山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会報告

2022年・第208通常国会

法務委員会で侮辱罪の法定刑引き上げによって、不当逮捕が広がる懸念について質問しました。

要約
  • 法務委員会で侮辱罪の法定刑引き上げによって、不当逮捕が広がる懸念について質問。「慎重に運用される」「刑法35条正当行為の規定があり、実際は想定されない」と繰り返す法務省と警察庁。「正当性は誰が判断するか」という質問に対し、「逮捕者が判断する」と答弁。懸念は深まりました

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
侮辱罪の法定刑引上げについて伺います。
侮辱罪や名誉毀損罪は、一八七五年、政府批判を封じるためにつくられた讒謗律が由来とされます。讒謗というのは、名誉毀損を意味する讒毀と侮辱を意味する誹謗を組み合わせた言葉とされます。同じ日に布告された新聞紙条例とともに、自由民権運動の弾圧に用いられました。この讒謗律によって最初に処罰されたとされるのは、ある新聞の編集長で、讒謗律の布告を批判する投書を新聞に掲載したということで二か月の禁錮刑となったとされます。讒謗律は明治刑法の制定で廃止され、旧刑法では官吏、公務員侮辱罪が規定されました。これが現行法の侮辱罪にも引き継がれております。
大臣に伺います。現行刑法の侮辱罪も表現の自由を脅かす危険を否定できないものだと思います。どのような認識でしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
表現の自由は、現行憲法で保障されている極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことであるというふうに考えています。
今回の法改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、構成要件を変更するものではなく、処罰の対象となる行為の範囲、すなわち侮辱罪が成立する行為の範囲は全く変わりません。したがって、これまで対象とならなかったものが新たに対象となるわけではありません。また、拘留、科料を存置することとしておりますから、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨でもございません。さらに、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられます。
その上で、御懸念の点については、法制審議会の部会におきましても、捜査、訴追を行う警察、検察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については、今般の法定刑の引上げにより変わることはないとの考え方が示されたところでございます。したがいまして、今回の法改正は言論の弾圧につながるものでも表現の自由を脅かすものでもないと考えておりますが、この点を懸念する御指摘があることは真摯に受け止めさせていただきます。
引き続き、先ほども申し上げましたこの法改正の趣旨等について、丁寧な説明に努めてまいりたいと存じます。
○山添拓君 私、法改正のこと、まだ聞いていないんですよね。
現行法の侮辱罪についても、その侮辱の文言も解釈も明確とは言えません。表現の自由を脅かす懸念があるということを確認したまでなんですが、そしてこれは正確に通告もしているんですけれども、その懸念については共有いただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(古川禎久君) 御懸念というのは、その表現の自由を脅かす危険を内包しているのではないかという懸念ですよね。
今回の、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみでありますから、今回の法改正はですね、構成要件を変更するものではございません。処罰の対象となる行為の範囲も変わりません。
○山添拓君 質問にはお答えいただいておりません。
国連自由権規約委員会が二〇一一年に発表した一般的意見三十四は、意見を持つ自由及び表現の自由は個人の完全な発展に欠かせない条件であるとした上で、その四十七項で、締約国は名誉毀損を犯罪の対象から外すよう検討しなければならない、刑法の適用が容認されるのは最も重大な事件に限られなければならず、拘禁刑は決して適切な刑罰ではないとしています。
法務省に伺います。なぜこのような見解が示されたと認識していますか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
このような見解が示された詳細なプロセス等につきましては必ずしもつまびらかではございませんが、いずれにしても、このような意見が述べられたところでございます。
