山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2022年・第208通常国会

法務委員会で、刑法等改正案について質問、修正案の提出、討論を行いました。また、入管難民行政についても質問しました。

要約
  • 法務委員会で、拘禁刑の問題点について質問しました。 懲罰の威嚇の元に刑務作業や改善指導を義務づけるのは、受刑者の人間性を否定し、思想改造にも繋がりかねない懸念があります。 質問後、侮辱罪の厳罰化を行わず、拘禁刑に刑務作業や改善指導を義務づけないとする修正案を提出しました。また、入管難民行政について質問。 ウクライナ避難民を理由に、昨年廃案となった入管法改定案が必要と述べる入管庁。 ところがオリパラ関係者に対しては、大臣告示によって在留資格「特定活動」を創設しています。 ウクライナ避難民は、難民としても、大臣告示でも受け入れ可能と指摘しました

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
拘禁刑の創設について伺います。
懲役刑と禁錮刑を一本化し、刑務作業と改善更生の指導を義務付け、しかし、名前は単に拘禁刑としようとするものです。
国連被拘禁者処遇最低基準規則、通称マンデラ・ルールズは、身体を拘束する刑罰は自由を奪うことによって犯罪者に苦痛を与えるものであり、それ以上の強制を刑罰の内容とすることはなるべく避けるべきだとするものです。
大臣に伺います。大臣は、このマンデラ・ルールズは法的拘束力はないと繰り返しておりますけれども、国連でこうした方向性が示されたその意義についてはどのように御認識でしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) この前も御答弁申し上げましたように、この規則は法的拘束力のある国際約束だとは考えておりません。しかし、これは国連総会決議により採択をされた規則であって、被拘禁者の処遇に際して実施するよう努力するべき内容をまとめられたものであるというふうに承知をいたしております。
今回の法改正、拘禁刑を創設をしようとするものでございますが、拘禁刑における処遇はこの規則の趣旨をできる限り尊重したものとなっているというふうに私どもは考えております。
○山添拓君 果たしてそうかどうかというのが問題なのですが、石塚参考人が述べたように、改善更生や社会復帰支援という名の下にいろんなことが強制された時代があったわけです。どんな政府の下でも受刑者に思想を強制することがあってはならない。ですから、刑の内容としては自由を拘束するだけにとどめておくべきだという考え方に立つものです。
法務省に伺います。先ほども少し出てきましたが、刑事収容施設被収容者処遇法三十条は、受刑者の処遇は、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うとしています。また、同法の八十四条四項は、施設における処遇について、受刑者の希望を参酌して定めるものとする、これを変更しようとするときも同様とすると、このように規定しています。刑務作業も改善更生もあくまで受刑者の自覚に基づき、希望を踏まえて行うということですね。
○政府参考人(佐伯紀男君) 御指摘の刑事収容施設法三十条の規定の内容ぶりについては、御指摘のとおりでございます。
受刑者自身が改善更生の意欲を持って、自己の問題性を認識し、行動を自律的に統制していくことができるようになることが重要だと考えてございます。受刑者自身が自らが受ける処遇の意義を十分に理解し、これを自発的に受ける気持ちを持たせるということが重要であるという認識の下に、受刑者の動機付けを高めるための働きかけに努めているところでございまして、拘禁刑の下においても変わらないということでございます。
○山添拓君 八十四条四項の、希望を踏まえて行うということについてもそのとおりですね。
○政府参考人(佐伯紀男君) 御指摘の部分につきましては、やはり本人の希望ということが重要なことであるとは認識してございます。
○山添拓君 処遇法の改正案九十三条ですが、受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる場合には、作業を行わせるものとするとあります。本人が望まない場合にも、必要だといって作業させることはあるのですか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業あるいは改善指導も同様でございますが、本人の改善更生及び円滑な社会復帰のため必要だという判断をした下で課すものでございますので、本人の希望にこれを委ねるということではなく、言わば懲罰を、懲罰の対象とするという位置付けの下で実施をさせていただくということになろうかと思います。
○山添拓君 ちょっとお待ちください。本人が望まない場合にも、必要と認められる場合だということで作業を行わせるのかどうかということなんですが。
○政府参考人(佐伯紀男君) 個々人の問題性等を調査した結果、その処遇が必要だという判断の下で作業等をさせるということであれば、御本人が望まない場合でもそれは実施していただく対象とするということでございます。
