相当であると判断することがおよそないとは言い切れないと思います。
○山添拓君 何か回りくどい言い方なんですけど、要するに、片方が実際の法廷にしてくれと言っても、相手がリアルで、あっ、相手はオンラインでやりたいと言ったら、それを認めるケースがあり得るという答弁なんですね。これは重大だと思うんですよ。弁論や意見陳述を、片方だけが在廷し、もう片方はモニター越しというのは、いびつな法廷です。緊張感も臨場感もありません。双方の同意が必要とすべきだと思います。
最高裁に伺いますが、最高裁規則でそのようにするべきではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(門田友昌君) お答えいたします。
法律の方で枠組みがこのように定められている以上は、規則の方で今委員御指摘のような、言わば上乗せのような要件を定めるということは考えておりません。
○山添拓君 大臣、それでよいのですか。法廷に臨んで、真実を明らかにし、自らの被害の実態を訴える、相手がいないところで、そういう裁判に変えてしまっていいんでしょうか。口頭弁論期日というのはそういうものなんですよね。いかがですか。
○国務大臣(古川禎久君) 今回のこの改正案は、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判を国民がより利用しやすくするものにする、そのためにこの手続の総合的な見直しなどを行うものであります。
○山添拓君 全然お答えになっていない。裁判の実態についても全然承知されない下にこの法案出されているんじゃないかと疑わざるを得ない御答弁だったと思います。
申立てのIT化についても伺います。既に懸念される事態が生じています。
この間、裁判所の事件処理システムNAVIUSの大規模なシステム障害がありました。これは二〇一九年から少年事件や簡易裁判所の事件に順次拡大されてきましたが、昨年九月に使用不能に陥りました。
最高裁に伺います。このシステム障害でどのような影響が生じて、どう対応されたでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判事務支援システム、私ども通称NAVIUSというふうに申し上げておりますが、このシステムは高等裁判所の刑事事件、簡易裁判所の民事事件及び刑事事件並びに家庭裁判所の少年事件等を対象として、事件の進行管理等を行うシステムであり、全国の裁判所で使用されているものでございます。
昨年の九月二十七日、サーバーの通信機器の挙動不良によりまして本システムの処理速度が極端に遅くなり、職員端末からの通信量が一定量に達すると処理が滞留するという不具合が発生いたしました。その後、段階的に本システムの利用を再開いたしまして、本年一月四日に本格復旧をしております。
このように、本格復旧までに相当な期間を要したことになりますが、その間の対応といたしましては、旧システムの暫定利用でありますとか、記録を直接参照するなどの代替策を講じまして、裁判所職員において、裁判所利用者からの問合せ対応等を行いました。
その間、裁判所職員の対応によりまして事件処理に直接的な影響はなかったと考えておりますが、裁判所利用者の皆様には問合せに一定の時間を要するなど、御迷惑をお掛けしたところもあったかと思われます。深くおわびを申し上げたいと思います。
また、今回の件では、裁判所職員に多くの労力を掛けたことについても重く受け止めており、このような経験を踏まえて今後のシステム運用等に生かしてまいりたいと考えております。
現在、本システムは安定的に稼働しております。引き続き、安定稼働に努めてまいります。
○山添拓君 現場の皆さん本当に大変だったと伺います。
NAVIUSには地裁の民事事件も統合することが想定されていたそうですが、取りやめとなって新たなシステムをつくることになったということも伺っております。
元々このシステムというのは使い勝手が悪くて、レスポンスの問題もあって多くの不満が出されていたと言います。システム障害を受けて、東京などでは、その対応に応援態勢を構築せざるを得ない、そういう状況もあったと伺いました。
この現場の皆さんに伺いますと、システム障害による負担増はもちろんですけれども、そもそもIT化自体に不安や懸念も広がっています。システムが導入されたからといって直ちに人的体制を弱めてよいわけではないということも、現場から、現場において認識されるに至ったと伺います。
IT化の進展をイコール定員削減と結び付けてはならないと考えますけれども、この点はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
裁判手続のデジタル化に向けまして、民事訴訟手続の分野におきましては、引き続き着実に推進していく必要がございますほか、民事訴訟手続以外の刑事、家事、非訟分野についても、今後ますます本格的に取り組んでいく必要があるものというふうに考えております。
また、デジタル化に伴う各種法制の検討にも関与していく必要があるものと考えております。
