山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

賃上げで地方活性化 公共交通の充実を訴え 「地方社会が抱える課題」に関する参考人質疑

要約
  • 地域社会が抱える課題について、参考人質疑をおこなった。山添拓議員は、JRの上下分離方式や「公共交通基金」「災害復旧基金」の創設など党の鉄道提言を紹介。宇都宮氏は「基金を含め財源を確保することは重要だ」と答えるとともに、道路建設ばかりにお金を出す硬直化した予算配分を見直す必要があると強調。上下分離方式については「今後、その方向性をもっと出していくべきだ」と評価した。山添氏は「地域経済を活性化し、若い世代を含め地方で住み続けられる環境をつくるためには労働者の賃金を上げることが不可欠ではないか」と質問。藤山浩「持続可能な地域社会総合研究所」所長は「日本は賃金が安すぎる。最低賃金を上げるのは必要な政策で、地方の底上げになる」と答えた。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日は大変ありがとうございます。
私からも、今の伊藤議員の質問に続いて宇都宮参考人に伺いたいと思います。
国交省の検討会について、今も指摘がありました、輸送密度千人未満の路線について国が主導してJRと自治体との協議体、協議会を設置し、廃線や地元負担増などの結論を三年以内に出すという提言を行い、通常国会に法案も提出するとされています。これに対しては、地方の切捨てに直結する、一律に人数で切るのは乱暴なやり方など、批判も起きているかと思います。路線の維持や活性化は前提とされているわけではなく、むしろ廃止か地元負担増か、これを前提とする協議となることが懸念もされるかと思います。
自治体と利用者に解決を押し付けるのではなく、国としても、鉄道路線を中心に、公共交通どう生かしていくのか、宇都宮参考人言われたように町づくりとしてどう位置付けるのかと、国としてこの観点での政策を持つことが本当に必要だと思うんですけれども、この点について御意見がありましたらお願いします。

○参考人  関西大教授(宇都宮浄人君) 御質問ありがとうございます。
本当に、国、自治体、住民、皆さん全てが協力して考えていかなきゃならないと思うんですけれども、私の意見では、ただ、いわゆる地域の交通というのは、やはり一番よく知っているのはその地域の人たちであったり地域の関係者であると思うので、微に入り細に入り国が入ってくるというのがいいかというと、私はちょっとそこにはむしろ弊害があるのかなと思っていて、今後の地域のそのモビリティーというものをどう生かし、どう地域が発展するかというのは、一義的にはやはり私は地域の人々が考えて、自治体も含めて考えていくものじゃないかなというふうに思っております。
むしろ、国の役割としては、それは地域の仕事なんだけれども、現状は、例えば鉄道に関しては特別交付税の対象にもなっていません、バスは対象なんですけれども。要するに、いわゆる地域の自治的な事務として鉄道というものがみなされてないわけですね。私はそういうことの方が問題だと思っていまして、しっかり、そこは地域の事務である、ただし、地域というのは当然、日本全体見れば税収に偏りがあるわけですから、そこをしっかり国が再配分をすることで地域が地域ならではの施策をできるようにしていく、そういう方向性に多分国の、持っていくというのが国の役割ではないかなというふうに思っております。
以上でございます。

○山添拓君 ありがとうございます。
もう一点伺いたいと思います。
地域の町づくりの一環としての鉄道、まあ公共交通とともにですね、先ほども話に出たJRのように、全国的なネットワークとして存在するという意味での位置付けということもあるかと思います。現状ではJR北海道や四国など緊急の対応が必要なところもあると思うんですが、中長期的にはやはり民間任せ、地方任せではない持続可能なシステムへの転換ということも必要ではないかと思います。
私たち、党としても提言を発表したりしているのですが、この中長期的な展望について、一つは、先ほど参考人からも提起のあった上下分離の導入、それから公共交通基金のようなものを創設し、民鉄やバスも含めて地方の公共交通を支援する、そしてもう一つは、今、災害を機に廃線になる、そういう検討が進むという路線がたくさんありますので、そういうことのないように国が出資をし、災害復旧のための基金を創設する、そういう中身を掲げてきました。
この中身そのものでなくても構わないんですが、こうしてその路線が存続できるような仕組みを財政的に、あるいは制度としてつくっていく上で、今最も欠けているというか、政策的に必要とされていることについて御意見を伺えればと思います。