○山添拓君 つまり、義務だということですね。
○政府参考人(佐伯紀男君) 法律上それを実施していただくものでありますので、まあそういう理解でよろしいかと思います。
○山添拓君 実際の刑務作業というのは、紙を折るような単純作業が割り当てられることも多くあります。こうした作業も改善更生や円滑な社会復帰に必要なものでしょうか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業の内容につきましては様々なものがございます。先ほども出ておりましたように、全国矯正展で展示させていただくような優れた商品性があるものもございますし、その人の能力であるとか、あるいは、何をその作業に期待するかということによって作業の内容というのは変わってくるものでございまして、例えば単純作業なんかにつきましても、本人のその作業、何といいますか、改善していただきたい問題性に応じて、いわゆる単純な作業も含めて必要な場合があると理解をしております。
○山添拓君 作業を行うことは遵守事項とされます。正当な理由なく拒否すると懲罰の対象ともなります。単純作業をやっても改善更生や円滑な社会復帰には役立たないからといって受刑者が作業を拒否するという場合には、これは正当な理由にならないということでしょうか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 懲罰を具体的に科すかどうかというのは様々な要因に基づいて判断することになりますが、御本人が、この作業は私はやりたくない、あるいは私にはふさわしくないということを主張されたとしても、それが正当事由に当たるとは、まあケース・バイ・ケースではありますが、基本的には当たらないものと考えております。
○山添拓君 今のお話は、三十条や八十四条に基づいて、処遇は受刑者の自覚に訴え、その希望を参酌してというこの基本ですね、処遇の基本とは矛盾するんじゃありませんか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 作業が必要な状態であるという調査結果に基づいて何らかの作業をしていただくということでございますから、その作業の実施を通してこの問題性を改善していただこうということでございます。御本人が、例えば全く作業をやりたくないというような方も少なからずいるのは現実でございますが、だからといって、その作業をしないでよいということにはならないのでございまして、その方の改善更生、円滑な社会復帰のために必要な作業というのはやっていただくということには変わりございません。
○山添拓君 今の御説明は、現在懲役刑では作業が義務付けられている、刑の内容となっているから、そのように説明になるわけです。
本法案の拘禁刑は、刑務作業に加えて、改善指導も義務付ける、刑の内容としていくというものだと説明されます。今井参考人の言葉でも、刑の内容として作業と指導を位置付けるということでありました。
法務省に伺いますが、二〇二〇年における作業拒否や指導拒否を理由とする懲罰の件数、お示しください。
○政府参考人(佐伯紀男君) 令和二年、一年間における数字でございますが、懲罰の理由が確認できる範囲でお調べしたところでございますが、作業拒否等、これはいわゆるお尋ねのような作業拒否のみならず、例えばサボっているみたいなものも含めての数字になりますが、作業拒否等が一万二千九百三十七件、それから改善指導の拒否が十九件でございます。
○山添拓君 改善指導の拒否に対する懲罰が少ないのは、作業は刑の内容ですが、指導はそうではないからということが背景にあると思います。
本法案によって指導を刑の内容として義務化していけば、指導を拒否した場合にも懲罰によって強制していく、こういうことになるんでしょうか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 現行法の下においても改善指導を受けることは義務付けられているものと理解しております。
ただ、新しいその拘禁刑の下ではその作業の位置付けというのも変わってまいるわけでございます。その意味では、より、従来よりもより丁寧に、作業の必要性とか、そういったものを御本人に指導していくことにはなろうかと思います。
○山添拓君 これは懲罰の在り方についてかなり変わっていく可能性があるということではあろうかと思います。
大臣は、仮に作業や指導を義務付けることができないとすれば、改善更生や再犯防止のための働きかけを行うことが不可能になり、目的が達成できない、だから義務付けることができるようにするのだと、こう説明をしてこられました。
しかし、現場の職員は、懲罰を背景にするのではなく、様々な働きかけを通して改善指導を行ってきたと思うんですね。これは、石塚参考人から、現場の職員は本当にいろいろ苦労しながら、動機付けの面接などカウンセリングの手法も使っていろいろ取り組んでいると、この委員会でも御紹介があったとおりです。