裁判手続のデジタル化の検討、準備を進める過程で生じる様々な問題や業務への対応のためには、この検討の中心的役割を担っている最高裁事務総局において体制を強化することが必要というふうに考えており、今国会におきまして、裁判所職員定員法の改正により事件処理の支援のための体制強化等を理由として、裁判所事務官の増員をお認めいただいたところでもございます。
裁判所といたしましては、引き続き裁判手続のデジタル化の状況等を踏まえつつ、必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。
〔委員長退席、理事高橋克法君着席〕
○山添拓君 最高裁の事務総局だけではありませんから、現場の皆さんがいて回っている運用だと思います。
このNAVIUSは、裁判所内のシステムで事件の進行や裁判記録の提出状況などは紙ベースでも確認できたわけです。ですから、システム障害があっても裁判所の業務そのものは止まりませんでした。一方で、本法案で予定している裁判のIT化は、当事者が提出する事件関係の書面を全て電子化するものです。ですから、システム障害が起きると裁判が止まってしまうことになります。
〔理事高橋克法君退席、委員長着席〕
NAVIUSで現にシステム障害が生じている以上、インターネットによる申立てなどは慎重であるべきだと考えます。どんなシステムになるかも今不明な段階です。その下で、弁護士や司法書士に限るとはいえ、義務化するというのは時期尚早ではないのかと。システムを構築して運用を開始し、信頼性や安全性、利便性が実感できるなら、利用は当然広がっていくだろうと思います。
法務省に伺います。弁護士などが付く事件で、今どうしても義務化しなければならないと、そういう理由はあるんでしょうか。
○政府参考人(金子修君) インターネットを用いた方法により訴えの提起等をすることができるようになった場合には、訴訟手続の迅速化、効率化が図られることになり、民事訴訟に関する社会全体のコストが削減されることとなります。このような観点からすると、訴えの提起等は可能な限りインターネットを用いた方法によるのが望ましいと考えられます。
弁護士等の法律専門職にある者は、職務として民事訴訟手続に関与する者でございますので、訴訟手続の迅速化、効率化に率先して取り組むことが期待することができ、また、一般に、依頼者のためにセキュリティー対策も取り組んだ上でインターネット等を用いた申立て等に対応する能力を十分に有しているものと考えられます。
また、インターネットを用いた申立て等をする際に情報がインターネットを経由することに関しては、裁判所において改正法案を踏まえたシステムを構築する際に十分な措置が講じられるものと認識しております。
このようなことを踏まえて、弁護士等の訴えの提起等につきましては、申立てを、インターネットを用いた申立て等を義務付けることに問題がないものと認識して、今回の立案に至ったものでございます。
○山添拓君 今、リスクがあるということを具体的にお示ししたんですよね。そして、弁護士などに依頼する当事者にとっては、業としてやっているわけではありません。当事者に対して自らの裁判記録をオンライン上に置くことを事実上義務付けることになるわけです、弁護士に依頼した場合には。信頼性や安全性が担保されないままでの義務化は、これはするべきではないと私は指摘したいと思います。
法定審理期間訴訟手続、いわゆる期間限定裁判、今日も議論がされておりますが、私からも伺います。
前回の質疑で民事局長は、勝って得られる利益より莫大な時間と費用が掛かるようでは企業としては裁判の利用をちゅうちょする場面があるという声をいただいている、だからそういう場合に今回の手続が選択肢となると答弁されました。
勝敗よりも時間と費用、コストを優先する、企業法務でそういうニーズがあるかもしれません。しかし、それはもはや訴訟というよりも非訟事件、ADRなどの紛争解決によるべきであって、法と事実に基づいて権利関係を確定させるという訴訟の本質とは相入れないのではありませんか。
○政府参考人(金子修君) 最終的に、公権力によるその判断ですね、裁判所の司法による判断、これが結局認められてこそ最終的には強制執行等の手続につなげていくということができる仕組みになっておりますので、ADR等による解決というのも一つの解決方法ではございますが、最終的な手段としてはやはり裁判所にきちんと判断してもらう仕組みをつくっていかなきゃいけないということでございまして、その裁判所の利用をやはりいろんな事情からためらうようなことがあっては、特に、いつその判断がもらえるか分からないということでためらうようなことがあってはやはりならないものというふうに認識しております。
○委員長(矢倉克夫君) 時間が来ております。
○山添拓君 公権力による執行力を伴う判決を下す手続だからこそ、期間優先ではなく公正に充実した審理の上に判決を下すべきだと思うんです。迅速に紛争解決できれば勝敗はどちらでもよいと、そういうことであれば、訴訟ではなく別の手続を検討するべきだと思います。
訴訟の性質を変えるべきではないということを指摘して、質問を終わります。
ありがとうございました。

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