今おっしゃられたように、自由権規約委員会の一般的意見におきまして、締約国は名誉毀損の非犯罪化を考慮すべきなどとされておりまして、このことは承知をしているところでございますが、これは法的拘束力を有するものではなく、それに含まれる勧告的な内容は各締約国にその実施を法的に義務付けているものでもないと認識をしております。名誉毀損を抑止する手段としての刑罰の要否や内容については、各国の実情に応じて検討がなされるべきものであると考えられるところでございます。
そして、我が国における近時の名誉毀損及び侮辱の罪の実情等に鑑みれば、名誉毀損罪及び侮辱罪を非犯罪化することは相当ではなく、むしろ侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対する厳正な対処を可能とするためには、その法定刑を名誉毀損罪に準じたものに引き上げることが相当であると考えております。
○山添拓君 なぜ示されたかつまびらかでないという答弁だったのですが。
表現の自由は透明性と説明責任の原則を実現するために必要な条件である、人権の促進及び保護に不可欠だと、こういう前提の上で自由権規約委員会は勧告をしたものではないのですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
私どもとして、勧告の内容、一般的な意見、先ほどのは承知しております。
ただ、これがまとめられるに至った経緯につきまして詳細を承知しておりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
○山添拓君 外務省、違いますか。
○政府参考人(股野元貞君) お答え申し上げます。
自由権規約委員会でございますが、こちらの十八名の委員が締約国の国民の中から締約国により選出され、個人の資格で職務を遂行するものでございまして、同委員会は、締約国による報告に関する総括所見、あるいは自由権規約の解釈についての委員会としての見解を整理した一般的意見を発出しますが、いずれの文書も法的拘束力はないものと承知しております。
○山添拓君 法的拘束力がないからそれと逆行するような法改正やってよいということにはならないと思うんですね。
刑法の侮辱罪は、最も重大な事件に限らず刑罰の対象としています。今回、その法定刑を引き上げ、懲役刑まで科そうとするものです。国連の一般的意見に反する方向となるものだと指摘しなければなりません。
アメリカやイギリス、フランスなどでは、名誉に対する罪を廃止し、あるいは法定刑から拘禁刑を削除する法改正が行われております。これは国際的な動向だと思うんですね。
こうしたことについて、法制審では、弁護士委員から指摘があって、しかしそれに対しては、そういう議論にはくみしないと、こういう意見が別の委員から出されて、なぜ国連でこのような方向が示されたのか、それを受けて日本はどうするべきなのか、そういう議論はされていないわけですね。これで本当によいのかということが私は問われると思います。
拘禁刑の、失礼、侮辱罪の法定刑引上げでインターネット上の誹謗中傷に対する抑止力となるのか、この点も質問したいと思います。
匿名で行うことができるインターネット上の書き込みは、加害者の特定が困難であることが最大のネックです。大量の投稿が短時間になされ、過激化し、炎上しがちです。これは侮辱罪の法定刑引上げによって抑制できるという保障はないと思います。
衆議院で参考人としてお話しされた木村響子さんは、必ずしも実名でSNSをやる必要はないかもしれないけれども、問題のある発言をしたときには特定できるようなことを考えてほしいという御意見でした。
法務省に伺います。
SNSの運営者や管理者に発信者情報の保存を義務付ける、あるいは外国の会社には日本国内で代表者登記をきちんと行わせるなど、こうした投稿の削除と被害賠償を迅速にかつ実効性あるものとすることが求められていると思いますが、いかがですか。
○委員長(矢倉克夫君) どなたが答弁されます。
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(矢倉克夫君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(松下裕子君) 失礼しました。
今御指摘のようなその民事上の手続につきましては、御指摘のような、例えば新たな発信者情報開示手続の創設を内容とする改正プロバイダー責任制限法の円滑な施行に向けて私どもも関係省庁の一つとして協力を行っておりますほか、御指摘のような、その会社法が定める代表者登記義務の関係についても、法務省の中で、様々な制度の周知ですとか、そういった対応を行っていると承知しております。
また、私ども法務省の人権擁護機関におきましては、様々な御相談に関しまして全国の法務局において人権相談に応じておりまして、人権相談では人権侵害の疑いのある事件を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行っており、例えばインターネット上の誹謗中傷の投稿による被害に関しては、相談者の意向に応じまして、損害賠償を求める方には法テラスなどを御紹介する、あるいは投稿の削除を求める方には削除依頼の方法等を助言したり、違法性を判断した上でプロバイダーに対して投稿の削除依頼をするなどの対応を行っております。