大臣の答弁ですので大臣に伺うのですが、指導を義務付けなければ改善更生を図れなかったという、そういう事例というのは一体幾つあるんでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) その事例の数ということですが、それはにわかに今ここでたちまちお答えすることはできませんが、この拘禁刑を創設するために今回の法改正でしようとしているわけですけれども、この拘禁刑というのは、委員会でも御説明申し上げておりますとおり、個々の受刑者の特性に応じて、そして作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるようにするということでありますが、同時に、これは、答弁いたしましたように、この作業や指導を拒むと、それをそのまま尊重するということになりますと、改善更生、再犯防止のための働きかけを行うことができないということになって、この拘禁刑というこの創設の目的そのものが達成できないということになるということを申し上げているのです。
ですから、特性に応じた、より効果を期待できるような拘禁刑をつくるという、その拘禁刑の制度の中には、今申し上げたように、それは作業や指導を義務付けるということは当然おのずからそれは前提になっている事柄だろうというふうに考えております。
○山添拓君 いや、義務付けなくても働きかけというのはできますよね。現に刑事収容施設で様々な働きかけというのは行われていると思うんですよ。
法務省に伺いますけど、改善指導を拒否した件数、さっきは拒否によって懲罰をした件数は十九件とお示しいただきましたが、そもそも改善指導を拒否した件数というのは把握されていますか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 改善指導を拒否して、様々な指導を行うわけですが、その上で懲罰に至った件数は先ほどお答えしたとおりでございますが、懲罰に至らなかった件数というのは統計としては取ってございません。
○山添拓君 ですから、大臣、義務付けなければ働きかけを行うことができないと、そう大臣はおっしゃるんですけれども、その根拠となる事実というのはないんですよ。改善更生を拒否した件数というのは把握もされていない。義務付けなければ働きかけることができない、そういう事実はないんじゃないですか。
○政府参考人(佐伯紀男君) 各種の指導を行う上で全く義務付けをしないこととした場合に、一定の処遇を拒否する人に対して本人の自発性を高めるための働きかけ、これは当然することになりますし、これまでもしてまいりました。
現状でも、再犯リスクが非常に高い人が改善指導を拒否したり説得に応じないということは間々あることでございます。種々の問題性を有する受刑者の改善更生を図っていく上で相当でないというふうに、何もできないという状態というのは相当でないと思いますし、およそ国民の理解を得られるものではないと考えてございます。
○山添拓君 何もできないということではないと思うんです。私は、今も現場の皆さんは一生懸命取り組んでおられる、改善更生のために、矯正局の下で、様々な手法も駆使しながら、人間的に働きかけながら行われていると思うんですね。それが懲罰を背景に義務付けなければできないというのか、それが問われていると思うんです。
そして、国際的な流れというのは、それを刑の内容として義務付けるのではなく、刑の内容としては身体の拘束にとどめる。もちろん行刑の問題として、現場の処遇の問題としてどのように対応するかというのはありますけれども、刑の内容としては自由を奪うのにとどめるべきだというのが国際的な流れだと、これをさきの参考人質疑でも指摘されてきたんだと思うんですね。
ちょっと次の別の話題に行きたいと思いますが、私、そもそも刑罰はどうあるべきかという問題が根底にはあると思うんです。
今日もお話ありました川越少年刑務所では、今年の秋から、少年院が蓄積してきた矯正教育のノウハウを活用して、二十六歳までの若者も対象にする若年者ユニットを設けると伺いました。参加された委員の方は御記憶のとおりです。
少年院の矯正教育は、少年の立ち直りのために重要な役割を果たしてきたと思います。しかし、少年院でこのように国家がパターナリズムで介入できるのは、それが未成年であって保護の対象だからであります。教育的措置だから許される、必要とされると、こういう理屈だと思うんですね。懲役や禁錮、あるいは拘禁刑は刑罰です。保護処分とは異なります。成人に対しては本人の意思を尊重して関わるべきであって、刑の内容として教育的措置をとることはできないのではないかと思いますけれども、いかがですか。
○政府参考人(佐伯紀男君) お尋ねの若年者受刑者、若年受刑者ユニット型処遇というものにつきましては、法制審議会から若年の受刑者を対象とする処遇内容の充実を図ることについて御答申をいただいたことを踏まえまして、川越少年刑務所、それから美祢社会復帰促進センター内に小集団を編成したユニットを設置して、そこで特定少年を含むおおむね二十六歳未満の若年の受刑者を対象に、少年院の知見などを活用した趣旨のその処遇を行おうとするものでございます。
あくまで、受刑者を刑事施設に収容して刑事収容施設法に基づいて受刑者処遇を行うものでございまして、少年院の処遇そのものを、あるいは少年院法に基づく処遇を行おうとするものではございません。