○参考人(宇都宮浄人君) ありがとうございます。
手法としては、基金があったり、あるいは現在ですと、滋賀県は交通税という形で、これもやり方はいろいろあるでしょうけれども、税に、森林環境税のような形で住民税、法人税に薄く広く上乗せするみたいな、多分いろんな手法はあると思います。
私はそれについて今優劣は申し上げられる立場ではないんですけれども、そういう形で、基金も含めて財源をきっちり確保していくということはもちろん重要かと思いますが、私は、もう一つは、やはりこう、高度経済成長期から進んできて、先ほど伊藤議員の方からもありましたけど、やはり予算の配分みたいなのが、現状、日本、硬直化しているような気がいたします。やはりそこを、大きな時代が変わった以上、もう少しそこを見直していく。
少なくとも、欧州のケースであれば、もちろん道路も重要ですけれども、いわゆるその二十世紀の頃に比べると、脱炭素に向けてより公共交通に予算をシフトするということはもうドイツ、オーストリアは明確に打ち出しております。フランスもそうです。というようなことを考えると、その辺りの予算の見直しというものは、是非、ここにいらっしゃる調査会の先生方の御尽力で少し進めていただく必要があるのかなということを感じておる次第でございます。
以上です。

○山添拓君 どうもありがとうございます。
次に、松原参考人と藤山参考人に伺います。
政府が地方創生を提唱して十年近くになろうかと思います。しかし、東京一極集中が是正されるわけではなく、人口減少を始め地方の現状が深刻化をしてきました。そもそも、この地方創生を掲げざるを得なくなったのは、政治が地方をまあ切り捨ててきた、後景に追いやってきた、そのことの反映にほかならないかと思います。平成の大合併などで公的な機能が弱まり、規制緩和万能の新自由主義で事業や雇用が壊され、あるいは自由化の促進で農業や漁業にも苦境を強いてきた、そういう流れがあるかと思います。
こうした大本にある政治のゆがみが正されてきたかという点が私は問われると思うんですけれども、この点についてそれぞれ御意見を伺いたいと思います。

○参考人 福井県立大学地域経済研究所特命教授(松原宏君) 御質問ありがとうございます。
そうですね、地方創生が十年たって、なかなか東京一極集中の是正につながってきていないのは事実であると思いますけれども、その要因自体が政治のゆがみというか政治によってもたらされたかどうかというのは、私は、それもあるかもしれないけれども、より多元的かなとは思っております。
特に、東京一極集中に関しては、やはり中枢管理機能といいますか、その本社の東京集中といったようなもの、これをどういうふうに考えるかということでいいますと、やっぱり経済のメカニズムの中で一極集中が進んできて、それとともに、今、IoTとかAIとか高度な情報サービス業が成長してきて、そういったようなものに向かって地方から女性、特に女性が集まってきたりして、そういう意味では、一極集中の原因自体は、政治もあるかもしれませんけれども、私自身は、やはり経済のメカニズムの中で進んできていて、それは、ですから、経済の論理の中で解消していくというようなことを私などは考えていて、そういう面では、本社機能の地方分散、それから先ほど来言っています地域本社企業を地方で強くしていくといったようなことが重要だと思います。
政治に関しては、中枢管理機能の中でいうと、政治的な中枢管理機能の一極集中というのはもうずっと前から話題になっていて、国会の移転なども議論としてはあったわけですけれども、そういったようなもの自体をどうしていくかというのはあるのかなと。
これは、例えばフランスなどの場合には、いわゆる中央集権が強かった国なんですけど、今非常に地方分権が進んできています。地域圏という、レジオンというその各地方ブロックごとの圏域でかなり重要な施策が動いてきている。そういう面では、政治の言わば地方分権、こういったようなものをどのように進めていくかというのは、進めていくのはいろいろ重要だというふうに思っております。ドイツのような連邦制ではなくて、フランスのようなところでも進んでいるということに学ぶべきかと思っております。
以上です。