○山添拓君 ちなみに、実際削除がなされた件数などについては情報がありますか。
○政府参考人(松下裕子君) 過去三年間、昨年の十二月までの過去三年間のトータルといたしましては五千三百件余り、五千四百件弱ぐらいでございます。
済みません、失礼しました。人権侵犯事件数としてはそのぐらいでございまして、その中の全部又は一部投稿が削除されたものは約七割というふうに把握しております。
○山添拓君 そういった対策を進めることが大事だと思うのですが、この名誉毀損あるいは侮辱罪などの対応でそれが十分な対策となるのかということについては、これは法制審で二度の議論しかなされていないということもあり、必ずしも実効的な対策となるものではないのではないかと、逆に表現の自由との関係の十分な検討がされないままに法定刑の引上げが行われることへの懸念が広がっているという状況ではないかと思います。
名誉毀損罪では公共の利害に関する特則があります。政治家や候補者に関する事実で、真実が証明できるか、そう信じる相当な理由があるような場合には違法性が否定されます。しかし、侮辱罪ではこれがありません。そのために、政治的な批判が侮辱と扱われ、法定刑の引上げで逮捕の対象にもされてしまうのではないか、こういう懸念が広がっているわけです。
これは大臣にお答えいただければと思いますが、大臣は本会議で、正当な表現行為は、刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと述べました。先ほどもそういう答弁ありました。処罰すべき侮辱と正当行為として違法性が否定される政治的批判とはどのように区別されるのですか。
○国務大臣(古川禎久君) 具体的にいかなる行為が侮辱罪における侮辱に該当するかということについては、収集された証拠に基づき個別的に判断されるべき事柄でありますから、一概に基準としてお示しすることは困難でございますけれども、過去に侮辱罪で有罪が確定した裁判例において示された犯罪事実が参考になると考えられます。
法制審議会の部会では、過去に裁判所において侮辱罪の成立が認められた事案の概要などをまとめた事例集を資料として配付したほか、侮辱罪の成立が認められた複数の事例を口頭で紹介したところでありまして、それぞれ配付資料あるいは議事録として法務省のウエブサイトに掲載をしているところでございます。
○山添拓君 侮辱罪が正当行為に当たるとして違法性が否定されて、無罪となった例というのはあるんですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答えをします。
御指摘のような例は承知しておりません。
○山添拓君 ないんですよ。ですから、大臣が言われるように、過去の事例の例があるからといって、それによって許される政治的批判と侮辱とは区別できないということになると思うんですね。
正当行為というのは、法令又は正当な業務による行為をいいます。法務省に伺います。政治家に対する批判的な言葉は、どのような場合に正当行為になり得るんでしょうか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
侮辱罪というのは、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合に構成要件に該当するものでございまして、ございますが、公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容でありましても御指摘のように刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないものでございます。
具体的にどのような場合がこれに当たるかということでございますが、犯罪の成否は収集された証拠に基づき事案ごとに判断されるべき事柄であることから、いかなる場合がこの正当行為に該当するかについてこの場で確定的なお答えをすることは困難でございますが、法制審議会の部会におきましては、例えば、民事上の不法行為についての公正な論評の法理を踏まえつつ、民事上の不法行為責任より広く侮辱罪の成立が認められることはないとする考え方が示されたところでございます。このような考え方は、今委員のお尋ねのどういった場合に正当行為となり得るかという判断に当たっては参照されるものと考えております。
○山添拓君 じゃ、例えば、政治家について、うそつきだとか裏切り者だとか、そういうツイートをする、街頭演説で聴衆が叫ぶ、侮辱に当たると言えますか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