○山添拓君 もちろんそうなんですけれども、二十六歳まで若年者の一定の処遇が必要だということであれば、じゃ、何でそもそも少年法の適用年齢下げたのかということも改めて問われなくちゃいけないと思うんですね。
私は、指導の名で義務付け、懲罰を背景に強制するべきではないと考えます。思想改造と言えば大げさに聞こえるかもしれませんが、行き過ぎれば危険を、危険な事態を招き得る問題だと思います。
現に日本の刑事施設では、戦前も戦後も受刑者の人間性を否定した歴史があります。刑務官が受刑者の肛門に消防用ホースで放水して傷害を負わせ、直腸破裂で死亡させた事件、腹部を革手錠で締め付け受刑者が死亡した事件など、一連の名古屋刑務所事件を経て、二〇〇三年に行刑改革会議の提言がまとめられました。
ここでは、受刑者が自発的、自律的に改善更生及び社会復帰の意欲を持つことが大切だ、受刑者の処遇も、この誇りや自信、意欲を導き出すことを十分に意識したものでなければならない、これまでの受刑者処遇において、受刑者を管理の対象としてのみ捉え、受刑者の人間性を軽視した処遇がなされてきたことがなかったかを常に省みながら、現在の受刑者処遇の在り方を根底から見直していくことが必要であるとされていました。このことは再確認されるべきだと思うんです。
大臣に改めて伺いますが、作業や指導を義務付けて懲罰を背景に強制することは、受刑者の人間性を軽視することにつながりかねないと、こう思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(古川禎久君) 今回法改正で創設をしようとする拘禁刑は、作業と指導をいずれも罪を犯した者の改善更生という特別予防のために課すものと位置付けております。そこで、十二条第三項において、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができると規定することといたしております。
これは、ここに言う改善更生といいますのは、罪を犯すに至った要因となっている悪い点を改めるとともに、再び犯罪に及ぶことなく社会生活を送ることができるようになることを意味するものでありまして、これは、憲法上保障される思想及び良心の自由を侵害することが許されないというのは、これはもう当然のことであります。
○山添拓君 ちょっと必ずしもかみ合っているようには思いませんでしたが、時間参りましたので終わりますが、我が党はこの後、修正案を提出したいと思っています。拘禁刑は刑法上、刑事施設に拘置することのみを規定し、受刑者の作業は、受刑者が希望するときはその機会を与えるという位置付けにする、作業を怠った場合に懲罰を科されることがないような規定にするべきだと考えています。
以上申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます。

○山添拓君 刑法等の一部を改正する法律案に対し、日本共産党を代表して、修正の動議を提出いたします。
その趣旨を御説明します。
本法律案は、侮辱罪の法定刑に懲役、禁錮を追加する等の厳罰化をするものです。インターネット上などでの悪質な誹謗中傷対策として提案されたものですが、言論、表現を処罰の対象としながら、具体的にどのような表現が侮辱に当たるのかは、審議を通じても全く明らかになっておりません。
また、本法律案は、逮捕の可能性を広げ、教唆や幇助をした人の処罰を可能としています。例えば不起訴になったとしても、現行犯逮捕のインパクトは自由な言論、表現に対する脅威となり、萎縮効果をもたらします。
衆議院で政府が示した統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ慎重な運用がなされる、表現行為という性質上、逮捕時に正当行為でないことが明白と言える場合は実際上は想定されないとしています。しかし、北海道警察やじ排除事件に見られるように、捜査当局の判断で政治的な表現の自由が現に脅かされています。侮辱罪の恣意的な運用の懸念は依然として払拭できません。誹謗中傷への対策は民事的救済を充実すべきであり、侮辱罪の法定刑引上げは行うべきではないと考えます。
また、本法律案は、現行の懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに拘禁刑を創設します。現行法は、懲役については作業を義務付けていますが、禁錮については作業を義務付けておりません。ところが、本法律案は、刑の内容として全ての受刑者に対して作業と指導を義務付けます。
国連が被拘禁者処遇の最低基準を示したネルソン・マンデラ・ルールズは、犯罪をした人が社会に再統合されるようにすることが必要であると、刑務当局に対して、受刑者に適切かつ利用可能な教育そして職業訓練、作業その他援助を提供する義務を課しています。そのため、日本における作業の強制に対して、国連社会権規約委員会は、矯正の手段又は刑としての強制労働を廃止し、関係規定を修正、廃棄するよう勧告しています。
拘禁刑の下で、受刑者の自発性、自律性、尊厳を尊重せず、懲罰の威嚇の下に改善更生を強いることになれば、国際的に求められる受刑者への処遇水準からますます懸け離れてしまいます。そこで、拘禁刑については、刑法上は刑事施設に拘置することのみを規定することとし、受刑者の作業は、受刑者にその機会を与えるものとして位置付けるべきだと考えます。