○参考人  一般社団法人持続可能な地域社会総合研究所所長(藤山浩君) 多分五つぐらいちょっと課題があると思っていまして、一つは、地方創生と言いつつも、じゃ、それほど巨額の、本当に投入されているかというと、もう何千億単位ということにとどまっているというのは、そういう中途半端さがあると思いますね。
二番目は、やはり従来からの選択と集中路線というのをどうしても取りがちだと。これがやっぱり一部のトップランナーだけ脚光を浴びても、ほかが切り捨てられるという結果に終わっていると。
三番目が、やはりこの地方創生をもっと未来形でやらないと駄目だと思います。必ず我々は循環型社会に変わっていかないといけない、その中で地方創生しないといけない。だから、地方創生掛ける脱温暖化とか、そうした新しい時代のコンセプトと併せてやることがまだ不足していると。
それから四番目が、私は本当、選択と集中の一つの表れでもあったんですが、平成の大合併というのは本当に成功だったんだろうかと。あるいは、むしろ自己決定権を奪った結果にならないだろうかと。いろんな人口動態見ても、むしろ、そのときに単独を選んで自分たちで地域を決定する、設計すると、こういったところの方が実は人口取り戻しています。しかも、脱循環型社会ではまさに地元から自分たちでつくり直すと。トップダウンではあり得ないということにあって、私は循環自治区というふうな一定の自治の単位のつくり直しが要ると思っています。
最後は、実は人材の問題です。市町村、県、頑張っていますが、特に市町村の本当に公務員数は余りにも少ないと、もう国際的に見ても少ないと。もう手が回らないと、もう日常業務で手いっぱいと。しかも、日本には地方公務員学部というのはありません。プロとしてそこへなって、その後もスキルアップするような仕組みは実はないわけです。こういったところにもしっかりした財政的な手当ても含めてやらないと、実はギアは入らないというふうに確信しております。
以上です。

○山添拓君 ありがとうございます。
藤山参考人に続けて伺います。
地域経済、地方活性化する、していくために、若い世代を含めて地方で住み続けられる環境をつくるために、いろんなアプローチはありますけれども、私は、一つは、労働者の賃金を上げるということは不可欠だろうと思います。今議論もあるところですが、特に地方で賃上げに効果がある中身として、やはり最低賃金を全国一律にしていくということは必要だろうと思います。地方では家賃が安くても交通費が掛かるという状況もありますし、都道府県間の格差のために地方から人口が流出するという事態も当然生じ得るところかと思います。
そのほかでいえば、介護や保育、ケア労働での賃上げですとか、あるいは公務員の問題今指摘がありましたが、公契約の規制などとも併せて、地方での賃上げのために政治が取り組むべき課題について御意見がありましたらお聞かせください。

○参考人(藤山浩君) これは二つの考えがあると思っていまして、私は、一つは、余りにも日本の賃金安過ぎるのはもう完全に明白ですから、最低賃金を上げていくというのはもう地方だけというよりも必ず必要な政策であって、それが地方の底上げになればというふうにも願っているところです。
二番目は、単に賃金だけじゃなくて、これからより、単なる現金収入だけじゃなくて、もっと一番近隣レベルというか、基礎的な生活圏においてはもっとコモンズ的な共有でやっていく仕組みというのが要るんではないかと。そういうのをつくり直し、森林農地等も国外や東京資本で再生エネルギーで蚕食されるんじゃなくて、地域の人がちゃんとそこで自己決定権を持ってそこから所得を取り出すと、こういった仕組みづくりが要ると思います。
あるいは、先ほど来議論されます交通も、一種の私はもうコモンズという考え方でやった方がいいと思います。今でも大体、過疎地域においては、一人当たり子供から大人まで全部ひっくるめて二十万から三十万掛かっているという実態があります。東京よりよっぽど掛かっているんです。だから、千人で大体三億円ぐらい掛かっているんですね。それを、だったらどういうふうに、全部、みんなが自家用車乗り回すのがいいのか、だったらもっと賢いやり方があるはずなんですね。
あるいは、それでいろんな小さな拠点もつくる、あるいはそこへみんなのいろんな、先ほどエネルギー等も含む会社もつくると、こういった部分を含めて考えないと、賃金だけ上げればいいと、もうそれは必ず必要ですが、一方では、そういうふうな共有の部分、コモンズ的な部分をしっかりつくっていく、取り戻していくと、こういうものと合わせ技でやっていただけるというのが大切なことかと存じます。
以上です。

○山添拓君 ありがとうございます。終わります。

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