具体的にどのような場合がということについてはお答えを差し控えたいと存じますが、繰り返しになって恐縮でございますが、法制審議会の部会におきましては、民事上の不法行為につきまして公正な論評の法理というのが、これがございまして、これを踏まえつつ、こういった考え方が刑法の侮辱罪の成否においても参照されるものと考えております。
○山添拓君 いや、法制審でも十分議論が尽くされたとは言い難いと思うんですね。そもそも立件された数が少ないですから裁判例は乏しいわけです。で、萎縮効果がゼロかというと、懸念があって否定できないという意見まで法制審で出されています。名誉毀損と同じように、違法性が否定される場合があり得るとは思います。しかし、そのことは明文で規定しなければ表現の自由の観点から重大な疑念が生じる、こういう指摘が法制審でもされてきたと思うんですね。
資料をお配りしています。衆議院で、法務省、警察庁連名で出された政府の統一見解です。侮辱罪による現行犯逮捕の可否について述べています。「表現の自由の重要性に配慮しつつ、慎重な運用がなされる」とあります。国家公安委員長は、本会議で、慎重な運用とは逮捕権の運用を慎重に行うという趣旨だと述べました。
警察庁に伺いますが、現行犯逮捕の要件との関係で、いかなる規定に基づいて慎重に行うと言っているんですか。
○政府参考人(大賀眞一君) 逮捕権の運用につきましては、身体の自由に直接関連することでもございますので、国家公安委員会規則であります犯罪捜査規範の第百十八条において、逮捕権は慎重適正に運用しなければならない旨が規定をされているところでございます。
その上で、侮辱罪による現行犯逮捕につきましては、身体の自由に加えまして表現の自由への配慮も重要と考えられることから、先般、表現の自由の重要性に配慮しつつ逮捕権の運用を慎重に行う旨を政府統一見解としてお示しをしたところでございます。
○山添拓君 今答弁のあった犯罪捜査規範の百十八条、確かに「慎重適正に運用しなければならない。」と書かれています。要するに、ここで慎重に運用しなければならないと書いているので、そのことをこの統一見解にも書いただけだと、こういうことになりますか。
○政府参考人(大賀眞一君) 先ほども答弁したとおりでございまして、逮捕権というのはそもそも身体の自由を拘束するものでございますので、慎重に運用しなければならないと考えております。
その上で、侮辱罪におきましては表現の自由への配慮も重要と考えることから、このような政府統一見解としてお示しをしたところでございます。
○山添拓君 身体の自由に関わりますから慎重に運用しなければならないのは当然ですね、もとよりです。そして、今警察庁がおっしゃったのは、表現の自由に関わる行為であるのでなおさら慎重にと、そういう趣旨での答弁であったと思います。しかし、現実はどうかということを私は問いたいと思います。今のように、慎重な運用をしなければならないというのはまさに運用上の問題ですから、法的な規範に基づいて、要件に沿って慎重さが求められるということではありません。そのため、現場の判断で、現場の判断次第の運用となっていると思います。
例えば、二〇〇九年十一月三十日、最高裁は、東京都葛飾区のマンションでのビラ配布が住居侵入罪に問われた事件で罰金五万円の有罪判決を下しました。民間の分譲マンションのドアポストに日本共産党発行の都議会報告、区議団だより、区民アンケートを投函していたところ、マンションの住民の通報によって逮捕され、これ現行犯逮捕です、二十三日間身体拘束をされ、起訴されました。オートロックはありませんでした。ドアポストにはピザ屋や不動産業者のチラシ、ほかの政党のビラも日常的に入っておりましたが、ほかのポスティング行為が逮捕、起訴された事実はありませんでした。それでも住居侵入罪に問われたんですね。
警察庁に伺います。
こうした現行犯逮捕というのは、今私が説明したような現行犯逮捕は慎重な運用とは言えませんね。
○政府参考人(大賀眞一君) 個別具体の事案についてのお尋ねでございますので、それは恐らく個別具体の状況に応じて逮捕の必要性を判断したものだということでございます。
お尋ねの事案は私人による現行犯逮捕で、警察はその引渡しを受けたものと承知をいたしております。
○山添拓君 その後、二十三日間も身体拘束しているんですよ。それは警察の判断ですよ。
法務省にも伺います。
この事件、わざわざ起訴しました。慎重な運用ではありませんね。
○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
委員のお尋ねは検察官の公訴の提起及び裁判所の判決でございますので、個別具体的な事件における裁判所の判決あるいは検察当局の活動について法務省として所感を述べることは差し控えたいと思います。