以下、主な内容について御説明申し上げます。
第一に、侮辱の罪の法定刑を引き上げる改正を行わないこととしております。
第二に、拘禁刑及び拘留について、これらに処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとする規定を刑法から削除しております。
第三に、作業を怠った場合に懲罰を科されることがないよう、受刑者の遵守事項として定める事項のうち、正当な理由なく作業を怠ってはならないことを削るとともに、刑事施設の長は、受刑者が希望するときは、原則として、その受刑者に対し、その改善更生及び円滑な社会復帰を図るため必要と認められる作業を行う機会を与えるものとすることとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしています。
以上が修正案の趣旨であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○委員長(矢倉克夫君) これより両案及び修正案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○山添拓君 日本共産党を代表し、我が党提出の刑法等改正案修正案に賛成、内閣提出の二法案に反対の討論を行います。
内閣提出法案は、SNSなどインターネット上の誹謗中傷が社会問題化する中、侮辱罪の法定刑に一年以下の懲役、禁錮、三十万円以下の罰金を追加しようとするものです。しかし、ネット上の誹謗中傷に対しては、発信者情報の特定や保存の義務付けなど、民事的な救済手段を充実させることこそ必要であり、法定刑引上げによる実効性には疑問があります。一方で、侮辱罪の法定刑引上げは、逮捕、拘留できる場合を拡大し、教唆犯や幇助犯も処罰対象とします。
政府統一見解は、侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ慎重な運用がなされるとしていますが、逮捕の最終的な判断は現場の捜査官次第であり、担保となりません。現に北海道警やじ排除事件のように、トラブル防止を名目に時の首相や政権への異論、批判を封じた事実があります。
大臣は刑法三十五条の正当行為として違法性が否定され得ると言いますが、侮辱罪が正当行為を理由に無罪となった裁判例は確認できず、いかなる場合が正当行為に当たるかの確定的な説明もなく、懸念は拭えません。仮に現行犯逮捕などが起きれば、起訴されなくても自由な言論、表現への重大な脅威となり、回復し難い萎縮効果が生じます。侮辱罪の法定刑引上げはやめるべきです。
また、本法案は、現行の懲役刑と禁錮刑を廃止し、新たに拘禁刑を創設します。
国連が被拘禁者処遇の最低基準を示したマンデラ・ルールズは、拘禁刑とは自由の剥奪であり、原則としてそれ以上に苦痛を増大させてはならないとしています。改善更生や社会復帰という名で様々に受刑者に強制した時代があったからにほかなりません。作業や指導を義務付け、懲罰を背景に強制することは受刑者の人間性を軽視することにつながりかねません。
日本共産党の修正案は、以上に述べた反対理由を踏まえ、侮辱罪の法定刑引上げを行わず、拘禁刑は文字どおり自由の剥奪のみを内容とすること、刑務作業は受刑者の希望によることとし、刑事施設にはその機会を提供する責任があることなどを定めるものです。
委員各位の御賛同を重ねて求め、討論といたします。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
名古屋入管でウィシュマさんが亡くなった事件について伺います。
六月七日付けで理事懇談会に示された補足説明資料は、名古屋入管の看守勤務日誌、被収容者診療簿、拒食者報告について、いずれも情報公開法上の不開示情報に該当すること、訴訟係属中であることを理由に開示できないとしております。
しかし、これらの事情は、私がこの委員会で提出を求めた三月二十九日の時点でも同じだったはずです。
入管庁に伺いますけれども、二か月間、何の準備をされていたんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 当委員会での法務大臣の発言を踏まえまして、委員の皆様の御指摘にお答えするべく、当庁において改めて検討を重ねるなどの準備を進めた結果として、六月七日の提出に至ったものでございます。
○山添拓君 いや、お答えいただいていないんですが、二か月待って二枚のペーパーで、中身は同じなんですよ。見せていただきたいと言ったものは一切出てこなかったと。そして、いかなる検討がされたかということもこのペーパーからは見えません。どんな準備をされていたんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 検討を重ねたということでございますけれども、検討の内容の子細につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。
○山添拓君 国会の求めに対して何ら応じないということですよね。