なお、委員はその政府、さきに私ども示しました政府統一見解との関係でお尋ねでございます。私ども、さきに示しました政府統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕につきまして、侮辱罪の成否が問題となるのは表現行為であることから、その性質上、仮に構成要件等に該当したとしても、違法性阻却事由の存否に関して表現の自由などの憲法上の重要な権利との関係を慎重に考慮しなければ正当行為かどうか判断できないので、実際上は逮捕時の状況だけで正当行為でないことが明白とまで言える事案は想定されないと考えているところでございます。
これに対しまして、御指摘の事件は侮辱罪ではなくて住居侵入罪による現行犯逮捕が行われているところでございまして、一般論として申し上げれば、住居侵入罪の構成要件に該当する行為は人の住居に侵入する行為であり、言語等による表現行為そのものが実行行為として問題となる侮辱罪とは異なるために、同列に論じられることは、同列に論ずることはできないと考えております。
いずれにしましても、捜査当局におきましては、侮辱罪による現行犯逮捕につきまして、再三申し上げておりますとおり、表現の自由に配慮しつつ、慎重な運用がなされるものと承知しております。
○山添拓君 罪に問うわけですから、表現の自由に関わる問題であれば、どの罪状であっても慎重な運用というのは当然求められると思うんですね。身体拘束までする、起訴する、違いますか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
表現の自由というのは、委員御指摘のとおり憲法上重要な権利でありますので、これを尊重するということは当然でございまして、犯罪の成否を判断するに当たりまして、正当な理由の存否を検討するに当たっては、そういった権利の性質に鑑みた検討が行われるところでございます。その上で、私ども、再度、再三、先ほど申し上げたことの繰り返しでございますが、私どもの統一見解といたしまして、侮辱罪と現行犯逮捕の関係につきまして見解を示したところでございます。
委員御指摘の事案は、先ほど来申し上げておりますように、人の住居に侵入する行為の事案でありまして、侮辱罪の事案とは異なっているため、私ども、それ、同列に論ずることはできないと考えているところでございます。
○山添拓君 表現の自由に関わることが明らかな事件を平気で逮捕し、起訴してきた事実があるわけです。それが表現の自由、政治活動への、政治活動の自由への弾圧であるということの自覚もなければ反省もないように私は今の答弁を伺って受け止めました。
侮辱罪の法定刑引上げによって不当逮捕の懸念が広がるのは当然だと思います。この資料の中には、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないとあります。
正当行為であるかどうか、いつ誰が判断するんですか。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
現行犯逮捕の場合ですので、その判断は逮捕者がすることになります。
○山添拓君 その段階で正当行為であるかどうかということを逮捕者自身が、これは正当行為などではないと、だから侮辱罪であって逮捕しなければならない、そういうふうになることはあり得るってことですね。
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
再三申し上げておりますが、この私どもの政府統一見解におきまして、現行犯逮捕は、逮捕時に犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができないということを前提に、犯罪であることが明白というのは、違法性を阻却する事由がないことも明白ということでございまして、侮辱罪については、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないと、このように考えているところでございまして、その考えに基づいてこの政府統一見解をまとめたところでございます。
○山添拓君 想定外があり得ることについては否定されていないと思うのですが、そして実際の事案になれば、個々の事案の問題なので答弁はできないとおっしゃる。
先ほどの葛飾のビラ配布事件の第一審東京地裁は、ビラをドアポストへ投函することを刑事処罰の対象と見るような社会通念は確立しておらず、立入り行為は正当な理由があって、住居侵入罪は成立しない、無罪判決を言い渡していたんですね。
住居侵入と侮辱とは構成要件が異なって、同列に論じることができない、それはそのとおりでしょう。しかし、表現の自由に基づく行為であっても、捜査機関は正当性を認めてこなかったわけです。この当時、ほかにも様々、類似の事件がありました。恣意的な捜査によって政治的な弾圧が加えられてきたわけです。慎重な運用を、想定されない、それが歯止めになるなどとは到底言えないと思います。
今日は国家公安委員長の出席を求めておりましたが、実現しませんでしたので、この点は次回以降、直接確認をしたいと思います。
質問を終わります。

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