尿検査について伺いますけれども、先ほども有田委員からありました二月十五日のケトン体三プラス、飢餓状態がうかがわれる、疑われる数字です。一月二十六日の検査でも、これは陽性と出ておりました。さらに、二月十五日はウロビリノーゲン三プラス、急性肝炎などが疑われる数値です。
ところが、報告書を作成した調査チームでは、このこれらの点について有識者から問題点は指摘されていないということでありました。調査で重大な点が見過ごされている以上、これは調査そのものをやり直す必要があるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) この調査報告書は、可能な限り客観的な資料に基づきまして、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がなされたものでございまして、本件については十分に調査が尽くされているものと考えております。
○山添拓君 尿検査で表れている数値について重大な点が見過ごされていたという認識もお持ちでないわけですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その点につきましての、報告書において特段の指摘は、問題点としての指摘はございません。
○山添拓君 いや、調査チームではなく入管庁として、今こうして国会審議の中で指摘をされて、その上で問題意識はお持ちでないのかと伺っています。
○政府参考人(西山卓爾君) 調査報告書におきましても、御指摘の二度の尿検査を含めた経緯を前提としまして、二月十五日の尿検査結果を踏まえた内科的な追加の検査等がなされることが望ましかったものの、それが行われなかった原因は名古屋局の医療体制の制約にあったと考えられ、医療体制の抜本的な強化に取り組む必要があるとしているところでございまして、この指摘については私どもとしても受け止めているところでございます。
○山添拓君 死因が不明だという報告書なんですよね。そして、それに関わるような新たな問題点について様々な指摘がされてきているわけですから、改めて調査を行うべきだと思うんです。医療体制の問題じゃないですよ。詐病を疑っていたという疑念さえあるわけです。私がこの間求めてきました書類、資料の開示については改めて求めたいと思います。
今日は難民認定の問題について伺います。
大臣は、ウクライナからの避難者受入れ対策に関わって、難民条約上の理由以外により迫害を受けるおそれのある方を適切に保護するため、難民に準じて保護する仕組みの検討を進めていると述べてきております。昨年廃案となった入管法改定案に言ういわゆる補完的保護者の認定制度を念頭に置いた言葉だと、発言だと、この委員会でも議論がされてきました。
入管庁に伺いますが、迫害を受けるおそれとはどのような場合を言うんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 迫害を受けるおそれの有無につきましては、申請者本人の供述や提出資料、出身国等に係る客観的情報等に基づき、個々の具体的な事情を考慮して申請者ごとに判断しているところでございます。
○山添拓君 今、個々の具体的な事情に基づきと答弁がありましたが、従来、入管庁はこの迫害を受けるおそれを極めて狭く解釈をしてきました。民主化運動のリーダーのように、迫害主体から個別に把握され標的とされているようなことを求めて、その立証を申請者に求めてきました。
昨年廃案になった入管法案の二条三の二、ここに言う迫害を受けるおそれというのも同じような定義の下に認定するんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 迫害のおそれにつきましては、条約難民の定義と同じというふうに原案ではしているところでございます。
○山添拓君 同じなんですね。ですから、ウクライナの例で言いますと、ロシア軍の空爆から逃れてきたというだけでは駄目なんですよね。ロシア軍から具体的にターゲットとされていることが必要とされることになるでしょう。
補完的保護関係者を、失礼、補完的保護者を法律に書き込んだとしても、迫害を受けるおそれの認定の考え方を改めなければ保護は進まないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほども申し上げました、さきの通常国会で提出をいたしました改正法案におきましては、におけます補完的保護対象者でございますけれども、これについては、例えば内戦や戦争で戦闘に巻き込まれて命を落とすおそれがある者などは難民条約上の理由には必ずしも該当せずに、条約上の難民に該当しない場合があるということを前提といたしまして、その点から、それをよりよく確実に保護するための制度上の、法律上の制度が必要だということでございまして、それで補完的保護対象者というものを考えたというところでございます。
○山添拓君 お考えになったんですけれども、しかし、迫害を受けるおそれの認定の仕方が変わらなければ保護は進まないということを指摘いたしました。
難民認定手続に時間が掛かり過ぎることも重大です。一次審査に掛かる平均処理期間、不服申立ての平均処理期間、それぞれどのぐらいですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 令和三年における難民認定申請の一次審査の平均処理期間は約三十二・二月、それから、審査請求、不服申立ての平均処理期間は約二十・九月でございます。
○山添拓君 三十二・二月、約二年八か月ですよ。一次審査の標準処理期間は六か月とされているのですが、その五倍です。これは、二〇二〇年は一次審査、約二十五・四か月でした。七か月延びているんですね。補完的保護対象者の認定も同じ難民認定の手続が予定されておりますから、ウクライナの避難者がこの手続を仮に使ったとしてもこれだけの時間が掛かるということなんですね。
私は、四月の当委員会で、ウクライナ避難民は補完的保護者の制度がなくとも難民として保護できる、それがUNHCRのガイドラインに沿う運用だと指摘しました。手続を迅速かつ適切に進めることが求められているのであって、ウクライナ危機に乗じて昨年廃案になった入管法改定案を持ち出すというのは、これは筋違いだと私は思います。
政府は、現在、ウクライナ避難者を特定活動という在留資格で受け入れています。特定活動というのは、告示によって認められているものが五十ぐらいあります。例えば、東京オリンピック関係者の在留資格まで告示によって認められています。
法改正などしなくても、告示によって在留資格を認めていくことは可能ですね。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘のその特定活動との関連で申し上げますと、さきの通常国会で提出した改正法案で考えていたところではございますけれども、裁量により特定活動の在留資格を付与するのではなく、規則的に定住者の在留資格を付与することができ、より安定的に在留を認めることが可能になるというふうに考えていたところでございます。
○山添拓君 いや、今でも告示によって在留資格を認めるという運用はされているわけですよ。それは法改正でお考えだったことはあるかもしれませんが、今でもかなり柔軟に対応する必要がある場合には、オリンピック関係者のように在留資格認めるということをやっているわけですね。
もう一点、難民認定について伺います。
札幌高裁は、五月二十日、トルコ国籍のクルド人男性が難民認定を求めた裁判で、入管の難民不認定処分を違法として取り消しました。入管側は上告せず、確定したと報じられております。この判決は、クルド人というだけで難民と認めることはしませんでしたが、この男性がクルド労働者党、PKKを支援した際に暴力を加えられ、その後、警察に暴行され、逮捕され、情報機関と考えられる組織に実家を破壊され、父親が暴力を受けて重傷を負ったことなどなど、事実に基づいて、生命の危険が生じる可能性があることは否定できない、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する、こういう認定をしています。
上告を断念された以上、直ちに難民認定するのですね。
○政府参考人(西山卓爾君) 個別事案の対応につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として、難民不認定処分の取消しを命じる判決が確定した場合、当該判決の確定をもって当該処分時における外国人の難民該当性については既に公権的に確認されていることを前提として、処分時以後に難民該当性が否定される事情変更がないかどうか検討し、そうでない場合には速やかに難民として認定することといたしております。
○山添拓君 申請時に戻ってしまうと、つまり申請中の状態に戻ってしまって、直ちに認定するということではないという意味ですか、今おっしゃったのは。
○政府参考人(西山卓爾君) 当該判決、判決が確定した場合に、処分時においては難民該当性については公権的に確認されている、それを前提として、それ以後、処分時以降に難民該当性を否定するような事情変更、新たな事情変更がない限りにおいては難民認定をするということとしています。
○山添拓君 そういうことであれば、直ちにその処分時以降の事情について判断をし、かつ公権的に認められた難民該当性、速やかに認めていくべきだと思うんですが、しかし、クルド人でこれまでにも二件、難民不認定が取り消された判決が確定しているのですが、いずれもその後不認定となっています。判決で難民であることがほとんど認められているにもかかわらず、従わないというなら大問題です。
私、先ほどウィシュマさんの問題で、国会から求められても資料を出さないという対応ありました。判決で認められていても、難民認定その後しないという運用もあると、そういう実態が入管行政あるわけですね。
私は、しかも、その今述べたような状態、実態について、政府が予定していた入管法改定案は何ら手を着けるものではないわけです。廃案となった法案をこの秋の臨時国会で提出するなどということが言われておりますが、これ言語道断だと思います。入管難民行政を抜本的に転換するために、野党の五会派、この国会にも当院に改正法案出しております。その審議を行って、速やかに転換するよう求めまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。

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